あたまを使う/教育を考える/子どもの性格・気質/非認知能力 2025.12.5

「保育園でいつもひとりで遊んでる」──じつは “育ちの力” のあらわれです「 遊びの発達」6段階

山本あやか
「保育園でいつもひとりで遊んでる」──じつは “育ちの力” のあらわれです「 遊びの発達」6段階

「保育園でいつもひとりで遊んでる…うちの子大丈夫?」──じつは “育ちの力” のあらわれです。

保育園に子どもを通わせる保護者からの、よくあるご相談のひとつに「いつもひとりで遊んでいて心配」というものがあります。お迎え時など、ひとりポツンと遊ぶわが子を見て「お友だちと仲よくできていないのではないか?」と、不安になる保護者は少なくありません。

しかし、子どものひとり遊びにはしっかり意味があります。今回は、保育士歴10年の筆者が、ひとり遊びやお友だちとの関係について深掘りしていきます。

ライタープロフィール

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山本あやか

保育士

児童学科で4年間学び、保育士資格や幼稚園教諭一種免許を取得。保育士として約10年勤務。現在、小学生2人を育てながら「働きながら子育てする大変さ」と対峙中。ワーキングマザーが安心して子どもを預けられるよう、さまざまな情報を発信します。

年齢に応じて遊び方は変わる 「遊びの発達理論」6つ

子どもの遊び方は、年齢によって移り変わるもの。「ひとりで遊ぶ時期」を経るのも、じつは自然な流れであるといえるのです。発達心理学者ミルドレッド・パーテンが提唱した6分類の 「遊びの発達理論」でも、以下のように子どもの遊びは段階的に変化することが示されています。

🌱 無活動(0~3か月頃)

この時期の様子
・目的なく体を動かす
・周囲を観察し刺激を受ける
【保育園での例】
手足をバタバタ動かしたり、動くメリーを目で追いかけたりする。

🧸 ひとり遊び(3か月~2歳頃)

この時期の様子
・自分だけの遊びを楽しむ
・興味のある遊びに夢中になる
【保育園での例】
車を走らせたりブロックを並べたりしながら遊ぶ。目に入った別のものに興味が移り、そのまま遊びを変えながらひとりで没頭して遊ぶ。

👀 傍観遊び(2歳頃)

この時期の様子
・お友だちの遊びを観察する
・観察を通じて関わり方を学ぶ
【保育園での例】
楽しそうに人形をお世話するお友だちの様子を側で見つめる。「ねんね(してる)」などと声をかけることもあるが、自分は飛行機遊びをやめない。

🤝 平行遊び(2歳以上)

この時期の様子
・お友だちの側で同じような遊びをする
・同じような遊びでもいっしょには遊んでいない
【保育園での例】
ボールを転がしているお友だちの様子を見て、側でいっしょにボールに触れる。同じボール遊びでも、お友だちは壁に向かって転がし、本人はボールの色ごとに転がすことを楽しんでいる。

🎨 連合遊び(3~4歳頃)

この時期の様子
・おもちゃの貸し借りなどの関わりを持つ
・同じ遊びでも目的や思いはバラバラ
【保育園での例】
おままごとの道具を貸し借りしながら遊ぶ。家庭で料理をふるまう様子を想像している子どももいれば、レストランで料理を提供しているイメージで遊ぶ子どももいる。

👫 協同遊び(4歳以上)

この時期の様子
・役割分担しながら同じ目的に向かって遊ぶ
・我慢や主張をしながらお友だちと協力し合う
【保育園での例】
お友だちどうしで「お医者さんごっこをしよう」と遊びを提案し、医者・看護師・患者など役割を決める。「これ注射ってことにしよう」「違うよ、こっちの方がいいよ」などと意見言い合いながら遊びを展開していく。

特に2〜3歳ごろまでは、ひとり遊びや並行遊びが主流となるため、外から見ているとただひとりで遊んでいるように見えてしまいます。また、連合遊びや協同遊びが始まる幼児期でも「興味の幅が広がる」「集中力が身につく」ことから、ひとり遊びに夢中になることも多くあります

一人遊びの図

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ひとり遊びで育つ力

子どもの遊びの形は、成長とともに少しずつ変わっていきます。ひとり遊びの期間が長く続くこともありますが、もちろん心配する必要はありません。むしろ、ひとり遊びを楽しんでいる期間には、以下のような成長が期待できます

  • 自分で考えて行動する自立心が育つ
  • 豊かな創造力や発想力が身につく
  • 遊びに没頭することで集中力が高まる
  • 試行錯誤するなかで問題解決能力が身につく
  • 自分のペースで遊ぶことで情緒が安定する

ひとりで遊ぶことで、興味や集中力、想像力が育っていきます。「自分で考えて行動する力」の土台にもなるため、むしろ安心して見守ってよいでしょう。お友だちとの遊びは、そのような基礎ができてからでも遅くありません。

一人で遊び子どもの画像

家庭でできる声かけ&サポート

ひとり遊びに問題はありませんが、やはりお友だちとの関わりを持ってほしいと思うのが親心。そこでここからは、保育士が意識する関わりを基に「家庭でできる声かけ&サポート」をご紹介します。無理なく「人との関わりは楽しい」と思ってもらえるよう、意識してみてくださいね。

1、まずは「ひとり遊び」を十分に楽しませる

自分だけの遊びの世界を大切にすることは、心の土台作りに欠かせません。子どもが集中しているときは中断させず、見守りながら時折思いに共感するだけでOKです。

💬 声かけ例

・楽しそうな遊びだね
・ここから見ているよ
・きれいな色が揃っているね

2、親が「他者との関わりのモデル」になる

お友だちとの関わり方は、親子で練習できます。「ありがとう」「どうぞ」「いっしょにしよう」など、普段の関わりのなかで社会的なやりとりを自然に学べるよう意識してみましょう。

💬 声かけ例

・お母さんもいっしょにしてもいいかな?
・これ楽しいけどいっしょにやってみる?
・おもしろそうだから見てみよう

3、お友だちとの関わりを強制しない

本人が望んでいない段階で、お友だちとの関わりを強制しないようにすることも大切です。「お友だちと遊ばないの?」「ひとりで遊んでいたの?」などの質問も控えましょう

💬 声かけ例

・その遊びとっても楽しそうだね
・好きなことをして遊んでいいんだよ
・いっしょにやってみたくなったら言ってね

4、小さな交流の場を増やす

保育園以外に、親族や近所の子どもたちと小さな交流を持つこともおすすめです。大きな集団では関わりにくい子どもでも、小さなコミュニティであれば積極的に遊べるようになる子どもも少なくありません

💬 声かけ例

・〇〇ちゃんも同じ遊びを楽しんでいるね
・〇〇くんみたいにチャレンジしてみよう
・同じおもちゃ持ってきてみようか

5、見守りのサポートを意識する

親が遊びを提案したり、誘導したりしすぎると、子どもの自立心や興味の幅を狭めてしまう可能性があります。指示を控え、見守る姿勢を意識することも大切です。

💬 声かけ例

・また困ったことがあったら教えてね
・ここで見てるから大丈夫だよ
・どうしたらいいかな?

6、関わりをしっかり褒める

お友だちにおもちゃを貸してあげた、あいさつができたなど、よい関わりが見られたら褒めてあげてもいいですね。肯定的な声かけを投げかけることで、社会性が育ちます

💬 声かけ例

・いっしょに笑って楽しそうだったね
・〇〇くんもうれしそうだったね
・〇〇できてすごかったね

逆に気をつけたいサインは?

ひとりで没頭したい遊びがあるときなど、無理してお友だちの輪に入る必要はありません。しかし、ひとり遊びが大切とはいえ、いくつか気にすべきサインがあります。

◆まったく周囲に関心がない

幼児期になっても、まったく周囲の遊びに興味を示さない子どももいます。自分の好きなことへの関心が強く、自分の外にあるものへの関心が弱いことが原因かもしれません。マイペースな気質の子どもによくあることですが、大きくなったときに集団行動で苦労する可能性もあります
そのほか、声かけに反応しない、誘いを怖がって強く拒否する様子があるなど、気になる様子があるときは保育士に相談してみてもよいでしょう

◆本当は遊びたいが輪に入れない

ひとり遊びを楽しんでいる様子がなく、お友だちの輪に入りたくても入れず困っている様子がある場合も、保育園に相談が必要かもしれません。本人に「お友だちといっしょに遊びたい」「でもどうすればいいかわからない」という明確な悩みがあるならば、保育士の力を借りながら関わり方を工夫していく必要があります
小学校に入学する前に、自分の気持ちを言葉にして相手に伝える練習を重ねていけるといいですね。

***
ひとり遊び=悪いことではありません。子どもはそれぞれのペースで育つため、ひとりで遊んでいても必要以上に心配することはないでしょう。むしろ、ひとり遊びから育つ力も多いため、大人があれこれ言って阻止することがないようにしたいですね。

保育園では、先生たちがしっかり見守ってくれています!おうちでも、見守りながら社会性を伸ばせるよう関わっていきましょう。