「もっと上手に描けるようになってほしい」「友だちと比べて絵が稚拙なのが心配」
子どもの絵をめぐって、親たちの悩みは尽きません。でも、AIの進化が加速する時代だからこそ、子どもの自由な発想を大切にしたい。むしろ「変な色」や「へんてこな形」こそが、将来を生き抜く力になるかもしれないのです。
アート教育の専門家たちは、子どもの創造性を伸ばすために「親がすべきこと」「してはいけないこと」について、さまざまな提言をしています。その知見をもとに、子どもの個性を伸ばすヒントを探ってみましょう。
「発想力の豊かな子」は将来AIに負けない人材になる
私たちの子どもたちが生きていく未来では、すでに確立された知識や手法をもっているだけでは通用しない時代になっています。なぜなら、純粋な知識量では、私たち人間はもはやAIに太刀打ちできないからです。
これからの時代を生き抜くために必要なのは、AIにはない「人間らしい発想力」です。そして、その土台となるのが子どもの頃から育む「好奇心」なのです。
たとえば、砂場で遊ぶ子どもが、ただの石ころを見つけたとき、発想力豊かな子どもは「これは恐竜の化石かもしれない!」と想像をふくらませます。また、公園で拾った落ち葉は、大人には単なるゴミかもしれませんが、子どもの自由な発想力があれば、色の違いを楽しんだり、穴を開けてお面をつくったりと、すばらしいおもちゃに変身するのです。
このように、「なにものでもないもの」から新しい価値を生み出す力は、将来的なイノベーション能力の基礎となります。それは単に知識を詰め込むだけでは得られない、創造的な経験の積み重ねによって培われるのです。
教育評論家の本山勝寛氏は「子どもの『好き』を大切にすることが、イノベーション能力を伸ばすためにもっとも重要」と断言しています。たとえば、ハムスターが大好きな子どもは自らハムスターを主人公にした絵本をつくり、ザリガニに夢中な子どもは「ザリガニオリンピック」という独創的な自由研究を行なう――。このように、子どもの興味から始まる自由な発想と創造的な活動が、将来のイノベーション人材を育てる礎となるのです。*1
子どもの自由な発想に蓋をしないことが大切
子どもの自由な発想を育むために、私たち大人が気をつけるべきことがあります。それは、子どもの発想に「これはダメ」という否定的な言葉をかけないこと。子どものアート教室を主宰するデザイナーの當原容一郎氏は「否定したらアイデアが出なくなってしまう」と指摘します。
たとえば、粘土遊びをしているとき、子どもが予想外の形を作り出したとしても、それを否定する必要はありません。「失敗したら一度壊して、またつくればいい」というように、むしろチャレンジを後押しすることが大切なのです。*2
また、美術教育の専門家である後藤和人氏は、アートのおもしろさについて、料理にたとえて説明します。「カレーのルーがなければカレーはつくれませんが、アート的な観点で考えると、ルーがなかったら味噌を入れて豚汁にしてしまえばいい」と言うのです。つまり、アートには正解がないからこそ、むしろ材料が足りないような状況でこそ、子どもたちの創造性が育まれるチャンス。
「これがない」「あれが足りない」という状況を、私たち大人はつい否定的に捉えがちです。しかし、そんなときこそ「これを代わりに使ってみよう!」という発想の転換が生まれます。そして、この「ある物をうまく利用する」という経験は、単にアートの創造性を育むだけでなく、将来的な「生きる力」にもつながっていくのです。*3
私たち大人に求められているのは、子どもの予想外の発想や行動を否定せず、むしろその自由な発想を受け止め、伸ばしていくこと。そうすることで、子どもたちは自分の創造性に自信をもち、新しいアイデアを生み出す喜びを知っていくでしょう。
4つのNGワードと、創造力を伸ばす “声かけの魔法”
子どもの絵を見たとき、私たち親は「上手だね」「これは何を描いたの?」と、つい同じ言葉を繰り返してしまいます。でも、そんな何気ない一言が、子どもの創造力の芽を摘んでしまうことも……。そこで、アート教育の現場から、子どもの感性を解き放つ “新しい声かけ” のヒントを探ってみました。
NGワード1:「上手だね」
「上手だね」とほめられ続けると、子どもは「ほめられるために絵を描く」ようになってしまいます。その結果、「これ、上手?」と常に承認を求めるようになり、絵を描く本来の楽しさを見失ってしまうかもしれません。(アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室主宰・今泉真樹氏)
- 「個性があるね」「楽しい気持ちになるよ」
- 「この色、きれい。どうやってつくったの?」
- 工夫した点を具体的にほめる
- ほかの子と比較せず、作品への感想を丁寧に伝える
NGワード2:「これは何を描いたの?」
子どもは必ずしも何かを描こうと思って描いているわけではありません。また、色の選び方に正解もありません。たとえば、あるコンクールでは、夏を赤色で表現し、青い水と対比させた大胆な配色の作品が受賞しています。空や海にだって、さまざまな表情があり、見る人によって感じ方は違います。子どもが選んだ色を「大正解」として受け止める姿勢が大切なのです。(海外で美術教室を主宰・YUKA氏)
- 「どんな色が『ワクワク』した気持ちに似合うかな?」
- 「この色の組み合わせ、おもしろいね!」
- 子どもの選んだ色を否定せず、その選択を尊重する
NGワード3:「まずはね……」「こうやって描くんだよ」
一から手順を説明しながらの制作は、おすすめできません。親の手が入った絵は、どんなに上手に描けても「親の言う通りに描かされた」「僕(私)の絵はダメだったんだ」という気持ちにさせてしまうからです。(海外で美術教室を主宰・YUKA氏)
優しさから手を貸しすぎてしまう親御さんを見かけますが、もう少し子どもの力を信用して見守ってあげてほしい。完成したもののクオリティよりも過程が楽しめることが大切です。きっと自分の力でつくったものには愛着が生まれ、ものを大切に思う気持ちも育めるでしょう。(イラストレーター・サタケシュンスケ氏)
- 子どもの感性を信じて、好きなように描かせる
- 色の選び方は子どもに任せる
- 「失敗しても大丈夫!」その方が学びが大きいと伝える
NGワード4:「汚しちゃダメ」
子どもたちは常に好奇心でいっぱい。でも「汚してはダメ」と制約されがち。たまには、ブルーシートを広げて「今日は汚してもいいよ」と、好奇心の赴くままに楽しませてあげましょう。(アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室主宰・今泉真樹氏)
ただし、完全な自由ではなく、「使っていい場所」「使っていい道具」は最初に決めておくことが大切。ルールを途中で変更するのは避けましょう。そうすることで、子どもは安心して創作に没頭でき、親も笑顔で見守れます。(美術教育専門家・後藤和人氏)
- 「今日は汚してもいいよ!」
- 「この場所で描いてもいいよ」
- 「この道具を使ってね。こっちは使えないよ」
「正解」を求めない時間から生まれた、娘の自由な発想
「今日は好きな色を使って、自由に描いてみようか」
そう声をかけて、5歳の娘に新しい画材を渡してみました。これまでは「空は青、おひさまはオレンジ」と、つい色の指定をしてしまっていた筆者。でも今日は、専門家の先生方のアドバイスを思い出しながら、娘の好きなように描いてもらうことにしました。
すると驚いたことに、キャラクターの白目の部分を青で塗り始めたのです。「え!?」と思わず声が出そうになりましたが、ぐっと我慢。すると娘は楽しそうに、次々と自分の好きな色を重ねていきます。
紫と赤とピンクの歯の熊、ピンクと赤を組み合わせた猫……。私の想像をはるかに超える色使いに、娘はとても満足そう。「ママ、できたよ!」という声に、いつもなら「上手だね」と言っていたところを、「ピンクと赤の猫さん、かわいいね。熊さんの歯の色もすてき!」と、具体的に感想を伝えてみました。
すると娘は「次は違う色で描いてみる!」と、さらに意欲的に。これまで「正しい色」を教えようとしていた私でしたが、子どもの自由な発想を信じることで、こんなに楽しそうに描けるんだと、新しい発見がありました。
たしかに、前出の今泉氏が言うように、「写真のように正確に描くこと」が正解ではありません。むしろ、子どもならではの自由な発想こそが、将来のイノベーション能力につながっていくのですね。今日の経験を活かして、これからも娘の創造性を伸ばしていきたいと思います!
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今回使用したのは、コピックから新登場した水性の不透明カラーマーカー「コピック アクレア」です。裏うつりの心配がなく、乾くと耐水性になるため、子どもでも安心して使えました。重ね描きができ、紙以外の素材への着彩も可能。印刷されたイラストや写真の上にもきれいに発色するので、絵や模様、文字を描き足すこともできます。
なお、現在「あつまれ!アクレアフレンズ」キャンペーンを実施中。絵本作家のtupera tuperaさんがデザインした個性豊かなキャラクターたちのワークシートがもらえ、自由に描き込んでオリジナルキャラクターをつくれます。
(参考)
*1 参考・カギカッコ内引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「ただの石でも化石に見える」? 自分で新たに生み出す経験が育むイノベーション能力
*2 参考・カギカッコ内引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|“発想力”と“プレゼン力”を重視する『こどもデザイン教室りねあ』、アイデア無限の「陶芸レッスン」
*3 参考・カギカッコ内引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|材料たったの2つ! 想像力がぐんぐん育つ「X’masデコレーションアート」
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