教育を考える 2019.11.2

子どもの自己肯定感を高め、親子関係を良好にする魔法の言葉

子どもの自己肯定感を高め、親子関係を良好にする魔法の言葉

子どもが自身の存在価値を感じ、自己肯定感を高めるためには、まずは親が子どもの存在自体を「認める」こと、子どもの話をきちんと「聴く」ことが大切だと説くのは、子どものコーチングにも造詣が深いビジネスコーチの石川尚子さん(第2回インタビュー第3回インタビュー参照)。そして、じつは親が子どもに話をする場合にも重要なことがあるといいます。それは、基本的に「Youメッセージ」ではなく「Iメッセージ」で話すことだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

Iメッセージは「自己肯定感」を高めてくれる

「Youメッセージ」と「Iメッセージ」はコーチングで使われる用語で、簡単にいえば、Youメッセージとは「『あなた』を主語にしたメッセージ」であり、Iメッセージ「『わたし』を主語にしたメッセージ」です。日本語は主語を省略する場合が多いのでわかりにくいところもあるかもしれませんが、たとえば、「あなたって聞き上手ですね」はYouメッセージであり、「あなたと話していると(わたしは)すごく楽しいです」はIメッセージとなります。

この例では、両者にあまり大きなちがいを感じず、どちらも好意的に受け取れるかもしれません。でも、これが初対面の相手にいわれた言葉だとしたらどうでしょうか。Youメッセージには「あなたはこうだ」という評価のニュアンスがあるため、先の言葉を聞いた場合にもうれしくないわけではないけど、それほど親しくもないのに「勝手に決めつけられている」といった印象や若干の抵抗を感じるのではないでしょうか。

一方のIメッセージは、あくまで話し手自身が「わたしはこう感じた」といっているに過ぎません。ですから、まずは否定しにくい。そして、自分にはそんなつもりはなかったとしても、「この人はこう思ってくれたんだ」「自分の存在はこの人にこんな影響を与えたんだ」と思い、自分の存在価値を感じて自己肯定感を高めてくれるのです。

また、家庭においては親子関係をより良好なものにするためにもIメッセージは役立ちます。子どもが門限を過ぎても帰宅しないとします。ようやく帰ってきた子どもに対して、みなさんならどんな言葉をかけるでしょうか? つい、開口いちばん、「何時だと思ってるの!」と怒ってしまいたくなる人もいるはずです。でも、とくに反抗期にあるような子どもの場合は反発し、親子関係がぎすぎすしたものになってしまうことも考えられます。

そこで、なぜ怒りたくなったのかということをよくよく考えてみてください。その怒りの背景にあるのは「心配」であるはずです。だとしたら、まずその気持ちをIメッセージで伝えてあげればいいのです。声を荒げて怒るのではなく、「ああ、やっと帰ってきた」「すっごく心配だった」「こういう気持ちは二度と味わいたくない」といったなら、子どもは親から愛されているということをしっかり感じて反省してくれるはずです。

NGワードが含まれる「偽のIメッセージ」に要注意

でも、Youメッセージが一概に悪いというわけではありません。なかにはYouメッセージを好む子どももいるからです。ただ、やはり「あなたはこうだ」というYouメッセージは聞き手にあまり良くない印象を与えるケースが多いことはたしかです。

たとえば、締め切り間近の原稿を書いているときにクライアントから「先生、早く書いてくださいね」なんていわれたら、「わかってるよ、やってるよ」といいたくなるものです。でも、「先生の原稿はいつも本当に楽しみだから、早く読みたいんです」とIメッセージでいわれたなら、「よっしゃ!」とやる気が出てくるはずです。このことは、子どもがやるべきことをやっていないというようなときにも使えるのではないでしょうか。

ひとつ、注意してほしいのは、Iメッセージに思えるもののなかにも「偽のIメッセージ」があるということ。たとえば、「お父さんは、○○君にちゃんと謝ったほうがいいと思うよ」「お母さんは、あなたの考えは間違っていると思う」といったものがそれにあたります。

これらは、たしかに話し手であるお父さんやお母さん自身が主語になっていますからIメッセージであるように思えます。ですが、コーチングのNG事項である否定や「こうするべき」「こうしなさい」といった指示命令が含まれているため、Iメッセージではなくなっているのです。

日本語の「なぜ」「どうして」は相手を問い詰める

また、Iメッセージの話から少し離れますが、子どもとの会話において「なぜ」「どうして」という理由や原因を問う疑問詞を使うこともなるべく控えることをおすすめします。親が子どもにいいがちな「どうして○○したの?」「なぜ△△できないの?」といったことです。英語の場合はそうでもないのですが、日本語の「なぜ」「どうして」は相手を問い詰めるニュアンスが非常に強いものだからです。

とくに、なにかがうまくいかなかったときにその理由や原因を問うことは危険です。というのも、質問された瞬間に聞き手の意識は問われた内容に向かうからです。「どうしてできないの?」と聞くと、子どもの意識を「できない自分」にばかり向かわせることになる。結果的に「あなたはできない子だ」という洗脳を行うことになるのです。

だとしたら、質問されたことに意識が向かうメカニズムをいい方向に使うことを考えましょう。たとえば、部屋の片づけをできない子どもに「どうして片づけないの?」と聞くのではなく、「この部屋を見てどう思う?」「どうしたらいいと思う?」「どういう状態だったら気持ちいいかな?」と聞くのです。そうすれば、子どもは「できない自分」に意識を向けることなどなく、子どもなりに考えて行動を起こしてくれるはずです。

言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉
石川尚子 著/柘植書房新社(2019)

■ ビジネスコーチ・石川尚子さん インタビュー一覧
第1回:子どもの答えを引き出す「コーチング」――我が子を本当に信頼していますか?
第2回:「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩
第3回:子どもに揺るぎないパワーを与える、親が子どもの話を「聴く」ということ
第4回:子どもの自己肯定感を高め、親子関係を良好にする魔法の言葉

【プロフィール】
石川尚子(いしかわ・なおこ)
1969年生まれ、島根県出身。ビジネスコーチ、株式会社ゆめかな代表取締役。1992年、大阪外国語大学外国語学部卒業後、株式会社PHP研究所入社。研修局において企業研修・講演会の企画・運営、研修コース・教材の開発・制作、研修講師を担当。2002年、同社を退社してビジネスコーチとして独立。2003年、高校生の就職支援活動に携わった経験から教育分野へコーチングを普及する活動をはじめる。2008年、株式会社ゆめかなを設立して代表取締役に就任。現在は、経営者、起業家、管理職、営業職へのパーソナル・コーチングを行う傍ら、コミュニケーションスキルの向上、夢をかなえるコミュニケーション、自発的な部下の育成、子どもの本音と行動を引き出すコミュニケーションなどをテーマにしたコーチング研修、コミュニケーション研修の講師として活動中。小中学生、高校生、大学生から企業の経営者まで幅広い対象に講演活動を行う。著書に『コーチングで学ぶ「言葉かけ」練習帳』(ほんの森出版)、『オランダ流コーチングがブレない「自分軸」を作る』(七つ森書館)、『子どもを伸ばす共育コーチング 子どもの本音と行動を引き出すコミュニケーション術』(柘植書房新社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。