2020.3.26

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント

[PR] 編集部
子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント

知的好奇心を育てるのは、お子さんの教育において最も大切だといっても過言ではありません。さまざまな物事に興味を持ち、大人に質問を投げかけ、自分で調べようという姿勢は、勉強に欠かせないもの。大人になってからも、次々に立ちはだかる問題を解決し、自ら道を切り開いていくうえでも、知的好奇心は必要不可欠です。

子どもの好奇心旺盛さを損なわず、新たな知識・体験にワクワクする気持ちを育ててあげるには、どうしたらよいのでしょうか? 図鑑を買い与える、博物館や美術館に連れていくなどは、子どもの知的好奇心を養う方法としてよく挙げられていますよね。

今回の記事では、そもそも「知的好奇心」とは何なのかを明確にしたうえで、子どもの好奇心を育てるための心構えを考えたいと思います。記事の最後で、好奇心を育てるための具体的なツールもご紹介するので、ぜひ試してみてください。

知的好奇心とは

知的好奇心を育てる方法論の話をする前に、「知的好奇心」の定義を明らかにしておきましょう。好奇心を主要テーマとして研究している西川一二氏(京都大学大学院研究員)らの論文「知的好奇心尺度の作成」(2015年)によると、好奇心には2種類あるのだそう。

  • 知的好奇心(epistemic curiosity):知的活動を動機づける
  • 知覚的好奇心(perceptual curiosity):新奇な視覚刺激や聴覚刺激を動機づける

知的好奇心とは、たとえば、「いろいろなことを知りたい」「なぜこれはこうなのか、納得できるまで調べたい」というような気持ち。一方、知覚的好奇心とは、「おもしろい建物を見たら、入ってみたくなる」「物音が聞こえたら、出どころを確かめたくなる」という気持ちです。

今回着目するのは、前者の知的好奇心。知的好奇心は、さらに2つのタイプに分けられるのだそう。

  • 拡散的好奇心(diversive curiosity):新奇な情報を求める、方向性を定めない探索行動を動機づける
  • 特殊的好奇心(speceific curiosity):情報の不整合に対し、方向性を定めた探索行動を動機づける

「方向性」とは、具体的な目的のこと。「いろいろなことを知りたい」のように、具体的な目的のない好奇心が「拡散的好奇心」、「なぜこれはこうなのか、納得できるまで調べたい」のように、具体的な目的のある好奇心が「特殊的好奇心」です。

西川氏らの論文では、拡散的好奇心と特殊的好奇心の程度を測定する質問項目が作成されました。以下は、項目のうち一部を抜粋したもの。拡散的好奇心と特殊的好奇心の違いがイメージしやすいかと思います。

【拡散的好奇心】

  • 新しいことに挑戦するのが好きだ。
  • どこに行っても、新しい物事や経験を探す。

【特殊的好奇心】

  • 解答を理解しないと気持ちが落ち着かず、なんとか理解しなければと思う。
  • 予期しない出来事が起きたとき、原因がわかるまで調べる。

拡散的好奇心も特殊的好奇心も、学校での各種活動において、そして今後の人生において、とても重要なものです。拡散的好奇心が強ければ、引っ越しや進学・留学・就職などで環境が大きく変わったときでも動揺しすぎず、さまざまな知識や体験を得ようとするでしょう。そして、特殊的好奇心が強ければ、難しい問題に直面したときも「わからない、できない」で済ませず、なんとか解決しようと取り組めるはず。

2種類の好奇心を育てることで、子どもが生き抜く力が育まれるのです。

知的好奇心を育てる方法2

知的好奇心を育てる意義

好奇心がどのようなものかわかったところで、知的好奇心を育てる意義を確認しましょう。

東京大学に独学で現役合格したことで知られ、『一生伸び続ける人の学び方』(かんき出版、2016年)など数々の著書を持つ本山勝寛氏は、GoogleやAmazonの例を挙げつつ、2020年以降の「これからの時代」に重要となる「3つのC」を提唱しています。

  • Curiosity(好奇心
  • Creativity(創造性
  • Collaboration(コラボレーション

本山氏が特に重視するのが、好奇心。本山氏は、好奇心を「最初の一歩を踏み出させる力」と称します。好奇心は、主体的な学びや行動の「原動力」となるのだそうです。

「日本企業と個人のグローバル適応」を研究する経営学者の小笠原泰教授(明治大学)も、知的好奇心の必要性に言及しています。

問題定義と課題発見能力を高めるために必要なのは、教養と言えるでしょう。教養とは、自ら獲得した知識の意味を考え、それらを次々に拡張し、つなげて、自分なりに再構築していく、身体に埋め込まれた「学ぶ」、「自分の頭で考える」姿勢、知的好奇心ともいえる動的で能動的なモノです。

(引用元:プレジデントオンライン|“かわいい子には旅をさせよ”の本当の理由

小笠原教授は、「教養」を「知的好奇心」と言い換えています。「もっと知りたい」と幅広いことに興味を持つのが、課題発見能力を高める第一歩とのことです。

小笠原教授によると、グローバル化する社会においては、問題解決能力よりも課題発見能力が求められるのだそう。たしかに、「問題を解決」するには、それ以前に「課題を発見」する必要があります。

たとえば、「住宅街の狭い道を、多数の車が高速で通り抜けている。子どもも含めたたくさんの住民が歩いているのに、危ない」という問題があったとします。この問題を解決するには、具体的な課題を発見しなければなりません。「住民以外の自動車が入れないようにする」「自動車がスピードを出せないようにする」などの課題に気づけるかどうかが、問題解決を可能にする分かれ目なのです。

知的好奇心が強ければ、いろいろな情報を得ようと積極的に行動を起こすのですから、幅広い知識が身につきます。その結果、問題解決に必要な課題に気づきやすくなるのです。

知的好奇心の重要性がおわかりいただけたでしょうか。知的好奇心は、自分の頭で考えて問題を解決するために必要な原動力なのです。

知的好奇心を育てる方法3

子どもの知的好奇心を育てる3箇条:「好奇心の芽」を摘み取らない

では、子どもの知的好奇心を育てるため、親はどうすればよいのでしょうか。まず気をつけたいのが、子どものなかにある「好奇心の芽」を摘み取ってしまわないことです。

2000年度~2010年度に獨協中学・高等学校の校長を務めた永井伸一氏によれば、子どものなかで育つ「好奇心の芽」が花になるかどうかは、親の関わりしだい。2~3歳頃に子どもの好奇心はピークに達し、「これは何?」「どうして?」と質問を連発します。しかし、子どもの好奇心の発露に対し、「忙しいからあとで」と取り合わなかったり、「うるさい!」と拒絶したりといったネガティブな反応を親が繰り返すと、子どもは5歳くらいで「親に話しても聞いてもらえない」と思い、せっかくの「好奇心の芽」は、しぼんでしまうのだそうです。

知的好奇心を育てる方法4

子どもの知的好奇心を育てる3箇条:親もいっしょに考える

子どもの知的好奇心を育てるには、子どもの「これ何?」「どうして?」といった疑問を否定しないことが大切です。もちろん、「葉っぱが緑色なのはね、光合成に必要な天然の緑色色素を含んでいるからで……」のように、毎回正確な説明に努めろ、というわけではありません。

脳科学者の茂木健一郎氏は、「大人が答えを教えてあげる必要はありません」と断言します。質問してきた子どもを突き放すような態度をとったり、答えを教えてしまったりすると、「子どもが自分で答えを見つける機会を永久に奪ってしまう」のだそう。

茂木氏によると、子どもの好奇心の育ちを邪魔しないためには、「どうしてだと思う?」のように問いかけるのが大事とのこと。子どもが答えにたどり着くヒントとして、調べ方を教えてあげるなど、「子供たちの知的好奇心を支えてあげるコーチ役」に徹するのがよいそうです。

教師教育のセミナーを手がける「授業・人」塾代表の田中博史氏も、子どもから質問されたときに「大人がすべて説明しなければ」と思うべきではないと話しています。親は、説明するのではなく、「いっしょに考える」のが大事なのだそう。

田中氏によると、子どもの知的好奇心が最も高まるのは、子どもが「説明したい」と思ったとき。そのため、子どもから「どうして?」と聞かれたら、「そうだね、どうしてだろうね」といっしょに考えてみたり、あえて勘違いをしてみせたりして、子どもの「教えてあげたい」という気持ちを引き出してあげるとよいのです。

知的好奇心を育てる方法5

子どもの知的好奇心を育てる3箇条:親が好奇心を持つ

子どもの知的好奇心を育てる親になるには、親自身が知的好奇心を持つこと。親に好奇心がなければ、子どもに「空はどうして色が変わるの?」と聞かれたとき、「そんなこと聞かれてもわからないよ」「めんどくさいこと言わないで」と突き放してしまうかもしれません。しかし、知的好奇心があれば、「そういえば、授業で習ったけど、どうしてだったかな……」「たしかに、言われてみれば、どうしてなんだろう。まだまだ自分も知らないことが多いな」と思え、子どもといっしょに考えたくなるでしょう。

公共哲学を研究する萱野稔人教授(津田塾大学)は、知的好奇心に関して以下のように断言しています。

一番近くにいる大人である親が知的好奇心を持っていないと、子どもの知的好奇心は間違いなく育ちません

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どものための哲学入門ーー津田塾大学総合政策学部学部長 哲学者・萱野稔人先生インタビューpart3 太字による強調は編集部が施した)

知的好奇心の形成には、親とのコミュニケーションが大きく影響しているとのこと。前述のとおり、子どもの好奇心の発露に対し、親が冷たい反応をすれば、子どもの好奇心はしぼんでしまいます。

本山勝寛氏も、「親の好奇心の低さが子どもに伝染する」と話しています。たとえば、「見て見て、形が違うやつがあるよ。なんで違うのかな」と複数のドングリを見せられたとき、知的好奇心の低い親は「そんなの、どうだっていいよ……」と思ってしまうかもしれません。そうなると、子どもに対してどうしても冷たい反応になり、好奇心を膨らませてあげることはできませんよね。

子どもが発する素朴な疑問に対し、「たしかに、どうしてなんだろう」と親が思えるかどうかが、子どもの知的好奇心の成長を左右します。子どもの知的好奇心を育てるには、まず、親が知的好奇心を持つ必要があるのです。

知的好奇心を育てる方法6

子どもの知的好奇心を育てる具体的な方法

子どもの知的好奇心を育てるため、親が知的好奇心を持つには、具体的にどうすればよいのでしょう? おすすめの方法は、新聞を読むことです。

新聞には、政治・経済・金融・社会問題・国際情勢など、さまざまなジャンルの情報が掲載されています。最近の出来事を伝える「発表報道」はもちろん、独自の問題意識にもとづいてリサーチした成果をまとめた「調査報道」も豊富。SNSで得られる速報と異なり、出来事の背景を詳しく説明しているのが、新聞の特徴です。

幅広いジャンルを網羅した新聞は、知的好奇心を刺激してくれるメディア。この記事のはじめでお伝えしたように、知的好奇心には「拡散的好奇心」と「特殊的好奇心」の2種類があります。特に新聞と関係しているのは、「いろいろなことを知りたい」という拡散的好奇心。現代社会に関する情報を幅広く仕入れておきたい、大人として教養を積みたいと考えている方に、新聞はぴったりなのです。

教育・教養に関して数多くの著作を持つ齋藤孝教授(明治大学)も、新聞と知的好奇心の関係に言及しています。新聞に興味のなかった大学生でも、「実際読んでみるとその内容の幅広さに驚き、好奇心が膨らんでいく」のだそうです。

これまで新聞を読む習慣がなかったという方には、大人向けの一般の新聞はもちろん、子ども向けの「小学生新聞」もおすすめ。難しい出来事や用語をわかりやすく解説しているので、お子さんにとって読みやすいだけでなく、大人がニュースをより深く理解することにも役立つのです。ジャーナリストであり、自身も新聞が大好きだという池上彰氏によれば、「わかりやすい記事を求めて、大人も小学生新聞を読んでいる」とのこと。

もちろん、子どもにとっての小学生新聞の効果も絶大です。池上氏は、子どもの知的好奇心と新聞の関係について、以下のように言及しています。

新聞の中には、子どもの知らない世界が広がっています。それに日々触れることで、新しい知識が蓄えられると同時に、知的好奇心が刺激されて物事を深く考えるようになります

(引用元:池上彰(2009),『小学生から「新聞」を読む子は大きく伸びる!』, すばる舎. 太字による強調は編集部が施した)

新聞による情報収集を習慣化すれば、親も子どもも知的好奇心を養えるというわけですね。

新聞に興味を持った人に試してみてほしいのが、子ども向け新聞として定評のある「朝日小学生新聞」。月1,769円(税込)の購読料で、毎日届きます。1カ月単位で契約できるので、「想像していたのと違った」と感じたら気軽に解約可能。詳細は、以下のリンクから確認してみてください。

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子どもの知的好奇心を育てるための心がけと、知的好奇心を養う具体的な方法についてお話ししました。大事なのは、大人が知的好奇心を持ちつづけること。世界にあふれる「どうして?」を、親子で探求していきましょう。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|非認知能力のなかで最重要なのは「○○心」。実は、日本の子どもは学びへの興味が低い!?
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“考える力”を伸ばす、子どもの「どうして?」と親の「どうして?」
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どものための哲学入門ーー津田塾大学総合政策学部学部長 哲学者・萱野稔人先生インタビューpart3
Collins, Robert, Jordan Litman, and Charles Spielberger (2004), “The Measurement of Perceptual Curiosity”, Personality and Individual Differences, Vol. 36, pp.1127-1141.
J-STAGE|知的好奇心尺度の作成
プレジデントオンライン|グーグルが「採用で最も重視するスキル」とはなにか
プレジデントオンライン|“かわいい子には旅をさせよ”の本当の理由
プレジデントオンライン|AIより頭がよくなる”世界標準の勉強法”
朝日学生新聞社|朝日小学生新聞:池上彰の新聞ななめ読み
池上彰(2009),『小学生から「新聞」を読む子は大きく伸びる!』, すばる舎.
齊藤孝(2013),『若者の取扱説明書 「ゆとり世代」は、実は伸びる』, PHP研究所.
永井伸一(2017),『12歳までの好奇心の育て方で子どもの学力は決まる!』, 青春出版社.