子どもの歯のケア、正しくできていますか? 「フッ素は必要?」「仕上げ磨きはいつまで?」「歯医者にはいつから通うべき?」など、子どもの歯に関する疑問は尽きません。
そこで本記事では、歯科医師の監修のもと、子どもの歯を健康に保つために本当に知っておくべき5つのポイントを解説します。日常生活で簡単に取り入れられるアドバイスをまじえながら、その理由をわかりやすく説明していきます。この知識を身につければ、子どもの歯のケアに自信がもてるようになりますよ。
監修者プロフィール

歯科医師・社会福祉士・介護支援専門員
1988年生まれ、広島県出身。
2023年に千葉県佐倉市ユーカリが丘・四街道地区にヨコデンタルクリニックを開院。保険治療からホワイトニング・マウスピース矯正・ワイヤー矯正・審美歯科・インプラント・義歯(入れ歯)・摂食嚥下リハビリテーションなど幅広い治療を提供している。
趣味は、サッカー・フットサル・ラーメン屋めぐり・温泉めぐりなど。
ヨコデンタルクリニック:https://yoko-dental.jp/
目次
1. 「歯科検診」が子どもの歯を守る—1歳頃から半年に1度以上が目安
子どもの歯科検診は乳歯が生え始める約1歳頃から始めましょう。最初は治療ではなく、歯医者に慣れる体験として捉えることが大切です。1〜2歳で怖い経験をすると歯科恐怖症のリスクが高まります。
虫歯のなりやすさには遺伝的要素もあり、親に虫歯が多い場合は子どもも注意が必要です。定期検診は虫歯リスクに応じて3〜6ヶ月に1回の頻度がおすすめです。
検診では歯の生え方、形成、噛み合わせ、清掃状態などがチェックされます。子どもが歯医者を怖がらないよう、まずは見学から始め、親自身がリラックスした態度を見せ、小児歯科専門の医院を選びましょう。
✔️ 乳歯が生えたら1歳頃に歯医者デビュー
✔️ 定期検診は3〜6ヶ月に1回が目安
✔️ 虫歯予防には家庭のケアと専門的ケアの両方が大切
✔️ 親の態度が子どもの歯医者への印象を左右する

2. 子どもの「歯磨き粉」—年齢に合ったフッ素入りの歯磨き粉を
フッ素は虫歯予防に不可欠な成分です。フッ素には初期の虫歯を修復し、酸への抵抗力を高める効果があります。世界保健機関(WHO)や日本小児歯科学会も適切なフッ素の使用を勧めています。歯磨き粉からのフッ素摂取が特に重要です。毎日の歯磨きで正しく使うことで、子どもの歯をしっかり守ることができます。
歯磨き粉の使用量
・2歳未満:米粒程度(1〜2mm)
・3〜5歳:グリーンピース程度(5mm)
・6歳以上:歯ブラシ全体(1.5〜2cm)
また、就寝前を含めて1日2回の歯磨きが勧められています。うがいをする場合は少量の水で1回のみにするとフッ素の効果が高まります。子どもが誤って大量に飲み込まないよう、歯磨き粉は子どもの手の届かない場所に保管し、子どもが自分で歯磨き粉をつける場合は保護者が量を確認しましょう。
✔️ 子ども用歯磨き粉は年齢に合ったフッ素濃度のものを選ぶ
✔️ 使用量は年齢に応じて調整する
✔️ フッ素には虫歯予防だけでなく、初期虫歯の修復効果もある
✔️ 適切な量を守れば安全性に問題はない

3.「仕上げ磨き」は小学校低学年まで必要—子どもの発達に合わせた磨き方
「子どもが自分で磨きたがるけど、まだ仕上げ磨きは必要?」結論からいうと、小学校低学年(7〜8歳)までは仕上げ磨きが必要です。
子どもの歯のエナメル質は大人の半分ほどの厚さしかなく、虫歯になりやすいものです。また、細かい手の動きや見えない場所を磨く能力は7〜8歳まで十分に発達しません。「自分でできる!」という気持ちを尊重しつつも、仕上げ磨きは欠かせません。年齢に合わせた効果的な仕上げ磨きのポイントは以下の通りです。
効果的な仕上げ磨きの方法
【1〜3歳】
・「膝上磨き」が安定して磨きやすい
・頬を優しく押さえて親が主導で磨く
・子どもが自分で歯ブラシをもてても、細かい動きはまだ難しい
【3〜6歳】
・少しずつ自分で磨く力は向上するが、奥歯や内側は特に磨き残しが多い
・まず子どもに磨いてもらってから親が仕上げ磨き
・「ママ・パパの番だよ」と声かけする
【6〜8歳】
・子どもが自分で上手に磨けるようになるが、ときどき染め出し剤などで磨き残しをチェック
・「ここが赤いよ」と教えながら磨く
・仕上げ磨きは必要
多くの親御さんが見落としがちなのが、奥歯の溝と前歯の歯茎との境目です。特に上の前歯の歯茎側は磨き残しが多いので、歯ブラシを縦にして磨く「縦磨き」も取り入れましょう。
✔️ 子どもの手先の発達は個人差があるが、通常7〜8歳まで仕上げ磨きが必要
✔️ 子どものエナメル質は大人の半分の厚さしかなく、虫歯になりやすい
✔️ 年齢に合わせた仕上げ磨き方法を選ぶことが効果的
✔️ 「自分で磨いてから親が仕上げ」という順序が自立心を育てながら効果的
✔️ 上の前歯の歯茎側と奥歯の溝は特に注意して磨く

4. 「おやつ」の食べ方で虫歯リスクが変わる—時間を決めて与えよう
お菓子を食べた後、口の中は約30分間酸性に傾きます。意外かもしれませんが、一度にたくさん食べるより少しずつだらだら食べる方が虫歯リスクが高くなります。虫歯リスクを高めるのは、「砂糖の量」よりも「砂糖を口に入れる回数」と「砂糖が口の中に留まる時間」なのです。
また、チョコレートより歯に張り付くポテトチップスの方が危険なケースもあります。就寝前のおやつは唾液が減るため特に注意が必要です。おやつのあとは水やお茶でうがいをする習慣づけるとよいでしょう。
虫歯リスクを下げるおやつの与え方
・おやつの時間を決め、だらだら食べを避ける
・砂糖の含有量が少ないおやつを選ぶ(特に就寝前)
・粘着性の高いキャラメルやグミなどは要注意
・おやつのあとは水やお茶でうがいをする習慣づけ
また、キシリトールは虫歯菌が酸を作るのを抑制する効果があるので、食後にはキシリトールがおすすめ。ただし、3歳未満の子どもにはガムの誤嚥リスクがあるため、キシリトールタブレットやシロップなどの形態が安全です。
✔️ 虫歯リスクは「砂糖の量」より「食べる頻度」と「口内滞在時間」が重要
✔️ だらだら食べは虫歯リスクを高める最大の要因
✔️ 粘着性の高い食品は特に注意が必要
✔️ キシリトールは食後に摂取すると効果的
✔️ 3歳未満はガムではなくタブレットやシロップが安全

5. 「乳歯」のトラブルは永久歯に影響する—早期発見・対応が大切
「乳歯はいずれ抜けるから虫歯になっても大丈夫」と思っていませんか? じつはそれは大きな誤解です。子どもの永久歯は「乳歯の下」で作られているため、乳歯の虫歯菌が永久歯の発育に影響することがあります。また、乳歯を早く失うと、その隙間に他の歯が傾いて移動し、あとから生えてくる永久歯の場所がなくなってしまうことも。他にも顎の発達への悪影響がある場合もあります。
また、外傷などで歯が欠けたり抜けたりてしまった場合は、牛乳に浸すと歯の細胞が生きた状態を保てるため、再植の可能性が高まります。
歯の外傷(転んだときなど)への対応
・歯が欠けた場合:欠けた破片があれば保存(牛乳や生理食塩水に浸す)し、すぐに歯科医院を受診
・歯が抜けた場合:歯の根を触らないよう注意して拾い、牛乳か生理食塩水に浸し(水道水は避ける)、30分以内の受診が望ましい
その他にも親が気づくべき口腔内のサイン以下の通りです。これらのサインがあれば、歯科医師に相談しましょう。
親が気づくべき口腔内のサイン
・前歯の内側が黒ずんでいる
・歯と歯茎の境目に白い線がある
・歯ぎしりをしている
・口呼吸が多い
・指しゃぶりが4歳を過ぎても続いている
✔️ 乳歯の虫歯は永久歯の発育に影響する
✔️ 乳歯の早期喪失は永久歯の生えるスペースを奪う
✔️ 外傷で歯が抜けた場合、30分以内の処置が重要
✔️ 牛乳や生理食塩水は歯の保存に適している(水道水は避ける)
✔️ 気になる口腔内トラブルがあれば速やかに受診する
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健康な歯を守ることは、子どもの明るい未来と自信に満ちた笑顔を育むための大切な土台となります。そのためにも毎日の小さなケアの積み重ねが大切です。歯は一生の宝物。この宝物を守るために、ぜひ今日からできる子どものデンタルケアを始めてみましょう。
(参考)
日本小児歯科学会|フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について