芸術にふれる/アート 2020.2.4

つい言ってしまう「上手だね」。もっとお絵かきが純粋に楽しくなる大人の言葉

編集部
つい言ってしまう「上手だね」。もっとお絵かきが純粋に楽しくなる大人の言葉

勉強はもちろん、スポーツも得意になってほしいし、絵もうまくなってほしい――。親というものは、欲張りなものです。では、どうすれば子どもは積極的にお絵描きに取り組んでくれるようになるのでしょうか。子ども向けのアート教室を運営する今泉真樹先生にアドバイスをしてもらいました。

インタビュー写真/石塚雅人
アート活動写真/今泉真樹

子どもの絵の評価に対する大人の意識改革が必要

多くの大人には、子どもに「写実的な絵を描けるようになってほしい」という気持ちがあるようです。たしかに、カメラがない時代に活躍した肖像画家は、見たものを写実的に描く能力を求められたでしょう。ですが、写真のように描けること=「絵が上手い」という価値基準ですと、世の中のアーティストはほとんど評価されない、ということになってしまいます。

絵にはうまい下手、正解や不正解もない」「絵は写実的に描く必要はないと、大人の意識を変える必要があると思います。

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「うまい、下手」という基準によらない部分を褒める

子どもの絵を見たときに、「上手だね」と褒めるといい、と思っていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。「上手だね」と褒められると、子どもは「上手」に描かなくてはいけないと思い込んでしまいます。また、「上手だね」とばかり褒め続けると、「これ上手?」と繰り返し聞くようになる場合もあります。絵を描くこと自体を楽しむのではなく、「褒められるために絵を描く」といった、自己承認欲求を満たそうとする方向へ変わっていくケースがよくありますので、注意が必要です。

では、どんな声かけをすれば、子どもは本当の意味でアートに親しんでくれるのでしょうか。それは、「うまい下手」という判断基準によらない部分を褒めることです。

「個性があるね」「楽しい気持ちになるよ」といったことや、「お母さん、この絵好きよ」と伝えてあげることでもいいのです。また、最後まで粘り強く頑張った過程を褒めてあげたり、「この色、綺麗だね、どうやってつくったの?」というふうに工夫した点を見つけてあげると、子どもはよろこぶと思います。その際、「みんなよりすごいね」など、他人と比較するのではなく、絵に対しての感想を丁寧に伝えてあげることが大切です。

今泉真樹先生インタビュー_子どもの絵の褒め方02

筆が進まない子どもにはトレースがおすすめ

「絵にうまい下手はない」「写実的な絵を描く必要はない」という気持ちで接してきたとしても、小学生になり、写実性が求められる課題が出されるようになると、絵に対して苦手意識を持ってしまう子どもも出てきます。まずは「どんな絵を描いても素晴らしいのだ」ということを伝えてあげることがなにより大切です。

しかし、その声かけだけで、子どもが苦手意識を払拭し、積極的にお絵描きに取り組むようにはなりません。そこで、子どもが自信を持って描けるような工夫が必要です。写真などの資料を用意することもそのひとつです。

たとえば、「運動会の絵を描いてみましょう」といわれて、なにも見ないまま描くことは、大人にとっても難しいことです。そこで、玉入れやかけっこの様子、お弁当を食べている風景などの写真を用意してあげると描きやすくなります。また、動物などを描く場合も、図鑑や写真を用意してあげるとよいでしょう。

どんなふうに描きはじめたらよいか分からないという場合は、トレーシングペーパーを使って、写真をなぞってみるのもおすすめです。写真のとおりに描く必要はありませんが、肩の力を抜いてお絵描きができるので、大人がやっても楽しいですよ。何回かなぞってみると、構えずに絵を描くことができるようになっていきます。

ただ、トレースをするときにデフォルメされたイラストを使うことは避けるようにしてほしいですね。そのイラストのような絵ばかり描くようになり、個性が失われてしまうからです。トレースをする際は、本物を撮影した写真を使うとよいでしょう。

今泉真樹先生インタビュー_子どもの絵の褒め方03
初めて描く動物もトレースすれば描きやすい

夏休みの絵の課題を通してデザイン思考を学ぶ

小学生の夏休みの宿題として出されることの多いポスター制作は、デザイン思考を学ぶ絶好の機会です。ポスターは、自由に描く絵とちがい、目的がありますから、テーマにまつわることを学ぶ必要があります。たとえば、環境問題をテーマにしたポスター制作の場合、はじめに図書館などで環境問題について子どもと一緒に調べてみましょう。まずなにが問題なのかを見つける、問題の解決方法となるアイデアを生み出す、どうやったらそのアイデアを相手に伝えられる作品になるかを考える、とまさに「デザイン思考」と同じプロセスでつくっていきます。テーマを調べることにより、社会、理科、国語などを学ぶことにもなり、アートが他の分野とつながっていることを実感できると思います。

子どもがなかなか取り組めない場合は、描きたい絵の写真を一緒に用意するなど、準備を手伝ってあげると、スムーズに筆が進みます。実際に描く段階になったら、子どもが好きなように描かせてあげてください。親が手を出してしまうと、それは親の作品になってしまいます。子どもが達成感を味わえるよう、温かく見守ってあげましょう

今泉真樹先生インタビュー_子どもの絵の褒め方04

アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室

■ アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室 主宰 今泉真樹先生 インタビュー一覧
第1回:「汚してもいいよ」で子どもの好奇心を発揮させる! 未就学児から楽しめるアート活動
第2回:つい言ってしまう「上手だね」。もっとお絵かきが純粋に楽しくなる大人の言葉
第3回:子どもの表現力には限界がある。だからこそ「本物」のアートに触れてほしい
第4回:自己肯定感はアートで高める! 「自ら考え、かたちにする」を繰り返し、自信を持てるようになる

【プロフィール】
今泉真樹(いまいずみ・まき)
東京都出身。アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室 主宰。桑沢デザイン研究所を卒業後、英ローズ・ブルフォード大学を主席で卒業。国内外の有名ブランドや宝塚歌劇団のジュエリーデザインなどを手がける。2012年、アトリエ・ピウ 知育こどもアート教室を設立。子どもの自由な発想力や思考力を育てることに焦点をあてた絵画・工作・野外アート活動の指導を行う。保育 絵画指導スペシャリスト ライセンス保有。新宿区子ども未来基金助成活動【アートミック】アート講師も務める。