教育を考える 2019.11.11

目指すは『ONE PIECE』のルフィ!? AI時代に大活躍できる子どもの育て方

編集部
目指すは『ONE PIECE』のルフィ!? AI時代に大活躍できる子どもの育て方

テクノロジーの進化が目覚ましい昨今。「AIに仕事を奪われるのでは」と、子どもの将来を気にかける方も多いでしょう。これからの時代に活躍する子どもを育てるには、どんなことを心がけるべきか。

著書『学びを結果に変える アウトプット大全』『学び効率が最大化する インプット大全』がシリーズ累計55万部を突破した精神科医の樺沢紫苑先生と、児童の自主性を引き出す授業がメディアで話題の「ぬまっち先生」こと沼田晶弘先生による対談で、その真理に迫ります。

AI時代に必要な2つの力

樺沢先生:
テレビなどでは未来に関してネガティブな情報が多いですが、私は令和という時代は「チャンスの多い時代」だと思っています。現代はネットもあるし、海外にだっていつでも行ける。テクノロジーの進化によりできることはもっと増えますから、アイデアやパッションのある人ほどチャンスが巡ってくるでしょう。そのぶん、「いい成績をとっていい会社に入れば安泰」という時代は終わり。AIやロボットなどのテクノロジーを使いこなし、それらには備わっていない人間ならではの能力をいかに伸ばすかが重要になってきます。

沼田先生:
僕もAIには肯定的。AIは「過去軸の神」なので、昔のことは全部AIに記憶していてもらって、人間はそれを参照するだけでいい。その代わり、AIが教えてくれない未来のことを考えるのが僕たちの役割になります。これからの時代は、漫画でいえば『ONE PIECE』。従来の少年漫画のように主役がいちばん強いのではなく、AIを含めいろんな得意分野をもつ人たちを味方につけて戦っていく。そんなやり方が主流になっていくと思います。

樺沢先生:
私もそう思います。最強ではないルフィが、さまざまな専門性をもった仲間と協力し合うことで強くなっていくように、優秀な個人がいい会社に入って出世する時代から、チームや仲間で新しいことに挑戦する時代になる。それによりAIにはつくれないものをつくり出したり、あるいはAI自体を仲間にすることでさらに新しいものを生み出したりすることができるようになります。

そのために必要なのが「創造性」「協調性」。当面のAIには「0から1を考える」ことはできませんから、チームで各々の専門性をいかして0から1を創造する力が問われてくると思います。

創造性を磨くには、アウトプット型の勉強や仕事をすること。私の定義ではインプット「読む」「聞く」「見る」で、先生の話を聞くだけの授業や指示されたことをやるだけの仕事はインプット型。対してアウトプット「話す」「書く」「行動する」で、ディベートやプレゼンを取り入れた授業や、自ら企画したり指示されたことに対してプラスアルファで提案したりする仕事をアウトプット型と呼びます。子どものうちはまず、思っていることを話す、書くといったアウトプットのトレーニングをすることが大切です。

沼田先生:
我が子への愛情が強いあまり、子どもがアウトプットするチャンスを「お世話」で摘んでしまうことがよくあると思います。たとえばお皿洗いを任せたときに、流しから水がこぼれていたとしましょう。親が先にそこに気づいて指摘したり床を拭いてあげたりすると、子どもにとっては「水をこぼさずにお皿洗いできた」という疑似体験になってしまいます。水浸しの床に気づいて拭くところまでやらせなければ、自分で考えて行動する経験は積めません

僕は、漢字テストの丸つけは採点チームの児童たちにやってもらっています。すると、その子たちの点数がガンガン上がり、ほかの子たちもチームに入りたがるようになりました。掃除の時間も、みんなが自ら「教室をきれいにしたい」と思って行動しなければ意味がないので、手伝ったり指示を出したりはしません。その代わり、誰かに教室を褒められたら「子どもたちがやってくれているから」ときちんと言うようにしています

樺沢先生:
協調性を磨くには仲間をつくることが重要ですが、仲間をつくる秘訣は「旗を上げる」こと。自分のやりたいことやビジョンを発信し、興味のある人に集まってもらうのです。大半の人は他人がつくったグループに入ろうとして戦々恐々としますが、自分中心に円を描いて仲間をつくることで自主性も養われるでしょう。

沼田先生:
僕は、「これが苦手なので助けてください」と素直に言うことが大切だと思います。苦手であることは悪いことではありません。ヘルプを出すことで自分とは違う得意分野をもつ人が集まりやすく、リアルな「ありがとう」も言えるようになるので、チームの協調性が磨かれて強くなっていきます。

長所を伸ばす? 短所を克服する?

樺沢先生:
私にもし子どもがいたら、趣味を全力で応援したいなと思います。5分と椅子に座っていられない子どもが勉強できないように、また、練習を続けられないスポーツ選手が上達しないように、能力を最大限に伸ばすには「集中力」が必須。子どもの集中力がもっとも高まるのは、好きな趣味に打ち込んでいるときです。

「ごはんができたからすぐ来なさい」と集中力を中断させるのはよくありません。人間の集中力が持続するのは15分・45分・90分で、子どもの場合はだいたい15分ごとなので、飽きてきた瞬間をねらって声をかけるのがおすすめです。

沼田先生:
ただ、どんなに集中していても時間が来たら切らないといけないのが学校。僕のクラスでは、休み時間や掃除時間に音楽をかけて、集中する時間を音楽でコントロールしています。計算トレーニング中にF1テーマ曲の『TRUTH』をかけるとスピードアップしたりするんですよ(笑)。

テレビでよく取り上げてもらっている「ダンシング掃除」は、「面倒がられる」「時間どおりにやってくれない」といった課題を解決するために掃除をゲーム化したもの。給食を終えてから3曲7分間を掃除の時間に設定し、その間に踊らなければいけないパートを2回つくりました。最初はやりたがる子もやりたがらない子もいますが、次第に楽しんでやってくれるようになります。

樺沢先生:
沼田先生の著書を2冊読みましたが、「楽しいクラスだな」と思いました。楽しいときはドーパミンという物質が出て、モチベーションや幸福感が高まり、記憶力も向上します。反対に、嫌々やっているとストレスホルモンが分泌され、モチベーションも記憶力も低下します。子どもは楽しいことは自発的にどんどんやりますから、いかに楽しい場をつくってあげるかが重要だと思います。

お受験や習いごとについて悩む親御さんも多いと思いますが、大切なのは嫌々やらせるのではなく楽しんでできるように巻き込んでいくこと。私は、子どものうちに才能の有無を見極めるのは難しいと思っていますが、好きか嫌いか、楽しんでいるかそうでないかは見ていてわかるはずです。

人間の成長パターンには「長所伸展」「短所克服」があり、子どもの場合は長所伸展から入るといいと思います。長所を応援して伸ばしてあげることで自信がつき、自己肯定感が高まり、ほかのことにもチャレンジしやすくなるからです。

沼田先生:
私も子どもがいませんが、児童を見ていて「才能があるかないか」はなんとなく感じます。たとえば、走る才能のある子は何もしなくても速い。その才能をオリンピックに行けるところまで磨けるかはまた別の話ですが。

長所伸展は確かに効果があります。以前、ある児童が電車のアナウンスを完コピしていて、すごい特技だなと思ったので褒めたんです。英語の部分が耳コピで微妙に違ったので、正しい単語も教えてみました。すると、それまで提出物を出さなかったり字が雑だったりした彼がやる気を見せ始め、英語の勉強も始めたと教えてくれて。長所をひとつ見つけて認めてあげると、ほかの部分もどんどん伸びてくるんだなと実感しました。

一方で、小学校では苦手な教科も平均まで伸ばす必要があります。つまり長所伸展と同時に短所克服もしなければなりません。子どもとの信頼関係がまだ薄いときは「褒める」、でも関係性が構築されてきてからは「できていないところを少し叱る」と意外と喜ぶので、「叱る」を効果的に使うといいと思います。

スマホとの上手な付き合い方

樺沢先生:
スマホゲームやYouTubeに熱中するお子さんに頭を悩ませる方も多いでしょう。一度ハマってしまったあとにやめさせるのは至難の業ですが、ポイントは「スマホより楽しいことがある」と体感してもらうこと。いちばんいいのは外に連れ出して自然の中で遊ばせることですが、相手の心理を読みながら進めるボードゲームなどもいいと思います。

スマホが悪なのではありません。子どもも大人も、スマホをインプットツールとして使うからおかしなことになります。ネットサーフィンやゲームでいつの間にか時間が潰れているのはインプット型の使い方。私はスマホの95%以上を、SNS投稿やそこで使う写真撮影などアウトプットのために使っています。

テレビやネットには誤った情報も流れてきますから、正しい知識を得るなら読書をおすすめします。子どもだけでなく、子どもを教育する親や大人もまた、スマホとの付き合い方を見直さなくてはいけません。

沼田先生:
僕はほとんど本を読まなくて、主な情報源はテレビとネットニュース(笑)。ただ、情報を鵜呑みにしたり踊らされたりすることはないです。朝にクラスでニュースのディスカッション時間を設けているので、そのアウトプットを前提にインプットしている感じかもしれません。

樺沢先生:
アウトプットありきでインプットするのは、いいインプットの方法です。近年、アメリカ発祥の「STEAM教育」(Science/科学、Technology/技術、Engineering/ものづくり、Art/芸術、Mathematics/数学の5領域を重視する教育方針)が日本でも話題ですが、なかでもアートは創造力を養ううえで注目されています。落合陽一さんやチームラボは、アートとテクノロジーを融合している代表例。

私も美術館が好きで、樺沢塾というコミュニティのみんなで定期的に美術館に行きます。そのあと必ず行なうのが、ひとりの持ち時間を決めて感想を述べ合うこと。感情を動かすような非言語的なものを言葉で説明するのは難しいですが、それを言語化するトレーニングを積むことで自己洞察自己分析につながり、頭に漠然としたアイデアが浮かんだときも人に説明できるようになります。

私は子どもの頃から映画バカで、小学生の頃は憧れていた映画評論家のコメントを録音して構成を分析したりしていました。いまでも続けている映画の感想のアウトプットは高校時代から。大学の6年間は映画館に通い詰め、年間200本の映画を観ては感想を書いていました。自分の考えが文章になっていくのは楽しい。いまも本を書いている瞬間がとても楽しいです。私のように、好きな分野でアウトプットのトレーニングを積むのは非常におすすめです。

反対に人とのコミュニケーションが苦手だったので、精神科医になって猛勉強するようになりました。苦手だったからこそ分析やノウハウ化をして、本まで書けるようになったのですから、自発的な短所克服はプラスになることが多いと思います。

沼田先生:
僕の子ども時代は、学校を抜け出して怒られたりトラブルを起こしたりたくさん失敗しましたが、長期的に見れば失敗だったと思うことはひとつもありませんあのとき試行錯誤して乗り越えたからこそ、いまがあるのだと思えます。

だからクラスの子どもたちにも、PDCAをまわすことの大切さを教えています。世の中にはDだけ繰り返す「Dルーパー」や、都合の悪い部分はチェックしない「フェイクC」の人が多いですが、「ディープC」までたどり着けばものすごいAにつながります。

樺沢先生:
今後テクノロジーの進歩が急激に速まれば、今までの考え方や常識が通用しなくなります。そうなったときに重要なのは、トライアンドエラーをしながら適応していく臨機応変さ子どもがなにかやってみたいと言い出したときも試しにやってみせて、夢中になりそうであれば全力で応援してあげてほしいと思います。

【プロフィール】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
1965年生まれ、北海道出身。精神科医、作家、映画評論家。1991年、札幌医科大学医学部卒業後、札幌医大神経精神医学講座に入局。北海道内8病院への勤務を経て2004年からイリノイ大学に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。メンタル疾患の予防を目的に、インターネット媒体を駆使して精神医学、心理学、脳科学の知識・情報の発信を続ける。

学びを結果に変えるアウトプット大全
樺沢紫苑 著/サンクチュアリ出版(2018)

学び効率が最大化するインプット大全
樺沢紫苑 著/サンクチュアリ出版(2019)

【プロフィール】
沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)
1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。

家でできる「自信が持てる子」の育て方
沼田晶弘 著/あさ出版(2018)