「勉強や運動を頑張ってほしい」「苦手なことにも前向きに取り組んでほしい」。きっと、どの親御さんも、お子さまに対して思っていることですよね。
子どものやる気を引き出し、学力や運動能力といった様々な能力を伸ばしていくには、いったい、どんな言葉をかけてあげればいいのでしょうか。
“あなたのことが大切” が伝わる言葉かけ
コーチングのプロであり、小・中学生への講演、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーなどを行う石川尚子さんによれば、親が子どもに対し “私はあなたが大切だ” という気持ちが伝わる言葉かけを行い、子どもが自分のことを好きになることがポイントだと言います。
例えば、子どものテストの結果が悪かったとき、あなたならお子さんにどのように声をかけますか?
NGワードは、こちらです。
「なんでできないの?」
「あなたが頑張らないからでしょう?」
対して、OKワードはこちら。
「今日もお疲れさま!」
「テストが終わったから、おいしいご飯を作ったよ!」
NGワードを言われると、子どもは、どんどん「自分はダメな子どもなんだ。成績が良くないと価値がないんだ」と思うようになっていってしまうのだそう。
一方で、OKワードのほうは、子供を応援するような言葉かけです。こういった、“私はあなたが大切だ” という気持ちが伝わる言葉かけを行うことで、子どもは自分のことを好きになるのだそうです。
子どもが自分のことを好きになることがなぜ重要なのか、石川さんは次のように言います。
「『自分が好き』というのはですね、『自分は完璧ですごいでしょう!』という気持ちではなくて、『自分には良いところもあるけれど、ダメなところもある。それも含めて自分。そんな自分が好き』という感覚なんです。
こういう気持ちを持っている子どもは、テストの結果が良くなかったとしても、建設的に考えられるのです。『今回は良くなかった。ここの勉強が足りなかった。次はこうしよう!』と自分で考えます。ところが、自分が嫌いな子どもは、『どうせ自分にはできない。がんばっても無理』と否定的にとらえてしまうのです」
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|「自分が好き」な子どもは成績が上がる)
テストだけではなく、スポーツや習い事で子どもがつまずいたときにも、ぜひ活用したい言葉かけですよね。
「才能」ではなく、「プロセス」を褒める
子どもを伸ばしていくには、「褒め言葉」もかなり効果的です。ただ、その褒め方にも実はポイントがあるのです。
例えば、以下のシチュエーションであなたは子供にどちらの言葉をかけますか?
<運動会のリレーで走り終えたとき>
A. いい走りだったね!
B. 足が速いんだね!
<テストで良い点を取ったとき>
A. 頑張って取り組んだね!
B. あなたは頭がいいのね!
もし、子どもの「学ぶ力」や「挑戦する力を育みたい」のなら、どちらのシチュエーションでも、ぜひAの言葉をかけてあげましょう。Aは「プロセス・努力」を褒める言葉で、Bは「才能・人格」を褒める言葉です。
「プロセス・努力」を褒めたほうがいい理由について、ご説明しましょう。子どもは次の2つのタイプに分類されると言われます。
- 成功は、生まれつきの才能や頭の良さの結果だと信じる子
- 成功は、一生懸命頑張った結果だと信じる子
1のタイプに導くのは、「才能・人格」を褒められて育った子どもです。こういった子どもは失敗すると追い詰められたように感じてしまいます。難問にぶつかったとき、自分にはそれほどの才能や頭の良さがないと考え、できない子だと思われるのを恐れて、挑戦することを避けてしまうのです。
対して、2のタイプに導くのは、「プロセス・努力」を褒められて育った子どもです。このタイプの子どもは、たとえ天才であっても努力をする必要があると考え、挫折したときは、時間と努力を積み重ねることで乗り越えられると信じています。できる子だと思われるよりも、学ぶこと自体に価値を置き、困難な問題にも粘り強く取り組みます。
このことは、1960年代から「意欲と根気」の研究を続けてきたスタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授の研究・調査結果からわかったことです。そして、ドゥエック教授によれば、これは幼少期からの褒められ方が大きく影響するため、わずか4歳の子どもでも、1と2、どちらかのタイプに分かれるとのことです。
もちろん、4歳を過ぎたお子さまに対しても、決して遅いということはありません。今日から「プロセス・努力」を褒める言葉をたくさんかけてあげましょう。
子どもの話を聞くことも大切
ここまで、子どもへの効果的な言葉かけについてご紹介してきましたが、「子どもの話を聞くこと」も忘れずにしてあげたいです。
『プレジデントファミリー2017年秋号』の特集記事「東大生173人アンケート 学力を伸ばすたったひとつの親の習慣」には、「親が子どもの話に耳を傾ける」ことが有効だと挙げられています。特に、自己肯定感の強い(=自分が好き、家族が好き、未来は明るいと思うと考えるタイプ)学生は、「自分の親はあれこれ言わずに、自分の話を聞いてくれた」と話したそうです。
「〇〇すべき」「〇〇してほしい」という考えはちょっと脇に置いて、じっくりと子どもの気持ちに共感し、受け止めてあげることが大切なのです。そして、話を聞くときには、以下のような言葉かけをしてみましょう。
「学校に行きたくないほど、つらいんだね」
「最近、元気がないように見えて心配だよ」
「何かあったのかな? よかったら話してくれないかな?」
「そうか、〇〇なんだね」(子どもの言葉を繰り返す)
こんなふうに、まずは聞き役に徹して、すぐにアドバイスや否定などはせずに接してみるのです。このとき、テレビやスマートフォンを見ながら適当に聞くのはもちろんNG。できれば、夕食時やお子さんがリラックスしているタイミングで話を聞く時間を作るのがおすすめです。お子さまは、自分の気持ちを理解して話を聞いてくれる相手には、きっと信頼して心を開いてくれるはずです。
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子どもが伸びるか、伸びないか。それは、親のちょっとした言葉かけや態度が大きく影響します。ぜひ、今日から実践されてみてはいかがでしょうか。
文/鈴木里映
(参考)
トレーシー・カチロー(2016),『最高の子育てベスト55』,ダイヤモンド社.
ベネッセ教育情報サイト|「自分が好き」な子どもは成績が上がる
プレジデントオンライン|子どもが見違える「短い声かけフレーズ10」
厚生労働省|こころもメンテしよう