2018.7.28

【新体操は身体を柔軟にして表情を豊かにする】~元オリンピック新体操日本代表・畠山愛理さんに聞いた「習い事としての新体操のメリット」~

【新体操は身体を柔軟にして表情を豊かにする】~元オリンピック新体操日本代表・畠山愛理さんに聞いた「習い事としての新体操のメリット」~

子どもの習い事は、親にとっての一大関心事です。せっかく時間もお金もかけて取り組むのだから、より子どもの将来に役立つものを選びたいですよね。その点、身体と心の基礎をつくってくれる新体操は、幼少期にはじめる習い事に最適。自身も新体操とともに成長してきた畠山愛理さんにもお話を伺いながら、子どもが新体操をすることのメリットを考えてみます。

構成/岩川悟 取材・文/大住奈保子(Tokyo Edit) 写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)

新体操は健康で強い身体をつくるのにもってこいの競技

幼少期は、子どもの才能の芽がグングン伸びる時期。特に9~12歳までは「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、身体の動きを習得するのにもっとも効率的な年齢とされています。いわゆる運動神経が良いか悪いは、個人差こそありますがこのころまでにある程度決まると言われています。子どもの一生に一度しかないこの時期に、親はどのようなサポートをすればいいのか。そのひとつのヒントは、最高峰の身体能力をもつオリンピック選手の幼少期にあるのではないでしょうか。元オリンピック新体操日本代表の畠山愛理さんも、もともとは身体が硬く、飛び抜けて身体能力が高いわけではなかったのだそうです。

「股関節が硬かったので、お風呂上がりに母に手伝ってもらいながらストレッチは毎日していました。『こんな技ができるようになったんだよ』という話をしながら、身体を押してもらっていたんです。とてもいい時間でしたね」

人間の身体は、ゴールデンエイジを経て15歳くらいを過ぎると、バランス感覚や柔軟性が伸びにくくなると言われています。畠山さんもみずからの体験から、このことを実感していました。

「特に柔軟は、なるべく早くはじめたほうがいいと思いますよ。早ければ早いほど、身体というのはやわらかくなりやすいんです。股関節が固まってからだと、ストレッチをしてもなかなかやわらかくなりません。新体操をしているとストレッチが日課になるので、姿勢がよくなるし、その子の運動神経の基礎が自然とつくられると思います」

身体能力を上げるためには、少しでも早くから身体づくりをはじめたほうがいい。これは周知の事実だと思われがちですが、畠山さんは15歳のときに練習のためにロシアに行って、日本はまだその意識が不十分だと思い知らされたそう。

「ロシアではおむつをした赤ちゃんが練習しているんですよ! おむつの上からレオタードを着るのですごくかわいいんですけど、そんなに小さな子に新体操を教えるなんてビックリしますよね(笑)。それだけじゃなくて、3歳児の試合もあるんです。投げられたボールをキャッチするとか簡単なことではあるのですが、小さいうちからボールに触れているかいないかで、のちに大きな差が出てくる。だから、ロシアの選手は強いんです」

習い事としての新体操のメリット2※ロシアでの練習でいろいろな「気づき」を得た畠山さん。飛躍するひとつのターニングポイントになりました

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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豊かな表情は、人とのコミュニケーションを円滑にする

ゴールデンエイジとあわせて注目されているのが、その前段階であるプレゴールデンエイジです。年齢でいうと5~9歳ごろにあたり、神経系がもっとも発達する時期。子どもの創造力や表現力、思考力の基礎などはこのころに形成されます。なかでも自分の思いを相手に伝える表現力は、これからの社会に欠かせない能力。新体操に取り組むと、この表現力が自然と育ち、人に気持ちを伝えるのが上手な子どもに育つと言われています。音楽に合わせて踊り、手足の動きや表情で観客を引き込んでいく。こうした選手の表現力は、新体操という競技の醍醐味だからです。

「日本で練習しているころは、表情のバリエーションが笑顔だけでした。それがロシアに行ってからは、悲しみや寂しさ、切なさなどもあらわせるようになり、表現の幅が格段に広がりました。実生活においても、表情ってすごく大事だと思うんですよ。指導者になったときに教えたなかにすごくシャイな子がいて、本当に表情をつくらない子だったんです。『本当に新体操が好きなのかな?』と不安でしたね。あとからその子に話を聞くと、新体操が好きだし、練習も楽しいって言うんです。でも、表情が暗ければその気持ちはなかなか伝わりませんよね。だから小さいころから表情を豊かにする訓練をするのは、大事なことだと思います」

たしかに表情が豊かな子には、友だちもたくさんできそうですし、自然と明るい性格に育ちそう。しかし、意識せずに生活していると自分がどんな表情をしているのかを知ることはできません。畠山さんは、チームのメンバーと一緒に表情の練習をしたそうです。

「新体操では表情も採点に影響するので、かなり真剣に練習していました。ロシアのコーチに『自分がいまどんな表情をしているのか、わかっているようにしなさい』と言われて。鏡の前に立って、みんなで表情の練習をしたりもしました」

ほかにもリズム感や瞬発力が養われるとされ、子どもの心身にはいいことづくめの新体操。畠山さんも「新体操をやっていてよかった」と、たびたび話してくださいました。習い事を検討するときには、候補のひとつにするのもいいかもしれません。

■ 元オリンピック新体操日本代表・畠山愛理さん インタビュー一覧
第1回:【新体操は身体を柔軟にして表情を豊かにする】~習い事としての新体操のメリット
第2回:【これからの時代に必要なのは、共感を伴う自己表現力】~表現力の高め方
第3回:【子どもの才能は「好き」のなかにある】
第4回:【わたしを救った「反省ノート」と「未来ノート」の存在】~挫折の乗り越え方

【プロフィール】
畠山 愛理(はたけやま・あいり)
1994年8月16日、東京都出身。6歳から新体操をはじめ、2009年12月中学3年生のときに日本代表であるフェアリージャパンオーディションに合格し、初めて新体操日本ナショナル選抜団体チーム入りを果たす。2012年、17歳で自身初となるロンドンオリンピックに団体で出場し7位入賞に貢献。その後、日本女子体育大学に進学し、2015年の世界新体操選手権では、団体種目別リボンで日本にとって40年ぶりとなる銅メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロオリンピックにも団体で出場し、8位入賞。リオデジャネイロオリンピック終了後に現役引退を発表する。 また、2015年に開催されたミス日本コンテストにおいて、大会への応募に関わらず、美と健康の素晴らしい資質を持った女性のさらなる活躍を応援するという特別栄誉賞「和田静郎特別顕彰ミス日本」を受賞した。現在は、新体操の指導、講演、メディア出演などで活躍中。また、これまでの経験を活かしイベントなどでダンスを踊ることも。新体操の魅力を伝えるため、日々奮闘中。2018年、NHK『サンデースポーツ2020』のリポーターに就任。またBS-ジャパン『バカリズムの30分ワンカット紀行』のアシスタントとしてバラエティーにも挑戦している。

【ライタープロフィール】
大住 奈保子(おおすみ・なほこ)
編集者・ライター。金融・経済系を中心に、Webサイト・書籍・パンフレットなどのコンテンツ制作を手がける株式会社Tokyo Editの代表を務める。プライベートでは、お菓子づくりと着物散策、猫が好きな30代。
これまでの経歴は、http://www.lancers.jp/magazine/29298から。
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