子どもが「親や先生の話を聞いてくれない……」そんな悩みを抱えていませんか? じつは多くの親が気づいていない驚きの事実があります。“聞く力” は才能ではなく、家庭での親子のやりとりで確実に伸ばせるスキルだったのです。しかも、ちょっとした声かけの工夫だけで、子どもの反応が劇的に変わることも――。
この聞く力こそが、学力・コミュニケーション力・将来の社会性すべての土台となる超重要スキル。本記事では、教育の専門家たちが実証した「子どもが自然と耳を傾けたくなる」具体的な育て方を大公開します。
目次
「聞く力」がある子は、なぜ伸びる? 学力・人間関係の土台になる理由
子どもが将来、学校や職場で良好な人間関係を築き、活躍するためには、“聞く力” が不可欠です。「『人の話をよく聞ける子』は、学校生活や友だちとの関係、さらには学力の面でも伸びていく」と白梅学園大学教授の増田修治氏が指摘するように、聞く力が育っている子は、先生の話をきちんと理解できるため学びに集中しやすく、友だちとの会話もスムーズ。周囲と信頼関係を築くことができ、自信をもって行動できるようになります。
一方で、「どうせ聞いてもらえない」と感じて育った子どもは、人の話を聞かなくなる傾向に……。“聞く力” とは、一方通行ではなく相互のやりとりによって育まれるもの。子ども自身が「自分の声はちゃんと届いている」と実感できることが、他者の声に耳を傾ける姿勢につながっていくのです。
聞く力とは、単なる「我慢」ではなく、相手に信頼や納得を感じたときに発揮される “自発的な姿勢” です。まずは家族との対話によって「聞く関係」を育んでいくことが、子どもの聞く力を育てる第一歩になります。
子どもは “聞いてくれる人” の話しか聞かない――共感が耳を開くカギになる【熊野英一氏】
子どもが人の話を聞けるようになるには、まず「自分の話を聞いてもらえた」という安心感が必要です。株式会社子育て支援代表の熊野英一氏は、「子どもは、自分の気持ちに共感してくれる親の言葉なら、素直に耳を傾ける」と語ります。ここで大切なのは、“共感ファースト” という姿勢。
共感とは、子どもの感情に寄り添い「そう感じたんだね」と受け止めることであり、同意とは違って必ずしも子どもの言動を肯定する必要はありません。ただ「あなたの気持ちを理解しようとしているよ」と伝えることで、子どもは「この人の話なら聞いてもいい」と感じるのです。
一方で、親が子どもの話を聞かずに注意や命令ばかりを繰り返していると、子どもは「どうせ話しても無駄」と感じ、心を閉ざしてしまいます。まずは親が “聞く人” としての姿勢を見せることが、聞く力を育てる第一歩になるでしょう。
【聞く力の育て方】
- 子どもの話をさえぎらず、最後までしっかり聞く
- 感情を受け止め、「わかるよ」と共感する言葉をかける
- 指示を出す前に、子どもの気持ちに寄り添う時間をつくる
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「聞ける子=聞いてもらえた子」質問・対話が生むコミュニケーション力【増田修治氏】
「どうして聞いてくれないの?」と悩む保護者にこそ考えてほしいのが、“子どもは聞いてもらった経験があって初めて、人の話を聞けるようになる” という事実です。白梅学園大学教授の増田修治氏は、「話を聞いてもらった経験が多い子どもは、人の話もよく聞ける」と指摘します。
たとえば、幼い子どもが「あれなに?」「これなに?」と問いかけてくるとき、それを面倒くさがらず、目を見て答えることが重要。それだけで、子どもは「自分の声はちゃんと届くんだ」と感じ、安心感を得るのです。この積み重ねが、「人に話を聞いてもらえるのは心地よいこと」という実感につながり、他者にも耳を傾ける子へと成長します。
また、聞く力は人と円滑にコミュニケーションをとる力、先生の話を正確に理解する力、友だちの気持ちをくみ取る力にもつながります。学力や人間性を高める基礎となる力ともいえるため、小さいうちから育んであげたいですね。
【聞く力の育て方】
- 子どもの質問に丁寧に答える習慣をもつ
- 表情やリアクションを豊かにして「聞いているよ」と伝える
- 話しかけられたら手を止めて対応する
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命令より「納得」が心に響く! 子どもが自然と聞きたくなる声かけとは?【岩立京子氏】
「早く!」「だめ!」という言葉がつい口をついて出てしまう――子育て中なら、誰しもそんな瞬間があるはず。ですが、東京家政大学子ども支援学部教授の岩立京子氏は、「子どもが行動を受け入れるためには、“なぜその行動が必要なのか” をしっかり伝えることが大切」と指摘します。
大人には大人のリズムがあり、子どもには子どものリズムがあります。この違いを意識せずに命令口調で接すると、子どもは不快感を抱き、話に耳を傾けようとしません。けれども、「早く着替えたら、お出かけ先でたくさん遊べるよ」と、楽しみを提示しながら理由を伝えると、子ども自身が前向きに行動できるようになるのです。
“納得して動く” という経験は、子どもの自主性や判断力の育成にもつながります。言われたことをただ守るだけではなく、「なぜ」を理解し、行動に意味を見出す――それこそが、聞く力を根づかせる大切な土台となるでしょう。
【聞く力の育て方】
- 命令だけでなく、「なぜその行動が必要なのか」を伝える
- 「〇〇するとこんないいことがある」と未来の楽しさに結びつける
- 子どものリズムを尊重し、言葉がけのタイミングを工夫する
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叱り方で差がつく!? 「あなた」ではなく「私」で伝える親の言葉の力【瀬川文子氏】
子どもが言うことを聞いてくれないと、つい感情的になって「なんでそんなことするの!」「いいかげんにしなさい!」と強い言葉をぶつけてしまうことがあります。
そうした「あなた」を主語にした叱り方に対して苦言を呈しているのは、親業訓練協会の瀬川文子氏です。「あなた」を主語にして叱ると、子どもは自分が責められているように感じ、反発心が芽生えてしまうのだそう。
そこで有効なのが、「ママはとても心配だったよ」「お母さん、すごく悲しかったな」という「I(私)メッセージ」です。感情をぶつけるのではなく、「私」を主語にして共有することで、子どもは親の言葉を受け止めやすくなり、自分の行動にも自然と向き合えるようになります。
たとえば、迷子になってしまった場面では「どうして勝手に行動したの!」と責めるのではなく、「見つかって本当に安心した。とても不安だったよ」と伝えてみてください。そうすることで、子どもも親の思いを理解して「今度から気をつけよう」と思えるようになるでしょう。
【聞く力の育て方】
- 「私は〇〇だと感じた」と自分の感情で伝える習慣をもつ
- 責める口調ではなく、穏やかに語りかける
- 子どもの行動の裏にある気持ちに寄り添う
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「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して
その言い方、子どもの心に届いてる? コーチング流・伝え方の工夫で聞く力アップ【石川尚子氏】
子どもに何か伝えるとき、その言い方によって伝わり方も反応も大きく変わります。 コーチングの専門家である石川尚子氏は、親子の対話においても「伝え方を少し変えるだけで、子どもの心の扉が開く」と語ります。
特に注意したいのが、「なぜできないの?」「どうしてやらないの?」といった問いかけ。これらは子どもを追い詰め、「自分はできない子だ」と思い込ませてしまう可能性があるので気をつけましょう。
そこで大切なのが、前項でもおすすめした「Iメッセージ」で伝えること。その際には、「どうしたらうまくいくかな?」と、子どもと一緒に前向きな解決策を考える姿勢も忘れずに。否定ではなく、可能性に目を向ける言葉を使うことで、子どもは安心して話を聞き、心を開いてくれるようになるでしょう。
【聞く力の育て方】
- 「どうしてできないの?」ではなく、「どうすればできる?」と尋ねる
- 「あなた」より「私は~と思う」と表現する
- 子どもが自己否定しない言葉選びを意識する
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子どもの自己肯定感を高め、親子関係を良好にする魔法の言葉
その子に合った声かけを。タイプ別・子どもに響く伝え方のヒント【稲場真由美氏】
人間関係研究家の稲場真由美氏は、「子どものタイプによって “伝わりやすい声かけのスタイル” は異なる」と指摘します。
たとえば、しっかり理由を伝えると納得しやすい子もいれば、説明が長いと集中力が切れてしまう子も。そんな子には、短く端的に要点だけを伝えるほうが効果的です。さらに、ネチネチと繰り返し叱るのではなく、「これからはこうしていこうね」とポジティブな言葉で締めるだけで、子どもの受け取り方は大きく変わります。
また、声かけのタイミングやトーンにも気をつけましょう。ふざけているように見えても、じつは気持ちが不安定になっていたり、親の表情ひとつで受け止め方が変わったりもします。「この子は、どんな言い方なら素直に聞けるんだろう?」と考えながら、伝え方を柔軟に変えていく姿勢が求められるのです。
子どもは一人ひとり違うからこそ、正解は一つではありません。わが子のタイプを見極めて伝え方を工夫すれば、聞く力がぐんぐん伸びていきますよ。
【聞く力の育て方】
- 長く話すより、短くはっきり伝えたほうがよい子もいる
- 叱ったあとは「これからどうするか」に意識を向ける声かけを心がける
- 子どもの性格や反応を観察し、伝え方を柔軟に変える
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「いくら言っても分かってくれない」のは、叱り方がその子に合っていないから。
【聞く力の育て方Q&A】「聞いてくれない!」の悩みに答える5つのヒント
Q1. うちの子、聞いてるフリばかりで全然わかってない気がします。どうしたらいい?
A. 聞いているように見えても、子どもの頭のなかは別のことを考えているかもしれません。そんなときは、「〇〇って言ってたけど、どう思った?」と優しく問いかけてみてください。子どもが自分の言葉で説明しようとする過程で、理解力や注意力が育っていきます。
Q2. 聞く力が弱いと、やっぱり勉強にも影響がありますか?
A. 授業の内容を聞いて理解する力は、学力の土台になります。加えて、友だちの意見を聞いて学ぶ姿勢や、先生とのやり取りで得られる安心感など、すべてが学びの質を左右します。家庭で「聞く力」を育てる習慣づけをしておくことは、学習面でも大きなアドバンテージになります。
Q3. 兄弟で「聞ける子」と「聞けない子」がいて悩んでいます。性格の違いでしょうか?
A. 性格や発達の特性が関係していることもありますが、多くの場合は「伝え方の相性」が関係しています。それぞれの子の反応をよく観察し、声かけの言葉・長さ・タイミングを工夫してみましょう。「伝わる声かけ」ができれば、聞く力も自然と育っていきます。
Q4. 「どうしてそんなことしたの!」と言っても聞いてくれません。どう言えばいい?
A. 「なぜ」「どうして」は、子どもにとって責められているように感じやすい言葉です。代わりに「ママはびっくりしたよ」「ちょっと心配だったんだ」と “私メッセージ” で気持ちを伝えてみてください。すると、子どもも心を開きやすくなり、話に耳を傾けてくれるようになります。
Q5. 具体的に、家でできる “聞く力” の練習ってありますか?
A. たとえば、家族でしりとりやクイズをする、絵本を読んだあとに「どこがおもしろかった?」と聞く、親子で交互に「1分間話す・聞く」ゲームをするなど、家庭でできる “聞く力” を育む方法はたくさんあります。遊びのなかで“聞く習慣”を育てると、楽しくスキルが身についていきますよ。
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「聞く力」は、勉強や友人関係、将来の仕事にまで影響を及ぼす生きるための土台となる力です。そしてそれは特別な教育ではなく、家庭での親子の対話や関わりのなかで自然に育まれていきます。日常のちょっとした声かけや伝え方を見直すだけで子どもの聞く力はぐんと伸びていくので、本記事を参考にぜひ試してみてくださいね。
文/野口燈
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「〇〇ファースト」がポイント! アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して
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STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「いくら言っても分かってくれない」のは、叱り方がその子に合っていないから。