教育を考える 2019.12.3

「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法

「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法

子どもを幼稚園や保育所に通わせるようになれば、親にもそれまでにはなかった悩みが出てくるものです。たとえば、子どもを園に送って仕事に行かなければならないのに、子どもがなかなか起きてくれない。よくある悩みだと思います。でも、睡眠の専門家である文教大学教育学部教授・成田奈緒子先生は、「それを改善するのはとっても簡単」だといいます。その方法とはどんなものでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

子どもが大好きなものを夜ではなく朝に与える

幼児を持つ親から本当によく相談されることに、「朝、子どもを無理やり起こすと不機嫌になってしまって困っている」というものがあります。でも、これを直すのは意外なほど簡単。どんな子どもでも、たいてい1週間で朝に不機嫌になることはなくなります。

そもそも、なぜ朝に不機嫌になるかというと、睡眠時間が足りていないからです。その問題を解決するには、必要な睡眠時間を確保するために、起きる時間から逆算して寝る時間を決めればいい。とはいっても、普段23時に寝るような癖がついている子どもを、急に21時に寝かせようとしても、そう簡単にできるものではありません。

そこで、とにかく1週間でいいので、親が一生懸命になって子どもを起こしましょう。もちろん、無理やり起こすと子どもは不機嫌になります。そのとき、子どもが絶対にご機嫌になるような大好きなものを与えてあげるのです。そもそも、寝る時間が遅い子どもには、その時間まで夢中になるような大好きなものがある。それは、テレビ番組かもしれませんし、スマホのゲームやタブレットで見る動画かもしれません。それを朝に持ってくるわけです。そうすれば、朝の不機嫌は一気に軽減されるはずです。

わたしはこれまで多くの親子に会ってきましたが、なかには子どもがハマっている戦隊モノのテーマソングを大音量でかけたり、大好きなリンゴを朝食にしたりする例もありましたね。

成田奈緒子3-4

休日の寝だめが平日の睡眠の質を大きく落とす

幼児であれば、親が簡単に抱っこすることができますから、まだ寝ぼけている子どもを抱っこして外に出て、朝日を浴びさせることも効果的です。朝日によって、朝は1日のはじまりだというリズムを体に染み込ませるわけです。

あるいは、朝にお風呂に入れるのもいいでしょう。人間が寝ているときには、自律神経の副交感神経が優位になり、体温が下がります。逆にいえば、体温を上げれば、交感神経が優位になって脳も体も目覚めるからです。子どもがお風呂に入りたがらないようなら、バブルバスタイプの入浴剤を使って「泡々」にしてあげれば、ねぼすけの子どももよろこんでお風呂に入ってくれますよ。

そして、とくに大切なのは初日です。前日はこれまでと同じように夜遅い時間に寝ていますから、当然、子どもは寝不足です。でも、昼間に長く寝てしまっては元も子もありません。そこで、幼稚園や保育所に連れていったときに、「今日は眠そうにするかもしれませんが、長くお昼寝をさせないようにしてください」と保育士さんにお願いしましょう。

そして、子どもが帰ってきたら、夕食は軽いもので済ませてさっさと寝かせてしまう。そうすれば、間違いなく子どもはすとんと寝てくれるはずです。これを1週間も続ければ、子どもが朝に不機嫌になるということはまずなくなります。

そして、こうして身につけた良好な睡眠のパターンは、休日でもなるべく変えないことが大切です。このことに関してはたくさんの論文があります。大人でもそうですが、休日の寝だめが平日の睡眠の質を大きく落としてしまうことがわかっているのです。

休みだからと長く寝たい気持ちはわたしにもありますし、休日でも絶対にまったく同じ時間に起きるべきだとはいいません。でも、平日の就寝時刻や、起床時刻に対して、休日でもプラスマイナス1時間以内にとどめてほしい。それくらいでとどめておけば、平日の睡眠の質にも大きな影響が及ぶことはありません。

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どうしてもうまくいかないときは早めに小児科へ

こうして寝るべき時間にきちんと寝ることができるようになれば、別の悩みも解消できます。先に挙げた悩みに加えて、子どもを持つ母親からよく寄せられるものに、「子どもがちょっとした音に敏感で、寝かしつけの最中に父親が帰ってくると起きてしまう」という悩みがあります。

でも、理想的な睡眠パターンを子どもが身につけられれば、そういうことがなくなります。というのも、睡眠の深さは就寝直後がもっとも深いからです。大人の場合は布団に入って30分くらいでこの深い眠りに落ちますが、子どもの場合は20分以内一気にすとんと深い眠りに落ちるので、ちょっとした物音くらいで起きることがないのです。

もしかしたら、「子どもの眠りが浅くなったタイミングにたまたま父親が帰ってきたら、やっぱり起きてしまうのではないか」と思った人もいるかもしれませんね。でも、そういうことも絶対にありません。浅い睡眠とはいっても、正しい睡眠を取れていれば、本来起きるべき時間まではちょっとやそっとのことでは起きないものなのです。

ただ、ここまでお伝えしてきた方法を試してみても、どうしてもきちんと眠れない子どもがいるのも事実です。たとえば発達障害の子どもがそれにあたります。発達障害は生まれつきの脳の機能障害で、そういう子どもはうまく睡眠が取れないことも多いのです。どんなに生活習慣を改善しようと努力してもうまくいかない場合は、親だけで悩むのではなく、早めに専門医に相談することをおすすめします

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子どもが幸せになる「正しい睡眠」
成田奈緒子 上岡勇二 著/産業編集センター(2019)
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■ 文教大学教育学部教授・成田奈緒子先生インタビュー一覧
第1回:子どもの脳をきちんと育てる「正しい睡眠」
第2回:親の緊張で子どもは寝つけない? 寝かしつけに必要な「親のリラックス」
第3回:「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法
第4回:なにより睡眠が基本! 親の「ブレない」態度が、子どもの脳を育てる

【プロフィール】
成田奈緒子(なりた・なおこ)
宮城県出身。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。日本小児科医学会認定小児科専門医。発達脳科学者。子育て科学アクシス代表。1987年に神戸大学医学部卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部リサーチアソシエート、獨協医科大学越谷病院小児科助手、筑波大学基礎医学系講師を歴任し、小児科の臨床と基礎研究に従事する。2005年から文教大学教育学部特別支援教育専修准教授。2009年から同教授となり、茨城県発達障害者支援センターと茨城県土浦児童相談所の嘱託医等を兼任。牛久愛和病院小児科での専門外来も開設しており、小児期のさまざまな精神心理疾患の外来診療にも携わっている。2014年からは、医学・心理・教育・福祉を包括した専門家集団による新たな親支援事業「子育て科学アクシス」を開設し代表に就任。また、文部科学省や東京都教育委員会などで育児、教育への提言・社会活動を行っている。『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング 育てにくい子ほどよく伸びる』(合同出版)、『脳科学からみた男の子の「ちゃんと自立できる脳」の育て方』(PHP研究所)、『睡眠時間を削らず塾にも行かず現役で国立医学部に合格した私の勉強法』(芽ばえ社)、『脳科学からみた8歳までの子どもの脳にやっていいこと悪いこと』(PHP研究所)、『7歳までに決まる! かしこい脳をつくる成長レシピ』(PHP研究所)、『「睡眠第一!」ですべてうまくいく』(双葉社)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。