教育を考える/知育 2018.11.2

空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!

編集部
空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!

「空間認識能力」と聞いて、何を思い浮かべますか? 近年はVRコンテンツの認知度が高まりつつあることも相まって、サイバーなイメージをお持ちかもしれませんね。

実は、子どもの才能を伸ばすにあたり、親としてぜひ知っておきたいキーワードが「空間認識能力」なのです。今回は、空間認識能力の役割とその大切さ、そして子どもが持つ空間認識能力の鍛え方をご紹介します。

空間認識能力とは

空間認識(空間認知)能力とは、読んで字のごとく、空間を正しく認識できる能力のこと。学術雑誌『研究報告数理モデル化と問題解決』(第33号、2012年)に掲載された論文「ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法」によると、空間認識能力の定義は以下のとおり。

空間認識能力とは、3次元空間上において、物体の位置や形状・方向・大きさなどの状態や位置関係を素早く正確に認識する能力のことを指す。この能力によって普段生活する中で、目の前にないものでも頭の中で想像し、視覚的なイメージを形成することができる。

(太字は編集部が施した)
(引用元:情報学広場:情報処理学会電子図書館|ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法

日本でベストセラーになった、アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著、藤井留美訳『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社、2000年)を覚えていますか? この本のタイトルにも表れているように、女性は男性に比べて地図を正しく理解するのが苦手だといわれています。実際、フランス国立科学研究センターの研究員・Antoine Coutrot氏らが2018年に発表した研究によると、あらゆる国で250万人以上の空間認識能力を調査したところ、男性のほうが女性よりも空間認識能力において優れていたそうです。

空間認識能力が低いとどうなる?

空間認識能力が低いと、地図が読めないという以外に、どのようなデメリットがあるのでしょう? パーソナルジムトレーニングジム「レブルス」の代表を務め、『12歳までの最強トレーニング』( 実業之日本社、2018年)などの著書がある谷けいじ氏は、以下のように警鐘を鳴らしています。

子どものうちにこの力がきちんと養われないと、将来スポーツ全般の能力が伸びにくくなります。それだけでなく、たとえば道路を走っている車や自転車と自分の距離がつかめずに事故に遭いやすくなるなど、危険回避能力が育まれにくいという恐れがあります。

(太字は編集部が施した)
(引用元:オトナンサー|顔から転ぶ、靴ひもが結べない…子どもが“運動オンチ”に育つ家庭にありがちなNG習慣とは?

空間を認識する能力が低いということは、自分と自動車との距離がうまくつかめないということ。「車がこちらに向かってきている。よけないとぶつかってしまう」「車はこちらに向かってきているが、まだ遠い。今なら道を渡っても大丈夫だ」という判断を誤ってしまうのですね。

空間認識能力が高いとどうなる?

スポーツで活躍できる

では反対に、空間認識能力が高いとどのようなメリットが生まれるのでしょう? スポーツ科学を専門とする髙野淳司・准教授(一関工業高等専門学校)によると、空間認識能力は球技をはじめとしたスポーツにおいて非常に重要だそう。空間認識能力を測定するテストにおいて、ラグビーや野球の競技者は、一般人と比べて高いスコアを獲得したのだとか。

2016年のリオデジャネイロ五輪で男子サッカー日本代表チームの監督を務めた手倉森誠氏も、ヘディングがうまくできるのは背が高い人ではなく空間認識能力の高い人だと話しています。また、空間認識能力が優れたスポーツ選手としては、サッカーのディエゴ・マラドーナ選手、野球の鈴木一朗選手、バスケットボールのマイケル・ジョーダン選手などが挙げられるのだとか。

フィールド上に散らばる多くのプレイヤーの動きを把握しつつも、ボールの速度や軌道を見極め、自分もそれに合わせて行動する――球技には、非常に高度な能力を要求されることが想像できますね。

自動車を上手に運転できる

空間認識能力は自動車の運転にも欠かせない能力です。運転中は、自分で自動車を走らせつつ、周囲のほかの車や歩行者・自転車にけして接触しないよう、空間のなかで何がどのように動いているかを正確に把握する必要があります。空間認識能力が高いと、合流や駐車をスムーズに行えることでしょう。

職業選択の幅が広がる

空間認識能力の高さを活かせる仕事もあります。たとえば、一般社団法人・コンピュータ教育振興協会の主催する「3次元CAD利用技術者試験」の1級・準1級では、2次元の図面を見て3Dモデルを作成する問題が出されます。これを達成するには高い空間認識能力が必要。合格者の進路は、自動車・機械の設計者やオペレーターだそうです。

空間認識能力は鍛えられるの?

さて、高い空間認識能力を持つことは、人生において大きな得になることがわかりましたね。スポーツや理系の職業に興味を持っている子はもちろんのこと、そうでない子も、自動車の運転や地図の読み取りは生きていくのに必要なスキルです。

心理学者のデイビッド・ルビンスキー氏によると、空間認識能力は「人間のなかで眠っている潜在能力のうち、最大の部分かもしれない」とのこと。空間認識能力は、創造力やイノベーションと関連して主要な役割を果たしているそう。机上の勉強という平面的な世界を飛び越えて、空間を立体的・包括的に捉えられる力「空間認識能力」。親としては、子どもの能力を養い、最高のポテンシャルを引き出してあげたいものですね。

では、空間認識能力は伸ばそうと思って伸ばせるものなのでしょうか? もちろん、可能です。人類学者のグウェン・デワー氏によれば、訓練によって空間認識能力を向上させられるだけでなく、性別による差さえも縮まるか消滅するそう。次項からは、子どもの空間認識能力を鍛えるためのさまざまなアプローチをご提案します。

空間認識能力を鍛えるおもちゃ

まずは、遊んでいるうちに自然と空間認識能力が育つおもちゃを紹介します。

パズル

子どもの脳を刺激したり、手先を器用にさせたりするため、小さいうちからジグソーパズルを与えている親御さんもいることでしょう。ジグソーパズルの製作・販売を手がけるシャフト株式会社によると、そもそもジグソーパズルは子どもの教育のために生まれたそう。空間認識能力や記憶力が養える「無限の展開と可能性を秘めた知育玩具」なのだとか。また、以下のような研究結果もあります。

空間認識能力を研究するジェーミー・ジロー助教授(米ヴァージニア大学)らが4~7歳の子ども847人に行った調査では、パズル・ブロック・ボードゲームで週に6回以上遊ぶ子どもは、空間認識能力を測定するブロック配置テストにおいて、それ以外の子どもよりも高いスコアを獲得したそう。一方、お絵描きやスケートボードといったほかの遊びの習慣については、スコアとの関連性を確認できませんでした。この結果から、パズル・ブロック・ボードゲームで遊ぶことは子どもの空間認識能力を高める可能性が示唆されました。

(太字は編集部が施した)
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子ども向けパズル」は教育効果バツグン!? 選び方とおすすめパズル教えます

パズルには豊かな教育効果があるようですね。子どもにジグソーパズルを買い与える場合、どのようなパズルを選べばよいのかについては、「『子ども向けパズル』は教育効果バツグン!? 選び方とおすすめパズル教えます」をご参照ください。

ブロック

上で挙げた研究では、空間認識能力の高さとブロック遊びに関係があることがわかりました。空間認識能力が高い子どもがブロック遊びを好むのか、それともブロック遊びをたくさんしたから空間認識能力が向上したのかは断言できませんが、ブロックを組み合わせて立体造形物を組み立てることは、3Dの空間を意識することに貢献しそうですよね。

ブロックのおもちゃにはさまざまなものがあります。なかでも、「あの藤井聡太さんも幼少期から遊んでいた! 大人気の知育玩具『キュボロ』で “非認知能力” を育てよう。」でもご紹介した「キュボロ」は特に教育効果が高そう。

キュボロとは、スイス製の木製おもちゃです。5cmの立方体を組み合わせて遊ぶのですが、ただの積み木ではありません。キュボロの特徴は、ブロックに溝がほられたり穴が開いたりしていること。これらの溝・穴がつながって「道」となるようにブロックを組み合わせ、その道にビー玉を転がして遊ぶのです。

ビー玉がうまく転がるようにブロックを組み合わせるのは、頭を使うもの。外側から見えない部分のことも考慮しなければなりません。教育評論家の石川幸夫氏によると、キュボロで遊ぶことによって子どもの空間認識能力が養われるそう。2018年10月現在、大人気のため入手が難しい状態ですが、時間がかかっても手に入れたい銘品といえます。

空間認識能力を鍛えるゲーム

家庭用ゲーム機やスマートフォンのアプリケーションで遊びながら空間認識能力を鍛えられたら、楽しいうえに教育効果も得られて一石二鳥ですね。そのような便利なゲームはあるのでしょうか?

2007年に発表されたトロント大学(カナダ)の研究によると、18~32歳の男女20名に、米エレクトロニック・アーツ社のWindows用ゲームソフト『メダル・オブ・オナー パシフィックアサルト』を10時間プレイさせたあと、視覚処理能力や注意力を測定するテストを実施したところ、ゲームのプレイ前と比べて正解率の平均が61%から74%に向上したそう。『メダル・オブ・オナー』とは、一人称視点のシューティングゲーム(FPS: First Person Shooter)として人気のシリーズです。FPSは、主人公や敵キャラクター、およびマップ全体が画面に俯瞰(ふかん)的に映る三人称視点と異なり、より現実に近い臨場感が特徴。画面に現れる敵や目標物に注意を凝らしながら3D空間を移動し、照準を合わせて敵を撃つ……このような遊びは非常に注意力を要求するため、プレイヤーの空間認識能力を鍛える効果があるようです。

とはいえ、『メダル・オブ・オナー』は戦争を舞台にしたゲーム。子どもに遊ばせたくない親御さんは少なくないでしょう。そこで、子どもにも安心して勧められるのが、おなじみのパズルゲーム『テトリス』。メリッサ・ターレッキ教授(カブリーニ大学)らが2007年に発表した論文によると、学生に毎週1時間『テトリス』をプレイさせつづけると、3カ月後には、図形回転についてのテストの成績が大きく向上したそう。

『テトリス』は、ロシア出身のアレクセイ・パジトノフ氏が考案したもの。日本では「落ち物パズル」の元祖としてよく知られていますね。上からゆっくりと落ちてくるブロックを回転させ、下に積まれているブロックとうまく組み合わせるゲーム。プレイヤーは限られた時間内に図形の形を素早く判断しなくてはならないので、いかにも空間認識能力が鍛えられそうです。スマートフォンや、携帯ゲーム機「Nintendo Switch」で気軽に遊びつつも、能力の向上が期待できそうですね。

空間認識能力を鍛えるトレーニング

空間認識能力を鍛えられるおもちゃやゲームを紹介してきましたが、子どもの能力を育てるのに特別な道具を買いそろえる必要はないのです。日常生活のなかで空間認識能力を鍛えられる方法をご紹介します。

鬼ごっこ

空間認識能力を高めるには、やはり3次元の空間を自由に動き回るのがいちばん。ただでさえ近年は、安全上の理由などで子どもが外遊びをする機会が減っているので、意識して外で遊ばせるのがよいでしょう。

前述の谷けいじ氏は、空間認識能力を育む代表的な遊びとして鬼ごっこを挙げています。鬼ごっこは、常に自分と鬼の位置を把握しつつ、園庭や公園にある障害物を利用して移動ルートを考えなければいけない遊び。高いところに登れば鬼を回避できる「高鬼」や、鬼が指定した色の物体を探しながら逃げる「色鬼」だと、さらに周囲への注意力が高まります。転んだりぶつかったりして危ないからと鬼ごっこを禁止せず、たくさん遊ばせることが、子どもの成長につながるといえます。

会話の際、大きさや方向を具体的に示す言葉を使う

上でも挙げたデワー氏は、子どもの空間認識能力を高める方法として、空間を意識した声かけを挙げています。たとえば、以下のようなもの。

シーツをベッドの形に合わせるには、どちらの向きがいいかな? 左側の靴ひもは、上を通る? 下を通る? そもそも、どちらが左かな? (スーパーで買った)商品は、ひとつのバッグに収まるかな? このベーグルを横に切ったら、どんな形になる? 切ってもトースターに入るかな?

(引用元:Parenting Science|10 tips for improving spatial skills in children and teens

ふだんは「そっち」「こうやって」という指示語で済ませてしまっている会話に、ものの大きさや方向を具体的に示す言葉を取り入れてみましょう。子どもが空間について考えるきっかけとなります。親にとっても、言語能力を高めるよい練習になりますね。

***
最近注目を浴びている、空間認識能力。子どもの才能を開花させるには、無視できない要素ですね。
机に向かって勉強するだけでは成長させられないこの力を、さまざまな遊びや体験を通じて伸ばしていきましょう!

(参考)
情報学広場:情報処理学会電子図書館|ARを用いた空間認識能力向上のための学習方法
Daily Mail Online|Women ARE as good at reading maps as men … but only in countries with gender equality!
Cell Press|Global Determinants of Navigation Ability
オトナンサー|顔から転ぶ、靴ひもが結べない…子どもが“運動オンチ”に育つ家庭にありがちなNG習慣とは?
日本バレーボール学会|バレーボール選手におけるワーキングメモリと空間認識の関係
一般社団法人コンピュータ教育振興協会|3次元CAD利用技術者試験
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Parenting Science|10 tips for improving spatial skills in children and teens
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