「厳しすぎるかな?」「甘やかしているかも?」「この対応で合っているの?」子育ては悩みは尽きませんね。特に現代は育児情報があふれ、どの方法がわが子に合っているのか判断が難しいもの。
そこで今回は、4つの子育て基本スタイルについてご紹介します。もし自分の子育てスタイルを知ることができれば、子どもの困った行動の理解や、悩んでいる親子関係の改善につながるかもしれません。あなたの子育て方法を見つめ直す一助としてお役立てください。
目次
バウムリンドの4つの子育てタイプ
1960年代、発達心理学者ダイアナ・バウムリンド氏は、親の要求と子どもへの応答性に基づいて、3つの異なる子育てスタイル「服従型」「寛容型」「民主型」を説明しました。そこに、後に他の研究者の研究に基づいて「無関心型」が加えられ、現在は4つの主要なタイプに分類されています。
この理論では、子育てスタイルは「要求性(子どもにどれだけルールを求めるか)」と「応答性(子どもの気持ちをどれだけ受け止めるか)」という2つの軸で4象限に分類されます。この2つの軸の組み合わせによって「服従型」「寛容型」「民主型」「無関心型」に分けられということです。では、それぞれどのような子育てスタイルを表しているのでしょうか?
そこで、ダイアナ・バウムリンド氏らが提唱する4つの子育てスタイルをもとに編集部が簡単なチェックリストを作成しました。まずは、あなたの傾向を確認してみましょう!
Aタイプ
□ お子さんには指示通りに従ってほしいと思う
□ ルールの理由をあまり説明しない
□ 子どもの気持ちより規律を重視する
□ 厳格なルールと罰則がある
Bタイプ
□ ルールはあるが厳しく守らせない
□ 子どもの要求にたいてい応じる
□ 「子どもだから」と多くを許す
□ 友達のような関係を大切にする
Cタイプ
□ 子どもとの良好な関係づくりを大切にする
□ ルールとその理由を説明する
□ 子どもの気持ちを尊重しつつ、適切な境界線も設ける
□ ほめるなど、前向きなしつけ方法を使う
Dタイプ
□ 子どもの学校や友達についてあまり知らない
□ 子どもに対する期待やルールがほとんどない
□ 子どもとあまり時間を過ごさない
□ 子どもの日常生活にほとんど関わらない
どのタイプが一番自分自身の子育てスタイルに近かったですか? それぞれのタイプについて解説していきます。
Aが多い方:服従型子育てタイプ
Aの項目が多く当てはまる場合、服従型の傾向があるかもしれません。このタイプは規律とルールを重視。子どもにはきちんとした行動を期待し、ルールを守らない場合には厳しく接することがあります。ライフコーチのボーク重子氏は、「典型的な『スパルタ教育ママ』がこのタイプに該当します』と説明。「言うことを聞きなさい」「わたしが言ったとおりにやればいいのよ』」といった言葉を頻繁に使う傾向を指摘しています。
このスタイルの親は意思決定を自ら行ない、子どもの意見はあまり取り入れません。ルールを守る子どもに育つ反面、以下のような子どもの課題が出ることもあります。
- 友達関係でのコミュニケーションが苦手
- 自分で決めることに不安を感じる
- 自信が持ちにくい
- 人間関係の判断が難しい
- 怒りや不満をためこみやすい
- ときに反抗的になる
Bが多い方:寛容型子育てタイプ
このタイプの親は柔軟で、深刻な問題がない限りあまり口出ししません。「子どもは子どもらしく」という考えをもち、親というより友達のような関係を作ることが多いのが特徴です。このスタイルでは、子どものニーズに応えることを大切にしますが、しつけは一貫していないことも。
たとえば、「今日はだめ」と言ったことでも、子どもが強く望めば許してしまうことがあります。前出のボーク重子氏は、寛容型の親が「NO」と言えない理由について、「『子どもに嫌われたくない』という自信のなさが潜んでいる」と指摘しています。
そのため、寛容型の子どもへの影響として、以下のような点が見られることがあります。
- 責任感が育ちにくい
- 物事を決めるのが苦手
- 我慢することが難しい
- 自立心が育ちにくい
- 不安やストレスを感じやすい
- 学校の勉強に意欲がもちにくい
また興味深いことに、ボーク氏は「服従型、寛容型といったタイプの親に共通するのは、自分に甘く、親自身が自分の人生に自信がもてず、目標もないということ」だと分析しています。子育てスタイルの背景には、親自身の自己認識や人生観が大きく影響しているのかもしれません。
Cが多い方:民主型子育てタイプ
このスタイルは「バランス型」とも言え、専門家が最も健全だと考える子育て方法です。子どもにはルールと自由の両方を与えます。
民主型の親は、子どもの気持ちを尊重しながらも、最終的には親が責任者であることを伝えます。問題が起きる前に予防し、よい行動にはほめるという対応が基本。失敗も学びの機会と捉え、子どもに明確な期待をもちつつ温かく接します。このスタイルで育つ子どもには、以下のような子どものよい影響が見られることが多いようです。
- 親との信頼関係が強い
- 責任感がある
- 自分の感情をコントロールできる
- 自信がある
- 幸せで成功しやすい
- 自分の気持ちを上手に表現できる
Dが多い方:無関心型子育てタイプ
このタイプの親は子どもの生活にあまり関わることができていません。ルールや期待も少なく、子どもの日常についてあまり知らないことが多いことが多いようです。
このタイプの親は、子どもが自分で成長することを期待しています。ただし、これは必ずしも意図的なものではなく、親自身の問題(健康上の理由、仕事の忙しさなど)で十分な関わりがもてないこともあります。このスタイルの子どもへの影響として、以下のような点が見られることがあります。
- 自己肯定感が低い
- 問題行動が出やすい
- 感情表現が苦手
- 学校での成績に課題が出やすい
理想的な子育てスタイルは「民主型タイプ」
すべての親が完璧ではありません。大切なのは、子どもの個性に合わせて、愛情と一貫性のあるアプローチを見つけていくことです。状況によって異なるスタイルを組み合わせることも、効果的な子育てのひとつの方法です。
しかし研究によると、4つの主要な子育てスタイルの中で、民主型子育てが子どもの健全な発達に最も効果的であり、「ゴールドスタンダード」と呼ばれています。では、「民主型タイプ」はどのような特徴があるのでしょうか。もう少し詳しくみていきましょう。
「民主型子育てタイプ」の親の特徴
前出のボーク氏によれば、民主型の親は「ルールは子どもと話し合って設定し、ルールを破っても感情的に叱らず、子ども自身に考えさせ責任を取らせる」というアプローチを取ると言います。こうした関わり方が子どもの自立心と責任感を育み、子どもの情緒面と知的発達の両方を促進すると言います。
以下に主な民主的子育ての特徴をまとめました。
- 明確なルールと期待: 子どもが理解できる適切なルールを設ける
- オープンなコミュニケーション: ルールの理由を説明し、子どもの質問に答える
- 子どもの気持ちの尊重: 子どもの感情を認め、受け入れる
- 一貫した規律: 規律は罰ではなく導きとして機能する
- 適切な自律性: 年齢に応じた選択と責任を与える
「民主型子育てタイプ」の子どもへの効果
民主型の親に育てられた子どもは、幸せで自信があり、成功する傾向があります。この育て方で育った子どもたちは、内面から湧き出る自信と幸福感をもち、様々な場面で成功する傾向が見られます。
なぜなら、親からの明確な指針と自由のバランスが取れた環境で育つことで、自分で考え、判断する力が自然と身についていくからです。一句つかの研究によると、民主型の子育てを受けた子どもたちには、次のような特徴が顕著に現れることがわかっています。
- 高い自尊心と自信
- 優れた社会的スキル
- 良好な感情調整能力
- 学業成功
- 責任感
- 回復力(レジリエンス)
民主型の親に育てられた子どもは、親が自分を信頼してくれていると感じるため、自分自身も自分の判断を信頼できるようになります。そして「自分はできる」という自己肯定感から、自ら高い目標を設定し、それに向かって努力する姿勢が育まれます。学校での成績が良いだけでなく、友達関係も良好で、問題行動も少ない傾向にあるのも、このバランスの取れた子育ての成果と言えるでしょう。
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子育てに完璧な方法はありません。どのスタイルにも長所と短所があり、多くの親は状況に応じて複数のスタイルを組み合わせています。
「民主型」が最も効果的とされていますが、大切なのは子どもの個性を理解し、一貫性と愛情をもって接することです。自分の子育てスタイルを知ることは、子どもとの関係を見直すきっかけになります。ぜひ参考に日々の子育てを振り返ってみてくださいね。
(参考)
Parents|What Is Your Parenting Style, and Why Does It Matter?
Iowa State University Digital Press|Baumrind’s Parenting Styles
STUDY HACKER こどもまなびラボ|誰でもベストな親になれる「SMARTゴール」とは?――全米最優秀女子高生の母・ボーク重子さんインタビューpart4