あたまを使う/教育を考える 2018.8.20

子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由

子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由

これまでの詰め込み型の教育ではなかなか育てることができないとも指摘される、「考える力」。その力を伸ばす「知能教育」を、なんと約50年前に導入した小学校があります。それは、東京都武蔵野市にある聖徳学園小学校。現在、校長を務める和田知之先生は、その知能教育や教材開発に長く携わってきました。聖徳学園小学校でおこなわれているのは、「知能教育」によって英才児を育てる「英才教育」。ただ、その根底にある教育方針は、英才児になり得る優秀な子どもに限らず、「どんな子どもにも有効なもの」と和田先生は語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

知能教育の第一人者との出会いが学校を変えた

わたしが校長を務める聖徳学園小学校では、1969年に「英才教育」を導入しました。7年後の1976年には、聖徳学園英才教室を開設し幼児のための「知能教育」をはじめています。これらは、じつは当時の校長だったわたしの祖父がはじめたものです。

本当のところを言うと、「これからは『考える力』が必要だ!」というふうに、大それた理念を掲げてはじめたものではなかったようです。我が校は私立校ですので、祖父は、他校に埋もれないためになんらかの特徴を打ち出したいと考えていました。その頃に祖父が出会ったのが、玉川大学の教授であり、英才教育研究所所長だった伏見猛弥先生。教育学者で、昭和期の知能教育における第一人者です。

伏見先生はずっと、「『考える力』がある子どもに向けた教育」というものを考えていました。天才的と言っていいかもしれませんが、どこの学校にも理解が早くてどんな勉強もすいすいできてしまう子どもがクラスに何人かいますよね? そんな子どもたちのための学校をつくれないかと考えていたのです。

普通のクラスであれば、そういう飛び抜けて優秀な子どもは、先生から「わからない友だちに教えてあげてね」「読書をしてちょっと待っていてね」なんて言われることもあるでしょう。ただ、それではその子本人の学習にはなっていません。そういう子どもたち向けのカリキュラムをつくって教育できれば、どんなに素晴らしいか――。伏見先生は「日本のアインシュタインが生まれるのではないか」と考えていたそうです。そんな伏見先生と祖父が出会い、彼が持っていたノウハウ、メソッドを我が校に取り入れたというわけです。

「考える力をつけた後で勉強」すればより効率的かつ効果的

わたしたちが言う「英才教育」とは、文字通り英才児を育てようというもの。たとえば、テニスの素質がある子どもに対して、幼いときから最適でレベルの高い練習をさせて世界的なアスリートに育てようというのも英才教育ですよね。考え方はまったく同じものです。

わたしたちが目指しているのは、知識や技能を習得する力、習得したものを新たな場面で活用する力、正しく判断して行動する力など、さまざまな「考える力」を備えた英才児を育てること。そして、「考える力」を高めるための知能訓練などを指して「知能教育」と呼んでいます。「英才教育」という大きな枠のなかに、「知能教育」が含まれるというかたちです。

重要なのは「考える力」をつける時期。人間の知能が急速に発達するのは幼児期から12歳頃にかけての時期とされています。人間の脳は、生まれて成人するまでの間に発育する重量のうち、約3分の2が3歳くらいまでに、残りの約3分の1が20歳頃までに発育します。つまり、知能教育をはじめるのは早ければ早いほどいいということになる。そこで、我が校の4年生までのカリキュラムは知能教育を重視したものにしています。

とはいえ、学習指導要領に基づいた授業内容はしっかりこなさなければなりません。加えて普通の公立校にはない知能教育を取り入れているわけですから、当然ながら工夫は必要になる。他校にも同じようなことがあると思いますが、授業内容によってはスーッと流すというか、ウエートを軽くするものもあります。

たとえば、ひらがなの書き方や読み方の練習には時間をかけません。なぜなら、ほとんどの子どもが時間をかけずともできるものですからね。そういう授業をすごく丁寧にしたところで、子どもたちは退屈してしまいます。勉強するにあたって、退屈するのが一番良くないこと。授業内容によってウエートを調整することは、知能教育の時間をつくり、子どもたちを退屈させないという一石二鳥の手法と言えますね。

ここまでのわたしの話で、「結局、一部の優秀な子どもたちのための勉強か」と思っている人もいるかもしれません。でも、わたしたちの教育方針は、どんな子どもにも大いに効果を発揮するものでもあるのです。その基本方針とは、考える力をつけた後に勉強させるというもの。

考える力が普通の子と、2倍の力がある子がいるとしましょう。普通の子が算数の宿題をするのに1時間かかるとしたら、2倍の力がある子は30分で終わらせられます。勉強にかかる時間だけの話ではありません。勉強時間が同じならば、2倍の力がある子は、普通の子の2倍深く勉強することができる。ただ闇雲に勉強するのではなく、考える力をつけた後に勉強したほうが、より効率的かつ効果的なのです。幼いお子さんがいる親御さんは、これからの教育方針を考えるときにぜひ参考にしてみてください。


IQ130以上の子どもの育て方
和田知之 著/カンゼン(2018)

■ 聖徳学園小学校長・和田知之先生 インタビュー一覧
第1回:学校教育の“ゴール”はこう変わる! いま求められる「考える力」の正体とは
第2回:子どもの学力は「考える力」で決まる。幼いうちほど“知能教育”が効果的な理由
第3回:5・6年生の平均IQが160超えの“知能教育”のすごさ。肝は「教えずに考えさせる」こと
第4回:「満点を取らせないテスト」に込めたこだわり。授業で触れていない問題も出題する意図とは

【プロフィール】
和田知之(わだ・ともゆき)
1966年生まれ、東京都出身。法政大学卒業後、1991年より聖徳幼稚園英才教室に勤務。2000年より聖徳学園小学校に配属となり、また、知能診断として多くの保護者にアドバイスをおこないながら、知能教育やその教材開発に従事。2015年から現職の聖徳学園小学校長、聖徳幼稚園長、英才教室長に就任。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。