教育を考える 2018.7.3

「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」の三原則~タレント・コロッケさん~

「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」の三原則~タレント・コロッケさん~

コロッケさんが、芸能人になることを夢見て親をはじめとした周囲の反対を押し切って熊本から単身上京したのは19歳のとき。「芸能人になる!」という強い思いで故郷を後にしたコロッケさんは、少しずつ実績を積み重ね、お年寄りから小さな子どもまで誰もが知る「モノマネタレント」としての確固たる地位を確立していきます。個性が際立つ人間がひしめく芸能の世界で夢をつかむためにしてきた大事なこととは――。コロッケさんご自身の経験から、好きなことを仕事にするために必要なことをアドバイス頂きました。

構成/岩川悟 取材・文/洗川俊一 写真/石塚雅人

好きなことを続けると、さらに好きになっていく

――好きなことを仕事にするのは簡単ではないと思いますが、コロッケさんが子どもたちにアドバイスするとしたらどんな言葉をかけますか?

コロッケさん:
好きなことがあるなら、とにかく興味を持って続けることに尽きます。本当に好きなことなら、興味を持つとあれこれ工夫したり、アイデアが生まれてきたりするものです。そうすると、好きなことがますます好きになっていく。お子さんが、絵を描くのが好きだとしましょうか。本当に好きなら、たた無闇に描くだけでなく、鉛筆で描いたらどうなるんだろう? 色鉛筆で描いたらどうなるんだろう? 絵の具を使ったら? と、絵の質感を考えるようになります。コピー用紙に描いたらどう見える? スケッチブックに描いたらどう見える? と、紙にこだわる子もいるかもしれませんね。きちんとデッサンの勉強をはじめたくなる子もいるでしょうし、きっと、描くことを何度も何度も練習するはずです。本当に好きなことなら続けられるし、続ければ続けるほどさらに好きになっていくのが自然な流れではないでしょうか。

――続けてみないと、自分が本当に好きなのかどうかわからない。

コロッケさん:
もちろん、最初はわからないと思います。だから、自分の「好き」を確認するために継続することが必要になってくる。きっかけはなんでも構いません。「ケーキが好きだからケーキ屋さんになりたい」からはじまってもいいし、「アニメが好きだから漫画家になりたい」でもいい。「サッカー選手はカッコいいからサッカーをやりたいな」でもありですよね。そこから、続けてみる。ずっと継続するんです。そうすると、本当に自分の興味があることならどんどん好きになります。子どもだけでなく、いまの時代の若い人たちには、好きかどうかわかる前にあきらめてしまうケースが多々見受けられます。むかしとちがって、いまは興味対象が無数にあるから仕方ないことかもしれませんが、だからと言って次々とちがうことに手を出すのは気になるところですけどね。

――コロッケさんがモノマネに興味を持ったきっかけを教えてください。

コロッケさん:
子育てサイトのインタビューに適しているかどうかわかりませんが……きっかけは「女の子にモテたかったから」(笑)。学校のクラスには必ずと言っていいほど、カッコ良くて、頭も良くて、さらにスポーツ万能という子がひとりやふたりいますよね。僕はもちろん、その他の部類……(苦笑)。「どうしたら彼らに勝てるかなあ?」と考えているときに、目の前にいたのが、沢田研二さんや郷ひろみさんのモノマネで学校中の人気者になっていた、僕の姉でした。そこに影響を受けて、僕もモノマネをはじめたという感じですね。

――モテたくてはじめたモノマネが、どんどん好きになっていったということですか?

コロッケさん:
はい、その一心です!(笑)。家に誰もいなときに、ひとりでこっそりモノマネの練習をはじめました。そうすると、いろいろな人に挑戦するのが楽しくなってきた。ある程度できるようになれば、人前でモノマネを披露するようになって、今度は見てくれる人の期待に応えようとしてさらに練習に力が入ったものです。気づいたら、モノマネが好きで好きでたまらなくなっていました。

タレント・コロッケさんの三原則2

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続けた経験は必ず活かすことができる!

――好きになってなにかに夢中になることは、その人間の個性をつくることにも繋がるような気がします。

コロッケさん:
それは間違いなく繋がると思いますね。好きなことを続けていると、それがその人のオリジナリティになります。たとえば、好きな食べ物があるとします。それを、ただ食べるだけでなく、いろいろなお店で食べてみる。そうすると、お店によって味がちがうことに気づくじゃないですか。そうなると、「このお店の味はこんな特徴があってね」とか「あのお店で食べるならこっちのお店のほうがいいかもよ」とか、友だちや家族に語れるようになっていく。その情報が自分のなかに蓄積されていくと、その食べ物に関してはいつの間にかプロフェッショナルな人間になっているはずです。音楽にしても、絵にしても、スポーツにしても、勉強にしても、すべてが同じこと。どんなことでも、継続することが好きなことを仕事にする第一歩であると自分の経験からも確信しています。

――ただ、思いもよらないアクシデントなどで本当に好きなことでも続けられなくなることがありますよね?

コロッケさん:
どんなに好きでも才能や運などに恵まれなくて、やりたかった仕事に就けないことはあるかもしれません。プロスポーツ選手を目指していたとしても、怪我で続けられなくなったとか、身体的に恵まれなかったとか、あきらめざるを得ないことはきっとあるでしょう。そういうターニングポイントで、これまでとはまったくちがう世界にチャレンジする人がいますが、僕はそれまでの経験を捨ててしまうのはもったいないと考えています。

――本当の夢をあきらめても経験は活かせる?

コロッケさん:
怪我でプロスポーツ選手にはなれなくなったかもしれませんが、そのスポーツに携われる仕事はいくらでもありますよね。トレーナー、栄養士、広報、マネージャー、グラウンド整備士のような仕事もあれば、記者やアナウンサーやテレビのディレクターなど、メディア関係の仕事だってある。それまで続けてきたことで蓄積された経験を活かさないのは、自分からチャンスを捨てているようなものです。好きであるならば、その世界で生きることはできます。

――継続するコツがあれば教えてください。

コロッケさん:
僕には、大切にしている『三原則』があります。「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」。このことをいつも心がけて、その意味をきちんと考えていれば、好きなことを続けられるはずですよ。選手としてできなくなったとしても、そのスポーツのどこかにまた自分の経験が活かせる場所が見つかるはずです。それに気づいたら、やってみましょうよ。やってみて面白かったら、できるかどうかチャレンジしましょう。継続するって、そういうことです。そうすると、もっともっと好きになって続けたくなりますから。

タレント・コロッケさんの三原則4
※ステージでモノマネを披露するコロッケさん。公演は連日超満員で、全国各地のファンを笑いに包んでいる

■ タレント・コロッケさん インタビュー一覧
第1回:【伸びていく子ども】~嫌われない、あきらめない、ミーハーになる~
第2回:【心に残る母からの教え】~焦っていいことなんてひとつもない~
第3回:「気づくか気づかないか」「やるかやらないか」「できるかできないか」の三原則
第4回:継続は進化に繋がっていく

【プロフィール】
コロッケ(ころっけ)
1960年3月13日生まれ、熊本県出身。1980年、NTV『お笑いスター誕生』でデビュー。浅草芸能大賞新人賞、ゆうもあ大賞大賞、ゴールデンアロー賞大賞および芸能賞受賞など受賞歴多数。全国でモノマネコンサートを行うかたわら、テレビ・ラジオ、舞台等でも活躍する日本を代表するエンターテイナー。現在のモノマネのレパートリーは、300種類を超える。また、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、北京をはじめ、アメリカ・ラスベガスでの公演も大成功を収めた。東京『明治座』、名古屋『中日劇場』、大阪『新歌舞伎座』、福岡『博多座』などの大劇場での座長公演を定期的に努め、2013年3月には、松尾芸能賞演劇優秀賞を受賞した。2016年には、自身がプロデュースしたモノマネレストラン『CROKET MIMIC TOKYO』(東京麻布十番)がオープンし、連日多くの来場客が訪れている。著書に『母さんの『あおいくま』(新潮文庫)、『マネる技術』(講談社α新書)がある。2018年6月16日からは、本名の滝川広志で誂んだ初主演映画『ゆずりは』が公開になった。

●コロッケさん(滝川広志)初主演映画『ゆずりは』公式サイト
☆コロッケさんからのコメント☆
「死と向き合う葬儀の現場を舞台に、どう生きてきたのか、どう生きていくのかを考えさせられる、ヒューマンドラマです。初主演となる今作品は、完全にモノマネを封印し、コロッケではなく本名の滝川広志として取り組んでいます。ぜひ、劇場に足を運んでください!」

【ライタープロフィール】
洗川俊一(あらいかわ・しゅんいち)
1963年生まれ。長崎県五島市出身。株式会社リクルート~株式会社パトス~株式会社ヴィスリー~有限会社ハグラー。2012年からフリーに。現在の仕事は、主に書籍の編集・ライティング。