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「泣き出した子どもをママが抱っこしたら、とたんに泣き止んだ」という光景を見たことがありませんか? 子どもはママの抱っこに安心感を得て、「もう大丈夫だ」と感じるのでしょう。そんな親子間の心のつながりが、子どもの成長に影響を与えることがわかってきました。この心のつながりこそが、今回のコラムテーマである「アタッチメント」です。
それでは、「アタッチメントとはなにか」「アタッチメント形成のためにできること」について、詳しくご紹介していきましょう。
アタッチメントは「親と子の感情的な絆」
そもそも、アタッチメントとはどんなものなのでしょう?
発達心理学が専門の森口佑介氏(京都大学大学院准教授)はアタッチメントを「親子の絆」と定義し、アタッチメントの大切さを以下のように説明しています。
子どもが赤ちゃんのときには、なにをするにも親の助けが必要です。あるいは、なにか嫌なことがあったときにお母さんが抱っこしてくれるなどすれば安心できる。そういう親子のやり取りのなかで、子どもは親との感情的な絆を深めていきます。そして、このアタッチメントこそ、子どもがよりよい人生を歩んでいける人間になるための「礎」なのです。
(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」) ※太字は編集部で施した
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また、アタッチメントを「子どもが特定の人に示す愛着感情」「特定の人との精神的な絆」と定義している、公認心理士の佐藤めぐみ氏によると、幼児期にありがちな問題解決にもアタッチメントが効果的なのだそう。なんと、「アタッチメントの育み方次第で、気質的には引っ込み思案で幼稚園や保育所で不安を感じるような子どもであっても、しっかり元気に登園できるようになる」と言うのです。
引っ込み思案な気質をもつ子どもが保育園・幼稚園で過ごす場合、そうでない子どもと比べて、より多くのエネルギーが必要になります。たとえばお迎え時、「抱っこして!」とせがんできたり、手をつないできたりと、子どもが普段より甘えてくることがありませんか? そんなときこそアタッチメントの出番だと、佐藤氏は述べています。
このように子どもの成長における大切な要素として、近年注目されているアタッチメント。次項では、アタッチメントが形成されている子と、そうでない子の違いについて見てみましょう。
「アタッチメント」は子どもの人生を左右する!
どうやらアタッチメントは、子どもの人生を左右するようです。ベネッセ教育総合研究所と東京大学発達保育実践政策学センター(Cedep)の共同研究では、「アタッチメントが子どもの成長においてとても重要」「0歳からのアタッチメントが、非認知スキルともいわれる『学びに向かう力』の育成につながっていく」ということが明らかになりました。
教育心理学者の遠藤利彦氏(東京大学大学院教授)も、「アタッチメントこそが、子どもの精神的発達におけるキーワードであり、人生にも大きな影響を及ぼすことがわかってきた」と述べています。
では、親とのアタッチメントが形成されなかった子どもはどうなってしまうのでしょう? 前出の森口氏は、アタッチメントが不十分な子どもについて次のように指摘しています。
しかし、親とのあいだのアタッチメント形成が不十分な子どもの場合は、「親やまわりの人は自分を助けてくれることなんてない」「自分なんて親やまわりの人から愛されない存在だ」という認識があるために、自信を持つことができず、ちょっとした困難にも立ち向かうことができません。
(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」) ※太字は編集部で施した
アタッチメントの形成次第で、自分に自信をもつことができなくなってしまうのですね。森口氏の著書『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』にも、アタッチメントは「子どもの好奇心やチャレンジ精神の向上にも深く関わっており、人生を左右するほど大事なもの」だと書かれています。
また、親によるスマホネグレクトとアタッチメントの関係を問題視しているのは、心理学者の諸富祥彦氏(明治大学文学部教授)です。諸富氏によると、スマホネグレクトとは「スマホ依存症」の親がスマホばかり見ていることで引き起こされるネグレクトのことだそう。
家族の大切な対話の場である食事中にも、親はスマホばかり見ているのですから、「お父さん、お母さんは自分のことを大事に思ってくれている」という実感を子どもは得にくくなる。そのため、いわゆる愛着、専門用語ではアタッチメントといいますが、親子間における心の絆の形成が弱くなるのです。
(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係)
いかがですか? 人間形成において、アタッチメントがいかに重要な役割を果たすか、理解できたのではないでしょうか。続けて、アタッチメント形成のポイントについてご紹介します。
アタッチメントを育むために親ができること
■子どもが望むなら、とことん甘えさせてOK! (佐藤めぐみ氏)
佐藤氏は、親が「子どもが甘えたがっているときにその気持ちをしっかり受け止める」と、子どもは翌日も元気に登園するためのエネルギーをチャージできると話します。子どもに「甘え行動」が出たときには、しっかり甘えさせてあげてください。「膝のうえに子どもを乗せて絵本を読む」「一緒にお風呂に入って遊ぶ」など、子どもが望むならとことん甘えさせてあげましょう。アタッチメントこそが「子育てのすべてを支える土台」だと佐藤氏は断言していますよ。
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■「ママ」「パパ」と呼ばれたら返事をしましょう(諸富祥彦氏)
諸富氏は、子どもが「ママ」「パパ」と呼んでいるのに親がスマホに夢中で、返事をしなかったり、上の空だったりすると、子どもは常に不安を抱えることになってしまうと指摘します。そして、スマホネグレクトをされ続けて情緒が不安定になった子どもは、感情コントロールが効きにくくなってしまうとのこと。さらに「親から愛されている人間として穏やかに育つということも難しくなる」とも……。
ですから、諸富氏が言うように、親子間のアタッチメント形成には、「ママ」と呼べば「なに?」と返してくれるという心のレスポンスが欠かせないのです。もし、「私はスマホに依存しているかもしれない」と思うのであれば、「子どもの前ではスマホを触らない」「トイレの個室など、子どもと離れたときにだけスマホをチェックする」といった対策をしてみてもいいかもしれません。
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■「ポジティブな養育行動」でアタッチメントが育まれる(李知苑氏)
ベネッセ教育総合研究所の李知苑氏は、アタッチメント形成における大事なこととして、4つの「ポジティブな養育行動」を挙げています。ポジティブな養育行動をすることで、親子間のアタッチメントは形成されていきますよ。
ポジティブな養育行動1:子どもの不安を見逃さない
子どもの不安や恐怖を見逃さず、気持ちを落ち着かせてあげると、子どもの心は安定します。たとえば、子どもがぐずったら「どうしたの?」と寄り添う。子どもが転んだときは、「痛かったね」と子どもの気持ちに共感してなぐさめるといったことです。
ポジティブな養育行動2:子どもに愛情を伝える
子どもに親の愛情を伝えましょう! 愛情を伝えるには、スキンシップと声かけが一番。抱きしめる、「すごいね」「がんばったね」の声かけ、喜びをシェアすることなどが、ポジティブな養育行動になるそうです。
ポジティブな養育行動3:子どもとコミュニケーションをとる
遊びのなかで親子コミュニケーションをとることが、アタッチメントにはとても有効なのだそう。読み聞かせをする、子どもと一緒に好きな曲を歌う、ダンスをするなど、日常的にたくさんコミュニケーションをとりましょう。
ポジティブな養育行動4:子どもを見守る姿勢を保つ
「子どもがしたいことを最後まで見守る姿勢」を保つことです。子どもが好きなことがあれば、取り組める環境を整えてあげて、親は「安心の基地」として、失敗も含めてしっかりと見守ってあげましょう。
ポイントはどれもとてもシンプルですが、意識して取り組むことで、よりよいアタッチメントが育まれていくでしょう。
***
アタッチメントはスキンシップとは違います。前出の遠藤氏も「ところ構わず、だれかれ構わずベタベタくっつくのではない」と語っています。大事なのは、「子どもが安心感に浸れるかどうか」。また、遠藤氏は、「子育てにたった一つの理想型はない」「個性を活かし、自分たちが置かれた状況を見据えながら、それぞれの形を創ってくべき」と付け加えます。 “自分たち親子の形” をつくるために、アタッチメントはとても重要な役割を果たすでしょう。
(参考)
森口佑介(2019),『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』, 講談社.
東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(Cedep)・ベネッセ教育綜合研究所 協働研究|乳幼児の生活と育ちに関する調査2017~2020
ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期に重要な「アタッチメント形成」とは?子どもが不安や恐れを感じたときの保護者のかかわり方
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