「子どもの肌に日焼け止めって必要?」「いつから塗ればいいの?」そんな疑問を抱いたことのあるママ・パパも多いのではないでしょうか。
紫外線は夏だけの問題ではありません。じつは春から秋にかけての長い期間、そして冬でも状況によっては対策が必要なのです。特に子どもの肌は大人に比べて薄く、一年を通じて紫外線の影響を受けやすい状態にあります。でも、「日焼け止めを塗りすぎて肌に負担をかけないか心配……」「ビタミンDをつくるためには日光も必要なんでしょ?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、皮膚科医監修のもと子どもに日焼け止めが必要な理由、季節ごとの使用目安、年齢別の使い方や選び方のポイントをわかりやすくまとめました。正しく知って、一年を通じたお出かけをもっと安心に、そして楽しいものにしましょう!
監修者プロフィール

1999年大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)卒業、東京女子医科大学循環器内科へ入局。その後、大阪府下で有数の患者数を誇った実家クリニックの継承を念頭にさまざまな疾患を診られるよう、2004年に京大病院総合診療科へ入局。専門科に割り振れない、さまざまな疾患(難病・奇病)の診療を経験し、2006年に関西電力病院総合内科へ入局。日常診療に加え、研修医・医学生への指導にあたる。2009年に髙橋内科皮膚科クリニックへ所属し、大阪市立総合医療センター皮膚科にて研修を行う。その後、髙橋内科皮膚科クリニックにて皮膚病疾患診療の研さんを積み、2015年12月にたかはし皮膚科クリニックを開業。現在は1日当たり80~130人の患者の診療にあたる。
HP:https://www.takahashi-hifuka.com/
目次
そもそも子どもに日焼け止めは必要?
子どもの肌は大人に比べて皮膚が薄く、紫外線によるダメージを受けやすい状態にあります。紫外線を浴びすぎると、以下のような影響があります。
・肌が赤く腫れる(やけどのような状態)
・シミやしわの原因になる
・将来的に皮膚がんなどのリスクが高まる
・目の病気(白内障、翼状片など)のリスクが増加
また、子どもの皮膚はバリア機能が未熟なため、紫外線による炎症が悪化しやすく、ダメージの蓄積も心配です。
一方で、紫外線にはビタミンDを生成する役割もあります。ビタミンDは骨や歯の成長に関わる大切な栄養素。だからこそ、”完全に紫外線を避ける” のではなく、上手に防ぎながら適度な日光浴を取り入れることが大切なのです。
最近では、過度な紫外線対策によってビタミンD不足となる子どもも増えてきています。外遊びをしながら、紫外線から肌を守る工夫をすることが重要です。
子どもの日焼け止めはいつから必要?【季節別】
日本では一般的に、紫外線量が増え始める3月下旬から10月中旬までの期間は日焼け止めの使用が推奨されています。特に5月から8月にかけては紫外線量がピークを迎えるため、より丁寧な対策が必要です。
また、気象庁や環境省の調査によると、紫外線量は5月から徐々に増加し始め、7〜8月にピークを迎えます。しかし意外と知られていないのは、春の紫外線も強いということ。3月下旬から既に紫外線量は増え始めるため、春のお彼岸頃から日焼け止めの使用を始めるのがおすすめです。
また、晴れた日だけでなく曇りの日でも注意が必要です。曇りの日でも晴天時の約80%の紫外線が地表に届いています。
子どもの日焼け止めはいつから必要?【年齢別】
子どもに日焼け止めを使い始めるタイミングには、いくつかの目安があります。下表では、子どもの年齢に応じた日焼け止めの適切な使用方法をまとめています。
メリカ小児学会(AAP)では、生後6か月以降の使用を推奨していますが、厚生労働省や日本小児皮膚科学会の見解では、生後1ヶ月検診を終えた頃から徐々に日焼け止めの使用を始めてもよいとされています。ただし、必ず子ども用として開発された低刺激な製品を選びましょう。
個々の赤ちゃんの肌質や状態、生活スタイルに合わせて、無理なく始めていくのが理想的です。
子ども用日焼け止めの選び方
子ども用の日焼け止めは、「肌へのやさしさ」が何より重要です。選ぶときは以下のポイントをチェックしましょう。
1. 成分表示を確認!「ノンケミカル」がおすすめ
✔️紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル)のものを選ぶ
✔️紫外線散乱剤(酸化チタン・酸化亜鉛)が主成分が◎
✔️無香料・無着色・アルコールフリーもポイント
日焼け止めには、主に「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類の成分が使われています。
・紫外線吸収剤:塗った際に肌が白く見えない特徴がありますが、まれにアレルギー反応を起こす方がいます。
・紫外線散乱剤:少し白く見えますが、アレルギーを起こすことがほとんどありません。
子ども用として売られている日焼け止めは、紫外線散乱剤のみを含んでいるものが多く、「紫外線吸収剤無配合」「紫外線吸収剤フリー」「ノンケミカルサンスクリーン」といった表示がされています。とくに肌トラブルを抱えやすい子や、乾燥肌・敏感肌の子には、保湿成分入りのものやオーガニック処方もおすすめです。
2. SPF・PA値は使用シーンで使い分け
日焼け止めを選ぶ際は、SPF(Sun Protection Factor)とPA(Protection Grade of UVA)の値が重要です。SPFはUVB(日焼けの原因となる紫外線)から守る効果を、PAはUVA(シワやたるみの原因になる紫外線)から守る効果を示しています。
下記の表は、外出場所や活動内容に応じた適切なSPF・PA値の目安です。数値が高いほど防御力は高まりますが、肌への負担も大きくなるため、必要以上に高い数値の製品を選ぶ必要はありません。活動内容に合わせて使い分けることをおすすめします。
日常的な外出であれば、低めの数値の日焼け止めで十分です。紫外線が強い場所や長時間の外出では、高めの数値の製品を選び、2〜3時間おきに塗り直すことが大切です。また、水や汗に強いウォータープルーフタイプは、プールや海などの水遊びの際に特に効果的です。
どの場合でも、日焼け止めだけに頼らず、帽子や日傘、UVカット素材の衣類など、複合的な紫外線対策を行うことが理想的です。子どもの肌を守りながら、楽しく外遊びができる環境づくりを心がけましょう。
3. 落としやすさもチェック
子ども用日焼け止めを選ぶ際は、落としやすさも重要なポイントです。子どもの肌に負担をかけないよう、石けんやお湯だけで簡単に落とせるタイプを選びましょう。肌への刺激が少なく、日々の入浴時に自然と落とすことができます。クレンジング剤を使わずに洗い流せる製品は、肌への刺激が少なく、日々の入浴時に自然と落とすことができるため特におすすめです。
両者の違いとしては、「石けんやお湯で落とせるタイプ」は通常の洗顔料で落とせるものを指し、「クレンジング不要タイプ」はさらに落としやすく設計された製品のこと。どちらも子どもの肌には適していますが、特に敏感肌のお子さんには後者がおすすめです。
ただし、ウォータープルーフタイプは耐水性があり落ちにくいため、使用後はしっかりと泡立てた石けんでやさしく洗い流すことが大切です。子どもの肌は敏感なので、強くこすらず、時間をかけて丁寧に洗い流すようにしましょう。
正しい使い方とタイミング
日焼け止めを効果的に使うには、塗り方やタイミングも重要です。
塗るタイミングと頻度
日焼け止めは外出の15〜30分前に塗るのが基本です。これにより、肌に日焼け止めが浸透して十分な効果を発揮できるようになります。また、2〜3時間おきの塗り直しも忘れないようにしましょう。特に汗をかいたり、水遊びをした後は効果が薄れやすいので注意が必要です。
日常生活のなかで塗り忘れを防ぐには、食後や水分補給の後など、生活のなかの決まったタイミングで塗り直す習慣をつけるとよいでしょう。ルーティンを作ることで、子どもも自然と紫外線対策の意識が身につきます。
やさしく効果的な塗り方と塗る量
日焼け止めを塗る際は、適量を手に取り、少しずつ広げていきましょう。顔はもちろん、耳やうなじ、足の甲など、見落としがちな部分も丁寧に塗ることが大切です。肌を傷めないよう、強く擦り込むのではなく、やさしくパッティングするように塗るのがポイントです。
目の周りは特に敏感なので、直接塗るのではなく、手に塗った日焼け止めを指先に少量取り、そこから優しく馴染ませるようにしましょう。こうすることで、目に入って染みるといったトラブルを防げます。
初めて使うときは?
初めて日焼け止めを使用する際は、まず腕や背中の一部分で「パッチテスト」を行なうことをおすすめします。方法としては使用する製品を絆創膏の布地の部分に少量塗布し、その絆創膏を貼り付けます。48時間そのまま触らずに張り付けておき、48時間経過したら剥がします。剥がした30分後に、塗布した部分全体に赤みやかゆみなどの異常が出なければ、全身に使用してOK。もし肌トラブルが生じた場合は、すぐに使用を中止し、必要に応じて医師に相談しましょう。
プールや水遊びでの使用について
日本小児皮膚科学会の見解によると、耐水性サンスクリーン剤を使用してもプールの水質は汚濁されないことが複数の研究により明らかにされています。水遊びの際には、「耐水性」または「ウォータープルーフ」表示のある日焼け止めを選び、プールに入る30分前には塗っておくようにしましょう。
おすすめの子ども向け日焼け止め5選!
子ども用日焼け止めは数多く市販されていますが、なかでも肌に優しく使いやすいものをピックアップしました。それぞれの特徴や使用シーンに合わせて選んでみてください。
1. 【ママベビー】UV&アウトドア スプレー(SPF20 PA++)
紫外線対策と虫よけが同時にできる2in1製品です。天然由来成分100%で、エタノール・パラベン・合成香料不使用のため赤ちゃんから使用可能。スプレータイプなので素早く塗れて、公園やピクニックなど外遊び全般に便利です。特に虫も気になる場所では一度の使用で二つの対策ができる優れものです。
2. 【アロベビー】UV&アウトドアミスト(SPF20 PA++)
新生児から使える100%天然由来成分で作られた、紫外線吸収剤不使用の日焼け止めです。虫除け効果も兼ね備え、べたつきが少なく薄く均一に広がるミストタイプ。ベビーカーに乗る赤ちゃんや肌の弱いお子さんにも安心して使えるため、デリケートな肌にもおすすめです。
3. 【ノブ】UVミルクEX(SPF32 PA+++)
敏感肌向けブランド「ノブ」のロングセラー商品で、紫外線吸収剤・香料・着色料・アルコールを一切使用していません。石けんで落とせる処方で肌への負担が少なく、SPF値も比較的高めなのでしっかりとした紫外線カット効果が期待できます。肌トラブルが心配なお子さんや敏感肌の大人との兼用にも適しています。
4. 【ピジョン】UVベビーミルク(SPF35 PA+++)
赤ちゃん用品で有名なピジョン製の日焼け止めで、無添加・ノンケミカルでありながら高いUVカット効果を発揮します。水遊びにも対応しているため、保育園や海・プールなど汗をかきやすい夏場の外出にも安心して使えます。SPF値が高めなので、日差しの強いシーンでも頼りになります。
5. 【ママ&キッズ】UVライトベール(SPF23 PA++)
皮膚科医監修で開発された生後0ヵ月から使える日焼け止めです。のびがよく軽い使い心地でベタつかず、透明なテクスチャーなので白浮きの心配もありません。朝の準備が忙しい時にも素早く塗りやすいため日常使いにぴったりで、子どもが自分で塗る練習にも適しています。
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忘れてはならないのは、適度な日光浴も子どもの健康的な成長には欠かせないということ。完全に紫外線を避けるのではなく、バランスの取れた対策を心がけましょう。
子どもたちの肌をやさしく守りながら、春から夏、そして一年を通して、家族みんなで楽しく健やかな日々を過ごしてくださいね。
(参考)
日本小児皮膚科学会|こどもの紫外線対策について
環境省|紫外線マニュアル