教育を考える 2019.12.9

家のなかに生活感を! 子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること

家のなかに生活感を! 子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること

人生の成功モデルが多様化し、「答えがない」ともいわれる時代には、「創造力」が大切だとされています。では、子どもの創造力を伸ばすために親ができることとはなんでしょうか。著書の『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)で注目を集める脳科学者・西剛志先生によると、「家のなかに生活感を残す」ことだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/和知明(インタビューカットのみ)

知能は高くなくとも創造力がある子どもは成功する

人生において成功をつかむためには、「知能」と「創造力」のどちらが大切なものでしょうか? その答えを探る研究がアメリカでされています。その研究では、子どもたちを下記の4つのグループに分けて、追跡調査を行いました。

  1. 「知能と創造力のどちらも高い」
  2. 「知能は高いが、創造力は低い」
  3. 「知能は低いが、創造力は高い」
  4. 「知能と創造力のどちらも低い」

結果はどんなものだったかというと、「1.どちらも高い」「4.どちらも低い」子どもについては想像しやすいかもしれません。もちろん、1は多くの子どもが社会的な成功をつかみ、4はその逆の結果となりました。

しかし、大きな差が出たのが、「2.知能は高いが、創造力は低い」「3.知能は低いが、創造力は高い」子どもです。2のグループは、知能が高いにもかかわらず、意外なほどごくふつうの生活をしているケースがほとんどでした。一方、3の知能はそれほど高くなくとも創造力が高い子どもは、それぞれの得意分野でしっかり活躍しているケースが多かったのです。

ただ、このようなデータを見るまでもなく、これからの時代には創造力が大切になることは容易に想像できるのではないでしょうか。よくいわれるように、AIの発達によって、処理的なルーチンワークのような仕事はどんどん人の手から離れていきます。すると、人間はAIにはできない仕事をしなければならない。それこそ、新しいものを生み出す創造力を生かした仕事こそが、人間にしかできない仕事なのです。

「新しいものを生み出す」ことは、「問いかける力」に比例します。これまで人類は、文明を生み出すときに必ず「どうしたら世の中がよくなるのか? どんなものがあれば、わたしたちはもっと幸せになるのか?」と、さまざまな発想を膨らませて問いかけを行なってきました。AIは過去のデータの分析はできますが、未来を想像して問いかけを行うことはできないのです。

西インタビュー1-2

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知能が高いというだけでは社会で活躍できない理由

話は戻りますが、そうはいっても、「知能が高ければ、活躍できるのではないか?」と多くの方が考えるかもしれません。先の3のグループとはちがった場面では活躍できそうなものです。もちろん、成功するケースも一部あるのですが、実際には多くがそうなりにくいことがわかっています。これにはさまざまな要因が考えられます。

ひとつは、「小さい頃からもてはやされる」ことがあります。みなさんが子どもの頃にも、神童と呼ばれるような同級生がいたはずです。そのまましっかり勉強して社会的成功をつかむケースもありますが、「あなたは頭がいい」と周囲からもてはやされたために、努力をしなくなるということもあり得るわけです。

あるいは、知能が高いがゆえに、リスクを冒さない「安定志向を持ってしまう」ということも要因として考えられるでしょう。先々のことを予測しすぎて、リスクを伴うチャレンジをしないのです。すると、安定した人生を歩むことはできるかもしれませんが、突き抜けた活躍をするような人間になることはできません。

また、「IQが高いほどコミュニケーションが下手になる」というデータもあります。先の安定志向と通じるものですが、相手が考えていることが聞く前からわかってしまったり、自分のいいたいことを相手にいっても理解してもらえないだろうなんて考えてしまったりするため、コミュニケーションを取らなくなるのです。

もちろん、そういう人間は社会でうまく生きていくことが難しくなるでしょう。誰とも会うことのないような孤高の研究者のようになるならともかく、ほとんどの仕事には人間関係が不可欠なのですからね。

西インタビュー1-3

創造力を伸ばすためには、おもちゃの与えすぎはNG!

そういう話を前提に考えた場合、親なら子どもの創造力を伸ばしてあげたいものです。そのためになにをすべきでしょうか。わたしからはまず、家にある程度の生活感を残すことをおすすめします

「断捨離」や「ミニマリスト」が注目されているいま、家のなかの日用品などを見えないところに隠し、生活感のないすっきりした空間をつくっている家庭もあると思います。でも、なんの材料もないところからなにかを生み出すことはできません。きれいなことはすばらしいことですが、過度にきれいな(なにもない)部屋というのは、子どもの創造力を奪ってしまう可能性があります。

ただ、このとき気をつけてほしいのは、「おもちゃを与えすぎることは避けてほしい」ということ。いまは子どもの数が少ないこともあって、ひとりの子どもに対して親や祖父母がとにかくたくさんのおもちゃを与える傾向にあります。すると、子どもはおもちゃで遊ぶことに忙しくなってしまい、自由で暇な時間がなくなってしまうのです。

みなさんが子どもだった頃を思い出してみてください。わたしはいま44歳ですが、子どもの頃には欲しいものもなかなか買ってもらえませんでした。鉄砲のおもちゃが欲しくても買ってもらえない。だから、割り箸や輪ゴムを使って自分でつくる。さらに、もっと面白くするにはどうすればいいかと工夫をする。ものが少なく自由な時間があったからこそ、自分で工夫するという発想が湧いてきます。「不便さは創造力の母」ともいわれますが、ものがない時代というのは、じつはわたしたちの創造力を磨くための大切な時間だったのです。

西インタビュー1-1

脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A
西剛志 著/ダイヤモンド社(2019)
西インタビュー本

■ 脳科学者・西剛志先生インタビュー一覧
第1回:家のなかに生活感を! 子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること
第2回:お手伝いで子どもの「自制心」が育つ“脳科学的メカニズム”
第3回:集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?
第4回:子どもを自立できる人間に育てる――脳科学者が考える「理想の子育て」

【プロフィール】
西剛志(にし・たけゆき)
1975年4月8日、鹿児島県出身。脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、(一財)知的財産研究所に入所。2003年に特許庁入庁。大学非常勤講師を兼任しながら、書籍出版、雑誌掲載、ノーベル賞受賞者との対談、世界旅行、結婚、当時日本に1100人しかいない難病の克服など、多くの夢を実現。その自身の夢をかなえてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、いい人生を歩むための脳科学的ノウハウを企業や個人向けに提供するT&Rセルフイメージデザインを2008年に設立。現在は、脳科学を生かした子育ての研究も行う。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。