少子化にともない年々増加している「ひとりっ子」。みなさんのまわりでも珍しくないはずです。もしくはご自身が、「うちの子、ひとりっ子で大丈夫かな」「きょうだいがいたほうがいいの?」と悩んでいませんか?
でも、ちょっと待ってください。あなたが考えている「ひとりっ子への常識」、じつは全部間違っているかもしれません。ひとりっ子は「わがまま」どころか、むしろ圧倒的なアドバンテージをもっていました。専門家たちが口を揃えて「ひとりっ子のほうが有利」と断言する理由とは?
もしみなさんのなかで、ひとりっ子をマイナスだととらえる瞬間があるのなら、ぜひ本記事を最後までお読みください。きっと「ひとりっ子ってすばらしい!」と見直すきっかけになるはずです。
目次
「ひとりっ子=わがまま」は根拠のない思い込みだった
「ひとりっ子」と聞いて、「わがまま」「自己中心的」「協調性がない」などのネガティブなイメージを抱いている人は、すぐにその認識を改めたほうがいいでしょう。なぜなら、ひとりっ子の割合が増えているいま、そのポテンシャルの高さに注目している専門家も多く、ひとりっ子だからこそ身につく長所や魅力が知られてきているからです。
実際に、ひとりっ子が「わがまま」「協調性に欠ける」といった性質をもつと実証した研究結果などありません。にもかかわらず、これまで長い間、ひとりっ子にネガティブなイメージが根付いていた原因として、「日本が世間体を気にする文化だから」と断言しているのは、明治大学文学部教授の諸富祥彦氏。つまり、まわりの目を気にするあまり、親自身が「わが子のちょっと気になる短所」をひとりっ子のせいだと思い込んでいた可能性が高いのです。
しかし最近では、徐々にそのネガティブなイメージが覆されてきています。
ひとりっ子の驚くべき、4つの「特別な才能」
「きょうだい型人間学」を専門とする心理学博士の礒崎三喜年氏は、「きょうだいがいない環境で育つということが、その行動特性や性格に大いに影響を与える」ことを前提としたうえで、次のような、ひとりっ子の特徴を挙げています。
まず、「自分に自信をもっている傾向が強い」ということ。きょうだいがいる場合、スポーツでも勉強でも家族のなかで比較される機会が多いですが、ひとりっ子の場合はそれがありません。また、親の時間も物理的な資源も、すべてをひとりっ子に注ぐことができる環境にも言及し、「親の愛情を存分に受け取れる環境のなかで、自然と自信を身につける」のがひとりっ子の特徴だと述べています。
さらに、ひとりっ子はひとりで過ごす時間をマイナスだと感じません。自分の好きなことや興味関心のあることをとことんまで追求できるので、ひとりっ子は研究者やアーティストとして成功するケースが多いと言われています。将来大仕事を成し遂げるには、自分に対する自信をベースにした、他人と自分を比較しないひとりっ子のメンタリティーが力を発揮するのです。
諸富氏も「ひとりっ子は自尊心があって、達成意欲が高い子が多い。しかも、コツコツと成し遂げる子が多い」ことを特徴に挙げています。きょうだいという競争相手がいないぶん、自分が何ができて何ができないか、自らの物差しで考えて取り組める環境で育つのは、ひとりっ子の強み。つまり、子ども本人が自らを育んでいけるぜいたくな環境だと言えるでしょう。
ほかにも、「ひとりっ子は自分に対する競争心が人一倍強い子が多い」と指摘するのは、米ハワイ州でバイリンガルオンラインスクールを運営する船津徹氏です。理由は、先述したように親の愛情を100%、一身に受けて育つ環境ゆえに、「自分が一番」という根拠のない自信が大きく、いい意味でのプライドの高さが育つから。「負けたらくやしい!」という感情は、競争心と向上心をぐんぐん後押ししてくれます。それは、他者に対してよりも、自分自身の能力を向上させるための原動力になるでしょう。
ひとりっ子の驚くべき才能
- 親の愛情を独り占めできて満たされているから自分に自信がある!
- ひとり時間を楽しめるから興味のあることをとことん追求して極められる!
- 競争相手がいない環境で自分に集中できるぶん達成意欲が強い!
- 「自分が一番!」の自信家だから自分に対する競争心が強い!

「きょうだいがいない」からこそ得られる家庭のメリット
続いて、親の立場から見た「ひとりっ子のメリット」についても見ていきましょう。
まず、もっとも大きいメリットのひとつに、教育費や時間的リソースを割きやすい点が挙げられるでしょう。何百組のひとりっ子の親子を見てきたという進学塾「VAMOS」代表・富永雄輔氏は、「子どもに手をかけられる時間が多く取れるので、多子家庭に比べて子育ての自由度が高い」ことを指摘しています。
きょうだいが多いと家事と育児にかかる時間は必然的に増えますが、ひとりっ子ゆえの時間的・金銭的余裕は、親自身の心の余裕にもつながります。その結果、子どもにじっくり向き合うことができ、わが子への理解度もぐんと深まっていくというわけです。
ひとりっ子親は、わが子に対して「きょうだいがいないから、いろいろなことを経験させてあげられなくて申し訳ない」という後ろめたさを抱きがち。しかしそれは間違いです。富永氏は「ひとりっ子の親は意識的に子どもにたくさんの経験をさせている」と断言します。
習い事や体験学習など、ひとりっ子だからこそフットワーク軽く参加している家庭も多く、「ひとりっ子=経験不足」というのはまったく当てはまらないのだそう。特に最近の習い事は、社会生活を教えることがベースにあるので、さまざまな体験を通じて、社会とのつながりやコミュニケーションの方法を学ぶことができます。
また前出の礒崎氏は、「ひとりっ子はきょうだいがいないことで親との関係性が非常に強く、その関係を重視する傾向にある」と述べています。親とのコミュニケーションが密になるぶん、親のことを対等な人間として認め、尊重し、大事な局面で信頼して相談してくれるのがひとりっ子。自立してからも、親子の関係が良好になりやすいのです。
ひとりっ子家庭のいいところ
- 時間的・金銭的余裕が生まれる!
- 余裕があることで、親自身も落ち着いた気持ちで子どもと向き合える!
- フットワークが軽いのでさまざまな経験ができる機会を与えやすい!
- 親と子の関係性が強くなる!
ひとりっ子の才能を伸ばす! 家庭でできる関わり方
最後に、ひとりっ子に備わっているポテンシャルを引き出すために、家庭でできる関わり方のポイントについて、専門家のアドバイスをもとに解説します。
ポイント1:子どもの「ひとり時間」を全力応援!
「ひとりっ子には、ひとりの時間を存分に楽しめる環境を与えるとよい」と礒崎氏が話すように、おもちゃでも教材でも楽器でも、子どもが興味をもちそうなものをいろいろと与えてあげましょう。
決して「遊び相手になるきょうだいがいなくてかわいそう……」と罪悪感を覚える必要はありません。好きなことにとことん向き合って追求できる時間と環境があるなんて、最高だと思いませんか? いずれ「これだ!」というものを見つけるまで、長い目で見守ってあげることが重要です。
ポイント2:一緒に遊ぶときは「真剣勝負」で!
ひとりっ子だと必然的に親と遊ぶ時間が増えます。そんなときは、子ども扱いせずに「手を抜かない」ことが鉄則です。船津氏によると、「親が本気で子どもに向き合えば、子どもは『負けず嫌いの精神』を発揮して自主練習を重ね、すぐに上達する」のだそう。
トランプやカードゲーム、スポーツ、楽器の演奏など、「勝ち・負け」「上手・下手」が客観的に判断できるものは、真剣勝負で取り組みましょう。そこで子どもが負けたら、「くやしい気持ちをバネに飛躍する方法」を教えるチャンスです。
ポイント3:“あえて” 2番、3番になる機会をつくる
おやつを選ぶとき、食事を取り分けるとき、テレビを観るときなど、家庭内に限れば優先してもらいやすいひとりっ子。だからこそ、「ひとりっ子は、あえて2番、3番になる機会をつくるとよい」とアドバイスするのは、カリスマ保育士のてぃ先生です。
たとえば、おもちゃで遊ぶときに「今日はパパがこれ使おう。〇〇くんは2番目ね」など、あえて子どもを優先しない場面をつくります。そうすることで、自分はいつでも優先されるわけではないんだ、ということを学べるでしょう。
また、遊びやお手伝いなどを通して、「人と一緒に何かをする経験」を意識的につくってあげることも大切です。協力して何かに取り組む経験は、協調性を育みます。その際に「ママはこれやるから、〇〇ちゃんはこれを手伝って」と役割を与えると、責任感も芽生えますよ。
ポイント4:親は「ひとりっ子ってハッピー!」の精神で!
「きょうだいがいないとコミュニケーションができないわけではない。親子の活発なコミュニケーションを重視して」と話すのは、保育施設代表の柴田愛子氏。ひとりっ子であることを過度に心配したり、気に病んだりせず、親自身がリラックスして素の自分を見せるようにしましょう。そうすれば、親がどういう人間か子どもに伝わり、人対人として向き合えるようになります。
また諸富氏も、「ひとりっ子であることに罪悪感をもつのではなく、むしろ、この子は親の愛情を独り占めできるハッピーな子だと思って接してあげて」とアドバイスしています。そもそも子ども自身は、ひとりっ子の環境しか知らないので劣等感をもつことはありません。親がポジティブにとらえることで、ひとりっ子はのびのびと成長することができるでしょう。
***
柴田氏は「ひとりっ子のよさは、親の愛情を疑わないところ。過干渉にならないように、ときどき目をそらしながら愛情を注いであげれば、ちゃんとまっすぐ育っていきます」と話します。「ひとりっ子だから」「ひとりっ子なのに」と、ひとりっ子であることをネガティブに考えず、「この子と過ごせる時間がたっぷりあって幸せ」と考えるようにしませんか?
文/野口燈
(参考)
講談社 コクリコ|「一人っ子はワガママ」ほんとう?「きょうだいがいない強み」とは?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|末は研究者か芸術家!? きょうだいがいないことで自信を持つ「ひとりっ子」
ダイヤモンド・オンライン|「ひとりっ子=競争心が育ちづらい」は真っ赤なウソ!親が守るべき鉄則は?
講談社 コクリコ|「一人っ子」に伸びしろあり なのに「親たちがハマりやすい罠」を子育て専門家が解説
YouTube|【ひとりっ子はワガママになりやすい】は嘘だった!1人を育てるポイント
NHK すくすく子育て|「ひとりっ子の子育て」