教育を考える 2018.7.6

継続は進化に繋がっていく~タレント・コロッケさん~

継続は進化に繋がっていく~タレント・コロッケさん~

学生時代、地元・熊本では人気者だったコロッケさんですが、ライバルが多い東京は勝手がちがったそうです。それでもコロッケさんは、好きなことを仕事にするために必死になって夢にしがみつきました。デビューから今年で38年になるコロッケさんですが、その心持ちは「いまも変わらない」と言います。浮き沈みが激しい芸能界のなかで夢をつかみ、成功するために大切なこととは――。コロッケさん自身の経験から、子どもたちが夢を実現するために大切なことについてアドバイスを頂きました。

構成/岩川悟 取材・文/洗川俊一 写真/石塚雅人

臆病で小心だから進化することができる

――芸能人を目指したコロッケさんは、周囲の反対を振り切って熊本から上京したということですが、ご自身のなかで自信があってのことだったのでしょうか。

コロッケさん:
反対を振り切ったのはじつは2回目の上京のときで……その前に1度、東京へ行ってすぐに熊本に戻ったことがあったんです。なぜ戻ったかと言えば、赤塚不二夫さん、タモリさん、所ジョージさんの前でモノマネを披露する機会を頂いて、「うーん、似てるけど面白くないね」とダメ出しをされて……。それでも再度上京を決意したのは、自分のモノマネに「これならいける!」というものをつかんだからでした。でも、甘くはありませんでしたね……。上京した年のお正月は、僕の部屋にはコタツもテレビもありませんでしたよ。僕自身もすっかり忘れていたのですが、お金がなくて質屋に入れてしまったんです。当時は、とにかくお金がなかった。道に捨ててある瓶を拾って売って、お金をつくったりもしていましたから(笑)。

――希望を胸に上京してきたコロッケさんとしては、いきなりの挫折ですよね。

コロッケさん:
挫折といえば挫折ですが、はじまったばかりでしたし、後は這い上がるだけですからね。それに、落ちるところまで落ちている状態なので、それ以上は落ちることはありません。それよりも、少しでも上ったときに落ちるのが怖かった。僕は、人生とはヌルヌルで滑りやすい坂の上を歩いているようなものだと思っているんです。

――ヌルヌルの板を歩くことが人生?

コロッケさん:
人気商売と言われる芸能界は特にそうかもしれませんが、一瞬でも気を抜くとすぐに奈落の底に落ちてしまいます。だから、手の指と足の指を立て、ときにはひざまで使って落ちないように頑張るしかない。若い当時の僕は、そこまでしてでもしがみつこうと思っていました。

――コロッケさんがそこまで必死にしがみついた理由はどこにあったのでしょう。

コロッケさん:
それは……売れるまで田舎に帰りたくなかったから(笑)。東京に出てきて、数年でダメになったからといって帰るのは絶対に嫌でしたね。いろいろな意見があると思いますが、僕は田舎に帰るのはカッコ悪いと思っていたんです。なぜなら、僕が人目を気にする小心者だからかもしれません。

――コロッケさんのモノマネを拝見していると、とても小心者とは思えないのですが(笑)。

コロッケさん:
僕のモノマネは度を超えたものが多いですから、そう思われても仕方ない。モノマネ対象の方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです(笑)。でも僕は、本質的には臆病で小心。だからこそ、ヌルヌルの坂にしがみつくことができたし、好きなモノマネを続けてこられたと思っています。圧倒的に後輩が多くなって、「コロッケさん」なんて言われることも多くなりはしましたが、いまでも僕は「オレのモノマネって最高だろう!」というような気持ちになることはまったくありません。だからなのか、ヌルヌルの坂から落ちはじめていることに気づかない若い子たちを見ていると、「もったいないなあ……」と思いますね。

――もったいないとはどういうことですか?

コロッケさん:
落ちはじめているときは、まだまだテレビや舞台などからオファーが届いている状態です。そのときに、新しいネタを見せられていれば落ちなくていいし、もっと上ることだってできます。それなのに、「いまウケているから」といって新しいネタをつくらないんです。僕はデビューして今年で38年になりますが、いまだにネタを量産し続けています。若い子たちがチャンスをもらっているのに頑張らないのは、僕にとっては不思議で仕方ない。僕は、いまでも「大丈夫? ウケてる?」と不安になることがしょっちゅうあるし、まだまだモノマネを面白くして、レベルを上げていけると信じています。

――なるほど。

コロッケさん:
継続することは「進化」することなんです。僕のモノマネであれば、「五木ロボット」なんかはその代表だと思います。ずっと五木ひろしさんのモノマネをさせて頂いていたのですが、それを進化させてロボットにしちゃった(笑)。それって継続したところから生まれた進化じゃないですか。それから、最近は落語をモノマネでやるようなこともしています。これもまた進化であり、「応用」です。最近はより、そういう「進化」や「応用」ができるようになって、モノマネすることがますます楽しくなっています。

相手が一番、自分が二番

――コロッケさんがそういう気持ちを抱き続けられるのはどうしてなのでしょう。

コロッケさん:
モノマネが大好きですから。だから、芸の質を上げていくためにモノマネすることはいつまでもやり続けられると思います。でも、お客さまから「NO」と言われれば表現する場所はなくなります。だから、お客さまの反応はいつも気になりますよね。それは、お客さまのことを一番に考える習慣が身についているからなのかもしれません。

――なるほど。相手を思うことが自分を高めることに繋がる。

コロッケさん:
子どものころに母に教えられたことのひとつに、「相手が一番、自分は二番」というものがあります。これは、自分のことを一番に考えるのではなく、相手のことを一番に考えれば、どんなときも相手に不快な思いをさせることはないという教えです。僕が舞台に立てば、その相手はお客さま。自分の芸を押し付けるなんてできません。それに、僕の舞台のお客さまは、上はおじいちゃんおばあちゃんから、下は小さな子どもまで本当に幅広いですから、ひとつのネタで押し通すのは無理があります。僕は舞台に立つ人間として、お客さまに合わせないのは失礼だと考えているんです。

――これからもネタづくりは続いていきそうですね。

コロッケさん:
不安が解消されることはきっとないでしょうから、いつまでもネタをつくり続けるでしょう。ネタをつくることは楽しいですから、まったく苦になりませんけどね。その新しいネタでお客さまによろこんでいただけるなら僕は満足です。相手のことを考えること、そしていつまでも好奇心を持ち続けること、それが好きなことを仕事にする最大のポイントだと思います。


※北島三郎さんのモノマネをするコロッケさん。尊敬するご本人との交流のなかで、多くのことを教わってきたそうです

■ タレント・コロッケさん インタビュー一覧
第1回:【伸びていく子ども】~嫌われない、あきらめない、ミーハーになる~
第2回:【心に残る母からの教え】~焦っていいことなんてひとつもない~
第3回:「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」の三原則
第4回:継続は進化に繋がっていく

【プロフィール】
コロッケ(ころっけ)
1960年3月13日生まれ、熊本県出身。1980年、NTV『お笑いスター誕生』でデビュー。浅草芸能大賞新人賞、ゆうもあ大賞大賞、ゴールデンアロー賞大賞および芸能賞受賞など受賞歴多数。全国でモノマネコンサートを行うかたわら、テレビ・ラジオ、舞台等でも活躍する日本を代表するエンターテイナー。現在のモノマネのレパートリーは、300種類を超える。また、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、北京をはじめ、アメリカ・ラスベガスでの公演も大成功を収めた。東京『明治座』、名古屋『中日劇場』、大阪『新歌舞伎座』、福岡『博多座』などの大劇場での座長公演を定期的に努め、2013年3月には、松尾芸能賞演劇優秀賞を受賞した。2016年には、自身がプロデュースしたモノマネレストラン『CROKET MIMIC TOKYO』(東京麻布十番)がオープンし、連日多くの来場客が訪れている。著書に『母さんの『あおいくま』(新潮文庫)、『マネる技術』(講談社α新書)がある。2018年6月16日からは、本名の滝川広志で誂んだ初主演映画『ゆずりは』が公開になった。

●コロッケさん(滝川広志)初主演映画『ゆずりは』公式サイト
☆コロッケさんからのコメント☆
「死と向き合う葬儀の現場を舞台に、どう生きてきたのか、どう生きていくのかを考えさせられる、ヒューマンドラマです。初主演となる今作品は、完全にモノマネを封印し、コロッケではなく本名の滝川広志として取り組んでいます。ぜひ、劇場に足を運んでください!」

【ライタープロフィール】
洗川俊一(あらいかわ・しゅんいち)
1963年生まれ。長崎県五島市出身。株式会社リクルート~株式会社パトス~株式会社ヴィスリー~有限会社ハグラー。2012年からフリーに。現在の仕事は、主に書籍の編集・ライティング。