2021.10.7

“退屈な時間” を過ごす子が最強のワケ。将来活躍するための「4つの力」

長野真弓
“退屈な時間” を過ごす子が最強のワケ。将来活躍するための「4つの力」

(この記事はアフィリエイトを含みます)

新型コロナ蔓延により、世界は変化を余儀なくされました。子どもたちも、この大きな時代のうねりと無関係ではいられません。学校ではオンライン授業が導入されたり、自宅ではお父さん・お母さんがテレワークをしていたりと、いままでとは違った生活になっているでしょう。

そんな新しい時代、わが子の未来はどうなってしまうのかと不安になっている親御さんも少なくないはずです。そこで今回は、これからの時代を生き抜いていく子どもたちに「絶対必要な力」を考えてみました。

子どもたちの65%が、いまはない職業につく!?

これから世界はどうなってしまうのでしょうか? 子どもの未来という観点から世のなかを見てみましょう。

1. テクノロジー化が急速に進む

IT化にともなって、「処理的な事務仕事は、2020年代を通じて半分に、その後の10年でほぼなくなっていくのでは」と、教育改革実践家の藤原和博氏は見ています。すでに、さまざまな店舗で自動精算機が普及し、企業では事務作業のIT化もどんどん進んでいますよね。「いまの子どもたちが大人になったとき、その65%はいまはない職業につく可能性が高い」という研究データもあるように、テクノロジー化は子どもたちの職業にも大きく影響を与えるのです。

2. さらなるグローバル化が進む

「多様性」という言葉を聞かない日はないほど、その必要性が各方面で指摘されています。人口減少や高齢化が進む日本。労働者不足の懸念や、世界との競合力強化の側面からもグローバル化の波は避けられないでしょう。「これからは国境を越えて人がつながっていく事象がさらに進んでいく」と教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が言うように、これからはさまざまなパーソナリティーをもつ人たちと仕事をしていく時代なのです。

「テクノロジー化」「グローバル化」、どちらも未来の仕事に直結する大きなテーマ。親世代とは違う能力が、子どもたちに求められるようになるでしょう。それは、どんな能力なのか――専門家の意見を参考に、「将来絶対に必要になる4つの力」を考えてみます。

未来に必要な4つの力1

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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将来活躍するために必要な力1:「考える力」

先の見えない時代に必要とされるのは、「記憶力」ではなく「考える力」です。「 “記憶力がよい = 頭がよい” わけではない!」と断言するのは、精神科医の泉谷閑示氏。本来、人間の頭には「考える仕組み」が備わっているのに、現代社会では記憶力のほうが評価されてきたため、応用力のない人が増えたと言います。

また日本屈指の名門校、麻布中学校・高等学校校長の平秀明氏も、「情報をうのみにせず、自らの頭で考えよ」と、生徒たちに繰り返し話しているとのこと。複雑な問題を解決する際には、自ら情報を集め、考え、判断し、そして行動をしなければいけません。答えのない未来に備えるために、考える力の重要性はこれからますます増してくると言えるでしょう。

「考える力」をアップさせるコツ

■「どうして?」と聞かれたら「どうしてだろう?」と答える

子どもの「どうして?」は考える力をアップさせるチャンス。元筑波大学附属小学校副校長・田中博史氏は、「どうして?」と子どもに聞かれたら「どうしてだろうね」と受け止めてから、「そんなこと、考えたこともなかった!」と伝えるのがよいとしています。子どもは、「パパ(ママ)も考えもしなかったことに自分は気がついたんだ」と嬉しい気持ちになり、ますます知的好奇心が高まっていくそうですよ。そして、親は必ずしも正解を教えなくてOK。一緒に考えてあげればいいのです。

■子どもには「自分で決める」という経験をさせる

また田中氏は、考える力をつけるためには「自分で決める」という経験が大切だとしています。なぜならば、自分で決めようとすれば、自然と考えることになるから。子ども自身が「どれにしよう」「どっちがいいかな」と選択する機会を、たくさん与えてあげてください。そして子どもが選び終わったときに、「どうして?」と聞いてみましょう。すると「なぜ選んだのか?」を子どもはあらためて考えることになるのです。

未来に必要な4つの力2

将来活躍するために必要な力2:「協働力」

今後はグローバル化が一層進み、多様な人々と生きていくことになるでしょう。そのような世界で必要となるのは「協働力」です。千葉大学教育学部附属小学校教諭の松尾英明氏によると、「協働力」は単なるコミュニケーション力ではなく「自分の特質を生かしながら、さまざまな個性や能力をもつ人と一緒に、同じ目標に向かって力を合わせることができるスキル」とのこと。

松尾氏はまた、「苦手なことで困っていれば、それが得意な誰かに助けてもらえばいい。逆に、自分が得意なことで困っている人がいれば、自分が助けてあげればいい」と話し、異なるスキルをもった人間同士が力を合わせることこそが大切だとしています。

「協働力」をアップさせるコツ

■家庭のルールを決めて、家族全員で守る

「全米最優秀女子高生」の母であり、非認知能力育成ライフコーチとして活躍するボーク重子氏は、「家庭のルールを決めて、家族全員で守ること」が子どもの協働力アップにつながると話しています。家族といえども、別々の人間。子どもは一番身近なチームである家族のなかで協働力を育むのです。ルールは、「靴ひもは自分で結ぶ」「日曜日に朝食をつくる」など何でもOK。「あなたは家族のためにどういうことができる?」と子どもに聞いて、子ども主導でルールを決めさせましょう。

■子どもにキャンプなどの自然体験をさせる

キャンプなどの自然体験で「協働力」が育まれると言うのは、独立行政法人国立青少年教育振興機構 元理事長の鈴木みゆき氏。そして、できれば “家族以外” との体験が望ましいのだそう。初めて会った友だちと協力して何かをやり遂げたり、年齢の違う子ども同士で作業したりなど、自然体験やキャンプは協働力をアップさせる機会が盛りだくさんです。ひとりでの参加が難しいお子さまであれば、ほかの親子とのキャンプなどから始めてみてはいかがでしょう。

未来に必要な4つの力3

将来活躍するために必要な力3:「やり抜く力(GRIT)」

『脳科学的に正しい一流の子育てQ&A』著者で脳科学者の西剛志氏は、つまずいても立ち上がることができる「折れない心」と、何度でもトライし続ける「粘り強さ」――つまり、「やり抜く力(GRIT)」がなければ、将来的にしっかり生きていくことはできないと述べています。人生に挫折はつきものですから、そのつど落ち込んでいては先には進めません。

また「やり抜く力」を提唱しているアメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース氏の研究では、「やり抜く力にIQや才能は関係ない、この能力は先天的なものではなく、後天的に誰でも得ることができる」ということが明らかにされています。ぜひ今日から、子どもの「やり抜く力」を鍛えていきましょう。

「やり抜く力(GRIT)」をアップさせるコツ

■子どものチャレンジをほめちぎる!

西氏、ダックワース氏の両者とも、「子どものチャレンジに対して、しっかりほめることが大切」と述べています。結果はともかくとして、チャレンジした行動力をとにかくほめちぎるのだそうです。このほめ方は、特に慎重派の子どもには効果が高いとのこと。もし望んでいた結果ではなかったとしても、「もう少し時間をかけてやってみよう」「〇〇ちゃんの努力はすばらしいね」など、子どもが「よし、もう一度頑張ってみよう」と思えるような声かけがポイントです。

■「好きなこと」をとことん楽しんでもらう

子どもに「好きなこと」「夢中になれること」があれば、やり抜く力は育っています。好きなことなら一生懸命になりますし、そのことについて勉強したり工夫したりするでしょう。注意したいのは、親が「上達させてやろう」と思わないこと。ダックワース氏によると、「その道を極めた達人でさえ、最初は気楽な初心者だった。必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事」とのこと。子どもがとことん楽しむことが先なのです。

未来に必要な4つの力4

将来活躍するために必要な力4:「創造力」

多くの専門家が必要だとする力、それが「創造力」です。『学びを結果に変えるアウトプット大全』著者で精神科医の樺沢紫苑氏は、「AIは『0から1』を考えることはできない。人間に求められるのは『0から1』を創造する力だ」と話していますし、西氏は「知能は高くなくても、創造力がある子どもは成功する」と断言しています。

なぜ「創造力」がこんなにも注目されるのか――その理由は、「すでに確立された手法を知っていたり多くの知識をもっていたりすることの価値が、今後はどんどん下がっていくから」。『16倍速勉強法―「東大」「ハーバード」ダブル合格』著者で “学びのイノベーター” 本山勝寛氏は、そう予測しています。

「創造力」をアップさせるコツ

■どんどん「アウトプット経験」をさせる

創造力は、知識や情報をインプットしたからといって育つものではありません。アウトプット経験を積み重ねることで創造力が育まれます。また、アウトプットする過程で、新たなアイデアが生まれることもあるでしょう。アウトプットの方法は、絵を描く、言葉で説明する、文章を書くなど、何でもOK。本山氏の著書『そうゾウくんとえほんづくり』でオリジナルの絵本をつくってみるのも手です。さまざまなワークをしながら、子どもの好奇心や自由な創造性、発想力を伸ばすことができますよ。

■子どもが「退屈だ!」と感じる時間をつくる

「退屈」を感じたときに、人は創造性を発揮します。そして幼少期にこそ「退屈な時間」が必要なのだそう。イギリスの心理療法家であるアダム・フィリップス氏は、大人は子どもの「興味を探す」ために、いろいろな体験をさせたがるけれど、本当に重要なのは、「退屈」のなかで、子ども自身が「興味のあることを探すために費やす時間」だとしています。スケジュールが詰まりすぎていないか、いま一度確認してみましょう。子どもが「暇だな~」なんて言っていたらしめたもの。創造力、育っていますよ!

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今回挙げた「4つの力」は、「生きる力」となり、未来を切り開くための “エンジン” 。変化の波は着実に押し寄せています。子どもたちの「生きる力」を蓄えるために、できることから、さっそく始めてみましょう。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「大人の愛」と「協働力」が子どもを大人に導いていくーー親以外の人との交流によって広がる子供の視界
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを自立できる人間に育てるーー脳科学者が考える「理想の子育て」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|求められるのは「想像」「創造」「協働」の力。「困っている子」がいてありがたい!?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“AI時代に大活躍”できる子どもの育て方。「アイデア」と「失敗」が必要な理由
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|家のなかに生活感を!子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|過剰な受験勉強よりも大切な、「10歳までに思い切り遊ぶ」という経験
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“考える力”を伸ばす、子どもの「どうして?」と親の「どうして?」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|親の役目は我が子の「自己探究の力」を育むこと。“理想の子ども像”を押し付けてない?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ただの石でも化石に見える」? 自分で新たに生み出す経験が育むイノベーション能力
ボーク重子(2018),『世界最高の子育て』, ダイヤモンド社.
GLOBE+|創造力とは、どこから生まれてくるのか
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Coleman|尾木ママが語る“家族キャンプ”のすごい力
プレジデントオンライン|「点数より粘り強さ」偏差値75超の高校が求める“レジリエンス”が身につく親の習慣
一中通信|「退屈のすすめ」
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