「お手伝いする!」と言って食器を運びたがる4歳の娘。でも、一枚一枚慎重に運ぶので、いつもの3倍は時間がかかってしまう。朝の忙しい時間、「あと10分で保育園に出発しないと……」と焦ってしまう。
「お皿洗う!」と張り切る6歳の息子。水遊びが楽しくなって、気づけば20分が経過。「あ! 習い事の時間だったのに!」と慌てることに……。
子どもの意欲を大切にしたい。でも現実には、お手伝いに時間をかけすぎると、日々のスケジュールに影響が出てしまう。「急いでいるときに限って手伝いたがる」「やる気を大切にしたいけど、予定に間に合わない」。多くの親が直面するこんなジレンマ。
また、「お手伝いはいいから勉強させたい」と感じることも。知育教材が豊富ないまの時代、少しでも多くの時間を子どもの学びに使わせたいという思いも、親として当然かもしれません。
でも、ちょっと待ってください。じつは、子どものお手伝いには、勉強や習い事にも負けない大切な効果があることがわかっています。特に注目したいのが、お手伝いを通じて自然と身につく「時間の感覚」。この感覚は、子どもの自立した生活の土台となり、学習面でも活きてくるのです。
「3歳の子に何ができる?」「小学生になったらどこまで任せていい?」「やる気はあるのに時間がかかりすぎて」。今回は、年齢別のお手伝いチャートとともに、子どもが楽しみながら効率よくできる家事の選び方や、日常生活にも無理なく組み込めるルーティンづくりのコツをご紹介します。
お手伝いは、どんどんさせるべき。その理由とは?
独立行政法人国立青少年教育振興機構の元理事長の鈴木みゆき氏は、お手伝いには3つの効果があると指摘します。
お手伝いの3つの効果
- 子どもの自己肯定感を高める
- マナーを学ぶことにつながる
- 「時間の感覚」を身につけられる
このなかでも特に注目したいのが「時間の感覚」です。長く生活習慣の研究をしてきた鈴木氏は次のように説明します。
「人間にとってなにが大事かといえば、『24時間をコントロールする力』だと思うのです。(中略)24時間をどう使うかということを、自分でコントロールすることがなによりも大切。時間を自ら律する『時間の自律』ということなのです」
(引用元:STUDY HACKERこども☆まなびラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由)
では、子どものお手伝いがなぜ「時間の感覚」を育むのでしょうか。
お手伝いには、子どもの成長に欠かせない大きな効果があります。特に注目したいのが、「朝ご飯の前には植物に水をあげる」「お風呂のあとは洗面台を拭く」といった日課を通じて、自然と身につく時間の使い方。こうした習慣が、やがて「いまやるべきこと」「後回しにできること」を自分で判断できる力へと育っていくのです。
また、お手伝いを通じて時間の管理が上手になった子どもは、生活全般でも計画性が身についていきます。たとえば、おもちゃの片付けに時間がかかりすぎて遊び時間が減ってしまった経験から、「早めに片付けよう」という意識が芽生えることも。
一見、時間がかかって非効率に思えるお手伝いですが「この時間までに終わらせよう」「次は何をしなきゃいけないかな」と、時間を意識しながら行動する習慣が自然と身についていきます。これは勉強や習い事など、子どもの様々な活動にも活きてくる大切な力となるのです。
ちょっとしたお手伝いの習慣化から
幼児期からのお手伝いについて、元開成中学・高校校長の柳沢幸雄氏が興味深い指摘をしています。
「子どもが10歳までの幼いあいだにもっと幅広くたくさんの経験をさせてあげてほしい」と柳沢氏は説きます。この「たくさんの経験」という言葉を聞くと、多くの親は海外留学や、長期キャンプなどの特別なイベントを思い浮かべるかもしれません。
しかし、子どもの成長に必要な経験は、じつはもっと身近なところにあります。柳沢氏は、「洗濯物をたたむとか、お皿を洗うといったことでもいい」と話しています。
3歳、4歳からでも始められる簡単なお手伝い。毎日の生活の中での小さな達成感の積み重ねが、子どもの大切な経験となっていくのです。だからこそ、「お手伝いしたい!」という子どもの意欲を、ぜひ大切にしていきたいものです。
では、子どもの年齢に合わせて、具体的にどんなお手伝いから始めればよいのでしょうか。次に、年齢別のお手伝いチャートをご紹介します。
いま何ができそう? 年齢別お手伝いチャート
前出の鈴木氏や柳沢氏らの意見から、お手伝いチャートを作成してみました。
幼児期は、親のすることをまねしたがる年頃です。まずは、おもちゃの片付けなど本来子ども自身がするべきことや、ゴミ捨てなどのちょっとしたお手伝いを「一緒にやろう」と誘うとよいでしょう。
身の回りの整理 |
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掃除 |
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身の回りのことに加えて、少しずつ家族の一員としてのお手伝いに移っていきます。簡単な食事の準備や片付け、洗濯物をたたむなど、安全にできるお手伝いをお願いしてみましょう。この時期は「もっと自分でやってみたい」という意欲を大切に育てていきます。
身の回りの整理 |
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食事関連 |
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掃除 |
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洗濯 |
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学童期前半になると、自分の身の回りのことはひとりでできるようになり、できるお手伝いも増えていきます。この時期は、自分のお手伝いが家族の役に立っていることを実感する大切な段階です。また、ペットの世話や植物の水やりなど、継続的な責任が必要なお手伝いもお願いできる時期です。「毎日決まった時間に」という約束を意識づけることで、時間の感覚も育っていきます。
身の回りの管理 |
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食事関連 |
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洗濯 |
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掃除 |
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生き物の世話 |
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学童期後半は、自分自身のことはかなりできるようになっているはずです。この時期は、より複雑な、家族のためになるお手伝いに参加してもらいます。毎日の生活の中で工夫する経験を重ねながら、自立心や時間を管理する力を少しずつ育てていきます。
身の回りの管理 |
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食事関連 |
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洗濯 |
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掃除 |
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買い物 |
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お手伝いを楽しみながらルーティン化するために
子どもの時間の感覚を育むには、お手伝いを継続的な習慣として定着させることが大切です。でも、「〇時になったらお手伝いの時間」と決めても、小さな子どもには難しいもの。そこで、3つのポイントを意識しながら、無理のない形でお手伝いをルーティン化していきましょう。
1. 生活の流れにそって始める
幼児期の子どもにとって、時間を決めてお手伝いを実行するのは想像以上に難しいものです。そこでおすすめなのが、すでに習慣になっている生活動作と結びつける方法。たとえば「朝ご飯の前に植物に水をあげよう」「歯磨きをしたら鏡を拭く」「おもちゃで遊んだあとにはお片付けをする」といった具合です。こうした「〇〇の前には△△をする」という形で結びつけることで、子どもは自然と時間の流れを意識できるようになっていきます。*3
2. 小さな達成感を大切に
「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉を、本人だけのときも、家族の前でも、こまめに伝えましょう。「お手伝いしてくれたおかげで朝の支度が早く終わったね」など、具体的に効果を伝えることで、子どもは家族の役に立てた実感が持てます。ただし、「えらいね」と過度にほめたり、ご褒美を約束したりするのは逆効果。大切なのは、「お手伝いって楽しい」「もっと家族の役に立ちたい」という気持ちを育てることです。
3. 子どものペースを見守る
子どものお手伝いは時間がかかり、失敗も多いもの。でも、せかしたり手を出しすぎたりせず、子どもなりの工夫やペースを尊重しましょう。試行錯誤しながらも最後まで頑張れたという経験こそが、子どもの自信とやる気を育てます。困っているときは、さりげなくコツを教えてあげるのがポイントです。
このように、生活の流れに無理なく組み込み、達成感を味わいながら子どものペースで続けることで、お手伝いは自然と習慣となっていきます。そして、その積み重ねが子どもの「時間の感覚」を育て、将来の自立した生活への土台となるのです。
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お手伝いは、ただの家事の手助けではありません。子どもが自分で考え、判断し、行動する力を育む大切な成長の機会なのです。3歳からのお手伝いを、日々少しずつ続けることで、子どもは自然と時間の使い方を学び、自分から進んで動ける子へと育っていきます。
ぜひ、この記事でご紹介した年齢別のお手伝いチャートを参考に、お子さまの成長に合わせて少しずつ内容を増やしていってください。継続的なお手伝いの習慣は、必ず子どもの大きな力となるはずです。
文/松岡芙佐江
(参考)
(*1) STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由
(*2) STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?
(*3)ベネッセ教育情報|自分で考えて行動できる子になるには「段取り力」と「習慣化」がカギ!
(*4) ダイヤモンド・オンライン|「お手伝いができる子」の親がしている4大習慣
ミサワホーム|年齢別お手伝い実践一覧表
Harmonies with KUMON|社会に出てからも役に立つ!子どものお手伝いにおすすめの家事って?
Harmonies with KUMON|子どもがお手伝いを楽しみながら、進んでできるようになる5つの工夫