教育を考える 2018.8.26

子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!

編集部
子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!

「うちの子には集中力がない」「勉強させようとしても、すぐに飽きてしまう」と悩んではいませんか? 大人だって、肉体面や精神面のさまざまな事情により、常に集中力を発揮するというわけにはいかないもの。子供にとってはなおのこと難しいかもしれません。

とはいえ、目の前の課題に一心に取り組まなければ、何事も達成はできないでしょう。そこで今回は、子どもに集中力をつけさせるための方法をご紹介します。

子どもが集中できる時間はどれくらいなのか

そもそも、人間はどれくらい長いあいだ集中できるものなのでしょう? 英オープン大学で心理学を教えるジェマ・ブリッグズ氏によれば、「平均的な集中時間」という考えには意味がないそう。人間がどれだけ集中力を発揮するかは、その人の状態や取り組む課題によって大きく異なるためです。

そうはいっても、ある程度の目安を知りたいと思う人もいるはず。英語の読み書き教育をサポートする米国の学生団体「SCALE」は、「情報源は不明」と前置きしつつも、子供が何分集中できるかについて以下の考え方を提示しています。

学習に対する集中時間=年齢+1

(引用元:The University of North Carolina at Chapel Hill|Attention span for learning = chronological age + 1

つまり、7歳の子どもなら、勉強に集中できるのはわずか8分というわけです。それより長く勉強を続けると、集中力が弱まってしまうようですね。

子どもに集中力がない理由

うちの子は「年齢+1」分すら集中できない、という場合もあるかもしれません。極端に集中力がない子供がいるとすれば、その原因は何なのでしょう?

1. テレビを見る時間・ゲームで遊ぶ時間が長い

子どもの健康・教育を研究する高橋ひとみ教授(桃山学院大学)が2004年、大阪府の小学生1,069名を対象に調査を行ったところ、保護者から「集中力がない方」と判断された子どもは「集中力がある方」と比べ、テレビゲームで遊ぶ時間・携帯ゲームで遊ぶ時間・テレビを見る時間のいずれも長く、読書時間が短いことがわかりました。その結果を高橋教授は以下のように解釈しています。

長時間の「テレビゲーム」「携帯ゲーム」「テレビ視聴」の結果、前頭前野が疲労し、注意力、記憶力、集中力が減少する。そのため、精神の統合と集中力を必要とする「読書」が持続できなくなる。

(引用元:桃山学院大学学術機関リポジトリ|子どもの就寝時刻に関する一考察(III) : 「テレビゲーム・携帯ゲーム・テレビ視聴」時間と「集中力」「根気」「性格」との関連

上記の研究における「読書」を、勉強に置き換えてもよいでしょう。つまり、ゲームで遊んだりテレビを見たりする時間が長いと、脳が疲れ、勉強に必要な集中力が衰えてしまうのです。完全に禁止する、とまではいかなくても、ゲームやテレビの時間は短くしたほうがよさそうですね。

2. 睡眠時間が短い

子ども学を専門とする松村京子教授(兵庫教育大学)が1990年、小学6年生111名を対象に調査を行ったところ、睡眠時間が7時間未満の子どもはそうでない子どもに比べ、「いらいらする」「間違いが多くなる」など、集中の困難さを訴える割合が多いことがわかりました。また、夜型の子どもの3分の1は朝食を食べず、朝食を食べない子どもは食べる子どもより、集中の困難さを訴える傾向があることも判明しました。

つまり、睡眠時間が短いと脳の疲れが充分に取れず、注意が散漫になってしまいます。また、睡眠時間が短く起床時刻が遅い夜型の子どもは、食欲が弱かったり食べる時間がなかったりするためか、朝食を抜いてしまい、これも集中力が続かないことに影響するのです。当たり前のようですが、睡眠と食事を万全に確保することが、集中力を養う基本なのです。

※なお、上で挙げた理由のほか、病気・障害が原因の場合もあります。たとえば、現在ではよく知られるようになった「注意欠陥多動性障害(ADHD)」。物事に集中しづらい、忘れ物が多いなどの症状が現れる障害で、1クラスに1人か2人の割合で該当するそう。また、不安障害など心の病気の影響で、目の前のことに集中できなくなっている可能性もあります。気になる兆候があれば、家庭内のみで対処できることではないので、病院に相談するのがよいでしょう。

子どもに集中力をつけるためのトレーニング

テレビやゲームの時間を少なくする、睡眠を充分にとるといったことは基本ですが、ほかにも勉強に対する集中力を高める方法があります。とはいえ、子どもに「こうしなさい」とやり方を示すだけでは意欲は起きないので、親がトレーニングに付き合うようにしてくださいね。

奈良県立教育研究所では、ある小学4年生の男の子を対象にした事例検証が行われました。その男の子は、趣味のプラモデル作成には集中力を発揮したものの、学校の授業では注意が散漫で、集中できる時間が短かったそうです。そこで、以下のような訓練が設定されました。

・単純な計算を毎日繰り返す。足し算、引き算、かけ算100問、割り算100問
・短い文章を繰り返し音読する。A4版3ページ程度の文章14種類
・短い時間で終了できる課題で、かかった時間を計り、集中できる時間を意識する。
・終了後カレンダーにシールを貼り、次回の目標タイムを設定する。

(引用元:奈良県立教育研究所|「集中力」を高める学習環境の設定について

はじめのうち、男の子は「何度も途中でため息をつき、姿勢が崩れる」「畳で寝転がったり、机にひじを付いては休憩したがった」という状態だったものの、「4日目を過ぎると急に見通しがたったのか、一気に済ませようという感じが出てきた」「机と椅子で学習をしたがった」「きょろきょろしなくなった」などの変化が見られたそうです。この男の子には「周囲から褒められるとがんばろうとするが、怒られると全くやる気が出ない」「そわそわして落ち着きがなくなったり、終了までの問題の数を何度も数えたりする」という特徴がありましたが、「時間を計ったり点数を付けたりする、目標や賞賛を与えたりする」ことでやる気が出て、「時間の予想が立てられると我慢ができるようになった」そうです。

上記の事例検証では、以下のような考察がなされました。

集中するには、時間の長さや課題の量(どのくらいやるのか)や終了(いつまでやるのか)が予測できる環境の設定が必要である。

課題をこなすことで成就感や達成感が得られることはもちろんだが、周囲の期待に「応えたい」という気持ちが大切である。がんばったことに対して褒めたり、褒められたりすることで大人も子どもも満足する。この行為の積み重ねや、そこに至る振り返りがあってこそ効果が得られたと考える。

(引用元:同上)

つまり、子どもの集中力アップのためには、家で勉強する際、親が次のことに気をつけてあげればよさそうです。

- その日に取り組む課題のページ数と時間を明確に設定する。
- 子どもが努力して課題を達成し、集中できていたことを毎回褒める。

仕事や家事で忙しい人は多いと思いますが、「集中しなさい」「ちゃんとやって」といったあいまいな声かけで済ませず、「30分でこのプリントを3枚やろうか」など具体的な提案をし、「集中できてえらい!」「頑張って書いたね」と褒めてあげてくださいね。これを地道に繰り返すことにより、子どもの集中力が鍛えられます。

子どもの集中力とゲームの関係

ゲームで遊んでいるときの集中力を、勉強にも発揮してくれればいいのに……そう思う人もいるかもしれません。実は、ゲームで遊ぶことと勉強における集中力には関係があったのです。

2017年、全国の「朝日小学生新聞」読者の小学生457人およびその保護者を対象に行われた調査では、「家庭でゲームを楽しむ子どもはゲームを禁止されている子どもに比べて、勉強の集中力が高く、宿題も計画的かつ自主的に取り組む傾向が高い」という結果が現れました。対象者のうち、ゲーム機を持っていた子どもは370人。そのなかで「ゲームの前に宿題を終わらせなくてはいけない」「ゲームをしてもよい時間が決められている」などのルールがあると答えたのは91.9%。ゲームで遊ぶ子どものうち、1週間でゲームをする日数として最も多かった答えは「週に1~2日」(29.7%)で、1日の平均ゲーム時間は50.6分でした。

「勉強への集中力」に関して保護者が答えたアンケートでは、子どもにゲームを許可している家庭では「集中できている」と答えた割合が74.8%だったのに対し、ゲームを禁止している家庭では60.0%でした。また、子どもについて「宿題を計画的にできる」と答えた割合は、ゲームを許可する家庭では62.6%だった一方、禁止する家庭では40.0%。さらに、「宿題を自分で進める」と答えた保護者は、ゲームを許可する家庭では71.4%、禁止する家庭では66.7%でした。

つまり、子どもはゲームで遊ぶために勉強に集中し、自ら宿題に取り組むのだと解釈することができます。勉強の妨げになるからとゲームを一切禁止するよりは、ルールを作って適度に遊ばせるほうがよさそうですね。

子どもが集中できる環境

子どもが集中して勉強するために親ができることは、ほかにもあります。それは、家を勉強しやすい環境に整えること。机周り、温度・湿度、音という3つの観点からご説明します。

机周り

勉強机はどんな場所に置かれているでしょうか? 子どもが右利きの場合、窓が左側に来るような配置が望ましいと考えられています。そうすれば、自分の手の影で手元が見えづらくならないため、快適に勉強することができるのです。左利きの場合、窓が右側になる場所に机を置きましょう。

机の前に座ると、何が見えるでしょうか? 子ども用の学習机には、いくつも棚がついているため、たくさんのものが置けます。そこにカラフルな雑貨や人形が飾られていないでしょうか。勉強とは関係のないものが視界に入ってくると、どうしても気が散ってしまいます。勉強に使わないものは引き出しにしまうか、机から離れた場所に飾りましょう。

温度・湿度

肉体に苦痛をもたらす環境で集中力を保つのが難しいことは、生物として当然です。エアコンや加湿器を使い、温度と湿度を調節しましょう。

StudyHackerのコラム「生産性を上げたければ『温度』と『湿度』に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた。」を参考にすると、勉強には21~25度の室温がよさそうです。湿度については、夏は40~55%、冬は45~60%程度が最適とのこと。湿度が低すぎると目が乾燥し、高すぎると不快感と疲れを感じやすくなってしまいます。子どものことを考えるなら、暑さや寒さを我慢させるよりも、家電を使って良質な環境を整えるほうが、学習面では効率的だといえますね。

トラックが走ったり犬がほえたりといった騒音が集中の妨げになることは、容易に想像がつくと思います。なかでも気をつけたいのが、周囲でのおしゃべりやテレビの音。声の大きさに関係なく、聞き手にとって理解しやすい内容の話であるほど、集中が妨げられ、作業の効率が落ちてしまうそうです。

勉強している子どもの近くでしゃべったりテレビを見たりすることは避けたいものですね。どうしてもテレビを見るのであれば、ヘッドホンを装着しましょう。

子どもの集中力を高めてくれるおもちゃ・遊び

遊んでいるうちに自然と集中力が養われたら素晴らしいですよね。子どもの集中力を高めてくれるおもちゃ・遊びをご紹介します。

- ジグソーパズル

『子ども向けパズル』は教育効果バツグン!? 選び方とおすすめパズル教えます」でもお伝えしたように、ジグソーパズルは脳を活性化させ、集中力・記憶力を高める効果を持つと考えられています。指先で小さなピースをつまみ、脳をフル回転させる必要があるジグソーパズルで遊んでいるうち、目の前のことに集中する感覚が身につきそうです。小学生なら、100ピース程度で子どもの好きな絵柄のものにチャレンジしてみてはどうでしょうか。

- ボードゲーム

米ハーバード大学を卒業し、心理学に関する著書や講演で知られるキャロライン・アダムス・ミラー氏によれば、ボードゲームには集中力や計画性を養う効果があるそう。ボードゲームで相手に勝とうとするなら、盤面をよく見て次の手を考える必要がありますからね。なかでも、子どもが遊ぶならルールがシンプルな「オセロ」がおすすめです。詳しくは「親子でいざ真剣勝負!? 『記憶力』『先読み力』『集中力』がアップするボードゲームの魅力」をご覧ください。

- 折り紙

折り紙をていねいに折って作品を完成させるには、指先を正確に動かす必要があります。また、お手本をよく見ながら、その通りに紙を折ったり開いたりする行為は、集中力がなければできないことです。子どもといっしょに出かけて、気に入った教本と綺麗な紙を買ってみてはいかがでしょう。祖父母とコミュニケーションをとるきっかけにもなりそうです。

子どもに集中力がつく習い事

スポーツや芸術などの習い事は、机上の勉強とは異なるもの。体を動かしたり作品を作り上げたりすることを通し、集中力の向上が期待できます。おすすめの習い事を3つ紹介しますね。

- ピアノやバイオリンなどの楽器

精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究によれば、楽器を練習した子どもほど、集中力などに関する脳の部位が発達したそう。楽器の演奏には、指を正確に動かしたり、音を聞き取ったり、楽譜を読んだりなどの作業が要求されることが影響していそうです。詳しくは「楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは『7歳までに』始めること。」をお読みください。

- 演劇

近年、子どもの教育に有用だとして注目されている「演劇」。ミュージカルの指導を行うNPO法人「JOY Kids’ Theater」代表の夏海清加氏によると、レッスンを受けながら本番まで努力を重ねていく過程で、集中力やコミュニケーション能力などが養われるそう。セリフを暗記したり、大勢の人が見ているなかで感情を表現したりといった経験は、ほかの習い事にはない特徴です。演劇教育についてもっと知りたい方は、「コミュニケーション能力を高める『演劇教育』、“自分は替えのきかない存在である” という自信が子どもを成長させる」もお読みください。

- 水泳

東京大学の学生が経験した習い事のうち、最も割合が多かったというのが「水泳」。空間認知能力が鍛えられ、脳の発達に効果があるそうです。また、スイミングスクール「ケーニーズ」によれば、プールでは何もしないとおぼれてしまうため、「目標地点にたどり着くために一所懸命集中して泳ぐ」ことにより、集中力が鍛えられるそう。ほかにも、水泳には多くのメリットがあります。詳しくは「東大生の幼少期の習い事の第1位は『スイミング』! そのメリットとは?」をご覧ください。

***
このように、子どもの集中力を高めるにはさまざまなアプローチがあります。親がしてあげられることはたくさんありますので、「集中力がない」と子どもを責める前に試してみてください。

(参考)
BBC News|Busting the attention span myth
The University of North Carolina at Chapel Hill|Attention span for learning = chronological age + 1
桃山学院大学学術機関リポジトリ|子どもの就寝時刻に関する一考察(III) : 「テレビゲーム・携帯ゲーム・テレビ視聴」時間と「集中力」「根気」「性格」との関連
J-STAGE|児童の生活リズムに関する研究(第4報) : 朝型・夜型と学習状況
東京医科大学病院|集中力や落ち着きを欠く「注意欠陥多動性障害」
奈良県立教育研究所|「集中力」を高める学習環境の設定について
StudyHacker forStudents|人間の集中力が続くのはたったの8秒? 勉強に集中するための“科学的な”方法
StudyHacker|生産性を上げたければ「温度」と「湿度」に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた。
Semantic Scholar|Effects of unattended speech on performance and subjective distraction : The role of acoustic design in open-plan offices
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