2020.3.6

クラス替えに担任変更。環境の変化が心配――大丈夫。子どもの適応力を信じましょう!

宍戸 洲美
クラス替えに担任変更。環境の変化が心配――大丈夫。子どもの適応力を信じましょう!

新たな学年に向けて1年間のまとめをする時期になりました。いよいよこの1年が終わりますね。お子さんにとってどんな年だったでしょうか?

1年を振り返っていただく前に、皆さんにひとつ質問があります。「子どもと大人の違い」とは何だと思いますか?

答えは「発達途上か、そうでないか」です。子どもの特徴は、“心身ともに発育・発達していく存在である”ということ。どんなに病気や障害があっても、「その子なりに」「その子らしく」成長しているのです。

大人はどうしても、周りと比べたり平均値を気にしたりして、「自分の子どもに足りないこと」を探しがちです。しかし大切なのは、子どもがどれだけ成長したかをしっかりとらえてあげること。「いつまでも逆上がりができない」「九九も間違えるし」と“できないこと探し”をするのではなく、昨年と比べて“できるようになったこと探し”をしてみませんか? 親子で話し合ってみれば、きっと親が気付かなかったこともたくさん出てくると思います。それを「すごいね!」と褒めてあげてください。

進級を控えた子どもの心のケア02

子どもは意外と「乗り越える力」を持っている

1年を振り返ると子どもの成長を嬉しく感じる反面、環境の変わり目となるこの時期は、親御さんにとって特に心配事が多いものですよね。進級前だからこそ不安になりやすいことについて、いくつかアドバイスをさせていただきます。

【親御さんからの質問 1】

子ども以上に、親である自分のほうが新しいクラスへの不安を感じています。毎年クラス替えがあり担任も変わるので、「次はどんな先生になるのだろう」と気になるし、「〇〇先生にまた担任になってほしいよね」とか「若い先生はちょっとね~」などと子どもの前で言ってしまうことも。「いいクラス・先生でありますように」と祈る気持ちでいるのですが、子どもにもこの不安が伝わるのは、やっぱり良くないでしょうか?

1年は早いもので、やっとクラスの友だちや担任の先生に慣れたと思ったら、もう新学期がやって来ます。今度は誰と一緒のクラスになるのか、どんな先生が担任になるのか、それは気になりますね。

学校では多くの場合、校長先生やそれまで担任だった先生たちが集まってクラス編成会議を開き、新たな担任を誰にするか決めたり、子どもたちのクラス分けを行なったりします。子ども全員をトータルに見てできるだけ偏りがないように決めますので、今まで親しかった子同士が離れてしまうこともあるかもしれません。

新学期が始まってすぐの時期は、前のクラスの友だちと遊んでいる子もいます。ですが、2月号『気になる我が子の「友だち」問題。親は介入してもいい? 嘘つきな友だちへの対処法は?』でもお伝えしたように、子どもはクラスが変わっても、席が隣になったり、勉強のグループが一緒になったりすることで、次第に新しい友だちを作っていくもの。学校で子どもたちのそんな様子を見ていると、「子どもって、大人が考えている以上にすごいな!」と感心させられます。

これは、担任に対しても同じです。担任が変わると、「これまでずっと女の先生だったのに、初めて男の先生になってしまった」とか、「これまではベテランの先生だったのに、今度は新任の先生なんだ」などと、いろいろ戸惑いがあるでしょう。「先生との相性がいいか、悪いか」も心配になりますね。でもこうしたことは親のほうが気にしているもので、子どもは意外に乗り越える力を持っていて、子どもなりの距離感をとって過ごしています。長い人生の中で、この経験はとても大切なんですよ。

ですから、親は子どもの前で担任を悪く言わないこと。もし気になることがある場合は、担任に直接話すか、校長先生や教頭先生に相談するといいでしょう。

子どもの中には、環境の変化に慣れるのに時間がかかる子もいますが、家庭が落ち着いていて安心できる場所であれば、必ず乗り越えていきます。親御さんは、学校の変化に一喜一憂するよりも、「子どもが家に帰ったらホッとできる家庭づくり」を心がけましょう。

進級を控えた子どもの心のケア03

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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いつも「完璧」を求めない。少し「いい加減」になろう

【親御さんからの質問 2】

親に言われないと学校の用意をしないときや、連絡帳に書いてあるはずの宿題をやろうとしないとき、つい「もう〇年生になるんだよ? このままで良いと思う?」などと言ってしまいます。いつまでも小さい子ではないのだから、親としてはもっと自分で気づいて行動してほしい。でも、発破をかけたらかえってプレッシャーになってしまいますか? 成長途上にある子どもにどう声をかけたらいいのか、いつも悩みます。

子どもには、子どもの思いや都合があるものです。とは言え、子どもがやるべきことをやらない様子に、いつまでも目をつぶっているわけにもいきませんよね。ですから、年度初めにいくつか約束をしておくといいと思います。たとえば「遊ぶのは、宿題をすませてから」「時間割は必ず前日に整えておく」などの決まりを作り、それを習慣化するのです。

でも、いつも決めたとおりにやれないのが子どもの特徴でもあります。たまには「今日はお母さんが手伝ってあげる日(スペシャルサービスデー)」があってもいいでしょう。親も子どもも少し「いい加減」な部分があってもいいのです。

最近は、何でも決めたとおりにやらせるべきと考える親や、どんなことも頑張らなくてはいけないと考える子どもが増えているようです。でも、「〇〇をしなければならない」というプレッシャーを背負った子は、いつしか自分の力量を超えてまで頑張ろうとしてしまい、息切れしてしまうおそれがあります。頑張って頑張って無理をしすぎると、学校へ行くためのエネルギーが切れてしまうこともあるのです。(参照:9月号『夏休み明けに「不登校」が増えるのはなぜ? 親が知っておくべき子どものSOSサインと対処法

宿題も時間割も、たまには忘れていくこともありですよ。「忘れたときには自分が困る」という体験も貴重です。1・2年生では少し親が手伝いながら宿題をやらせたり時間割をそろえたりさせ、3年生以上になったら手はかけないで声かけだけ、というように、子どもの成長に合わせて大人の関わり方を変えていけるといいと思います。

進級を控えた子どもの心のケア04

つまずきのサインは、「豊かな親子の会話」から見出す

【親御さんからの質問 3】

3年生になると6時間授業が増えたり、学習教材が増えたり、勉強が難しくなったりすることを、子ども本人がやけに不安がっています。「あーあ、3年生になるの大変だなぁ……」とため息をつくことも。特に3年生は勉強の面で差がつきやすくなる時期だと聞くので、今からそんなに自信を失っていてはとても心配です。気持ちの揺らぎに早めに気づいてあげたいので、子どもの言動で注意すべき点があれば、教えてください。

「9歳の壁」「10歳の壁」という言葉があるくらい、3年生というのは苦手な科目がでてきやすい時期であることは確かです。勉強面以外でも、自分とほかの子を比べて劣等感を抱くなど心理面での問題を抱えやすいのも、この時期の子どもの特徴と言えます。

そんな子どものつまずきのサインに気づいてあげるために何よりも大切になるのが、豊かな親子の会話です。まずは「学校に行くことが楽しいかどうか」を子どもに聞いてみてください。会話の中で、子どもが学習に関して「わからないから嫌い」とか「つまらない」というような言葉を言ったら、その理由を聞いてあげましょう

12月号『自己肯定感を育む、親子コミュニケーション。「聞いて!」「あとでね」の正解』でも書きましたが、たとえ短い時間でもしっかりと「子どもに心を向けて」、子どもの悩みや気持ちを受け止めてください。「親に何でも受け止めてもらえる」と感じる子どもは、学校の勉強で感じている戸惑いも正直に親に打ち明けるものです。逆に、話を途中で切り上げたり、「なんでそんな簡単な問題を間違えるの!」などと叱ってしまったりするような親は、子どものつまずきにすぐに気づくことはできないでしょう。

そして、子どもがどこでつまずいているのかがわかったら、家庭学習で親が少し手をかけてあげることも必要です。学校公開日などに参加し、授業風景を見て子どもの様子を確認することも大切ですね。また、「寺子屋」とか「放課後補習」といった名前で、授業時間以外で子どもの学習を見てくれる学校もあります。つまずきがあればこれを利用するのもいいでしょう。

親として、子どもの学習面のことは大いに気になるところだと思いますが、小学生の学力を高めるのは机上での勉強だけではありません。多様な生活経験が、学力向上の一端を担うのです。家庭の手伝いをさせたり、休みの日には親子でいろいろなところに出かけて自然や動物と触れ合ったりなどして、体験的に学べる機会を増やすことで、子どものトータルな力が伸びていきますよ。

進級を控えた子どもの心のケア05

子どもたちに「自分は愛されている、大切にされている」という実感を

1年間『まなびの保健だより』を連載させていただきました。皆さんの子育てのヒントになるものはありましたでしょうか。

ここで、連載の初回、4月号でお伝えしたメッセージを改めて書かせていただきます。

しっかり食べる」「たっぷり眠る」「からだを動かして友だちと群れて遊ぶ」「安心して受け止めてくれる大人がいるの4つが家庭で保障されている子どもは、少々のことがあっても十分乗り切ることができます。最近は、この4つが崩れていることが多いのですが、これぞ家庭の役割です。4つのことをしっかり満たしてあげれば、子どもは新たなことに挑戦したり、失敗してもまたチャレンジする意欲を持てたりします。これぞまさに、心身ともに健康に育つための「4大栄養素」と言ってもいいでしょう。

(4月号『親の心配は子どもの負担になる。新学期に大切な「聞く」より「聴く」の実践法』より)

子どもの成長は、本当にひとりひとり違います。周りと比べて一喜一憂するのではなく、我が子の成長を信じて「この子は大丈夫」という信頼の目を子どもにそそぐことがとても大切です。そして、家庭では子どもの成長を支える4大栄養素をたっぷりと供給してあげましょう。

これからの社会は、どのように変化していくのか読めない部分がたくさんあります。でも人間は、「自分は愛されている、大切にされている」という実感があれば、たとえ多くの困難があっても乗り越えることができるもの。家庭の役割で一番大切なことは、この実感を子どもたちに持たせることです。

子どもたちがこれからも、自分らしく元気に育ち、健やかに学べることを、心から願っています。