教育を考える 2019.11.8

子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です

宍戸 洲美
子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です

「集中力がない」「集中すると周りが見えなくなる」
どちらの状態も、親にとっては悩みのタネになるものです。「集中力がある・ない」とは、なにかひとつのことに意識や注意が向いていて、ほかのことに気が逸れないような状態をいいますが、はたして子どもはどんなときにどれくらい集中できるものなのでしょうか。

今月は子どもの集中力について、さまざまな面から考えてみたいと思います。

子どもの集中力について

今日では脳の研究がずいぶん進み、今までわからなかったことが次々と明らかになってきています。たとえば、大脳の前頭葉がいろいろな情報を受けて、それらを整理しながら集中力につなげているといったように、脳の仕組みから集中力を解き明かすことも可能になりました。では、子ども集中力はどれくらい続くのでしょうか。

小学校1年生を担当されていた先生が、よくこんなことをおっしゃっていました。子どもがじっと座って先生の話を聞けるのは5分から10分、それ以上は無理ですと。年齢が上がるにつれて集中できる時間が長くなっていくことは考えられますが、集中力に影響するのは、子どもたちの興味・関心の有無です。

もちろん1年生でも、大好きなお絵描きなら30分でも1時間でも集中できるという子もいます。なかには、休み時間に虫を見つけ、その虫の動きがおもしろくて夢中になるあまり、始業のベルが耳に入らずにずっと校庭で虫の観察をしていた子どももいました。

このように、好きなことや興味のあることなら、かなり長時間集中できる反面、興味のないことであれば最初からまったく集中できないということも。また、おなかが空いている、眠い、身体が疲れているといった状況では、当然集中する力どころかやる気も出てきません。

集中力がある子はどんな子? ない子はどんな子?

「集中力をつけるには」というような特集がよく組まれていますが、ほとんどが学習への集中力をイメージした記事が多いようですね。しかし、“集中力”を別の視点でとらえると夢中になってひとつのことに没頭できる力ともいえます。

先にも述べたように、好きなこと・興味のあることなら、小さなお子さんでもかなり長い時間続けることは可能です。幼児期から小学生くらいまでは、集中して遊ぶ・遊びに没頭できる」「好きなことだと夢中になれるということがとても大切だと思います。

脳が集中しているときは、ほかの刺激がシャットアウトされているため何も入ってきません。しかし、なかにはいろいろなことに注意が向いてしまい、ひとつのことに集中できずにすぐに飽きて次々と遊びを変える子どももいます。

たくさんの刺激を拾ってしまい、ひとつのことに集中できないというお子さんもいますが、多くの場合は、夢中になれるものが見つけられない状態です。

また、それまでの生活の中で、常に大人が遊びを支配していたり禁止事項が多かったりすると、子ども自身の主体性が出せずに、自分が何をしていいのかわからなくなってしまいます。

脳が物事に集中するメカニズム

集中力を発揮しているときの脳は、ドーパミン(神経伝達物質)というホルモンが活発に分泌されていますが、それと合わせて、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)も集中力をサポートすると言われています。

これらのホルモンは快の感情や意欲などに関係しており、行動したことが報酬(ご褒美)につながることがわかっていると分泌しやすいと言われています。ですから、楽しいことや好きなことには集中できるのです。

集中力を高めるにはどうしたら良いのか

多くの親御さんが期待するのは、「学習に集中できる子どもに育ってほしい」ということかと思います。お勉強も、「わかれば楽しい」「好きなお勉強なら集中できる」というお子さんはたくさんいるでしょう。でも「宿題が楽しい」というお子さんは、そんなにはいません。

大人でも、興味や関心のないこと、特に嫌いなことに集中するのは苦痛です。ですから、嫌いな学習に集中するには、その先の「報酬」が必要。「報酬」はご褒美ですから、これだけやったらあなたの大好きな〇〇をしていいよ」「宿題が終わったら、一緒にあなたの好きな夕ご飯つくりましょうなど、お子さんが楽しめることを約束するといいですね。

また、脳が集中力を発揮するためには睡眠・食事・身体を動かす遊び」がしっかり保障されていることが大切です。それとあわせて、心配なことや不安などがあれば集中することは難しくなります。これまで声をかけなくても自分から集中して宿題をやっていたお子さんが、突然「やる気がでない」と言い出したら、何らかの原因があると考えていいでしょう。「集中してやりなさい!」と叱咤激励する前に、じっくりお話を聞いてあげてください。

子どもの集中力を高めるには、小さなときからの主体的な遊びや、自分がやってみたいことを自由に挑戦できる環境がとても大切になります。

家ではホッとできる時間も必要

ここからは、子どもの集中力について寄せられたお悩みについて考えていきましょう。

【親御さんからの質問 1】

1学期の始めは緊張感もあり、帰宅してすぐに宿題をしていたのですが、最近は学校にも慣れてきて、親も子も要領よく手を抜くことを覚えてダラダラしがちに。先取り学習をしているので、学校の勉強は問題ない様子ですが、集中力がどんどん低下しているようで心配です。

子どもは、成長すると同時に興味関心が増えたり、思考力が向上したりします。また、学校での活動量も増えますので、「ホッとしたい」、そんな時間が必要です。親の目にはダラダラしているように見えても、子どもの脳の中や身体の中では、いろいろなことが起こっています。

「要領よく」も大切ですが、世の中は「要領よく」ばかりはいきません。試行錯誤したり、時には失敗したりする経験も必要です。一番大切なのは、「子どもの主体性」。いつ宿題をするのかは、お子さん自身が決めて取り組めるように応援してあげることが大切だと思います。

集中 “しすぎる” 子には声かけの工夫を

【親御さんからの質問 2】

ぼーっとする時間があったほうが子どもらしいのに、うちの子は家の中でいつも何かに集中しています。絵を描く、レゴで遊ぶ、作文を書くなど、自分の時間の中に入ってしまって、こちらの声が聞こえないこともしばしば。疲れすぎてしまわないのか心配です。食事の時間も後ろ倒しになってしまうので、無理に途中でやめさせてもいいのでしょうか。

そんなに集中できる力があるのはすばらしいですね。集中している間は周りのことが全く見えていない状態なので、自分の世界に入り込んでしまうのは仕方のないこと。ただし、学校でもおうちでも好きなことを中止してみんなに合わせるという力も必要です。

食事開始時間を伸ばすのではなく、たとえ学習であっても、時間になったら一度中止してみんなに合わせるような声かけが大切だと思います。たとえすぐに中止しない場合でも、「あと何分でやめるか自分で決めてね。みんな待っているから」というように、自分の力で中断できるように働きかけるといいですね。

「ご褒美(報酬)」はモノではなく○○を

【親御さんからの質問 3】

「宿題が終わったらゲームしていいよ」「テストの点数が良かったらおもちゃ買ってあげる」など、ご褒美があればやる気や集中力を発揮できるわが子。逆に、それがないといまいち気分が乗らないことも。このままでは、ご褒美が用意されなければなにもできない子になってしまいますよね。

先に述べたように、嫌なことに向かうには、その先に「報酬」が準備されていることが大切です。だからと言って、宿題をするたびに「何か買ってあげる」はあまりおすすめできません。

「報酬」というのは、子どもが「楽しい、うれしい」と感じられることです。たしかに「ゲームは宿題やってからね」といった約束は多いと思います。その場合は、しっかり時間を決めておくことが大切です。

でも「宿題が終わったら外で一緒に遊ぼうよ!」とか、「今日の夕ご飯何にしようか相談にのってくれる? 決まったら一緒にお買い物に行ってほしいな」など、親から期待されていると感じることも子どもにとっては「報酬」になるのです。「親とのかかわりの時間」をぜひ報酬にしていただくといいですね。

好きなことに夢中になっていれば心配はいらない

「集中力」はないよりあったほうがいい、と大人は子どもについつい「高い要求」をしてしまいがちです。しかし、子どもたちの集中力は必ずしも「学習場面」だけではありません。好きなこと、夢中になれることがあって、それに集中できる力があれば、将来の心配はあまりありません。

中学生や高校生になって学習に集中しなければならないときを自覚すれば、それなりにできるようになるものです。まずは、脳がしっかり働けるような生活環境を整えてあげましょう。