教育を考える 2019.12.2

親の緊張で子どもは寝つけない? 寝かしつけに必要な「親のリラックス」

親の緊張で子どもは寝つけない? 寝かしつけに必要な「親のリラックス」

悩みが尽きない子育て。とくに子どもが乳児となると、夜に寝かしつけるだけでもひと苦労です。「やらなければならないことがたくさんあるのに……」なんて悩みを抱えている人も多いでしょう。そこでお話を聞いたのは、睡眠の専門家である文教大学教育学部教授・成田奈緒子先生。先生によれば、子どもをすんなり寝かしつけるには、「なにより親がリラックスすることが大事」なのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

親が緊張しているから子どもは眠れない

1歳までの乳児期は、睡眠の基礎ができる大事な時期です。生まれてからしばらくは昼も夜も関係なく寝たり起きたりしていた赤ちゃんが、生後4カ月頃から、だいたい夜のほうがよく寝るようになってきます。そして、この時期に子どもがきちんと睡眠を取れるように親がどれだけ考え実践するかが、その後の子どもの脳の発達、ひいては子どもにさまざまな問題を起こさせないための鍵を握っています(第1回インタビュー参照)。

それらを前提に考えると、夜になれば親としては子どもをきちんと寝かしつけたいものですよね。ですが、「早く寝かしつけなければ!」と思えば思うほど、子どもがなかなか寝てくれないという経験は多くの人にあるのではないでしょうか。その理由は、親が緊張しているからです。

眠るためには、リラックスして自律神経の副交感神経が優位になる必要があります。逆に交感神経が優位になって緊張したり興奮したりしているときは絶対に眠れません。ところが、「寝かしつけなければ!」と思って焦っている親は緊張しています。人が緊張しているときは、筋肉も緊張して硬くなっているもの。無防備な子どもは、親から「安心だよ、安全だよ」というシグナルを受け取らないとリラックスできません。それなのに、そんなカチカチの体で抱っこされては副交感神経が優位になるはずもなく、ますます眠れなくなるのです。

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エアコンは大人が快適だと感じる室温よりやや低めに

もうひとつつけ足すとすれば、親の緊張と体温の関係も子どもの寝つきに影響します。副交感神経が優位になってリラックスしているときには自然と体温が下がります。ただでさえ大人より体温が高い子どもをすんなり寝かせるには、その体温をきちんと下げてあげないといけません。でも、親が緊張・興奮して交感神経が優位になっていると、体温は高くなってしまう。そんな状態で抱っこしても、わざわざ子どもの体温を上げて眠れなくさせているだけなのです。

そう考えると、お風呂に入れる時間帯も重要です。お風呂に入れば、当然、体温が上がりますから、その直後にはなかなか眠れません。ただ、お風呂好きが多い日本人の大人なら、これまでの経験で「お風呂に入ったらリラックスできる」というふうな思い込みを脳に学習させているため、お風呂に入った直後でもすとんと眠れる人も多いものです。

でも、子どもの場合はそうではない。1歳に満たない乳児が「お風呂ってリラックスできて最高!」なんて思っているわけもありませんよね。最低でも、寝かせる時刻の1時間前にはお風呂から上がらせるようにしてあげてください。

それから、寝具にも注意が必要です。赤ちゃんは手のひらと足の裏から熱を放散して体温を下げています。ですから、手足を布団で覆ってしまうようなことはNG。とくに冬場は、つい「温めてあげなくちゃ」なんて思って布団で赤ちゃんをくるんでしまう親も多いものですが、そういう状態は、赤ちゃんからすればとっても不快なものなのです。

エアコンを使う場合も同じように注意が必要です。先にもお伝えしたように、赤ちゃんは大人より体温が高い。ですから、冬場であっても大人が快適だと感じる室温よりもやや低めにエアコンの温度を設定することをおすすめします。

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食事によろこびを感じない子どもが増加中

また、直接的に睡眠にかかわるものではありませんが、子どもの脳と体のリズムをつくるうえで、食事の時間についてもお話をしておきましょう。「卒乳後の子どもには、起床から何時間後に朝ご飯を食べさせるのが望ましいでしょうか?」「朝食の時間になっても、子どもの食欲がありません」といった相談を受けることがあります。これについては、そもそも「○時間後」「朝食の時間」といった考え方自体が大きな間違いです。

人間は動物ですから、お腹がすいてなにかを食べたら満足するし、楽しいし、うれしいと思う。そういった「空腹→食事→満足」というサイクルを脳につくってあげることが大切です。それが、子どもにとってまず重要となる、「起きる、寝る、食べる、体を動かす」といった生きていくために最低限必要な機能を司る脳をつくることになるからです(第1回インタビュー参照)。そういう食事を自然に繰り返していくうち、食事は1日3回という規則的なリズムになっていくわけです。つまり、先に食事の時間が決まっているわけではないのです。

でも、真面目な親ほど「時間」にこだわりがちです。子どもが空腹かどうかにかかわらず、「7時になったから朝食」「12時だからお昼にしなきゃ」と考えてしまいます。でも、空腹でなければ、子どもはしっかり食べてくれるはずもありません。揚げ句の果てに、「なんで食べないの!」なんていって、子どもにイライラをぶつけるような親までいます。すると、子どもは食事そのものによろこびを感じなくなり、それどころか食事が苦痛だと感じるようになってしまう。そういう子どもが本当に多いのです。

食事は生きていくために絶対に欠かせないものです。つまり、食事によろこびを感じられない子どもは、生きていくために必要な脳ができていないということになります。みなさんの子どもをそんな人間にしたくはないでしょう? であるならば、親が勝手に考える時間などにこだわるのではなく、子どもをよく観察して、お腹がすいたときにご飯を食べさせてあげるように心がけてください。

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子どもが幸せになる「正しい睡眠」
成田奈緒子 上岡勇二 著/産業編集センター(2019)
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■ 文教大学教育学部教授・成田奈緒子先生インタビュー一覧
第1回:子どもの脳をきちんと育てる「正しい睡眠」
第2回:親の緊張で子どもは寝つけない? 寝かしつけに必要な「親のリラックス」
第3回:「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法
第4回:なにより睡眠が基本! 親の「ブレない」態度が、子どもの脳を育てる

【プロフィール】
成田奈緒子(なりた・なおこ)
宮城県出身。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。日本小児科医学会認定小児科専門医。発達脳科学者。子育て科学アクシス代表。1987年に神戸大学医学部卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部リサーチアソシエート、獨協医科大学越谷病院小児科助手、筑波大学基礎医学系講師を歴任し、小児科の臨床と基礎研究に従事する。2005年から文教大学教育学部特別支援教育専修准教授。2009年から同教授となり、茨城県発達障害者支援センターと茨城県土浦児童相談所の嘱託医等を兼任。牛久愛和病院小児科での専門外来も開設しており、小児期のさまざまな精神心理疾患の外来診療にも携わっている。2014年からは、医学・心理・教育・福祉を包括した専門家集団による新たな親支援事業「子育て科学アクシス」を開設し代表に就任。また、文部科学省や東京都教育委員会などで育児、教育への提言・社会活動を行っている。『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング 育てにくい子ほどよく伸びる』(合同出版)、『脳科学からみた男の子の「ちゃんと自立できる脳」の育て方』(PHP研究所)、『睡眠時間を削らず塾にも行かず現役で国立医学部に合格した私の勉強法』(芽ばえ社)、『脳科学からみた8歳までの子どもの脳にやっていいこと悪いこと』(PHP研究所)、『7歳までに決まる! かしこい脳をつくる成長レシピ』(PHP研究所)、『「睡眠第一!」ですべてうまくいく』(双葉社)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。