教育を考える 2019.10.8

持久力の“ある子”と“ない子”の違い――「頑張る力」が弱くなる生活習慣とは?

宍戸 洲美
持久力の“ある子”と“ない子”の違い――「頑張る力」が弱くなる生活習慣とは?

10月は「スポーツの秋」とも言われますね。青空の下で思いっきり体を動かして、自分の好きな運動にチャレンジしましょう。たっぷり体を動かすことで気分も爽快になり、冬に風邪をひきにくい体づくりにもつながります。

近年の子どもたちの「持久力」の傾向について

最近の子どもたちは「体力」や「持久力」がないとよく言われますが、そもそも「体力」や「持久力」とは何を指すのでしょうか。

まず、毎年全国の小学生と中学生を対象に行なっている「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」についてご説明しましょう。この調査は、体力・運動能力を評価する新体力テストと、運動頻度や運動時間などの生活習慣のアンケート調査を通じて、子どもたちの体力・運動能力、運動習慣などの状況を把握し、体力の向上に役立てることを目的としています。小学生には「握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げ」の8項目の調査が実施されています。

その結果について、スポーツ庁の分析によると、子どもの体力は昭和60年頃をピークに低水準となっているとのこと。ここ数年は低下傾向が抑えられ、ほぼ横ばい状態を保っているものの、改善には至っていないのが現実です。

しかし調査結果を見る限り、握力やソフトボール投げなど一部の年齢や項目では低下傾向はありますが、全体的には横ばい、または上昇傾向も見られます。ただし、これはあくまでも平均値です。

心配されるのは、同調査で行われている運動習慣のアンケート結果です。それは、運動する子どもとしない子どもの二極化”が起きていること。このことから、体力や運動能力にも二極化の問題が潜んでいると十分考えられます。


(子どものからだと心白書2004 P121 を参照し、筆者にて作図)

この図では「持久力」も含めた総合的な体力の相関関係を示しています。今回のテーマである「持久力」と「忍耐力」についてですが、「持久力」は「行動体力」のひとつです(図参照)。しかし、体だけではなく精神的な要素が強く影響します

たとえば、持久力を見るテストとして“20mシャトルラン”が行われますが、途中でつらくてあきらめてしまえば当然その結果は低くなります。だからと言って、全体的に持久力が落ちてきているというわけではなさそうです。

持久力がある子はどんな子? ない子はどんな子?

持久力のある子とない子、その違いは一言でいえばどこまで頑張り続けられるかです。

もちろん、その基礎となる心肺能力や筋力なども関係してくるでしょう。100m走が得意な子どもとマラソンが得意な子どもがいて、どちらが体力があるかなどという比較はできませんし、それぞれの身体能力には違いがあります。

このような条件を除くと、やはり自分の体力が続く限り頑張りきる子どもと、少し辛くなったらすぐあきらめてしまう子どもは分かれます。しかし、こうした子どもでも体を動かす楽しい遊びを導入することで、体力の限界まで遊び込む様子はたくさん見てきました。

当然、食事や睡眠なども、意欲や活動エネルギーに関係してきます。夜更かしした子ども、朝ご飯を食べていない子どもたちはどうしても頑張る力が弱くなります。体力調査の日に、朝ご飯を食べてこなかったから頑張れないというような子どももいたことから、生活習慣による影響は非常に大きいと言えるでしょう。

持久力とは、そもそも伸ばせるのか? どうやったら伸ばせるのか?

体力や運動能力を伸ばすには、体を使ったさまざまな遊びを幼児期からたっぷり経験させるのが一番。昨今子どもに運動させる機会として最も多いのは、ある特定のスポーツをさせることではないでしょうか。「運動をしている」と答える子どもの多くが、どこかのスポーツ少年団に属していたり、スイミングクラブや体操クラブに通っていたりします。

昔は、原っぱや空き地で子どもたちが集まって鬼ごっこやかくれんぼ、あるいは木登りや草野球などで大人に管理されず自由に遊んでいました。このような経験を通して、体の使い方や想像力や創造力などが培われ、何よりも体を動かす楽しさを子どもたちが実感できたのです。いわゆる「夢中で遊ぶ」体験ですね。

今、子どもたちがチャレンジしているのは特定のスポーツが多く、うまくなれば「苦しいけど楽しい」を実感できますが、いくら頑張ってもレギュラーにはなれない子どもたちの中には「楽しくない」という子もいます。

また、野球はとても上手なのに逆上がりはできないとか、平均台の上をバランスをとって歩くことができないなど、体の使い方がとても偏ったまま発達している子どもも増えてきたように感じます。

年齢が低ければ低いほど、自然の中でたっぷり遊ばせることによって、からだを動かす楽しさを味わえます。そして外遊びが好きになれば、結果的に「持久力」だけでなく「生きる力」を伸ばすことも可能になるというわけです。

運動に臨む気持ちを支える「忍耐力」について

一方、「忍耐力」は体力や運動能力テストでは測れません。「忍耐力」とはその字の通り、困難なことに出会ったとき耐える力のことです。では一体、それを支えるものは何なのでしょう。

そもそも最後まで頑張れるのは、自分から「やってみたい」とか「挑戦してみたい」という主体性や意欲があってこそ。困難な状況に出会ったとき、自分で選んだことなのかそうでないのかによって、頑張れるかどうかが変わってくるのです。

そのためには運動に限らず、日ごろから生活の中で「〇〇しなさい」という指示を出すよりも、「自分がどうしたいのか考えて決めてね」と、年齢に応じて子ども自身に主体的に決めさせることが大切です。

また、自分で決める力の元になるのは、親から注がれた愛情を基盤にした「自分は大切にされている」「自分は大切な存在である」という自信ではないでしょうか。この自信がないと、ちょっと大変な状況に出会っただけで、すぐに「自分はダメだ」とあきらめてしまいます。

愛情には優しさと厳しさが必要ですが、小さなときから子どもにしっかりと向き合い、子どもが頑張ったときはきちんと認めてあげることが大切です。「自分も頑張ればできる」という体験の積み重ねが「忍耐力」にも影響するのではないでしょうか。

科学的なアドバイスを取り入れてコツをつかむ

ここからは、お子さんの忍耐力についてお悩みの親御さんに、いくつかアドバイスをしていきましょう。

【親御さんからの質問 1】

うちの子は、運動があまり上手ではりません。運動ができる他の子と比べては、「どうせできないもん」「私には無理なんだから」などよく言っています。すでに運動に苦手意識を持っている子どもに対して、どんな言葉かけをすればやる気アップにつながるのでしょうか。

世の中には、確かに運動が得意な子どもばかりではありません。ただし、運動は苦手で嫌いでも「読書が好き」とか、「絵を描くのが好き」という子どもがいます。それを変える必要はないでしょう。

しかし、運動の中には「コツ」をつかむとできるようになることも多いので、運動が苦手な子どもでもできなかったことができるようになればうれしいものです。逆上がりや跳び箱などはその典型ですね。

コツをつかむには、科学的な指導の方法を取り入れるといいのですが、専門家でないと難しい面もあります。かつて、体育の先生が跳び箱の授業で子どもたちに指導している様子を見て驚きました。手をつく場所や踏み込む位置、踏み込み方などを少しアドバイスされただけで、子どもたち全員が跳べるようになったのです。

そのような指導は無理だとしても、親の経験を生かして一緒にやってみるといいでしょう。もしくは、専門家の先生による動画や書籍での解説を親子で一緒に見て、そのアドバイスに沿った練習をしてみてもいいですね。

得意なことを見つけて忍耐力をつけよう

【親御さんからの質問 2】

「悔しい」という感情があまりないわが子。お友だちに負けても、自分の以前の記録より劣っていても、まったく気にする様子がありません。なわとびの技なども、できないならもっと忍耐強く練習すればいいのに、やってもせいぜい5~10分ぐらい。親としては、もっと負けん気を持ってほしい。どうしたらいいでしょうか?

「悔しい」という感情は確かに大切ですが、それは運動でなくてもいいのではないでしょうか。苦手なことに取り組むのは大人でも大変です。

たくさんの子どもたちを見ていると「縄跳び」はうまくできないけれども「本を読むことがとても上手」など、子ども一人ひとりに個性があります。「忍耐力」や「負けん気」をつけるという目的であれば、その子どもの得意なことで頑張ればいいのではないでしょうか。

運動の中には努力してもうまくできないこともあります。また、運動能力には遺伝的な要素もあり、親が運動が得意で小さなときから運動に親しむ家庭環境であれば、子どもも自然に「運動で力を発揮したい」と思うようになるものです。

運動以外でも自分が得意なことによって、「負けたら悔しい」という経験をさせることで、「負けん気」や「忍耐力」を養うことは可能だと言えるでしょう。

「嫌な思い」は成長のチャンス!

【親御さんからの質問 3】

自分より足の速い子や運動が上手な子にいつも自慢されるらしく、家に帰ると愚痴を言うことがよくあります。そんなとき、どうアドバイスをしてあげたらいいでしょうか? 「○○って言い返してやりなさい」だと喧嘩になりそうだし、「そんなの気にしないでハイハイって黙ってればいいよ」だと悔しい思いをさせそうだし……。対応に悩みます。

“人のふり見てわがふり直せ”という諺があります。「お友だちの自慢を聞いて嫌な気持ちになった」という経験を生かすことが大切です。

今の子どもたちは他者と比較されて評価されることがとても多く、中には事例に示されたようなお子さんも見かけます。これは、大人の価値観の反映でもあると思います。また、その言葉を聞いて友だちがどのように受け止めたかなど、相手の気持ちを考える力が不足している子どももいいます。

自分が「嫌な思いをした」という経験こそが、絶好の学習機会です。自分がされて嫌なことは、人にしないようにしようねと、親子で話し合えるといいですね。

体を動かす楽しさを知る経験を

体力・持久力から忍耐力まで、運動(スポーツ)はこれらの力をつけるにはとてもいい道具です。しかし、中には運動が苦手な子どももいます。すべての子どもが運動が得意になる必要もないと思います。

でも、まずは体を動かすことが楽しい!という体験をさせてあげたいですね。それは、特定の運動や競技である必要はありません。

自然の中で、ワクワク、ドキドキするような鬼ごっこやかくれんぼ、昆虫や小動物を追いかけて走り回るなどの体験を通して、体を動かしたときの爽快感をたくさん経験させてあげましょう。

(参考)
子どものからだと心・連絡会議編(2004・2018),『子どもの体と心白書』,ブックハウス HD.
スポーツ庁|平成30年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果
スポーツ庁 Web広報マガジン DEPORTARE|~子供の運動習慣における課題とは~「二極化」の改善に取組む「体育」の優良事例をレポート!