教育を考える 2019.9.13

子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!

子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!

これからの時代を生きていく子どもたちにとって重要な力のひとつだとされる、「レジリエンス」。日本語では「回復力」「復元力」などといわれ、近年、注目度がどんどん高まっています。その力が発揮されるのは、なにかで失敗をしてしまったなど、ストレスを感じたときです。では、ストレスの専門家はレジリエンスをどのように評価しているのでしょうか。お話を聞いたのは桜美林大学の小関俊祐先生。日本ストレスマネジメント学会事務局長でもある、小関先生の「レジリエンス観」を聞いてみました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

レジリエンスはあくまでもストレスへの対抗手段のひとつ

「レジリエンス」という言葉を見聞きする機会は本当に増えてきましたね。わたしの体感としては、東日本大震災以降に注目度が増してきているように感じています。最近ではアンチウイルスソフトの広告にもレジリエンスという言葉が登場していてちょっと驚きました。

「レジリエンス」という言葉の解釈は研究者によっても変わりますが、わたしとしては「よーし、負けないぞ!」というくらいのイメージの力というところでしょうか。少しあいまいに思えるかもしれません。でも、「絶対に負けないぞ!」というイメージではありません。というのも、別に「負けてもいい」からです

子どもがなにかに失敗してストレスを受けたとします。そのときに、そのストレスを発散する手段さえ身につけられていれば、なんの問題もありません。たとえば、友だちを誘って遊びに行ってもいいし、「学校でちょっと嫌なことがあってさ、お母さん、聞いてよ」と親に話を聞いてもらってもいい。大好きなお菓子を食べるということでもいいでしょう。ストレスを感じたとき、「絶対に負けないぞ!」と、真正面からぶつかってストレスを蹴散らすようなことだけが対処法ではありません。いくらでもストレスへの対処の仕方があるのです。

そもそもストレスをまったく感じない人間になることなんて不可能ですし、そんなロボットのような人間なる必要もありません。たとえば、大きな災害が起きたり大事な人が亡くなったりしたというときに泣かないようなことがレジリエンスの力などではありません。そんなときにもいつもと同じように笑って遊んでご飯を食べていたとしたら、それこそ人間らしくないじゃないですか。

ですから、レジリエンスの注目度があまりに増している近年の状況には少しばかり違和感も覚えています。レジリエンスとは、ストレスに負けずに自分がやりたいことをやるためにあるもの。ストレスに対抗する手段のひとつに過ぎません。それなのに、レジリエンスにばかり着目して、レジリエンスを高めるために頑張るとなると、やはり少し首を傾げたくなるのです。

お絵かきは子どもの「自己表現」。たくさん描いて自己肯定感を育もう!
PR

結果ではなくそれに至る過程をフィードバックする

そうはいっても、親としてはやはり子どもに打たれ強い人間に育ってほしいものでしょう。もちろん、あくまでストレスに対抗する手段のひとつとしてのレジリエンスを高められるのなら高めておくべきです。そうするためには、ストレスをゼロにすることを目標にしないことが大切です。

やはり、ある程度のストレスを経験しないと、ストレスに対処する練習ができないからです。最近の優しい親の場合、なにからなにまで先回りして子どものストレスの芽を摘もうとすることも多いものです。それは短いスパンで見れば親心として理解できるものではありますが、これからの人生を自分で歩んでいく子どものことを長いスパンで見れば、やはり子どものためにはなりません。子どもが小さいうちから、ある程度のストレスを経験させてあげることが大切なのです。

また、子育てにおいては「褒めて伸ばす」ことが大切といわれますが、なにを褒めるかというところも重要でしょう。サッカーをやっている子どもなら、ゴールを決めた、チームが勝ったというときに褒めることは簡単です。でも、そういう結果ではなく、チャレンジしたことそのものを褒めてあげてください。たとえば、試合に負けたとしても、すごく惜しいシュートがあった。そういうときに、「いいチャレンジだったよ!」と褒めてあげるのです。

あるいは、勉強でいえば、テストの結果は70点だったとしても、毎日真面目に勉強していたのなら、「勉強、すごく頑張ってたじゃない!」と褒めてあげる。結果ではなく、毎日の行動やチャレンジ、努力を褒めてフィードバックしてあげるのです。そうすれば、子どもはたとえ結果がよくなくてストレスを感じたとしても、自分の日々の努力に着目して立ち上がり、再び挑戦する力を身につけていきます。

子どもとのコミュニケーションを習慣化する

もちろん、そうしてあげるためにはきちんと子どもの行動を見ておくことが大切になります。とはいえ、学校やスポーツのクラブ活動など、子どもの行動には親にも見えない部分もたくさんあるものです。であるのならば、重要となるのはコミュニケーションです。

子どもの性格にもよりますが、ある程度の年齢になると、子どもも素直に自分からその日の出来事をなかなか話さなくなるものです。そういう状況が予想されるわけですから、親子で会話をすることを「習慣」にしてしまえばいいのです。

いまの時代、共働き世代が増えていたり、子どもも習い事や塾に通ったりと、親子どちらも忙しいものです。そういう生活のなかで、たとえ短い時間でもいいので、子どもがなにをしているのかということを毎日キャッチしましょう。その時間はご飯のときでもいいですし、お風呂から出てひと息ついているときでもいい。塾への送り迎えの時間でもいいでしょう。日常のなかで子どもとかかわりやすい時間を見つけて、「今日、どんなことがあったの?」「へえ、そんなことがあったの」「頑張ったね」とコミュニケーションを取る。それこそが、子どものレジリエンスを伸ばすために親ができることです

■日本ストレスマネジメント学会事務局長・小関俊祐さん インタビュー一覧
第1回:ストレスと無縁の人生を送ることは不可能。教えるべきは「転んだときの起き上がり方」
第2回:高学年までに身につけさせたい、ストレスに対抗する“セルフコントロール”の力
第3回:子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいい
第4回:子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める!

【プロフィール】
小関俊祐(こせき・しゅんすけ)
1982年1月9日生まれ、山形県出身。博士(学校教育学)。日本ストレスマネジメント学会常任理事、事務局長。桜美林大学心理・教育学系講師。他に、日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長も務める。子どもを対象とした認知行動療法を中心として、主に学校、家庭、地域における臨床実践・研究を推進している。小学校?高校における学級集団を対象としたストレスマネジメントや学校における特別支援教育の支援方法の検討、発達障害のある子どもとその保護者に対する支援を中心に研究と臨床を行う。また、東日本大震災以降、被災地での心理的支援も継続して実施している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。