「お手伝いする!」と目を輝かせる4歳の娘。「お皿洗う!」と張り切る6歳の息子。子どもの「やりたい!」という気持ちは、成長の大切なサインです。
でも、「お手伝いはいいから勉強させたい」と感じることも。知育教材が豊富ないまの時代、少しでも多くの時間を子どもの学びに使わせたいという思いも、親として自然なことかもしれません。
しかしじつは、子どものお手伝いには、勉強や習い事にも負けない大切な効果があることがわかっています。
「3歳の子に何ができる?」「小学生になったらどこまで任せていい?」今回は、年齢別のお手伝いチャートとともに、子どもが楽しみながら効率よくできる家事の選び方や、日常生活にも無理なく組み込めるルーティンづくりのコツをご紹介します。
目次
お手伝いは、どんどんさせるべき。その理由とは?
独立行政法人国立青少年教育振興機構の元理事長の鈴木みゆき氏は、お手伝いには3つの効果があると指摘します。
お手伝いの3つの効果
- 子どもの自己肯定感を高める
- マナーを学ぶことにつながる
- 「時間の感覚」を身につけられる
1. 子どもの自己肯定感を高める
お手伝いを通じて「ありがとう」「助かったよ」と感謝されることで、子どもは家族の役に立てた実感を得られます。この小さな達成感の積み重ねが、子どもの自信とやる気を育てていきます。
2. マナーや社会性を学ぶことにつながる
家族の一員として役割を果たす経験は、責任感や協調性を育みます。「自分も家族の大切な一員なんだ」という意識が、社会性の基礎となっていくのです。
3. 生活スキルと段取り力が身につく
お手伝いを通じて、「いまやるべきこと」「次に何をするか」を考える習慣が自然と身についていきます。こうした段取り力は、勉強や習い事など、子どもの様々な活動にも活きてくる大切な力となります。
ちょっとしたお手伝いの習慣化から
幼児期からのお手伝いについて、元開成中学・高校校長の柳沢幸雄氏が興味深い指摘をしています。
「子どもが10歳までの幼いあいだにもっと幅広くたくさんの経験をさせてあげてほしい」と柳沢氏は説きます。この「たくさんの経験」という言葉を聞くと、多くの親は海外留学や、長期キャンプなどの特別なイベントを思い浮かべるかもしれません。
しかし、子どもの成長に必要な経験は、じつはもっと身近なところにあります。柳沢氏は、「洗濯物をたたむとか、お皿を洗うといったことでもいい」と話しています。
3歳、4歳からでも始められる簡単なお手伝い。毎日の生活の中での小さな達成感の積み重ねが、子どもの大切な経験となっていくのです。だからこそ、「お手伝いしたい!」という子どもの意欲を、ぜひ大切にしていきたいものです。
では、子どもの年齢に合わせて、具体的にどんなお手伝いから始めればよいのでしょうか。次に、年齢別のお手伝いチャートをご紹介します。

いま何ができそう? 年齢別お手伝い一覧
前出の鈴木氏や柳沢氏らの意見から、お手伝いチャートを作成してみました。
👶幼児期前半(1-3歳)
幼児期は、親のすることをまねしたがる年頃です。まずは、おもちゃの片付けなど本来子ども自身がするべきことや、ゴミ捨てなどのちょっとしたお手伝いを「一緒にやろう」と誘うとよいでしょう。
身の回りの整理
- おもちゃの片付け
- 脱いだ服を決まった場所に置く
- 使ったものをもとの場所に戻す
掃除
- ゴミをゴミ箱に入れる
- 落ちているものを拾う
👶幼児期後半(3-6歳)
身の回りのことに加えて、少しずつ家族の一員としてのお手伝いに移っていきます。簡単な食事の準備や片付け、洗濯物をたたむなど、安全にできるお手伝いをお願いしてみましょう。この時期は「もっと自分でやってみたい」という意欲を大切に育てていきます。
身の回りの整理
- おもちゃの片付け
- 文具や絵本の片付け
- 自分の持ち物を決まった場所に置く
食事関連
- テーブルを拭く
- 簡単な床掃除
掃除
- テーブルを拭く
- 簡単な床掃除
洗濯
- 洗濯物を家族ごとに仕分ける
- 靴下をペアにする
- 自分の服をたたむ
👦学童期前半(6-8歳)
学童期前半になると、自分の身の回りのことはひとりでできるようになり、できるお手伝いも増えていきます。この時期は、自分のお手伝いが家族の役に立っていることを実感する大切な段階です。また、ペットの世話や植物の水やりなど、継続的な責任が必要なお手伝いもお願いできる時期です。
身の回りの管理
- 自分の部屋の整理整頓
- 学校の持ち物の準備
- 宿題や提出物の管理
- 着る洋服の準備
食事関連
- サラダなどの簡単な食事の準備
- 火を使わない調理のお手伝い
(火を使う場合は、大人の監督のもとで) - 食器洗い
掃除
- 掃除機をかける
- 洗面所の鏡を拭く
洗濯
- 洗濯物を干す
- 自分や家族の洋服をたたむ
生き物の世話
- ペットの餌やり、飲み水の補充
- 植物の水やり
👦学童期後半(8-12歳)
学童期後半は、自分自身のことはかなりできるようになっているはずです。この時期は、より複雑な、家族のためになるお手伝いに参加してもらいます。毎日の生活のなかで工夫する経験を重ねながら、自立心や計画性を少しずつ育てていきます。
身の回りの管理
- 自分の部屋の整理整頓
- 学校の持ち物の整理・点検
- 学校の持ち物の準備
- 宿題や提出物の管理
- 季節や天候に応じた持ち物・着る洋服の準備
- 衣替え
食事関連
- 調理(大人の監督のもと)
- 食器洗い
- 食卓の準備と片付け
- 冷蔵庫の整理(賞味期限チェック)
掃除
- 自分の部屋やリビングの掃除(掃除機、拭き掃除など)
- 風呂掃除
- ゴミ出し、新しいゴミ袋のセット
- 玄関掃除
- シーツ掛け
- 草むしり
- 落ち葉掃き
洗濯
- 洗濯機の操作
- 洗濯物を干す
- アイロンがけ(大人の監督下で、ハンカチなど小物から)
- 自分や家族の洗濯物たたみ、収納
買い物
- 近所のお店での買い物
- 買い物リストの作成

お手伝いを楽しみながらルーティン化するために
お手伝いを継続的な習慣として定着させるには、3つのポイントを意識しながら、無理のない形でルーティン化していきましょう。
1. 生活の流れにそって始める
幼児期の子どもにとって、時間を決めてお手伝いを実行するのは想像以上に難しいものです。そこでおすすめなのが、すでに習慣になっている生活動作と結びつける方法。たとえば「朝ご飯の前に植物に水をあげよう」「歯磨きをしたら鏡を拭く」「おもちゃで遊んだあとにはお片付けをする」といった具合です。こうした「〇〇の前には△△をする」という形で結びつけることで、子どもは自然と習慣として身につけられるようになっていきます。*3
2. 小さな達成感を大切に
「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉を、本人だけのときも、家族の前でも、こまめに伝えましょう。「お手伝いしてくれたおかげで朝の支度が早く終わったね」など、具体的に効果を伝えることで、子どもは家族の役に立てた実感が持てます。ただし、「えらいね」と過度にほめたり、ご褒美を約束したりするのは逆効果。大切なのは、「お手伝いって楽しい」「もっと家族の役に立ちたい」という気持ちを育てることです。
3. 子どものペースを見守る
子どものお手伝いは時間がかかり、失敗も多いもの。でも、せかしたり手を出しすぎたりせず、子どもなりの工夫やペースを尊重しましょう。試行錯誤しながらも最後まで頑張れたという経験こそが、子どもの自信とやる気を育てます。困っているときは、さりげなくコツを教えてあげるのがポイントです。
このように、生活の流れに無理なく組み込み、達成感を味わいながら子どものペースで続けることで、お手伝いは自然と習慣となっていきます。そして、その積み重ねが子どもの自己肯定感や生活スキルを育て、将来の自立した生活への土台となるのです。
***
お手伝いは、ただの家事の手助けではありません。子どもが自分で考え、判断し、行動する力を育む大切な成長の機会なのです。3歳からのお手伝いを、日々少しずつ続けることで、子どもは自然と生活スキルを学び、自分から進んで動ける子へと育っていきます。
ぜひ、この記事でご紹介した年齢別のお手伝いチャートを参考に、お子さまの成長に合わせて少しずつ内容を増やしていってください。継続的なお手伝いの習慣は、必ず子どもの大きな力となるはずです。
(参考)
*1 STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由
*2 STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|生きる力をつくる「10歳までの幅広い経験」。子どもに勉強は教えるな!?
*3 ベネッセ教育情報|自分で考えて行動できる子になるには「段取り力」と「習慣化」がカギ!
*4 ダイヤモンド・オンライン|「お手伝いができる子」の親がしている4大習慣
ミサワホーム|年齢別お手伝い実践一覧表
Harmonies with KUMON|社会に出てからも役に立つ!子どものお手伝いにおすすめの家事って?
Harmonies with KUMON|子どもがお手伝いを楽しみながら、進んでできるようになる5つの工夫













