あたまを使う 2019.9.26

通知表を見て親が一喜一憂する必要はない。重視すべきは学期末や学年末のテスト

通知表を見て親が一喜一憂する必要はない。重視すべきは学期末や学年末のテスト

学期末になると親が気になるのは、なんといっても子どもが持ち帰ってくる通知表。子どもの評価を見て一喜一憂してしまうのも親なら当然のことです。

でも、ただよろこんだり嘆いたりするのではなく、「通知表をもっと有意義に使ってほしい」と語るのは帝京平成大学の鈴木邦明先生。2017年3月まで、公立小学校の教諭を22年間にわたって務めた鈴木先生が語る「通知表の使い方」とは、どんなものでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

あらゆるものをデータ化してつけるいまの通知表

親世代が子どもの頃と比べても、小学校の通知表はある1点を除いて大きくは変わっていません。どこが変わったのかというと、「説明責任」を果たせるようなつけ方にしないといけない点です。モンスターペアレントとまではいいませんが、いまは「うちの子の評価はどうして『がんばろう』なのですか?」というふうに、評価の根拠を聞いてくる保護者が増えていることがそうなった理由です。

そういうときには教員の主観ではなく客観的なデータで評価の理由を説明し、保護者に納得してもらわなければなりません。そのために、子どもたちの学校生活に関するさまざまな項目を数値化しています。テストの結果はもちろんですが、「関心・意欲・態度」という観点別評価をするために、挙手の回数や、提出物は何回課されてそのうち何回提出できたかといったものまでデータとして保存するのです。

もちろん、教科の評価にもテスト結果以外に多くのデータが影響します。算数でいえば「算数的な考え方」「計算処理」といった評価のための項目がいくつかあって、それらの項目がそれぞれの単元において100点満点中でどれくらいできたのかというデータをつけ、テスト結果も含めて総合的に評価するかたちになっています。

ただ、子どもの教育においては数値化による評価がそぐわないものもあるようにも感じています。教員というプロフェッショナルの目で実際に子どもを見て、判断や評価するべき部分もあるはずなのです。ところが、説明を求められるとなるとやはり数値化できるもので評価せざるを得ません。時代の流れといえばそれまでですが、その点ではいまの通知表をめぐる状況は少し残念に感じていますね。

通知表を見て親が一喜一憂する必要はない

では、通知表を受け取った親は子どもに対してどのような声かけをするべきでしょうか。結果が良かった場合は簡単です。思いっ切り褒めてあげればいい。子どもは「もっと頑張ろう」と勉強に励んでくれるでしょう。

一方、結果が良くなかった場合となると、親の立場からすればつい小言もいいたくなりますよね……。でも、子どもの側からすれば、親にがみがみと叱られても「勉強を頑張ろう」とはなかなか思えないのです。逆に勉強が嫌いになってしまうことも考えられます。そうであるなら、いいたいことを抑えて「通知表を見てどう思う?」と子どもに水を向ければいいのです。

そうすれば、「ちょっと悪過ぎたかも……」「次はこうしようと思う」というふうに素直に反省してくれるのではないでしょうか。結果が良くなかったことは子ども自身もよくわかっているのですからね。

そもそも、通知表を見て親がすべきことは一喜一憂などではありません。たしかに通知表は各学期の成績を示したものではあります。でも、見方を変えれば、これから子どもがやるべき勉強の指針を示しているともいえるのです。いわば、健康診断や人間ドックのようなもので、どこか悪いところがあれば改善しなければなりません。そういうふうに通知表を見て、しっかり利用するようにしてほしいですね。

学習で積み上げた「石垣」のうえに子どもの未来がある

そういう意味で、通知表以上に重視してほしいのが、学期末や学年末などの節目に行うテストである「まとめテスト」です。普段のテストは、基本的にひとつの単元ごとに行います。たとえば算数の「分数の足し算」の単元を終えたら、分数の足し算のテストをするという具合です。でも、まとめテストには分数の足し算に引き算、割合など、その学期、学年で学んだ内容がすべて含まれます。その結果を見れば、理解が足りなかったり内容を忘れてしまったりして抜け落ちている部分がはっきりとわかるのです。

そういう点では、タブレット端末などで利用する学習アプリを使ってみてもいいですね。わたし自身も英単語学習のアプリを使っているのですが、これらの学習アプリの良さは、これまでに間違ったところを重点的に出題してくれるという機能にあります。まさに、まとめテストと同じ効果を期待できるというわけです。

学習とは、いわば「石垣を積み上げる」ような作業の繰り返しといえます。2年生で九九という石をきちんと積むことができなければ、3年生になったときに九九を使って行う割り算の石をそのうえに積むということは絶対にできません。必要な石が抜けていないかどうかを確かめることができるのが、まとめテストや学習アプリだというわけです。

そうして積み上げた石垣のうえに、大人になってからの生活があります。子どもたちは将来に対してそれぞれに大きな夢を持っていることでしょう。でも、しっかりと石垣を積むことができなければ、そのうえに大きな城を築くことも、広い庭をつくることも難しくなります。子どもの将来の可能性を広げるために、人生の土台となる学習の石垣を大きく強固にできるように導いてあげてほしいと思います。

■帝京平成大学現代ライフ学部講師・鈴木邦明先生 インタビュー一覧
第1回:リーダー性のある子がクラスにかならずいる理由。成績はどこまで重要視されるのか?
第2回:担任教員と話していますか? 子どもの学校生活の質を上げるために親ができること
第3回:通知表を見て親が一喜一憂する必要はない。重視すべきは学期末や学年末のテスト

【プロフィール】
鈴木邦明(すずき・くにあき)
1971年生まれ、神奈川県出身。帝京平成大学現代ライフ学部児童学科小学校・特別支援コース講師。東京学芸大学教育学部卒業。放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修士課程修了。神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年間にわたって勤めたのち、2017年から小田原短期大学保育学科特任講師、2018年から現職。他に、相模女子大学学芸学部子ども教育学科非常勤講師、人間総合科学大学人間科学部心身健康科学科非常勤講師も務める。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進め、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演活動も行うなど幅広く活動中。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。