あたまを使う/教育を考える 2018.8.23

5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと

5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと

これまでの詰め込み型の教育ではなかなか育てることができないとも指摘される「考える力」。その力を伸ばす「知能教育」を、なんと約50年前に導入した小学校があります。それは、東京都武蔵野市にある聖徳学園小学校。現在、校長を務める和田知之先生は、その知能教育や教材開発に長く携わってきました。聖徳学園小学校でおこなわれているのは、「知能教育」によって英才児を育てる「英才教育」。その根幹を成すのが「知能教育」だそう。いったいそれは、どんなものなのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

子どもが楽しめる遊びやゲームを通して「考える力」を伸ばす

我が校の「英才教育」が目指すものは、いわゆる英才児を育てることです。しかも、ただ高い学力があるだけではなく、知識や技能を習得する力、習得したものを新たな場面で活用する力、正しく判断して行動する力といった「考える力」を併せ持つ子どもを、我が校では英才児としています。

その「考える力」を伸ばすために取り入れているのが「知能教育」です。知能教育には大きな柱がいくつかあり、そのひとつが「知能訓練」。わたしたちがベースにしているのは、アメリカの知能心理学者であるジョイ・ギルフォード博士の知能構造論です。博士は、人間の思考、知能因子というものを120種類に分類しました。たとえば、記憶に関わるものだけでも細かく24種類に分類しています。

その120種類のうち、子どもたちの「考える力」を伸ばすために重要で、かつ通常の授業では刺激できない90種類を抜き出して、ひとつずつ刺激を与えていくというのが知能訓練です。対象としている子どもは1年生から4年生まで。1週間に1回、90分の知能訓練を実施しています。

「訓練」と言うと、教員たちがストップウォッチを持って、子どもたちのお尻をたたきながらやっているなんてイメージを持つ人もいるかもしれませんが……(笑)、そんなことはまったくありません。実際には、子どもたちが楽しめる頭を使う遊びをさせています。

「漢字折り絵パズル」「計算間違い探し」「熟語早当てゲーム」「立体数パズル」などと名づけているこれらの教材は、じつはほとんどすべてがオリジナルのもの。毎週水曜日には午前中に2時間以上かけて教材を検討しています。じつは、この教材をつくるのがとても大変なんです。面白くなくちゃいけないし、すぐに解けちゃいけないし、かと言って難し過ぎてもいけない。どうやっても解けないというようなミスは絶対に許されないですしね。担当スタッフには本当に頭が下がる思いです。

強く意識しているのは教えるのではなく、考えさせるということ。知能は知識とはちがって、教え込んで発達するものではありません。できるだけ子ども自身に考えさせて、子どもが行き詰まった場合でもヒントを与える程度にしています。

そして、知能教育のもうひとつの柱が、「ゲーム」と「工作」。これらは、1年生と2年生のカリキュラムに組み込んでいます。取り組むゲームはオセロや五目並べ、将棋、百人一首など。かるたをすることもあれば、かるたをつくることもあります。ゲームをすることで、思考力を養うことを目指しています。

工作は、紙コップや割りばし、空き箱など身の回りの材料を利用して、テーマに沿ったものをつくり上げるというもの。手先の訓練によって大脳の発達を促しながら、発想力と技術を高めます。

知能は遺伝的要素ではなく教育によって大きく変化する

これらの知能教育の成果は、知能指数(IQ)の著しい伸びとなって現われています我が校の5年生、6年生の平均知能指数は160〜170。知能指数の平均値は100ですから、長年にわたって試行錯誤しながら知能教育を続けてきたことの手応えは感じていますね。

でも、もっとも重要なことは社会に出た子どもたちが自分のやりたい職業に就いて生き生きと活躍しているかどうかということ。とはいえ、社会での活躍レベルというようなデータは残念ながら集めることはできません。代わりに客観データとできるものがあるとすれば、大学入試の実績です。

大学入試の受験生には、高校とはちがって出身小学校に対して大学入試結果を報告する義務がありません。そこで、我が校ではアンケートというかたちで卒業生に手紙を送って、大学入試の結果を報告してもらっています。回収率は決して高くないのですが、2010年度の卒業生65人のうち10人が東京大学に現役合格したことがわかりました。我が校は入試に合格することを教育目標とはしていませんし、卒業後に進学した中学校や高校での学習によるところも大きいとは思います。ただ、子どもたちの「考える力」というベースをつくってあげることはできたのかなとも感じています。

我が校の子どもたちは、確かに知能検査を受けて入学してきた「選ばれた人間」という言い方もできるかもしれません。しかし、選抜時に見るのは一般的な学力ではなく、「考える力」が伸びそうかどうかというところ。その力を最大限に大きく伸ばそうという発想で教育しています。

そして、我が校の教育メソッドは、すべての子どもたちに効果的なものなのです。親御さんのなかには「自分が子どものころは勉強が苦手だったから……」と、お子さんにあまり大きな期待をしていないという人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

かつては、人間の知能は遺伝的要素が強く、教育によって高めることは難しいと考えられていました。ところが、大脳生理学や知能心理学の研究が進むにつれて、遺伝的要素よりも育った環境、つまり教育によって大きく変化することがわかってきたのです。ですから、お子さんの日常生活のなかに、知育ゲームや工作を取り入れてみてください。きっと大きな成果を生んでくれるはずです。

日本の人口は100年後には4000万人台になるとも言われています。急速に人口が減少していくのですから、子どもの数をどんどん増やすということは簡単にできることではない。であるなら、子どもたち一人ひとりの能力をしっかり伸ばしてあげることが重要になるのは明白ですよね。将来の日本を変える原動力となるのは、政治ではなく教育、そして子どもたちなのです。


IQ130以上の子どもの育て方
和田知之 著/カンゼン(2018)

■ 聖徳学園小学校長・和田知之先生 インタビュー一覧
第1回:学校教育の“ゴール”はこう変わる! いま求められる「考える力」の正体とは
第2回:子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由
第3回:5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと
第4回:「満点を取らせないテスト」に込めたこだわり。授業で触れていない問題も出題する意図とは

【プロフィール】
和田知之(わだ・ともゆき)
1966年生まれ、東京都出身。法政大学卒業後、1991年より聖徳幼稚園英才教室に勤務。2000年より聖徳学園小学校に配属となり、また、知能診断として多くの保護者にアドバイスをおこないながら、知能教育やその教材開発に従事。2015年から現職の聖徳学園小学校長、聖徳幼稚園長、英才教室長に就任。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。