子どもが友達に断られて泣いて帰ってきたとき、親としてどう対応していますか? 「かわいそう」という気持ちから、つい先回りして友達との予定を組んであげたくなる──そんな経験はありませんか?
今回こんなご相談が寄せられました。
【お悩み相談】小学2年生の友達関係について:
子供のためにと、子供のお友達と遊ぶ約束を親が先回りして予定を立ててあげることは、子供のためにはあまりよくないとわかっているのにできない、と悩んでいます。
子供が放課後や習い事の後にお友達と遊びたくて誘うと、ほかのお友達との先約があり断られてしまい、落ち込んでしまう、泣いてしまう、ということが何回かありました。それがすごくかわいそうになってしまい、悲しい思いをさせたくなくて、次の休みに誰と遊びたいか私から聞いてそのお友達のママに私から声をかけて予定を立てる、ということをしています。(中略)
わかっているけど心配でどうしても先回りしてしまう、過干渉な自分を直したいです。(小2男児ママ)
この相談者の方と同じように、「子どものためを思って」「悲しい思いをさせたくなくて」先回りしてしまう。わかってるけどやめられない、この過干渉のジレンマに悩む親御さんは少なくありません。
今回は「愛ある保護」と「過干渉」について一緒に考えていきましょう。
監修者プロフィール
元小学校教員
小学校教員・英語専科教員として12年間勤務し、これまでに2,000人以上の子どもたちや教職員への指導に携わってきました。
現在は、教育分野での執筆活動をはじめ、クリエイターやファミリーサポート支援など多方面で活動中です。2児の母として、子育てと仕事の両立に奮闘しています。
ここでは、イギリスやアメリカへの留学経験を通じて学んだペアレンティングの視点や、子どもの自己肯定感を育むアプローチを軸に、日本の家庭でも実践できるヒントを発信しています。
目次
回答:その『かわいそう』は愛情ですが、同時に子どもの力を信じられていないサインかも
友達の誘いに断られたわが子を “かわいそう” と思ってしまうのは当然のことですよね。でも同時にそれは、子どもの力を信じられていないサインかもしれません。
子どもは「うまくいかない経験」から学び、成長します。断られることは失敗ではなく、人との関わり方を学ぶ貴重な機会なのです。くやしい思い→もう一度挑戦→小さな成功というプロセスを経験することで、「自分にもできる」という自己効力感が育まれます。
先回りされすぎた子と、自分で問題を解決してきた子には、生活にも大きな違いがあらわれます。
親が先回りして問題を解決してしまうと、子どもの成長の機会を奪ってしまうのです。「この子にはまだ無理」「ひとりでは解決できない」という気持ちがあるかもしれませんが、小学2年生だからこそ、いまこの『練習』が必要なのです。
小学2年生は、まだまだ友だちをつくる「練習中」
「でも、うちの子はまだ小学2年生。自分で友達関係を築くなんて無理じゃない?」
そう思われるかもしれません。確かに小学2年生は、「自分で誘う→断られる→また誘う」という一連の流れがまだ難しい時期です。恥ずかしさ、不安、傷ついたプライドの揺れが大きく、感情のコントロールも発達途中。でも、だからこそいまが練習の絶好のチャンスなのです。
さらに特に男の子の場合、友達関係は女の子以上にさっぱりしていて流動的。今日は誰かと遊んでいても、明日は別の友達と仲良くなったり、来週にはまた違う子たちとグループをつくったりします。「今日は断られたけど、明日誘ったら一緒に遊べた」「昨日けんかしたけど、今日は普通に話している」といったことがよくあります。
この柔軟性があるからこそ、一度断られても「ほかの子に声をかけてみよう」「今度は違う遊びを提案してみよう」と、様々なアプローチを試すことができるのです。
高学年になると、プライドが高くなり、一度失敗すると「もう誘うのはやめよう」と諦めてしまいがちです。また、友達同士のグループも「いつものメンバー」として固定化され、新しく関係を築くのが難しくなります。
ですので、この時期に大切なのは、小さな「やってみて、失敗して、乗り越える」体験を積み重ねること。子どもは徐々に「断られても大丈夫」「また誘えばいい」「ほかの子に声をかけてみよう」という人間関係のスキルを身につけていきます。2年生の今だからこそ、この貴重な「練習期間」を大切にしてあげたいのです。
親が “関わるべきとき” と、 “見守るほうがいいとき” の違いとは?
「じゃあ、親はまったく手を出さない方がいいの?」そんなふうに感じた方もいらっしゃるかもしれません。でも、もちろんそうではありません。親が関わった方がいい場面も存在します。
子どもの友達関係における親の関わりは、「全部やってあげる」か「完全に放っておく」かの両極ではなく、そのときどきに応じた “ちょうどいい関わり方” を探していくことが大切なのです。つまり、子どもが本当に困っているときに手を差し伸べるのが「愛ある保護」、子どもが自分で解決できることまで先回りしてしまうのが「過干渉」ということです
では、この境界線をどう見極めればよいのでしょうか。親として関わるかどうかを判断するために、こんな3つの問いを自分に投げかけてみてください。
◆子どもが「助けて」と言ってきているか?
子どもが「困っている」「どうしていいかわからない」と助けを求めているなら、話をじっくり聞き、必要なサポートを検討してもよいでしょう。ただし、“助けて” のサインは必ずしも明言されるわけではありません。表情や行動、いつもと違う様子から「今は寄り添ってほしいときかも」と感じたら、それも立派なサインです。
◆子どもひとりでは対処が難しい状況か?
相手から明らかにきつい言葉をかけられている、仲間外れにされている、日常的に断られて落ち込んでいるなど、子どもの社会的スキルでは対応しきれないような場合は、大人の出番です。
ただしその際も、子どもの気持ちを置き去りにして親同士で直接やり取りしてしまうのではなく、子どもが「してほしい」と思っていることを一緒に探すことが大切です。
◆これは「親の不安」を解消したいだけの行動ではないか?
子どもが泣いている姿を見ると、「こんなつらい思いはさせたくない」と思ってしまうのは当然のことです。でも、そのときに自分に問いかけてみてください。
「これは子どものため? それとも自分の安心のため?」
親の不安から動いてしまっているときは、「過干渉」に陥りがちです。いったん立ち止まり、子どもの声を聴く余白をもちましょう。
見守ることで育つ4つの力
では、具体的に子どもにはどんな力を身につけてもらいたいのでしょうか。親が先回りを続せずある程度「見守ること」を大切にすることで、これらの大切な力が育ちます。
1. 【挑戦する力】──「どうする?」と聞かれることで、自分で決めて動く力が育つ
つい「○○ちゃんに声かけてあげようか?」と言いたくなるけれど、まずは「どうしたい?」と子どもに聞いてみる。失敗しても挑戦する”自分でやってみる力”が育ちます。
2. 【立ち直る力】──「うまくいかなかったね」と寄り添われることで、再挑戦する力が育つ
断られて落ち込んだとき、「だから言ったじゃない」ではなく、「残念だったね。でも挑戦してえらかったね」と受け止める。すると「次はどうしよう」と考える土台になります。
3. 【関係を築く力】──「また誘ってみたら?」と信じて任せることで、対人スキルが育つ
誰かとうまくいかなかった経験も、関わり直すチャンス。親が関係修復を先回りせずに見守ることで、子どもは”関係を調整する力”を育てていきます。
4. 【自分を理解する力】──ひとりの時間や気持ちに向き合う中で、内面が育つ
遊べなかった日も、「今日は誰とも遊べなかったね」と一緒に過ごす時間があると、「自分の気持ち」をことばにする習慣がつきます。
子どもは、「全部やってもらうこと」ではなく、「自分でやってみて、受け止めてもらえること」で力を育てていきます。
親の “見守る勇気” が、子どもにとっての一番のサポートになるのです。
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友達に断られて泣いて帰ってきた日も、自分で誘って成功した日も、すべてが子どもの成長の糧となります。
私たち親ができることは、その優しさを「見守る力」に変えていくこと、そして、失敗しても安心して帰ってこられる「心の基地」をつくってあげることです。子どもが「今日はうまくいかなかった」と報告しても、「そうだったのね。でも頑張ったね」と受け止めてくれる場所があること。これこそが、子どもに本当の勇気を与えるのです。
子どもを信じて、ちょっと遠くから見守ってみてくださいね。