子どもが「友達に仲間はずれにされた」「一緒に遊んでくれない」と泣いて帰ってきたとき、親としてどう対応すべきでしょう。
令和5年度の文部科学省調査によると、小学校では1,000人あたり96.5件のいじめが認知されており、そのうち「仲間はずれ、集団による無視」は全体の12.3%を占めています。「仲間はずれ」は珍しいことではなく、多くの子どもたちが直面する問題です。一方で、子ども同士の関係は日々変化するものでもあり、一時的なトラブルといじめを見極めることが大切です。
今回は、小学生の友達関係トラブルで悩む2人のお母さんからのご相談をもとに、親が関わるべきとき・見守るべきときの判断基準と、それぞれの状況に応じた対処法をお伝えします。
監修者プロフィール
元小学校教員
小学校教員・英語専科教員として12年間勤務し、これまでに2,000人以上の子どもたちや教職員への指導に携わってきました。
現在は、教育分野での執筆活動をはじめ、クリエイターやファミリーサポート支援など多方面で活動中です。2児の母として、子育てと仕事の両立に奮闘しています。
ここでは、イギリスやアメリカへの留学経験を通じて学んだペアレンティングの視点や、子どもの自己肯定感を育むアプローチを軸に、日本の家庭でも実践できるヒントを発信しています。
目次
お悩み:子どもが仲間はずれにされています
ケース1:仲間外れした友達の母親から心無いことを言われた
【お悩み相談】
小2の娘が2人の友達から仲間はずれにされました。2人の友達は幼稚園から仲良しで親同士もよく知っており、親子で遊びに行ったこともある関係です。
ある日、下校時に娘が仲間ばはずれにされて明らかに様子がおかしい場面にたまたま私自身が遭遇し、大泣きする娘から話を聞いていたところにAちゃんママが登場。隣で娘が泣いてる私に対し、「うちの子、〇〇ちゃん(娘)と帰るの嫌みたい〜」と一方的に言われました。(中略)今後、その母とどう関わるべきか、また同じようにAちゃんから仲間はずれにされた場合、娘とどう向き合うべきか、ご相談したいです。(7歳女の子ママ)
ケース2:内気な娘が休み時間に遊ぶお友達がいません
【お悩み相談】
私の娘は内気な性格です。お家では元気でおしゃべりもします。お友達の輪に入っていけず、自分から一緒に遊ぼうと声を掛けられないようです。大人しいので誰も話し掛けてくれないと思います。小学校3年生になってクラス替えをしてから休み時間に遊ぶお友達がいないようです。新しくお友達ができたと教えてくれましたが、夏休み近くに、そのお友達に避けられていると話してくれました。娘はそのお友達に何も悪いことはしていないと泣いて教えてくれました。(中略)
娘には勇気を出してお友達に声を掛けて休み時間一緒に遊ぶお友達を見つけてほしいと思っています。(中略)これから親としてどうしていいのか教えていただけますでしょうか? 娘がお友達に話し掛けないことには始まらないとはわかっていますが、娘にそれが出来るようにどのように促していけばいいのかアドバイスをお願いいたします。(9歳女の子ママ)
このお悩みに関して、順を追って解説していきます。
まずは状況を正確に把握することから
これって「いじめ」?それとも「子ども同士のよくあること」?
友達関係のトラブルで最も大切なのは、「いじめ」なのか、それとも子ども同士の自然な関係の変化なのかを冷静に見極めることが大切です。文部科学省の「いじめ」の定義によると、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」。つまり、「本人が精神的苦痛を感じているか」が判断材料になります。
学校に相談すべきとき:
- 子どもが「仲間外れにされた」「無視された」「避けられている」と訴えている
- 子どもが精神的苦痛を感じている(泣く、落ち込む、学校に行きたがらないなど)
- 具体的な攻撃的行為(からかい、悪口、物を隠されるなど)がある
- 一回だけでも子どもが深く傷ついている
少し見守ってもよいとき:
- 子ども自身が「気にしていない」「大丈夫」と明言している
- 具体的な問題行為が特定できない
- 普段通りに学校生活を送れている
子どもの気持ちをしっかり聞き取ろう
まずは、子どもが困っているのか、どんな気持ちでいるのかを丁寧に聞き取りましょう。子どもが自分から話してくれたときは、まずはその勇気を認めてあげましょう。「教えてくれてありがとう」「つらかったね」と受け止めることで、子どもは安心して本音を話せるようになります。
また、実際が親が思っているほど子ども自身が気にしていない場合もあります。その場合は、少し様子を見守ることも検討しましょう。
話を聞くときのポイント:
- 解決策を急がず、まずは気持ちに共感する
- 「どうしてほしい?」と子どもの意見を聞く
- 責めるような質問(「あなたも何かしたの?」など)は避ける
- 子どものペースに合わせて、無理に詳細を聞き出そうとしない
低学年〜中学年の友達関係は流動的
一方で、小学校中学年に近づくにつれて、特に女の子は、友達関係への関心が急激に高まる時期で、「誰と誰が仲良し」「今日は○○ちゃんに無視された」といった微細な人間関係の変化に非常に敏感になります。この年齢の女の子は、男の子と比べて言葉での攻撃や仲間はずれといった状況になりやすい傾向もあります。
これは、まだ感情のコントロールや相手の気持ちを読み取るスキルが発達途中であることに加え、友達関係が非常に流動的で「昨日まで一番の親友だった子と今日はけんか」といったことが日常的に起こるためです。
ただし、この特性を理由に「いじめ」を見過ごしてはいけません。子どもが苦痛を感じているなら、まず学校に状況を伝えることが大切です。
(関連記事)小学2年生の息子の友達関係、どこまで親が関わるべき?──先回りが奪う子どもの「4つの力」
問題のある保護者との関係調整
また、ケース1で深刻なのは、相手の母親が子どもが泣いている目の前で「うちの子、○○ちゃんと帰るの嫌みたい」と言い放ったことです。このように子どもを傷つける相手とは、無理に関係を修復する必要はありません。学校などでの行事で顔を合わせても挨拶程度に留めても問題ないのではないでしょうか。
何よりもまずは、子どもの精神的なケアが必要です。「あなたは悪くない」ということを継続して伝えてあげましょう。
内気な子への友達づくりのサポート
ケース2のように、「避けられている」と子どもが泣いて訴えているなら、これも「いじめ」の可能性があります。まずは学校に相談しましょう。
もし単に子どもが内気で友達づくりに悩んでいる場合は、以下のような支援が考えられます。
◆自然なつながりを大切にする
いきなり「みんなと仲良くしなさい」「積極的になりなさい」と言っても、内気な子には無理な要求です。それよりも、子どもが自分らしくいられる場面を増やすことの方が大切です。
読書が好きな子なら図書室で過ごす時間を増やしたり、絵を描くのが好きなら休み時間に絵を描いていると、同じ趣味の子が自然に「何描いてるの?」と声をかけてくれることがあります。折り紙が得意なら、作品を机に置いておくだけで「すごいね、どうやって作るの?」と興味をもってもらえるかもしれません。
教員として多くの子どもたちを見てきた経験では、無理に会話のきっかけをつくろうしてもなかなかうまくいかないものです。しかし、一見内気だったり気難しく見えたりする子でも、「好きなこと」「得意なこと」を学校でも自然に表現している子の周りには、興味をもつ子が自然に集まってくる場面をよくみました。気の合う子は、共通の興味があるところから自然に会話が弾みます。
◆ひとりでいられる時間も大切
また、すべての子が大勢の友達を必要としているわけではありません。ひとりの時間を大切にし、少数の深い関係を好む子もいます・「友達がたくさんいる=幸せ」という価値観を押し付けず、子どもが本当はどうしたいのかを聞いてみることが大切です。
ひとりで過ごす時間も否定せず「ひとりの時間も大事だよね」と認めることで、子どもは自分らしくいられる安心感を得られる場合もあります。ひとりで読書をしたり、絵を描いたり、ぼんやり考え事をする時間は、子どもの心を豊かにする大切な時間です。
(関連記事)友だちに依存しやすい子は、親が過干渉。お子さんは「ひとりでいる力」をもっていますか?
◆学校以外の居場所づくりという選択肢
学校での友達づくりがうまくいかなくても、それが全てではありません。学校以外の場所で自信をつけることで、結果的に学校生活にもよい影響を与えることがあります。
習い事や地域活動など、子どもの興味のある分野で同じ趣味をもつ仲間と出会える場を探してみましょう。絵画教室、音楽教室、スポーツクラブ、図書館の読書会、地域の子ども会活動など、選択肢は意外とたくさんあります。
具体的な居場所の例:
- 習い事・クラブ活動:絵画教室、音楽教室、スポーツクラブ、将棋クラブなど
- 地域活動:子ども会、図書館のイベント、地域のお祭り参加
- ボランティア活動:動物愛護センター、地域清掃、読み聞かせなど
- 異年齢交流:年上の子に可愛がってもらう体験、年下の子をお世話する体験
学校外での成功体験は「私にも得意なことがある」「認めてくれる人がいる」という自信を与えてくれます。この自信が、学校でも積極的になるきっかけになることが多いのです。また、万が一学校でトラブルがあったときの「心の逃げ場」にもなります。
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友達関係で悩む時期は、子どもにとって「人との関わり方を学ぶ貴重な機会」でもあります。親として適切にサポートしながら、子どもの成長を温かく見守っていきましょう。
何より大切なのは、子どもが「困ったときは親に相談できる」と安心していること。そんな信頼関係があれば、どんな困難も乗り越えていけるはずです。
(参考)
文部科学省|令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要