芸術にふれる/アート 2021.2.4

子どもと美術に親しむ方法&おすすめ美術館6選

子どもと美術に親しむ方法&おすすめ美術館6選

子どもが美術に親しむことは、さまざまな文化への理解を深めたり感性を養ったりするのに必要です。自分で絵を描いてみたり、展覧会で作品を観賞したりと、さまざまな美術活動があります。

なかでも今回は、美術館に着目。常設展や企画展を開催するほか、子ども向けのワークショップを開くこともある美術館は、親子で訪れるのにピッタリのスポットです。学芸員資格をもつ筆者が、子どもにもおすすめの美術館や、利用時の注意点&アドバイスをご説明します。

美術が子どもに与える影響

美術は子どもにどのような影響を与えてくれるのでしょうか。3つの効果を解説します。

言語能力が育つ

子どもが美術作品を指さして感想を伝えてきたら、みなさんはどうしますか? 「しー、静かに」と話を遮ってしまうのではないでしょうか。でもじつは、美術を鑑賞しながら感想を伝え合うことで、言語での表現力が育つそうです。

世界のエリートが実践する、「VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ、対話型鑑賞)」という美術鑑賞法があります。作品名・作者名・解説文などの情報を用いず、ひとつの作品を10分以上見て気づきや感想を語り合うというもの。ニューヨーク近代美術館の元教育部部長、フィリップ・ヤノウィン氏らが開発しました。

京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センターの専任講師で、VTSを通した人材育成を専門とする岡崎大輔氏によると、右脳で認識した美術情報を左脳に送って言語化するには、脳内で複雑な処理が必要なのだとか。そのため、目で見て感じたことを言葉で伝えるVTSを繰り返せば、言語表現力が磨かれるそうです。

美術作品について子どもと話すときは、認知心理学者アビゲイル・ハウゼン氏が編み出した「3つの問いかけ」が使えますよ。

  1. この作品のなかで、どんなことが起きている?
  2. 作品のどこからそう思った?
  3. もっとほかに、発見したことはあるかな?

子どもへの声かけに迷ったら、ぜひお試しください。

メタ認知能力が育つ

美術の鑑賞には、メタ認知能力を育てる効果もあります。メタ認知能力とは、自分の考えや行動を客観的に理解・判断できる能力。1970年代に発達心理学者ジョン・H・フラベル氏が提唱しました。メタ認知を専門とする心理学者の三宮真智子氏は、メタ認知を次のように説明しています。

メタ認知とは、認知に対する認知、すなわち、見る、聞く、書く、話す、理解する、覚える、考えるといった通常の認知活動をもう一段高いレベルからとらえた認知を指す。認知活動を客観化、対象化することと言い替えてもよい。

(引用元:三宮真知子(1998),「メタ認知能力を伸ばす」, 日本科学教育学会研究会研究報告, 13巻, 2号, pp.45-48.)

つまり、ある絵画を「悲しい絵」だと感じたとき、「泣いている人が描かれているから」と根拠を挙げて感想を述べるのは、メタ認知的な活動なのです。みなさんも子どもと美術館へ行ったら、作品について語り合い、メタ認知能力を磨いてはいかがでしょう。以下のように多くのメリットが生まれますよ。

  • 問題解決能力が高まる
  • コミュニケーション能力が向上する
  • 感情をコントロールしやすくなる など

自己肯定感が育つ

子ども自身の手で美術作品を生み出すことには、自己肯定感が育つというすばらしい効果があります。自己肯定感とは、ありのままの自分を受け止められる感覚のこと。自分に自信をもち、人間関係に恵まれた人生を歩めるよう、小さいうちから育ててあげたい感覚です。

子どもアート教室「アトリエ・ピウ」を主宰する今泉真樹氏は、「自己肯定感はアートによって高められる」と語ります。子どもなりに考え、試行錯誤してなんとか作品を完成させたとき、「自分でできたんだ!」という大きな達成感を得られるからだそうです。

美術作品を鑑賞するだけでなく、子ども自身がつくり出すことにも、大きな教育効果があるのですね。

子どもと行きたい美術館2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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子どもが美術に親しむ方法

それでは、子どもが美術に親しむにはどのような方法があるのでしょうか。具体例を挙げながらご紹介していきますね。

絵を描く

子どもが最も手軽に親しめる美術活動は「お絵かき」です。まだ小さい子でも、紙とクレヨンさえ与えれば、遊びながら自分なりの美術を生み出します。

成長した子は、思うように表現できず悩むようになるはず。すると、「絵の上手な人は、どう表現しているのだろう?」と、プロの絵を鑑賞してみたくなるかもしれません。つまり、自分で絵を描くことは、美術館に興味をもつきっかけにもなりうるのです。

子どもにお絵かきを楽しんでもらう方法を詳しく知りたい方は、「子どものお絵かきを見守る5つのコツ&厳選おすすめグッズ」もチェックしてくださいね。休日には子どもと絵を描いて楽しむ時間をつくってみては?

ワークショップに参加する

子どものアート制作の幅を広げてあげたいと思ったら、美術館のワークショップに参加してみるのもいいですね。道具が用意されている場合が多かったり、1日だけ参加できたりなど、気軽に利用できるのが魅力です。

自宅から参加できる「オンラインワークショップ」を開催している場合もあるので、各美術館のWebサイトをチェックしてはいかがでしょう?

美術教室に通う

子どもの感性を本格的に伸ばしてあげたかったり、親御さんが美術に苦手意識をもっていたりする場合は、美術教室に通わせるのも手です。美術を心から愛し、楽しみ方を知っているプロの導きにより、子どもは魅力的な美術の世界にどんどん引き込まれていくことでしょう。独自の展覧会を開催する場合も多いので、時間と手間をかけた自分の作品を人に鑑賞してもらえる、貴重な体験もできますよ。

美術教室に通うと、絵画コンクールへの応募や夏休みの自由研究に際し、先生からアドバイスをもらえるというメリットも。ただ、教室によって方針は異なるので、入会の前に確認してみてください。

画集を眺める

画集を眺めることでも、楽しく美術に親しめます。子どもと展覧会へ行ったら、ぜひ図録をお土産として購入してみてください。

子どもは美術館で、自分の知識や想像を超えた作品と出会うはず。強烈なインパクトを受けたものは、あとからじっくり見返したくなるでしょう。そこで図録があれば、子どもの興味が失せないうちに振り返れます。自宅でくつろぎつつ、「いったいこれはなんだろう?」と考えながら作品と心ゆくまで向き合い、美術を深く味わえるのです。

図録は、子どもの美術への関心を引き出すのに便利なツールでもあります。子どもが「これ、見て」と気に入った作品を知らせにきたら、図録を眺めつつ感想を語り合ってくださいね。

美術館に行く

美術館は、子どもが本物のアートと出会える理想的な場です。できれば、親自身が興味のある美術館に連れて行ってあげてください。親の気持ちは不思議と伝わるもので、ママやパパが心から美術を楽しんでいると、子どももアートを楽しく感じるようなのです。

趣味で学芸員資格を取得したほど美術好きの筆者も、子どもが抱っこひも時代からよく美術館へ足を運んでいました。まだ言葉を話せない赤ちゃんでも、興味を引かれる作品をじーっと眺めたり、指をさして「うー!」と感想を口にしたり、自分なりに美術を楽しんでいましたよ。

とはいえ、「美術館では静かにしないと……」と思い、子連れで行くことはハードルが高いと感じる親御さんも多いかもしれませんね。周囲に気兼ねすることなく子どもと美術を楽しむなら、美術館や博物館の「キッズデー」を利用してみては?

子連れ客限定の日や、子どもが美術に親しめるイベントなら、親子で心おきなく楽しめます。キッズデーの有無や時期は施設ごとに異なるので、Webサイトなどでご確認ください。

ちなみに、貴重な美術作品を多数所蔵する「東京国立博物館」は、2020年にオンラインで「トーハクキッズデー」を開催していました。子どもと美術を楽しめるイベントがどんなものか、のぞいてみてはいかがでしょう? 

子どもと行きたい美術館3

子どもと楽しめる美術館

国内には、子どもと訪れやすい個性豊かな美術館が多数あります。おすすめポイントとともにご紹介していきましょう。なお、お出かけの際には必ず、Webサイトなどで最新の状況を確認ください。

東京おもちゃ美術館

東京おもちゃ美術館」(新宿区)は、おもちゃを介して親子で遊び、文化を伝え、世代をつなぐことをコンセプトとした体験型美術館。親も懐かしのおもちゃを手に取り、くつろいで子どもを見守ることができます。子どもの年齢に合わせたコーナーが充実しているので、年の離れた兄弟姉妹がいる場合にもおすすめです。

YouTubeの公式チャンネルでは、遊びのスペシャリスト「おもちゃコンサルタント」による「3分でわかる おうち遊びシリーズ」が公開されています。身近な道具で驚くほど簡単につくれ、おうちで楽しく遊べるアイデアが満載です。ぜひ一度のぞいてみてくださいね。

【おすすめポイント】

  • 「0~2歳児「3~5歳児」「小学生」と年齢ごとに楽しめるコーナー
  • 当日参加できるワークショップが充実
  • 靴を脱いで上がれるお部屋あり
  • 「おもちゃ学芸員」に遊び方を教えてもらえる

東京都美術館

子連れに優しい美術館としては、上野公園の「東京都美術館」(台東区)もおすすめ。子どものミュージアム・デビューを応援するプロジェクト「Museum Start あいうえの」に参加しています。一流の美術を子どもと鑑賞したいなら、ぜひ訪ねてみてください。

【おすすめポイント】

  • 基本的に中学生以下は無料
  • 見どころやルールをわかりやすくまとめた「ジュニアガイド」
  • 作品を見ながらお絵かきできる「とびらボード」の貸出
  • 授乳室・オムツ替えシート完備
  • ミルク用のお湯がもらえる
  • ベビーカーでも移動しやすい

草間彌生美術館

親子で現代美術を鑑賞すると、とても楽しいですよ。意味不明としか思えなかったオブジェについて、子どもの感想を通じて「そういう見方もあるのか!」と気づかされることも。

既成概念にとらわれない子どもは、自由な視点で、アートのおもしろい解釈を次々発見していきます。作品について親子で対話しているうち、ワクワクしてくることでしょう。

東京の現代美術館としては、「草間彌生美術館」(新宿区)がおすすめ。写真撮影の可能なスペースもあり、記念に子どものおしゃれな写真が撮れるのも嬉しいですね。カラフルで刺激的な美術空間に包まれる体験を、ぜひお子さんと楽しんでみてください。

建物は5階建てですが、エレベーターがあるので、小さな子がいても安心です。ただし、ベビーカーは受付に預けないといけないので、必ず抱っこひもを持参しましょう。

【おすすめポイント】

  • 未就学児は無料
  • 小人数の完全予約制なので、子どものペースで鑑賞できる
  • おむつ替えシートのある多目的トイレあり
  • 子ども向けのワークシート
  • 参加型の展示あり
  • 子ども向けワークショップあり

彫刻の森美術館

彫刻の森美術館」(神奈川県足柄下郡)は、アクティブ派の子と一緒に体を使って美術を楽しめる、体験型美術館です。スケールの大きい彫刻が点在する屋外のアート空間を駆け回ったり、斬新なデザインのアスレチックで遊んだりして一日遊べますよ。目の前に現れる彫刻をテーマに、子どもと物語をつくりながらめぐってはいかがでしょう。

【おすすめポイント】

  • 未就学児無料
  • 体験型アート作品が充実
  • 赤ちゃんが遊べるエリアあり
  • 雨の日や寒い日でも遊べる屋内エリアあり
  • ベビーカーの利用可
  • おむつ替えスペース&授乳室あり

おかざき世界子ども美術博物館

おかざき世界子ども美術博物館」(愛知県岡崎市)は、本格的な子ども向けミュージアムとして日本初。リーズナブルな価格でいろいろな工作ができる「親子造形センター」が併設されているので、ものづくりが大好きなファミリーは、ぜひチェックしてみてください。最寄り駅から距離があるため、自家用車かタクシーがおすすめです。

【おすすめポイント】

  • 造形教室が充実
  • 魅力的な屋外施設
  • 世界的にも珍しい、ピカソやムンクの子ども時代の作品
  • わくわく鉄道博物館」など子どもから大人まで楽しめる企画展
  • おむつ替えスペース&授乳室あり

ベルナール・ビュフェ美術館

ベルナール・ビュフェ美術館」(静岡県長泉町)は、戦後の具象絵画を代表するフランスの画家ベルナール・ビュフェ(1928~1999)の作品を展示するミュージアムです。ファミリーには、館内施設「ビュフェこども美術館」がおすすめ。靴を脱ぎ、温かみのある木の床に上がって親子でリラックスできます。子どもが全身でアートに親しめる、きれいでおしゃれな美術館です。

【おすすめポイント】

  • 中学生以下無料
  • 乳幼児連れでも家族で楽しめる
  • 子ども用トイレ・授乳室完備
子どもと行きたい美術館4
彫刻の森美術館

子どもと美術館に行くときの注意

子どもと美術館に行きたくなった方のため、事前にやっておいたほうがよいことや、館内で気をつけたいことをご紹介します。

トイレやロッカーを確認しておく

行く前は必ず、トイレやロッカーの有無・位置をWebサイトで確認しましょう。会場内のトイレや休憩スペースは、子どもがむずがり始めたときの緊急避難場所としても使えます。荷物はロッカーに預け、貴重品だけを持って入場するのがおすすめ。場内を歩き回る疲れを大きく軽減できますよ。

ベビーカーで入場できるかや、ベビーカーの置き場も把握しておくと安心です。念のため、抱っこひもも持参しましょう。

トイレや食事を済ませておく

入場前に、トイレや食事は済ませておきましょう。展示場内のトイレは、混んでいてなかなか進めない場合も。また、子どもはお腹が空くと食べることで頭がいっぱいになり、美術どころではなくなってしまうので、事前に何か食べさせておくことをおすすめします。

入場時には、口のなかが空になっているかチェックするのも忘れずに。アメなどが口に残っていると、係の人に声をかけられるかもしれません。

好きなように鑑賞させてあげる

入場したら、基本的は順序にこだわらず、好きなように歩き回らせてあげましょう。子どもはリラックスでき、アートを身近に感じるようになります。

ただ、「これ、見て!」と話しかけてくることもありますし、安全の面でも、子どもが振り返れば視界に入るところにいてあげましょう。絵を見ながら感想を聞いてあげることで、絵に対する子どもの興味はどんどん強まっていきますよ。

作品とじっくり向き合う

作品の横に解説があると、つい読んであげたくなるかもしれませんが、ぐっとこらえてください。作品そのものと向き合い、できれば10分以上、自分の目でじっくり観察するよう促しましょう。よくわからないものだからこそ、自由に作品を眺め、目で見た事実から自分なりの解釈ができるのです。

この際、冒頭で説明したVTSを用いれば、子どものメタ認知能力を育てられますよ。VTSを試すなら、空いていることの多い常設展や、比較的オープンな雰囲気の現代美術展を選びましょう。

子どもの関心に合わせる

まったく美術に関心をもたず、すぐ飽きてしまう子もいますよね。その子が好きなものと関連づけて、美術に親しむきっかけをつくってあげましょう。

たとえば、ディズニープリンセスが好きな子なら、本物の王女さまや王妃さまが出てくる西洋絵画の画集を図書館で借りてみては? ファッションカタログのように気楽に眺めつつ、着てみたいドレスやアクセサリーについておしゃべりしても楽しいですね。アート鑑賞に慣れてきたと感じたら、子どもの趣味に合いそうな展覧会へ連れて行ってあげましょう。

ヒーローものが好きな子なら、体を動かして楽しみやすい彫刻がおすすめです。特に、大きくて躍動感にあふれる仏像はヒーローのように感じられ、ポーズをまねしてみる子も多いのではないでしょうか。

仏像の持っているアイテムや、踏みつけられている邪鬼など、「どっちが仏像の謎をたくさん発見できるかな?」とゲーム感覚で競争するのも盛り上がりますよ。「なぜ?」と質問攻めにしてくる子には、仏像図鑑を与えましょう。親より詳しくなって、説明してくれるかもしれません。

子どもと美術を楽しむ際は、ご紹介したアドバイスを参考になさってください。

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子どもと美術の関係をもっと知るために

子どもと美術の関係をもっと知りたい方は、ヒューマンアカデミーの「チャイルドアートセラピー講座」をのぞいてみてはいかがでしょう? お絵かきや粘土工作などのアート活動から、子どもの心理や発達状態を読み解く方法が学べます。詳しい内容は、デジタルパンフレットをご覧ください。

お絵かきを通して子どもの気持ちや興味が理解できるようになれば、お子さんとより楽しく美術に親しむコツが見えてくるかもしれません。

***
子どもと美術の関係が気になる方に、美術に親しむメリットや、子どもが美術に親しむ方法、親子で行くのにおすすめの美術館や注意点を詳しくご紹介しました。まずはお子さんと一緒に、美術館のWebサイトをチェックしてはいかがでしょう。

文/上川万葉

(参考)
奥村高明(2015),『エグゼクティブは美術館に集う 「脳力」を覚醒する美術鑑賞』, 光村図書出版.
岡崎大輔(2018),『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』, SBクリエイティブ.
フィリップ・ヤノウィン 著, 京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター 訳(2015),『どこからそう思う? 学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・ シンキング・ ストラテジーズ』, 淡交社.
「創刊70周年記念特大号 東京のミュージアム100」, 芸術新潮, 2020年1月号, pp.10-181.
「教えてコバチュウ先生! 『日本美術』ってなんですか?」, 和樂, 2019年2・3月号, pp.36-47.
三宮真知子(1998),「メタ認知能力を伸ばす」, 日本科学教育学会研究会研究報告, 13巻, 2号, pp.45-48.
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