教育を考える 2019.9.12

子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいい

子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいい

「ストレスコーピング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ストレスとうまくつき合うための方法である「ストレスマネジメント」のなかでも、ストレスそのものにどう対処するかという手法を指します。子どもがストレスフルな人生を歩むことを望む親はいないでしょう。だとすれば、しっかりとストレスに対処するストレスコーピングの手法を子どもにも教えてあげたいものです。そのための方法を、日本ストレスマネジメント学会事務局長である桜美林大学の小関俊祐先生に聞いてみました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

それぞれに得意分野がある2種類の「ストレスコーピング」

ストレスコーピングは「情動焦点型」「問題解決型」という大きくふたつの種類にわけられます。前者は情動に焦点をあてる、つまりストレスを発散させて気持ちを楽にさせる方法です。一方後者は、そもそものストレスの原因となっている問題をなくすものを指します。

情動焦点型がフィットするのは、比較的大きな問題や過去に起こったことによるストレスに対処するとき。たとえば、前日に犯してしまった大失敗を悔やんでストレスを感じているような場合、タイムマシンでもなければ問題そのものにアプローチすることはできません。そういうときは、いままさに感じているストレスを軽減するための行動を取ります。人それぞれですが、漫画を読んだりテレビを観たりお風呂に入ったり、大人ならお酒を飲むというようなことです。

逆に、これから起きることによってストレスを感じている場合には、問題解決型がフィットします。明日のテストが心配でストレスを感じているというときに、漫画を読んでもお風呂に入ってもなんの解決にもなりません。だとすれば、しっかりテストでいい点数を取るための行動を取る必要があります。

ストレス発散の選択肢を持たない子どもに親が選択肢を示す

そして、これらの選択肢は多ければ多いほどいい。たとえば、ストレスを感じたために友だちと飲みに行こうとした人が、友だちに「忙しいから」と断られたときに、他の対処法を持っていなければストレスはたまる一方です。そうではなくて、他の友だちを誘ってみる、あるいは映画を観るといった別の手段を選ぶ必要があります。

そう考えると、子どもは自分で選択できる手段が限りなく少ないですから、やはり親が選択肢を提示してあげる必要があります。ひとつ注意してほしいのは、海外旅行や遊園地に行くといっためったにできない選択肢を示すことは避けるべきです。そういう経験によって「遊園地で遊ぶことが僕にとっていちばんいいストレス発散方法なんだ」なんて子どもが思ったとしても、遊園地にはそう簡単に連れて行けるものではありません。日常的なストレスを発散させる方法は、日常的にできるものでなければならないのです。

子どもがストレスを感じているようだったら、子どもの好き嫌いに注目して選択肢を示してあげてください。幼い子どもでも、「アンパンマン」が好きだとか、チョコレートが好きだとか、ある程度の好き嫌いを持っているはずです。その好き嫌いに沿って、「『アンパンマン』の映画を観る?」「チョコ、食べようか」「どうしたい?」というふうに選ばせてあげるのです。

幼い子どものためのストレスコーピングの場合、基本的には情動焦点型だけで問題ありません。幼い子どもの場合、先に挙げたテストのように先々起こることでストレスを感じるということが少ないからです。

でも、子どもが成長して小学校中学年くらいになると、具体的な問題を解決する必要もできてきます。その頃の子どもがストレスを感じるいちばんの問題というと、やはり勉強になるでしょう。その場合も子どもに選ばせてあげましょう。たとえば、子どもが勉強に集中できなくてストレスを感じているのなら、親が勉強を見ていたほうがいいのか、ひとりで自分の部屋でやるほうがいいのか、あるいは塾に通いたいのか。子どもと相談しながらいろいろな選択肢を示してあげるのです。

「いつも子どもと一緒にいられる」親のメリットを生かす

ただ、注意してほしいのは、「親が答えを決めつけない」ということ。選択肢を示しながらも、「わたしはこれがいいと思う」なんて親が思っていると、子どもが別の選択肢を選んだときに親はイライラしてしまうものです。そんなことでは、子どものストレスを解消しようとしているのに、親がストレスを感じるということになりかねません。

また、余裕を持って時間を使うということも意識してほしいポイントです。誰よりも子どもと長くいられるのが、親が持つ最大のメリットです。ストレスを感じている子どもにカウンセリングを受けさせるとしても、カウンセラーがその子どもに会えるのはせいぜい週に1回、30分くらいのものでしょう。もちろん、カウンセラーは専門的な知識や技術を持っていますが、それ以上につねに一緒にいられるということが親の持つ強みなのです。

「いますぐ解決してあげなくちゃ」なんて思う必要はありません。親が焦ってイライラすることなくじっくり子どもと向き合い、子どもにとって最適なストレスの対処法を一緒に考えてあげてください

■日本ストレスマネジメント学会事務局長・小関俊祐さん インタビュー一覧
第1回:ストレスと無縁の人生を送ることは不可能。教えるべきは「転んだときの起き上がり方」
第2回:高学年までに身につけさせたい、ストレスに対抗する“セルフコントロール”の力
第3回:子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいい
第4回:子どもの「レジリエンス」を高めるのは、親子の会話。結果ではなく“挑戦”を褒める! (※近日公開)

【プロフィール】
小関俊祐(こせき・しゅんすけ)
1982年1月9日生まれ、山形県出身。博士(学校教育学)。日本ストレスマネジメント学会常任理事、事務局長。桜美林大学心理・教育学系講師。他に、日本認知・行動療法学会公認心理師対策委員及び倫理委員、一般社団法人公認心理師の会運営委員及び教育・特別支援部会長も務める。子どもを対象とした認知行動療法を中心として、主に学校、家庭、地域における臨床実践・研究を推進している。小学校?高校における学級集団を対象としたストレスマネジメントや学校における特別支援教育の支援方法の検討、発達障害のある子どもとその保護者に対する支援を中心に研究と臨床を行う。また、東日本大震災以降、被災地での心理的支援も継続して実施している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。