「うちの子、優柔不断で……」「いつも決められなくて困っている」そんな悩みを抱えていませんか? じつは、将棋の「秒読み」には、子どもの決断力を育てるヒントが詰まっています。
将棋には、ほかのゲームにはない大きな特徴があります。それは「一手しか指せない」ということです。王将を守る手、相手の駒を取る手、攻めを続ける手──どれも魅力的に見えるかもしれません。しかし最終的には、たったひとつの手を選んで、駒を動かさなければなりません。
この記事では、時間制限を使って「自分で決める力」を伸ばす3つの方法をご紹介します。将棋を知らなくても、家庭で実践できますよ。
目次
将棋の「秒読み」とは?
「10、9、8、7……」将棋には「秒読み」というルールがあります。 もち時間を使い切ったプロ棋士は、限られた秒数で次の一手を決めなければなりません。
どんなによい局面でも、時間切れになれば負け。この仕組みには、決断力を育てる3つの効果があります。
1. 考えすぎを防ぐ
 無限に時間があると、人はかえって迷ってしまうもの。 「限られた時間内に決めなければならない」という適度な制約が、思考をクリアにします。
2. 脳が「本気モード」になる
 脳科学の研究によると、期限が迫ると脳内でノルアドレナリンが分泌されます。 注意力や集中力が高まることがわかっているのです。
3. 緊張と付き合う練習になる
 適度な緊張を繰り返し体験することが、感情をコントロールするよい練習になります。
では、この「秒読み」のエッセンスを、どう家庭に取り入れればいいのでしょうか?

実践! 決断力を育む3つの方法
「でも、うちの子は将棋をやっていないし……」
そんな方もご安心ください。将棋を知らなくても、秒読みのエッセンスを家庭に取り入れることができます。大切なのは「時間内に決断する」という体験を、楽しみながら積み重ねることです。
1. 朝の決断タイム
朝の支度の中に、決断の練習を組み込んでみましょう。「明日着て行く服を5分で決めよう」「今日の朝ごはん、A・B・Cどれにする?30秒で!」
そう声をかけるだけで、一日の始まりが決断力トレーニングの時間に変わります。 選択肢を3つに絞ると、子どもは決めやすくなります。時間内に決めたこと自体をほめてあげましょう。 「よく決められたね」の一言が、子どもの自信を育てます。
2. 遊びのタイムアタック
日常の遊びや生活の場面を、楽しいゲームに変えてみましょう。「3分でおもちゃを片付けよう!」 「今夜読む絵本を5分で選んでね」 「土曜日、公園・図書館・おうち遊び、どれにする? 2分で決めよう」
片付けや遊びの選択が、決断力を育てる機会になります。 どれから片付けるか、どこに置くか、何をして遊ぶか。小さな決断の連続が、判断力を育てていきます。
3. 学びの◯分チャレンジ
勉強の時間も、決断力を鍛えるチャンスです。「この計算問題、何分でできそう?」子ども自身に時間設定をさせるのがポイントです。
自分の実力を見積もる力も同時に育ちます。ダラダラ取り組むより集中力が上がり、達成感も得られます。慣れてきたら、少しずつ時間を短くしていきましょう。
【忘れてはいけないこと】
結果の良し悪しではなく、「決断したこと」そのものを認めてあげることが大切です。「よく決められたね」「時間内に選べたね」「迷ったけどチャレンジしたね」という言葉が、子どもの自信を少しずつ育てていきます。

秒読みの中で起きていること
秒読みのなかで、脳内では驚くべきプロセスが展開されています。
- 直感が働き─「この手がよさそうだ」という感覚が、瞬時に浮かび上がります。
- 判断する─その直感が本当に正しいか、致命的なミスがないかを一瞬で見極めます。
- 決断する─迷いを断ち切り、駒を動かします。
通常の対局では持ち時間をかけて行うプロセスを、秒読みではわずか10秒などの短時間で完結させなければなりません。時間が限られているからこそ、思考の優先順位が明確になるのです。
秒読み中の対局者は、誰もが緊張しています。 プロでも子どもでも、このドキドキ感から逃れることはできません。
でも、経験を重ねるうちに、子どもたちは気づきます。 「ドキドキしても、ちゃんと考えられる」と。
この経験は、将棋以外でも役立ちます。 テストの残り時間が少なくなったとき、スポーツの試合で重要な場面を迎えたとき、人前で発表するとき。秒読みで身につけた「落ち着く方法」が、子どもたちの背中をそっと押してくれます。

未来を切り拓く「決める力」
現代は選択肢があふれる時代です。情報は無限にあり、正解はひとつではありません。だからこそ、「自分で決める力」がこれまで以上に大切になっています。
将棋が教えてくれる決断力。それは単なるゲームのスキルではないのです。
適度な緊張と付き合う力 ─ 緊張する場面でも、冷静に判断できる心の強さが身につきます。
挑戦する力 ─「自分で決めて実行する」という経験の積み重ねが、自己肯定感を育みます。
***
小さな決断でもかまいません。秒読みのような時間制限のなかで、考え、選び、決める。この繰り返しが、子どもたちに「どんな状況でも、自分で道を選べる」という自信を与えてくれるのです。
将棋の秒読みは、ただのゲームのルールではありません。それは、不確実な未来を生き抜く力を育てる、最高の教材なのです。
(参考)
東京ウーマン | 東京で働く女性のライフスタイルマガジン[東京ウーマン]
日本将棋連盟の解説(コラム) |対局に遅刻をしたときはどうなる?意外と知らない、将棋の「時間」についてまとめてみました
ねこまど | ねこまど
大阪大学の研究専用ポータルサイト | ノルアドレナリンにより視機能が向上する – ResOU

 
                    
 
                         
                         
                         
                         
                         
                        











 
                 
                