健康を考える/心と身体 2025.5.15

【歯科医監修】子どもの “歯ぎしり” は受診すべき? 歯科医が教える原因と対策

【歯科医監修】子どもの “歯ぎしり” は受診すべき? 歯科医が教える原因と対策

寝ているわが子から「ギリギリ…」という不快な音が聞こえて、ドキッとしたことはありませんか? 歯が削れたり、何か病気のサインなのではと不安になりますよね。でも、安心してください。じつは子どもの歯ぎしりは、多くの場合、成長の過程でよくある自然な行動です。

この記事では、歯科医の監修のもと「どうして歯ぎしりをするの?」「歯や顎への影響は?」「病院に連れて行くべき?」といった保護者のみなさんが抱える疑問や不安をわかりやすく解説していきます。

監修者プロフィール


安野美波

横引良評(よこびき・りょうへい)ヨコデンタルクリニック院長
歯科医師・社会福祉士・介護支援専門員

1988年生まれ、広島県出身。
2023年に千葉県佐倉市ユーカリが丘・四街道地区にヨコデンタルクリニックを開院。保険治療からホワイトニング・マウスピース矯正・ワイヤー矯正・審美歯科・インプラント・義歯(入れ歯)・摂食嚥下リハビリテーションなど幅広い治療を提供している。
趣味は、サッカー・フットサル・ラーメン屋めぐり・温泉めぐりなど。
ヨコデンタルクリニック:https://yoko-dental.jp/

 

子どもの歯ぎしり、どうして起こるの?【主な原因】

子どもの歯ぎしりには、いくつかの原因があります。ここでは主な原因をご紹介します。

🦷成長にともなう “自然な行動” としての歯ぎしり

多くの子どもたちが経験する歯ぎしりは、じつは成長過程における自然な行動であることがわかっています。特に歯の生え変わりの時期に多く見られるこの現象は、お子さまの発達にとって重要な役割を果たしていることもあるのです。

“自然な行動”としての歯ぎしり
・歯の生え始めのむずがゆさ(乳児期)
・顎や噛み合わせの調整(1~6歳)
・永久歯が生えるスペース確保(5~8歳)

🦷心理的なストレスによる歯ぎしり

子どもの歯ぎしりは、心理的な要因が関係していることも少なくありません。大人と同じように、子どもたちも日常生活の中でさまざまなストレスを感じています。特に敏感な子どもの場合、日中に溜まったストレスや緊張が、夜間の睡眠中に歯ぎしりとして放出されることがあります。

心理的要因による歯ぎしり
・新しい環境への適応(入園・入学など)
・家庭環境の変化(兄弟の誕生、引っ越しなど)
・親からの叱責や園・学校での出来事による緊張

🦷睡眠の質の問題による歯ぎしり

睡眠の質の低下も歯ぎしりと密接に関連しています。浅い眠りが続く状態や、いびき、鼻づまりなどの呼吸障害があると、睡眠中の歯ぎしりが増加することが知られています。

睡眠問題による歯ぎしり
・浅い眠りや睡眠不足
・いびきや睡眠時無呼吸症候群
・アレルギー性鼻炎などによる鼻づまり

🦷 歯並びや口呼吸の影響による歯ぎしり

歯並びや噛み合わせの問題も、歯ぎしりの原因となることがあります。たとえば、上下の歯の噛み合わせにずれがあると、脳が無意識のうちにその不調和を調整しようと歯ぎしりが起きることがあります。

また、アレルギー性鼻炎や扁桃腺肥大などで鼻づまりがある場合、口呼吸になりやすく、口呼吸は歯ぎしりのリスクを高めることが指摘されています。口呼吸は顎の位置を不安定にし、睡眠の質も低下させるため、間接的に歯ぎしりを誘発することもあります。

歯並びや口呼吸の影響による歯ぎしり
・噛み合わせのズレや不安定さ
・顎の発達の不均衡
・口呼吸の習慣化

寝る子ども

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歯ぎしりによるリスクは?【様子見でよい場合/受診すべき場合】

子どもの歯ぎしりを発見すると、多くの保護者は「歯が削れてしまうのでは?」「何か病気のサインなのでは?」と心配になります。ここでは、どのような場合に様子を見てよいのか、また歯科医院を受診すべきケースについて解説します。

基本は様子見でOKな理由

子どもの歯ぎしりは、多くの場合は心配する必要がありません。その理由はいくつかあります。まず、乳歯は柔らかく、少しすり減っても心配はありません。また、多くの場合、12歳ごろまでに自然に収まることが多いと言われています。また、歯ぎしりによる軽度のすり減りは、噛む機能にほとんど影響しません。

過度に心配したり注意したりすることで、かえって子どもにストレスを与え、症状を悪化させることもあるため、穏やかに見守る姿勢が大切です。

以下の場合は歯科受診を検討

ただし、いくつかの状況では専門医への相談が推奨されます。特に以下のような症状が見られる場合は、早めに小児歯科を受診しましょう。

受診を検討すべき症状
・歯がかなりすり減っている、または欠けている
・朝起きると「歯が痛い」「顎がだるい」と訴える
・10歳以降でも強い歯ぎしりが続く
・顎を開閉する際にカクカク音がする(顎関節症の可能性)
・頭痛や肩こりを頻繁に訴える
・歯ぎしりが日中も見られる

特に永久歯の段階で強い歯ぎしりが続く場合は注意が必要です。永久歯は一度すり減ると元に戻らないため、早期の対応が重要になります。また、顎関節からの音は、顎関節症の初期症状である可能性があります。顎関節症は放置すると慢性化することがあるため、早めの対策が望ましいでしょう。

寝る子ども

家庭でできる歯ぎしり対策【習慣とケア】

では、もし家庭で子どもの歯ぎしりが見られたらどうすればよいのでしょう? 家庭でできる対策としては以下のポイントに注目してください。ちょっとした習慣の見直しで、歯ぎしりの軽減につながることがあります。

就寝前に心がけること

  • 寝る前はリラックスモードに(読み聞かせ、温かい飲み物など)
  • スマホやゲームは就寝1時間前までに終える
  • 枕は低めにして仰向けで寝る習慣をつける

日常生活で意識すること

  • よく噛む食事を取り入れる
  • 鼻づまりがあれば対処する(アレルギー対策など)
  • ストレスの原因があれば取り除く

ナイトガード(マウスピース)について

  • 子どもの場合は、歯科医師の判断で必要な場合のみ使用
  • 市販品は避け、必ず歯科医院で作製してもらう
  • 基本的には永久歯の段階で、強い歯ぎしりが続く場合の対策
  • 成長期の子どもには慎重に使用を判断する必要あり

 

大切なのは、子どもに「歯ぎしりしている」と頻繁に指摘しないこと。過度な心配や注意は逆効果になります。多くの場合、成長とともに自然に解消していくものです。

***
子どもの歯ぎしりは多くの場合、成長過程の自然な現象です。「音がすごくて不安…」「歯が心配…」と思ったら、歯医者さんで確認してみましょう。家庭では就寝前のリラックスタイムを作り、適切な睡眠環境を整えることが大切です。過度に心配せず、子どもの成長を温かく見守りましょう。