あたまを使う/非認知能力 2025.6.18

困難をしなやかに乗り越えろ! 失敗をチャンスにできる子は「つまずき経験」が豊富だった

困難をしなやかに乗り越えろ! 失敗をチャンスにできる子は「つまずき経験」が豊富だった

子どもが転んで泣いているとき、あなたはどうしますか? すぐに駆け寄って「大丈夫?」と声をかける? それとも、しばらく様子を見守る? じつは、この瞬間の判断が、子どもの将来を左右しているのかもしれません。

「失敗を恐れる子」と「困難を乗り越える力をもつ子」――この違いを生むのは、親の何気ない関わり方だったのです。しなやかに立ち上がる子どもたちの共通点は「豊富なつまずき経験」でした。

予測不能な時代を生き抜くために必要なのは、知識の詰め込みではなく、「困難をしなやかに乗り越える力」。本記事では、脳科学や教育の専門家の知見をもとに、失敗を恐れずチャレンジできる子どもの育て方を具体的に解説します。今日から実践できるヒントで、わが子の「困難を乗り越える力」を育んでいきましょう。

困難を乗り越える力とは? いまなぜ求められているのか

困難を乗り越える力とは、困った状況に直面してもあきらめず、解決策を見つけ出し、自分で考えて立ち直る力のこと。近年、この力の重要性がますます注目されています。

正解のない問いや予測不能な出来事があふれる現代社会において、子どもたちは、学校や社会でさまざまな壁にぶつかる機会が増えています。困難を乗り越える力が備わった子どもは、自己肯定感が高く、自立心も強い傾向がある一方で、この力が不足すると、ちょっとした失敗で心が折れやすくなり、挑戦すること自体を避けがちに。

脳科学者の西剛志氏は「子育ての最終目標は自立できる人間に育てること。そのために困難を乗り越える経験が欠かせない」と語っています。困難から目を背けずに向き合い、乗り越えていける子どもこそが、これからの社会でしなやかに生き抜いていけるのです。

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自立するために「困難を乗り越える経験」が必要【西剛志氏】

「子どもが将来自立して生きていくにはどうすればいいか」――この問いに対して、西氏は「小さな頃から困難を乗り越える経験を積むこと」と明確に答えています。

ただし現代の子育てでは、子どもが困る前に先回りして手を差し伸べてしまうことが少なくありません。わが子への愛情ゆえの行動ではありますが、それによって「困難を乗り越えるチャンス」を奪ってしまっている、と西氏は指摘します。

しかしそれでは、子どもが自らの力で問題を乗り越える経験が不足し、社会に出たときにちょっとしたことですぐに心が折れ、挫折しやすくなるリスクが。困難を前にしても折れにくい、しなやかな心を育てるためには、小さいうちから「つまずく経験」を積ませましょう。たとえ小さなことでも、チャレンジして失敗し、再挑戦する過程が子どもの脳を育て、自立心を育むのです。

また、親は子どもの挑戦に対して、結果よりも努力や勇気をしっかりほめてあげてください。「挑戦すること自体に価値がある」という親の姿勢が、困難を乗り越える力の基礎をつくります。

【困難を乗り越える力の育て方】

  • 小さなチャレンジを日常に取り入れ、失敗を恐れず経験させる
  • 失敗しても「頑張ったね」と努力を認める言葉がけをする
  • 困難に直面したとき、親はすぐに助けすぎず見守る距離感を保つ

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親子の距離感に要注意! 自分で立ち上がる力は失敗から学ぶ【田中博史氏】

子どもが困難に立ち向かうためには、「自分でやってみよう」と思える気持ちが欠かせません。その気持ちを育むにあたり、じつは “親との距離感” が大きなカギを握っている、と筑波大学附属小学校で副校長を務めた田中博史氏は指摘します。

田中氏は、「最近は子どもと親の距離が近すぎるケースが目立つ」と苦言を呈したうえで、親が子どもの行動にすぐ口を出したり、困る前に先回りして手助けしてしまったりすると、子どもは「失敗する前に助けてもらえる」と学び、自らチャレンジする機会を逃してしまうと述べています。また、子どもが親の目を意識した結果、「うまくできなければ叱られるかもしれない」「失敗を見られたくない」と感じ、挑戦そのものを避ける傾向もあるのだそう。

だからこそ、親は子どもの挑戦を見守りつつ、失敗したときに手を差し伸べる適切な距離をとることが必要なのです。重要なのは、うまくいかなくても「よくやったね」と声をかけ、次につながる経験として受け止めてあげること。親が過干渉にならず、子どもが自ら挑戦する自由を与えることで、困難を乗り越える力が自然と育まれるでしょう。

【困難を乗り越える力の育て方】

  • 親は「先回り」せず、子どもが自分で考える時間を大切にする
  • 失敗しても「自分で立ち上がる力」を促す声かけをする
  • 「結果より挑戦の過程」を評価する習慣を家庭でつくる

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失敗をチャンスに! 子どもの試行錯誤力を伸ばす声かけと環境づくり【中曽根陽子氏】

「わが子にはつらい思いをさせたくない」「できれば失敗せずに、スムーズな人生を歩んでほしい」――そう願うのは親として自然なことです。しかしその思いが過ぎると、子どもが「困難を乗り越える力」を育むチャンスを奪ってしまうかもしれません。

教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、「失敗させたくない」という気持ちの裏側には、親自身の “安心したい” という感情が潜んでいると指摘します。先行き不透明な時代だからこそ、「せめてわが子だけは安全で順調であってほしい」と願うあまり、失敗の芽を先回りして摘んでしまう行動。これは、親の自己防衛であることも少なくないのです。

親が子どもの失敗を過剰に恐れ、すぐ手を差し伸べることで、子どもは失敗の経験を通じた学びの機会を失ってしまいます。思い通りにいかなかった出来事にこそ、工夫する力やあきらめない力、人との関わり方など、生きていくうえでの学びがあるということは、親自身も経験から学んでいるはず。

親がすべきは「失敗を避けること」ではなく、「失敗しても大丈夫」と伝えること。小さな失敗の積み重ねが、「あのときも大丈夫だったから、今回もきっと大丈夫」と、困難を前にしたときの心の土台になります。

【困難を乗り越える力の育て方】

  • 失敗を過度に恐れず、自然に経験させる姿勢をもつ
  • 問題が起きたら親はサポート役に徹し、子ども自身の解決力を促す
  • 親自身の気持ちを振り返り、「安心したいだけではないか」と自問する

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親子の対話が未来を変える! 一緒に考える時間の効果とは【宍戸洲美氏】

子どもの友だち関係がうまくいくかどうか、いつも気を揉んでいる保護者の方も多いのではないでしょうか。ですが、養護教諭として長年子どもたちと向き合ってきた宍戸洲美氏は、「親が心配しすぎるあまりに、子どもの力を見誤ってしまっているケースが多い」と指摘します。

じつは親の方が、新しい環境や子どもの友だち関係に不安を感じやすく、子ども自身は意外と自分なりの距離感をとって問題を乗り越えていることが多いのです。宍戸氏は、「子どもは、思っているよりずっとしなやかに困難を乗り越える力を持っている」と強調します。

特に人間関係のトラブルは、子どもが社会性を学ぶ絶好の機会。友だちとの行き違いやケンカを経験することで、「どう言えば気持ちが伝わるか」「どこまで踏み込んでよいか」といった “人と付き合う力” を少しずつ身につけていくのです。

親ができることは、子どもと「友だちとの付き合い方のルール」を一緒に考えたり、家庭でのふるまいを通して人との接し方を教えたりすること。決して、「あの子とは遊ばないで」と親が友だち関係を制限するようなことはしないようにしましょう。親が「子どもを信じる力」を持つことが、子どもの “困難を乗り越える力” の育成につながるのです。

【困難を乗り越える力の育て方】

  • 学校や友だち関係での困難を経験させ、子どもの自立心を育てる
  • 家庭で友だち付き合いのルールを話し合い、子どもに自分の言葉で伝えさせる
  • 親も人間関係のあり方を見直し、模範となるコミュニケーションを心がける

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よくある質問(FAQ)|困難を乗り越える力の育て方

Q1. 「困難を乗り越える力」と「レジリエンス」の違いは何ですか?


A. 「レジリエンス」は、失敗やストレスから立ち直る “回復力” を中心とする概念です。一方、「困難を乗り越える力」は、課題に対処し、最後まであきらめずに解決しようとする “対応力・行動力” までを含む、より広い視点の力といえるでしょう。

Q2. うちの子はすぐあきらめてしまいます。どうすれば粘り強さを育てられますか?


A. まずは小さな成功体験を積み重ねることが大切です。できたときは大げさなくらいほめて、本人の「やればできる」という感覚を育てましょう。また、「最後まで頑張ったね」など過程を認める言葉がけも効果的です。

Q3. 子どもがつらそうなとき、手助けすべきか迷います。どのように見守ればいいのでしょう?


A. 手を出す前に、「どうしたい?」「何か手伝ってほしいことある?」と、まずは子どもの気持ちを尊重する声かけをしましょう。助けるのではなく “寄り添う姿勢” が、子どもの考える力と乗り越える力を育てます。

Q4. 親自身が心配性で、どうしても先回りしてしまいます……。


A. 「心配=悪」ではありませんが、子どものためと思ってやっていることが「安心したい自分」のためになっていないか、一度立ち止まって見つめ直すことが大切です。子どもへの信頼が、親の心配を手放す第一歩です。

Q5. 子どもの「困難を乗り越える力」は、いつからでも育てられますか?


A. もちろんです。幼少期から育てていくのが理想ではありますが、小学生以降でも十分に間に合います。むしろ年齢が上がるほど、子ども自身の考えを尊重しながら、対話を通じて力を育てていくチャンスが増えていきます。

***
困難を乗り越える力は、子どもの自立や成長に欠かせない大切な力です。親は子どもと適切な距離感を保ちつつ、挑戦を見守り、失敗から学ぶ機会を大切にしましょう。こうした積み重ねが、将来どんな困難にも立ち向かえる子どもを育てるのです。親のサポートと信頼が、子どもの「困難を乗り越える力」をしっかりと支えます。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを自立できる人間に育てるーー脳科学者が考える「理想の子育て」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|任せて、失敗させて、考える。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎
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