教育を考える 2020.5.25

自己肯定感が「高い子の親」と「低い子の親」。驚くほど全く違う、それぞれの特徴とは

自己肯定感が「高い子の親」と「低い子の親」。驚くほど全く違う、それぞれの特徴とは

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近年の教育界における重要なキーワードとして「自己肯定感」があります。その解釈や評価は人によってさまざまですが、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは、「自己肯定感は、人間が生きていく力の根幹」だといいます。それだけ重要なものだとすれば、親としては子どもの自己肯定感をしっかりと伸ばしてあげたいものですよね。そのために必要なのは、「親自身が幸せになること」なのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカット)

ありのままの自分を認められる自己肯定感は、生きる力の根幹

「自己肯定感」とは、自分のいいところも悪いところも含めて、「自分はありのままでいいんだ!」と認められる感情のことです。一方、その逆はなにかというと、自分の存在を認められない「自己否定」です。この自己否定の感覚が強くなると、最悪の場合は自ら死を選ぶということにもなりかねません。それだけ自己肯定感は重要な力であり、いわば生きる力の根幹です。

そう思えば、親であれば我が子の自己肯定感をしっかりと高めてあげたいもの。では、自己肯定感が高い子どもの親にはどんな共通点があるのでしょうか? いま、わたしは、自分のやりたいことをしっかり持っている、自己肯定感の高い子どもの親たちへの取材を続けています。

その取材を通じて見えてきたことのひとつとして、自己肯定感の高い子どもの親たちには、子どもに干渉しすぎず、それこそ「子どものありのままを受け止めている」という共通点があることが挙げられます。子どもがやりたいことがなんであれ、まずは認めてあげて、うまくいかないときには、どうすれば実現できるかと一緒に考え、子どもを支援するかたちでの対応をしているのです。

一方、自己肯定感の低い子どもの親に見られる共通点が、「子どもをできない存在としてとらえている」ということでした。そういう親は「子どもは、あらゆることを親が教えてあげなければならない存在」だと思っています。そのため、よかれと思って、自分が正しいと思っていることを押しつけて、子どものやりたいことを否定してしまう。あるいは、他人と比較してダメ出しをしたり、親の望む子ども像を押しつけたりしがちです。それでは、子どもの自己肯定感が育まれるはずもありません。しっかりと子どもを観察し、できるだけ子どものいい面やできた部分を見て励ましてあげてください。

中曽根陽子さんインタビュー_自己肯定感が高い子の親の特徴02

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自己肯定感が高い子どもの親も自己肯定感が高い

また、自己肯定感の高い子どもの親に見られるもうひとつの共通点として、親自身の自己肯定感が高いということも挙げられます。じつは、自己肯定には2種類あります。ひとつが「条件付きの自己肯定感」、もうひとつが「条件のない自己肯定感」です。

条件付きの自己肯定感とは、「誰かと比較して優れている」とか「評価されている」というように、人との比較でもたらされる自己肯定感です。この自己肯定感は、自分より優れている人が現れたり失敗して評価が下がったりすると、途端に自信がなくなって低下してしまうものです。

反対に、条件なしの自己肯定感は、いいところもダメなところもある自分を受け入れられる自己肯定感。「自分はこのままでいい!」「自分は大丈夫!」と感じられれば、たとえうまくいかないことが起こっても、自己肯定感は揺るがず安定しています。

そして、自己肯定感が高い親は、自分の心のコップを、ありのままの自分を受け入れられる自己肯定感という水で満たしているからこそ、子どもの心のコップにも水を注ぐことができるわけです。自分のコップが水で満たされていないのに、子どものコップに水を注ぐことはできませんよね。

中曽根陽子さんインタビュー_自己肯定感が高い子の親の特徴03

そうであるならば、親自身が楽しく幸せな人生を歩むことが大切。しかし、残念ながら、ありのままの自分を肯定できないということはあると思います。それでも、もし自分が真剣にそれを望めば、人は必ず変わることができます。

そのためには、「ポジティブ心理学」というものを学んでみるのもいいかもしれませんね。じつは、ポジティブ心理学については、わたしもいままさに勉強中です。いま、ポジティブ心理学の分野では、それこそ人が幸せになるための方法の研究がどんどん進んでいます。そういった、自分が幸せになる方法を学んで実践するわけです。

ファーストステップとしておすすめするのが、その日にあったよかったことを3つ書き出してみて、なぜそれが起きたのかを考えるということです。これは、マイナスではなくプラスのことに目を向けるレッスンであり、続けていくと幸福度が上がるといわれています。日常のなかの小さな幸せに気づくことができるようになると、自分の心のコップが満たされていくのを感じられるようになります。ぜひやってみてください。

日本人は、どうしてもまわりの目を意識しすぎているように感じます。周囲に気を使うばかりに自分の幸せを感じられなくなっている人も多いのではないでしょうか? 子どもの自己肯定感を高めてあげるためにも、親であるみなさんはもう少し自分の幸せを追求してみてはどうでしょうか。

中曽根陽子さんインタビュー_自己肯定感が高い子の親の特徴04

子育ては「未来をつくる人材の育成プロジェクト」

また、いまの親御さんたちを見ていて強く感じるのは、真面目すぎる面があるということ。先行きが不透明な時代ですから、子どもの将来を思って子育てに力を入れるという感情はもちろん理解できます。でも、不安な気持ちからは、いい結果は得られません。「子どもはきっと大丈夫! なんとかなるさ」と、もう少し気楽に考えていいとも思うのです。

わたしは、子育てとは「未来をつくる人材の育成プロジェクト」なのだと考えています。我が子だから「きちんと育てないといけない」と力が入るわけです。ならば、とらえ方を少し変えてみましょう。「子どもは神様から一時的に預かったたまもので、独り立ちできるように育てて社会に還す」という感覚で子育てをするのです。

「自分のもとにたまたまやってきた子どもは、はたしてどういう人間なのかな?」と考えて、まずは観察してみる。そうして、「こういう性格なのかな」「得意分野はこういうところかな」というふうに見立てをして、その子の強みが生かせるように励ましながら、子どもが自分で決めていけるように支援してほしいのです。

子どもは最終的に親離れしなければなりませんし、親もまた子離れしなければなりません。そのためにも、子どもに自分の人生のすべてを注ぐようなことは避けたほうが賢明です。親であると同時にひとりの人間であるみなさんの人生には、さまざまな出来事があります。子育てという人材育成プロジェクトに携わることは、そのひとつに過ぎません。そういうふうに少し俯瞰して考えることが、子育てに入れ込みすぎることなく、子どもをひとりの人間として認められ、自己肯定感を高めることにもつながるはずです。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界は大きく揺れ動き変化しています。そんな時代に遭遇した子どもたちには、これまで以上に、自分で考え、道を切り開いていく力が必要になってくると思います。ぜひ、失敗を恐れずに挑戦できる力を育んでください。

中曽根陽子さんインタビュー_自己肯定感が高い子の親の特徴05

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中曽根陽子 著/晶文社(2016)
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■ 教育ジャーナリスト・中曽根陽子さん インタビュー記事一覧
第1回:親の役目は我が子の「自己探究の力」を育むこと。“理想の子ども像”を押し付けてない?
第2回:学歴の価値はどう変わる? 「偏差値の高い大学に行く」ことにしがみつく必要は、もうない
第3回:任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎
第4回:自己肯定感が「高い子の親」と「低い子の親」。驚くほど全く違う、それぞれの特徴とは

【プロフィール】
中曽根陽子(なかそね・ようこ)
1958年生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。慶応義塾大学大学院システムデザインマネジメント科ヒューマンラボ研究員。出産のために小学館を退職後、1994年、子育て中の母親たちが子どもと一緒にあそび場をチェックし紹介する『子どもとでかける大阪あそび場ガイド』(メイツ出版)を制作。取材から執筆、イラストまですべてを母親たちの手によって作成した同書は、いまなお改定版を重ねるロングセラーとなり、シリーズ累計50万部超。2004年、女性のネットワークを生かした編集・取材活動を行う情報発信ネットワーク「ワイワイネット」を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュース。2013年、「親を人材育成のプロに」というコンセプトのもと、母親自身が新しい時代をデザインする「マザークエスト」を立ち上げ、アクティブラーニング型のセミナーの開催を中心に活動している。現在は、教育ジャーナリストとして紙媒体からウェブ媒体まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱する。主な著書に『はじめての海外旅行 安心おでかけガイド』(メイツ出版)、『マンガ版 子どもが伸びる! コーチングブック』(合同出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。