あたまを使う 2025.8.13

【孫育てNG集】愛情が空回り!? じじ・ばばがやりがちな “令和のNGワード&行動” 12選

木野未来
【孫育てNG集】愛情が空回り!? じじ・ばばがやりがちな “令和のNGワード&行動” 12選

かわいくて仕方ない孫。つい「よかれと思って」昔の常識や経験からアドバイスしたり手を出したりしていませんか?

しかし、昭和の育児常識は令和では科学的に見直され、逆効果になることも。お医者さんの研究や心理学の発見により、昔の当たり前が変わっている分野がたくさんあります。今回は、「祖父母がついやってしまいがちな “令和ではNG” な言動」や「じつは『お義母さん・お義父さんにやめてほしいけど言えない』言動」を、昔といまの違いと科学的な理由とあわせて紹介します。

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「おっぱい足りてないんじゃない?」と言わないで

昭和:母乳が出なければミルク、泣くのはお腹が空いた証拠と考えられ、授乳の回数や時間をきっちり決めていました。3時間おきの授乳が当たり前で、それ以外で泣く場合は母乳が足りないと思うのが普通でした。

令和:WHOや厚労省は母乳は赤ちゃんの欲しがるタイミングでという方針をおすすめしています。赤ちゃんが泣く理由は眠い・気持ち悪い・暑い・寒いなどいろいろで、お腹が空いた以外にも様々な理由があります。お母さんにプレッシャーをかけると母乳の出が悪くなることもあり、ストレスは母乳にも影響します。いまの粉ミルクは栄養たっぷりで安全なので、母乳とミルクを組み合わせるなど、育てやすい方法を選ぶことがおすすめされています。「完全母乳でなければダメ」という考えは、新米ママを追い詰める原因になってしまいます。

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「まだ○○できないの?」で比べないで

昭和:月齢で成長をしっかり判断し、ほかの子と比べるのが当たり前でした。「○ヶ月なのにまだ歩けない」「同じ年の子はもう話している」などの比較が日常的に行なわれていました。

令和:日本小児科学会の発表によると、歩き始める時期は9〜18か月と幅があり、話し始めについても個人差がとても大きいことがわかっています。比較することで親の不安をあおるだけで、子どもの成長を早める効果は全くありません。むしろ、親が焦ることで子どもにプレッシャーを与え、かえって成長に悪い影響を与える可能性もあります。現在は「その子なりの成長ペース」を大切にし、個性として受け入れる考え方が主流になっています。

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勝手に食べ物を与えないで

昭和:生まれて早い時期から果汁や白湯を与え、お菓子も気軽に与えていました。「甘いものを食べさせると機嫌がよくなる」という考えで、飴やチョコレートなども早い時期から与えることもありました。

令和食物アレルギーはほんの少しでも重い症状が出る恐れがあり、アナフィラキシーショックなど命に関わる症状を引き起こす可能性があります。日本小児アレルギー学会は必ず親の許可を得てからと強く注意しています。また、虫歯や好き嫌い防止の観点からも、甘いものを与える時期や量には慎重な配慮が必要です。離乳食の進め方も科学的な理由に基づいて更新されており、勝手な判断は避けるべきです。初めて食べさせる食材については、必ず親に相談することが大切です。

ほっぺや口にキスしないで

昭和:同じスプーンや箸で食べさせることは愛情表現の一つとされ、口移しで食べ物を与えることも珍しくありませんでした。

令和虫歯菌(ミュータンス菌)は唾液でうつることが科学的に証明されています。特に歯が生える前からの予防が大切で、一度うつると除菌は難しいとされています。日本歯科医師会も積極的に注意を呼びかけており、食器を一緒に使ったり口移しは避けるべき行為とされています。また、ほっぺや口へのキスは、子どもの体の境界線を教える観点からも控えることが推奨されています。

「抱き癖がつくから抱かないほうがいい」は間違い

昭和:泣かせたほうが肺が強くなる、抱きすぎると甘えん坊になるなどと信じられていました。「抱き癖」という言葉が一般的に使われ、泣いている赤ちゃんをあえて放っておくことがよいとされていました。

令和:現代の心理学では、抱っこは愛情関係や心の安定に欠かせないとされています。赤ちゃん時代の愛情関係は、将来の人間関係や社会性の土台となる大切な要素です。泣かせっぱなしにするとストレスホルモンが増える可能性があり、脳の発達にも悪い影響を与える恐れがあります。「抱き癖」という考えに科学的根拠はなく、むしろ十分な愛情を注ぐことが健全な発達を促すことがわかっています。安心できる環境で育った子どもは、自立心も育ちやすいとされています。

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「ひとりっ子はかわいそう」と言わないで

昭和:きょうだいは多いほどよいとされ、ひとりっ子は「わがまま」「社会性がない」などの悪いイメージをもたれていました。家族の人数についても周りからの意見が強く、プレッシャーを感じる親も多くいました。

令和:最近の教育心理学の研究では、ひとりっ子と複数きょうだいの間に社会性や学力に大きな差はないことがわかっています。むしろ、ひとりっ子は大人との会話機会が多く、語彙力や考える力が高い傾向も見られます。現代は経済状況や夫婦の生き方、仕事の形成など、いろいろな理由を総合的に考えて家族計画を立てる時代です。家族の選択を尊重し、サポートすることが何より大切です。

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パパの育児を止めないで

昭和:「育児は母親の仕事」という固定観念が強く、息子が育児に参加すると「男性がやることではない」「かわいそう」と手を出してしまうケースが多くありました。

令和父親の育児参加は子どもの心の安定や頭の発達にいい影響を与えることが研究で証明されています。また、夫婦関係の改善や母親の育児負担軽減にも効果的です。最初は慣れない作業でも、経験を積むことで上達し、父親としての自信にもつながります。口を出さずに見守ることで、父親の成長を促し、家族全体の絆を深めることができます。現代の父親にとって、育児は貴重な子どもとの触れ合いの時間でもあります。

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熱をすぐ下げようとしないで

昭和:発熱は病気の症状として即座に冷やしたり解熱剤で下げるべきとされ、高熱になる前に対処することが大切とされていました。

令和発熱は体がウイルスや細菌と戦っている証拠で、大切な防御反応であることがわかっています。孫が熱を出しても、元気で水分が取れている状態なら、すぐに解熱剤をすすめたり冷やそうとするのではなく、親の判断を見守ることが大切です。現在は解熱剤も「つらそうな時のみ使用」がおすすめされており、昔のように「熱が出たらすぐ下げる」という考えは見直されています。心配になっても、まずは親がどう対応するかを尊重しましょう。

勝手に名前の字画や読み方に口を出さないで

昭和:名前をつけるには親族の意見が強く反映され、特に字画の良し悪しが重視されていました。「家族の意見を聞くべき」「伝統的な名前がよい」という考えが一般的でした。

令和名付けは親の大切な権利で、大事な決断の過程です。あまりに口出しすると親子関係が悪くなったり、新米パパママへの心の負担の原因となります。現代では色々な価値観が尊重される時代であり、国際化に対応した名前や個性的な名前も受け入れられています。祖父母ができることは、決められた名前を温かく受け入れ、その名前を愛情を込めて呼んであげることです。

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「保育園に預けるなんてかわいそう」って言わないで

昭和:保育園は家庭で見られない子どものための施設という認識が強く、「母親が働くのはかわいそう」という価値観が一般的でした。

令和保育園は子どもの社会性や学びの場として高く評価されています。専門的な保育により、家庭では得られない集団生活の経験や、年齢に応じた発達支援を受けることができます。保育園に通うことで発達に悪い影響があるという科学的根拠はなく、むしろ多様な経験により豊かな人格形成が期待できます。働く母親を応援し、子どもの成長を見守る姿勢が大切です。

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高価なおもちゃやお菓子を買い与えすぎない

昭和:「欲しがるものは買ってやるのが愛情」という考えで、孫には何でも与えるのがよい祖父母とされていました。

令和孫が欲しがるものを何でも買ってあげると、我慢する力が育たなくなってしまいます。祖父母としては「孫に喜んでもらいたい」気持ちがありますが、親と相談してから買うようにしましょう。物をあげるよりも、一緒に遊んだり、お話を聞いてあげることの方が、孫にとって大切な思い出になります。

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「昔はこうだった」と押し付けない

昭和:年上の人の経験は絶対で、若い親も意見に逆らいにくい雰囲気がありました。「経験豊富な祖父母の言うことが正しい」という考えが当たり前でした。

令和医学・栄養・安全基準は日々新しくなり続けています。チャイルドシートの使用、うつ伏せ寝の危険性、離乳食の進め方など、多くの常識が科学的な理由により見直されています。「私の時はこうだったけど、今はどうなの?」と聞く姿勢が、よい関係を築く秘訣です。経験は貴重な財産ですが、「参考情報」として謙虚に伝えることで、若い世代との信頼関係を深めることができます。

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孫育てで一番大切なのは、親を尊重することです。祖父母の豊富な経験はとても価値のあるものですが、時代とともに変わる育児の常識を理解し、柔軟に対応することが求められています

科学的な根拠に基づきつつ、自分の経験は”参考情報”として優しく伝える。決して押し付けるのではなく、若い親の判断を支援し、困った時に頼られる存在になることが大切です。孫との関係も、親との信頼関係があってこそ築けるものです。「昔と今は違う」ことを受け入れ、新しい知識を学ぶ姿勢をもつことで、三世代が協力して子育てできる理想的な環境を作ることができます。これこそが、じじ・ばばにしかできない最高のサポートなのです。

(参考)
ぎふ子育て応援団|孫育てガイドブック 〜孫でマゴマゴしたときに読む本〜
WHO|Breastfeeding
厚生労働省|関連する母子保健事業の概要
ベネッセ教育情報|体の発達・心の発達
日本小児アレルギー学会|アレルギー予防診察ガイドライン リスク因子と予防
日本歯科医師会|歯と口の健康週間 啓発活動
日本経済新聞|「買って!」から始まる金銭教育 年代別、親の心得