教育を考える 2019.11.12

子どもの「苦手」はただの思い込み!? 「私はできない」の原因は親の〇〇

子どもの「苦手」はただの思い込み!? 「私はできない」の原因は親の〇〇

大阪府堺市の『幼児教育堺スタンダードカリキュラム』によると、子どもは3歳ごろから自我が充実し始め、得意・苦手といった二分的評価ができるようになるそうです。

人間誰しも、苦手なことのひとつやふたつはあるはず。しかし、いざ我が子に「運動が苦手なの」「絵を描くのは得意じゃないんだ」と言われたら……?  「なるべく苦手はなくしてあげたい」「苦手なものを避け続ける人生になってしまったら」など、いろんな思いが駆けめぐり、対処に困るかもしれません。

そこで、子どもが苦手なものを打ち明けてきたときの言葉かけや、苦手を払拭する方法について説明しましょう。

子どもが苦手意識を持つメカニズムとは?

そもそも、なぜ子どもは苦手意識を持ってしまうのでしょうか?

■苦手分野=脳機能が弱い部分である

言語を操る、色を認識して絵を描くなど、それぞれの能力は異なる脳機能によってコントロールされています。昭和大学客員教授・加藤俊徳氏によると、「運動が嫌いな人は、運動系脳番地が未発達」で、「映画が好きな人は視覚系が発達し、読書が苦手な人は理解系が弱い」のだそう。苦手分野とはずばり、脳が弱い部分だと話しています。

そして、「得意なことはする・苦手なことはしない」という状態が続くと、苦手分野の脳機能の未発達が著しくなると加藤氏はいいます。しかし逆に、苦手なことであっても日々の生活でやり続けていれば、その苦手分野を成長させることもできるようです。

例えば、現役のスポーツ選手の得意な脳番地は運動系脳番地かもしれません。しかし、引退後に解説者となれば、運動をする機会が減り、喋る機会が増えるので、運動系脳番地よりも、伝達系脳番地が得意になります。

(引用元:株式会社脳の学校®|脳番地®とは?

■親が言葉や態度で子どもを追い込んでいる

脳機能の働きとは別に、周囲の言葉や態度で子どもの苦手意識を増幅させてしまうことがあります。3年先まで予約が埋まっているカリスマ中学受験家庭教師・安浪京子氏らは、次のような言動に注意を促しています。

(NGな言動1)計算問題を「もっと速く、正確に解きなさい」とプレッシャーをかける
(NGな言動2)「○○ちゃんは学校の宿題を5分で終わらせるって」と他人と比較する
(NGな言動3)水が苦手な子を無理やりプールに入れるなど、強制的にやらせる

「もっと速く、正確に」は、アドバイスのようでじつは非常に漠然としていると安浪氏はいいます。漠然とした言葉は子どもに焦りや不安を抱かせ、ミスを生み、苦手意識を強める要因です。

そして、もともと苦手意識はなかったものも、ほかの子のほうができると言われたら、“自分はできない” と認識してしまいがちです。また、たとえばスイミングのときに水が鼻や耳に入って怖い思いをしたなど、ネガティブな感情とリンクした体験は苦手意識を増幅させると、先述の市川氏はいいます。だからこそ、強制的に大人のペースでやらせることも危険です。

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苦手意識を払拭する方法3つ

苦手意識の払拭は、それ以外の時間の子どもとの向き合い方から始まっています。ここでは3つの方法を説明します。

1. まずは「何でもできる」という自己イメージを持たせる
苦手意識を払拭する前提として、「何でもできる」という自己イメージを常日頃から持たせることが大切です。この自己イメージは、専門用語で “セルフ・エフィカシー/自己効力感” といいます。

脳機能学者の苫米地英人氏によると、子どもの自己イメージは親によって作られるそうです。そして、「人間は自己イメージ以上の存在にはなれない」と断言します。だからこそ、お父さん・お母さんからの「君は何でもできるよ、何にでもなれるよ」という日常的な声かけは重要です。

苦手なことに挑んだ場合も、「苦手でも、自分はやればできるんだ」という自己イメージを持つことができます。

2. 少し頑張れば達成できそうな目標を立て、成功経験を積む
厚生労働省は、セルフ・エフィカシーを高めるポイントとして成功経験を積むことをすすめています。そこで大事なのが、少し頑張れば達成できそうな目標を立てることです。英語なら挨拶表現を1つ覚える……など。そこから、少しずつ目標を上げていきましょう。

明治大学教授の齋藤孝氏は、苦手の中に得意領域をつくるのも有効といいます。たとえば理科は苦手な子でも、動物の名前を覚えるのは得意といった傾向があるかもしれません。この得意領域を大人も一緒に探ってみましょう。

自信を持てるところを作るのです。そうすると、そこを足場として、あとは他のところも同じようにやればいいんだなということになります。

(引用元:齋藤孝 (2016),『賢い子に育てる 最高の勉強法』, KADOKAWA.)

3. 食べ物の好き嫌いや歯磨きなど、生活習慣の苦手は周囲が手本になる
野菜が嫌い、お風呂や歯磨きを嫌がるなど、苦手は勉強や運動に限ったことではありません。そこで、厚生労働省が推奨するもうひとつのセルフ・エフィカシーを高める方法・モデリングも実践してみましょう。

モデリングとは、モデルとなる人がしている行動を見て「自分にもできそうだ」と思わせることです。モデルは性別や年齢、生活状況や健康状態が近い人が理想的とされます。

モデルは苦手を克服するメリットやコツを示すことが大切です。たとえば、野菜が苦手な子に対して兄弟が「僕は毎日野菜を残さず食べているから、背が大きくなったよ」と話すのはよく見られる光景ですが、これも立派なモデリングです。一緒に暮らすお父さん・お母さんも積極的にモデルになりましょう。

「○○が苦手」と子どもに言われたときの正しい言葉かけ

子どもが苦手なものを打ち明けてきたときの正しい言葉かけを3つ、説明します。

■「どうして苦手なの?」理由を聞いて不安を和らげる

保育士として、15年以上にわたり保育業務に携わる市川由美子氏は、苦手な理由に耳を傾け、ありのままの気持ちを受け止めてあげることをすすめます。

苦手な理由を聞いてもすぐに解決策を出せないかもしれませんが、心配いりません。話を聞いてあげるだけでも不安が和らぐのは、大人も子どもも一緒なのです。子どもが苦手なものを打ち明けてきたら、まず最初に「どうして苦手なの?」理由を聞いてあげましょう。

■「ちょっとだけやってみよう」の結果、「意外とできた!」に

苦手意識があるものを、1からじっくりやりましょうというのは難しい話ですよね。そこでおすすめなのが、「ちょっとだけやってみよう」という言葉かけです。

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ・石川尚子氏によると、子どもの苦手は「苦手だと思っているだけ」のケースも多いのだそう。その原因は、周囲からの「できないね」「苦手なの?」といった指摘です。

そのため、思い込みを取り除けば、「意外とできた!」というケースも少なくありません。鉄棒が苦手なら、まずは「ちょっとだけぶら下がってみよう」などと、声をかけてみましょう。

■「一緒にやろう」と最後まで寄り添う

『子育てのイライラを乗りきる7つの秘訣』の著者・谷口賢晋氏は、「子どもの能力で可能なところまでたどりつけるように支援しなさい」という、米国のある地域の教えが参考になるといいます。具体的には、制限時間がなく、参加者が走る意志がある限りスタッフが待っていてくれる “ホノルルマラソン” をイメージすると良いとのこと。

苦手なものを「やりなさい」と押しつけられ、何のサポートもなくひとりで立ち向かうのは、大人でもつらいですよね。苦手分野だからこそ時間がかかり、回り道することもあるかもしれませんが、そばで励ましたり、ときには笑顔を見せたりして寄り添い続けることが大切です。

たとえば、お子さんがドリルの問題を解き終わるまで、そばで見守ってあげる――。これだけでもお子さんは心強いのではないでしょうか?

***
子どもに苦手意識が芽生えるのは、脳科学的に見ても自然なことです。しかし、正しく向き合えば克服できる可能性があります。さっそく、子どもに言葉かけを始めてみませんか。

文/かのえかな

(参考)
堺市|発達の特徴と保育の連続性(3~5歳)
ベネッセ教育情報サイト|プール嫌い!という子ども、どうしたらいいの?
ベネッセ教育情報サイト|子どもの「苦手意識」にどう対応しますか?
All About|子どもの苦手を克服する方法
BUSINESS INSIDER JAPAN|「苦手」は、脳の使い方であっという間に克服できる
株式会社脳の学校®|脳番地®とは?
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苫米地英人 (2011),『0‐5歳で決まる!脳の力を無限に引き出す幼児教育』, 扶桑社.
e-ヘルスネット(厚生労働省)|セルフ・エフィカシーを高めるポイント
齋藤孝 (2016),『賢い子に育てる 最高の勉強法』, KADOKAWA.