あたまを使う/教育を考える/親の関わり/非認知能力 2025.7.8

その “モヤモヤ”、言葉にできてる? 子どもの問題解決力を育む【料理】【ストレス】【親子関係】

編集部
その “モヤモヤ”、言葉にできてる? 子どもの問題解決力を育む【料理】【ストレス】【親子関係】

「これ、どうやって開けるの?」「〇〇ちゃんに『遊びたくない』って言われた……どうしよう?」――子どもの「困った!」に、つい手を差し伸べてしまうことはありませんか?

でもじつは、その「困った」こそが成長のチャンス。答えがすぐ手に入るいまの時代だからこそ、子どもが自分の力で壁を乗り越える「問題解決力」が重要になっています。

「うちの子、すぐ諦めちゃって」「何でも『わからない』って言うんです……」そんな悩みを抱える親御さんも多いはず。でも大丈夫。問題解決力は、日常のちょっとした工夫で確実に育てることができるのです。本記事では、専門家の意見をもとに、子どもの問題解決力の伸ばし方について具体的に解説します。

子どもの「問題解決力」とは? いまの時代に欠かせない理由

「問題解決力」とは、目の前の課題やトラブルに対して適切な方法で解決する力のことであり、勉強や人間関係、日常生活などあらゆる場面で必要とされます。特にこれからの時代は、答えのない問題に向き合う力が求められるため、与えられた情報を覚えるだけでは対応できません。柔軟な思考と行動力を育てる「問題解決力」は、まさに子どもの将来を支える基盤となるでしょう。

探求型学習教室「LOUPE(ルーペ)」を運営する伊東美波氏は、問題解決力を育む探求学習の重要性を説きます。自分で問いを立て、自分なりの答えを見つけるプロセスを大切にする探求学習。それを学ぶことで、問題に直面したときの “モヤモヤ” をそのままにせず、言葉にして整理する力が身につき、次の一歩を後押しするのだと言います。

問題解決力の土台を築く「感情の整理」は、子どもだけでなく大人もぜひ身につけたいところ。トラブルに対して「いまどんな気持ちなのか」を冷静に考え、家族や仲間と共感し合い、解決策を見つけ出すことが求められるため、人生をより豊かに楽しくするのにも一役買ってくれそうですね。

次項では、さまざまな分野の専門家の意見をもとに、「子どもの問題解決能力を育むために家庭でできること」について解説していきます。

問題解決力を育む02

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調理体験で育む! 子どもの実践的「問題解決力」の育て方【松島悦子氏】

食育や家族社会学を専門とする松島悦子氏は、「子どもの問題解決力を伸ばすのに “調理体験” は大いに役立つ」ことを明かしています。調理の過程には、材料をそろえる、手順を考える、途中の失敗に対応する……など小さな課題が次々と出てきます。こうしたプロセスを自分で乗り越えることが、実践的な問題解決力の土台になるのです。

さらに、調理は小さな成功体験を積み重ねる作業でもあります。「ひとつできたら、次はちょっとだけ難しいことに挑戦する」ことで、達成感を味わいながら自己効力感や自信も育まれていくでしょう。

松島氏は「親は細かく口を出すのではなく、必要な手順を伝えたらあとは極力見守ってほしい」とアドバイスします。調理を通して得られる「考えて行動する力」は、変化の激しい社会を生きる子どもたちにとって、大きな武器になるはずです。

【問題解決力の育て方】

  • 休日などに子どもと一緒に料理をする機会をつくる
  • できる工程は子どもに任せ、親は「見守る」姿勢を意識する
  • 成功したらすぐ次の課題へ。「少し難しいこと」に挑戦させてみる

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親の “聞く力” がカギ! 子どもの問題解決力を伸ばす関わり方【瀬川文子氏】

子どもの問題解決力を育むにあたり、「親の聞き方」にヒントが隠されているのをご存じですか?

心理学や教育学をベースにした親子コミュニケーションプログラム「親業」の実践を通じて、多くの家庭に寄り添ってきた親業訓練協会の瀬川文子氏によると、子どもの話を聞くときには「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」の2つを意識することが大切なのだそう。

たとえば、うなずく・黙って聞くなどの「受動的な聞き方」に加えて、子どもの言葉を繰り返す・言い換える・気持ちを汲み取るといった「能動的な聞き方」が、問題解決力を育むのに効果的なのだといいます。

特にこの “能動的に聞く” 姿勢が、子どもに「自分の気持ちが受け止められた」という安心感を与え、自ら考えて解決策を導き出す力へとつながっていきます。大事なのは、子どもの気持ちに共感し、寄り添うこと。充実したコミュニケーションは、子どものあらゆる能力を伸ばすカギになりますよ。

【問題解決力の育て方】

  • 子どもの話には、うなずきや促しなど “受け止める” 姿勢をも
  • 言葉を繰り返す・言い換えるなど、能動的な聞き方を意識する
  • 気持ちに共感し、答えを急がず子ども自身の考えを待つ

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問題解決力を育む03

思考ツールで育てる! 子どもの「原因と結果を考える力」【飛田基氏】

「幼い子どもは目の前の欲求に従って行動しがちで、長期的な視点をもつのが難しい」と語るのは、NPO法人・教育のためのTOC日本支部で思考ツールの普及に取り組む飛田基氏です。子どもたちがよりよく考え、行動できるようになるには、日常のなかで 「因果関係を整理する力」を育てていくことが大切だと話します。

たとえば、「この行動をしたら、次に何が起こるか」「こうすると、どんな結果になるか」といった “原因と結果のつながり” を言葉にする機会を増やすことで、子どもは自分の選択を客観的に見つめられるようになるでしょう。過去のインタビュー記事に詳しい方法が紹介されているので、ぜひ参考にしてくださいね。

この力は、目の前の課題に冷静に向き合い、最適な解決策を見つけ出す土台になります。楽しみながら思考の訓練を重ねていくことで、問題解決力はもちろん、「長期的な視点で考える力」も自然と育っていくでしょう。

【問題解決力の育て方】

  • 日常のなかで「行動→結果」の流れを一緒に整理する習慣をつける
  • 子どもが自分の選択を言葉にできるよう促す
  • 思考ツールを使って “考え方” の型を身につける

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ストレスに負けない! 「選べる力」が子どもの問題解決力を育む【小関俊祐氏】

ストレスとの向き合い方という観点から、子どもの問題解決力を育む方法を提唱しているのは、日本ストレスマネジメント学会で子どものメンタルサポートにも携わる小関俊祐氏です。

ストレスへの対処法には、「情動焦点型」と「問題解決型」の2種類があります。「情動焦点型」とは、過去の出来事など自分の力ではどうにもできない問題に対して気分転換を図る方法。「問題解決型」は、たとえば明日のテストのようにこれから起こることによるストレスに対して、行動を通して対処する方法です。

「問題解決型」において、ストレスを回避する手段は多いほどよいとされており、小さいうちは親が “いくつかの手段” を提示する必要があります。たとえば、勉強に集中できないという悩みに対して、親が付き添って勉強する、ひとりで部屋にこもる、塾に通うなど、複数の方法を一緒に考えることが有効です。

大切なのは、親が「これが正解」と決めつけず、子ども自身が納得できる形で選べるようにサポートしていくこと。そうした積み重ねが、ストレスに柔軟に対処しながら解決策を導く力を育ててくれるのです。

【問題解決力の育て方】

  • 子どもが感じているストレスの“種類”に合わせて、対応を変える
  • 解決のための手段をいくつか示し、子ども自身に選ばせる
  • 親の意見を押しつけず、「一緒に考える姿勢」を大切にする

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よくある質問(FAQ)|問題解決力の育て方

Q1. 問題解決力って、具体的にはどんな力のこと?

A. 問題解決力とは、目の前の課題に対して自分で考え、選び、行動しながら解決に導いていく力です。正解が一つではない現代においては、「どうすればいいか」を自分で判断する力が欠かせません。困ったときに立ち止まらずに一歩踏み出せる力、それが問題解決力の本質です。

Q2. 幼児や低学年の子にも、問題解決力は育てられますか?

A. はい、育てられます。たとえば「靴が見つからない」といった小さな困りごとでも、「どこで脱いだかな?」「昨日はどこに行った?」と一緒に考えることが立派なトレーニングになります。年齢に合わせた「考える経験」を積み重ねていきましょう。

Q3. 失敗ばかりしていると、子どもが自信をなくさないか心配です。

A. 失敗は、じつはとても貴重な学びのチャンスです。大切なのは、その失敗をどう受け止め、次にどうつなげるか。親が「失敗してもいいんだよ」と受け止めてあげることで、子どもは安心してチャレンジできるようになります。成功体験とあわせて、失敗体験も “自信” につながります。

Q4. 親がどこまで手伝うべきか、判断が難しいところです。

A. つい手を出したくなりますが、まずは子どもに考えさせてみましょう。すぐに答えを与えるのではなく、「どうしたい?」「ほかに方法はあるかな?」と問いかけることで、自ら考える力を引き出せます。親は “見守る姿勢” を意識してサポートすることがポイントです。

Q5. 問題解決力を育てるのに役立つ日常的な習慣はありますか?

A. 料理や買い物、遊びのなかでも育てることができます。たとえば「卵がないけど、どうする?」など、日常のなかで自然に「考える→選ぶ→行動する」機会をつくってあげましょう。無理なく、楽しく取り入れられることが長続きのコツです。

***
子どもの「問題解決力」は、変化の激しい時代をたくましく生きるために欠かせない力です。そしてその力は、特別な教育プログラムで育まれるものではありません。親ができることは、先回りして問題を解決してあげるのではなく、「考える時間」を与えて、見守りながら寄り添うこと。そして、ときには一緒に悩みながら、答えにたどり着く過程を共有しましょう。小さな「できた!」の積み重ねが、これからの時代を生きる確かな力となっていくはずです。

文/野口燈

(参考)
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