2019.9.25

担任教員と話していますか? 子どもの学校生活の質を上げるために親ができること

担任教員と話していますか? 子どもの学校生活の質を上げるために親ができること

新年度になって子どもの担任教員が決まると、保護者間ではある言葉が頻繁に交わされます。それは、「あの先生はあたり」「今年の担任ははずれ」といったものです。実際、担任教員の「あたりはずれ」といったものはあるのでしょうか。失礼を承知でお話を聞いたのは帝京平成大学の鈴木邦明先生。2017年3月まで、公立小学校の教諭を22年間にわたって務めた鈴木先生は、「そういううわさを親が信じることが、子どもにとってはいちばんのマイナス」だと語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

一般企業の異動願いと同じように教員も担任の希望を出す

クラス担任は校長や教育委員会などから指示されて決まるわけではありません。教員が自らの希望を出すのです。一般の企業に勤めている人でも、異動願いを出すことがありますよね。それと同じことです。1月末から2月くらいにかけて、教員たちは翌年に自分が担任したいと思う学年や、さまざまな担当校務についての希望を出します。

ただ、教員には学校間の異動がありますから、それが決まらないことには担任教員を決めることはできません。異動が決まるのは2月末から3月くらい。その後、各教員の希望や経験、個性などを踏まえて校長が担任を決めていきます

たとえば、教員の希望が重複したような場合には、小学生になったばかりの1年生の担任には落ち着いた母性的な教員を配置したり、自我が発達して自分の意志を持ちはじめた高学年の担任には、児童の意見をしっかりくみ取ったうえで自分の考えを伝えられるような教員を配置したりする、という具合です。ですから、1年生と高学年以外の2〜4年生は比較的若い教員が担任するケースが多いかもしれません。

子どもの学校生活の質を上げるために親ができること2

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「あの先生ははずれ」と親が思うことは子どもにとってマイナス

このように担任が決まるわけですが、教員の立場からすれば残念なことに、保護者のなかでは「今年の担任はあたりだ」「はずれだ」なんてことが語られることも珍しくないのが実情です。

たしかに、指導力不足とされて都道府県教育委員会の研修を受けさせられるという教員もいないわけではありません。指導力不足とは、具体的には子どもの話を聞かないだとか、ひとりよがり過ぎる、体罰をするといったことです。ただ、そういう教員は本当にごく一部に過ぎず、わたし自身は書類上で処分等の内容を知っただけで、22年間の小学校教員生活のなかで実際に会ったことはありません。

ほとんどの教員は、きちんと子どもに勉強を教え導くための能力を備えているのです。それなのに、「先生にもあたりはずれがある」なんて親が思ってしまうと、子どもの育ちにとって大きなマイナスになるとわたしは考えています。

子どもの学校生活の質を上げるために親ができること3

「今年の担任ははずれ」といったうわさは、4月の始業式の日に子どもが持ち帰った「学校だより」などで各クラスの担任教員を知った保護者間に、LINEなどのSNS等を通じてすぐに広まります。前年にある教員の担任クラスに子どもがいた親が、その教員が新たに担任を持ったクラスの子どもの親に対して、「あの先生ははずれだよ」などと伝えるわけです。

ただ、そんなうわさをうのみにすることほどもったいないことはありません。保護者と学校は両輪です。子どもをきちんと導くには、保護者と学校がしっかりと同じ方向を向いて、同じスピードで進んでいくべきです。それなのに、担任が決まった瞬間に保護者がそっぽを向いてしまえば、子どもの学校生活の質は4月の最初からずっと下がったままということになってしまいます。

たとえば、「今年の担任ははずれだ」なんて思った親が、子どもに対して「あの先生、こういう駄目なところがあるらしいよ」なんていったらどうなるでしょうか? 子どもは担任教員を信頼しなくなるに決まっています。授業態度にも変化が出て、まともに授業を聞かないということにもなりかねません。

子どもの学校生活の質を上げるために親ができること4

教員の個性のなかでいい面を子どもに享受させる

そんな事態を招かないためにも、妙なうわさを頭から信じるべきではありません。そして、保護者と学校が同じ方向を向いて子どもを導くために、担任教員の教育方針をしっかりと知ってほしいのです。

たとえば、授業参観には行っているのに、そのあとの懇談会がはじまるまえにそそくさと帰ってしまっている人はいませんか? そういう人が意外なほど多いのです。教員は自分の教育方針はもちろん、子どもたちの学校での様子など、多くの有益な情報を保護者に伝えたいと考えています。やはり、プリントした紙だけでは伝えられることに限りがありますから、懇談会や個人面談など担任教員と実際に会う機会を大事にしてください。

それから、教員に対して「あたりだ、はずれだ」なんていうまえに、教員の個性を認めてほしいとも思います。みなさんそれぞれに個性があるように、基本的な能力は備えたうえで、教員にも個性というものがあります。理科が得意な先生がいれば、体育が得意な先生もいるわけです。

だとするならば、担任教員が毎年変わっていくなかで、それぞれの教員のいいところを子どもにしっかりと享受させることがとても重要だと思うのです。もし教員に苦手な部分があると感じれば、そこを家庭教育でフォローしていけばいい。そう考えれば、子どもは充実したより良い1年を送れるはずです。

※本記事は2019年9月25日に公開しました。肩書などは当時のものです。

子どもの学校生活の質を上げるために親ができること5

■帝京平成大学現代ライフ学部講師・鈴木邦明先生 インタビュー一覧
第1回:リーダー性のある子がクラスにかならずいる理由。成績はどこまで重要視されるのか?
第2回:担任教員と話していますか? 子どもの学校生活の質を上げるために親ができること
第3回:通知表を見て親が一喜一憂する必要はない。重視すべきは学期末や学年末のテスト

【プロフィール】
鈴木邦明(すずき・くにあき)
1971年生まれ、神奈川県出身。帝京平成大学現代ライフ学部児童学科小学校・特別支援コース講師。東京学芸大学教育学部卒業。放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修士課程修了。神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年間にわたって勤めたのち、2017年から小田原短期大学保育学科特任講師、2018年から現職。他に、相模女子大学学芸学部子ども教育学科非常勤講師、人間総合科学大学人間科学部心身健康科学科非常勤講師も務める。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進め、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演活動も行うなど幅広く活動中。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。