2018.2.28

楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。

編集部
楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。

楽器演奏は脳にいい——。
よく耳にするフレーズですよね。

楽譜を読み込んで継続的に練習する。指を器用に動かして思い通りのメロディーを奏でる。身体全体を使って感情豊かに表現する。子どもたちの成長発達によさそうなことはなんとなく想像がつきますが、楽器演奏って具体的にはどんな効果があるのでしょうか?

実は最近の研究で、音楽の練習が子どもたちの精神面・行動面の成熟に貢献することが判明しています。楽器演奏によって、脳の “ある部位” の発達がうながされるらしいのです。詳しく見ていきましょう。

232人の子どもの脳をMRIで解析

アメリカのバーモント大学のHudziak博士らのチームは、楽器演奏と脳の発達の関係性を調べるために大規模な調査を行ないました。楽器演奏の教育を受けた経験のある6歳から18歳までの健康的な子ども232人の脳をMRIでスキャンしたものを解析し、脳の発育の状況を調べてみたのです。

じつはHudziak博士らは先行研究において、不安や抑うつや注意欠陥障害などの “ネガティブな要素” が脳の特定部位の皮質の厚さに影響を及ぼすことはすでに発見していました。そこで、楽器演奏のような、上記とは違う “ポジティブな要素” からも影響を及ぼす因子を探し出したかったのだそう。得られた結果は、まさに期待通りでした。

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楽器演奏により、脳の皮質が厚くなる

まず判明したのが、脳の運動野(運動機能をつかさどる部位)が活性化すること。楽器演奏では、手指を細かく動かしたり、異なる動作を同時に行なったりすることが求められるため、運動に関わる脳の部位が発達するのだといいます。

さらに、行動を制御する脳の領域にも変化が見られたのだそう。具体的には、ワーキングメモリー(※作業記憶とも呼ばれています。例えばこの記事を読むときも、今読んでいる文章の意味や内容を頭の中で一時的に保ちながら次の文章へと進んでいきますよね。このような “情報を一時的に記憶しながら処理する能力” のことで、会話力や思考力にも大きく関係しています)や注意力、将来の計画力などに関与する脳の皮質が厚くなっていることが明らかになりました。

Hudziak博士は次のように述べています。

「私が5ポンド・10ポンド・15ポンドのものを持ち上げたら上腕二頭筋が大きくなることぐらい、みな知っていますよね。これと同じことが脳にも言えるのです。“脳は鍛えられる” という事実に、私たちはもはや驚くべきではないのかもしれません」

(引用元:The Washington Post|Music lessons spur emotional and behavioral growth in children, new study says

楽器は7歳までに始めるのがおすすめ2

脳内ネットワークが活性化する

南カリフォルニア大学の研究でも、楽器演奏によって脳にさまざまな効果が現れることが証明されています。

研究者らは、6歳または7歳からユース・オーケストラ・ロサンゼルス(※子どもたちが参加するオーケストラ)に所属し週7時間程度の楽器演奏の訓練をしてきた20人の子どもたち、地域のスポーツプログラムに参加している19人の子どもたち、特別な活動を何もしていない21人の子どもたちの3つのグループについて、脳の様子をモニタリングしました。

その結果、音楽経験ありのグループに属する子どもたちの “音を処理する脳の部位” が発達していることが確認されました。加えて、脳の白質(※シグナルを脳内で伝える役割を持つ)や灰白質(※情報伝達を担う脳神経細胞が多く存在する)にも良い影響が見られ、決断力や集中力を担う脳内ネットワークの活性化に寄与している可能性が示唆されたのだそう。わずか2年間の音楽訓練で上記のような効果が現れるとのことですから、驚きですね。

モントリオール大学神経学病院も同様の研究結果を発表しており、7歳までに音楽訓練を始めることを論文中でおすすめしています

***
身体や手指を使って一生懸命メロディーを奏で、その音に耳を傾ける。楽器演奏を通して発達がうながされた脳は、大人になってからも必ず役に立つはずです。

ピアノ、バイオリン、フルート、サックス、チェロ……。世の中に、楽器はたくさんあります。お子さまの成長を願うのならば、幼少期から楽器にふれさせてあげるのはいかがですか?

(参考)
The Washington Post|Music lessons spur emotional and behavioral growth in children, new study says
The University of Vermont|Could Playing Tchaikovsky and Other Music Improve Kids’ Brains?
USC News|Music training can change children’s brain structure and boost decision-making network
Christopher J. Steele ,at al, “Early Musical Training and White-Matter Plasticity in the
Corpus Callosum: Evidence for a Sensitive Period” , the Journal of Neuroscience, January 16, 2013, 33(3):1282–1290