お世話になっている保育士さんとのコミュニケーションに欠かせない連絡帳。必要なものとわかっていても、いざ連絡帳を記入しようと思ったとき「忙しい朝に書くのは大変」「特に書くことないんだけど……」と、頭を抱えている方も多いのではないでしょうか?
少し面倒にも感じる日々の連絡帳ですが、保育士と保護者の大切な橋渡しとしての役割を担っています。毎日記入することにより、子どもの保育園生活がよりスムーズに……! 今回は、保育士歴10年の筆者が、現場のリアルな声を交えながら連絡帳の書き方や活用のコツをわかりやすくご紹介します。
ライタープロフィール
保育士
児童学科で4年間学び、保育士資格や幼稚園教諭一種免許を取得。保育士として約10年勤務。現在、小学生2人を育てながら「働きながら子育てする大変さ」と対峙中。ワーキングマザーが安心して子どもを預けられるよう、さまざまな情報を発信します。
目次
保育士目線から見た連絡帳の役割
連絡帳は、保護者が家庭で書いてきたものを登園時に提出し、朝のうちに保育士が確認します。そして降園までに保育士が保育園での様子を記載し、帰宅後に保護者が確認する「交換日記」のようなものです。
使用する連絡帳の種類は保育園によってさまざまで、従来の手書きノートタイプや複写式のもの、最近ではスマートフォンアプリを使ったデジタル連絡帳を導入している園も増えています。形は違いますが、どの連絡帳でも主に以下のような項目を記入します。
- 日付・天気
- 食事(授乳)時間・内容
- 排便状態・回数
- 睡眠時間
- 体温
- 機嫌
- 家庭での様子
- お迎え時間
- お迎えに来る家族の続柄
まずは、連絡帳が子どもの保育園生活にどのような影響を与えるのか、その重要性を知ることから始めてみましょう。
1. 保育園での様子を知らせる
連絡帳には、子どもが保育園でどのように過ごしたのか、その様子を保護者に知らせる役割があります。送迎に来た保護者とゆっくり会話できればよいのですが、慌ただしくなかなか時間を確保できません。また、子どもを見ていた保育士が早番ですでに退勤していることもあります。そんなときに頼りになるのが連絡帳なのです。
2. 家庭での様子を保育に生かす
連絡帳は、子どもが家庭でどのような様子で過ごしているか知るという点でも重要です。お家ではどんな玩具で遊んでいるのかなど、家庭での様子を知ることで保育園でもつながりのある保育を提供できます。子どもの性格や好みを知るうえで、保護者からの情報はなくてはならないものです。
3. 健康状態や心の変化にいち早く気づく
連絡帳からは、食事や睡眠、排便など子どもの健康状態を確認することもできます。丁寧に記録をつけていれば、保育園でも子どもの言葉にならない欲求を理解してあげられるかもしれません。「いつもより寝不足だから泣いているのかな?」「朝食の時間が早かったからもうお腹がすいたのかも」など、連絡帳から読み取れる情報はたくさんあります。
書き方に悩む人へ|保育士が教える「連絡帳」記入のヒント集
連絡帳は大切な情報交換の場でもあるため、空欄は避けたいもの。空欄が続く保護者に対し、保育士から「なんでもよいので普段の〇〇ちゃんの様子を書いてもらえれば……」などと声をかける場面は少なくありません。どう書いていいかわからないという相談も多いため、これまでに実際にあった連絡帳の記入例を見ながらイメージしてみましょう。
1.体調について
→園では、小さな変化を共有して無理のない一日にします。
保育園で子どもがグズったとき、このように体調についての記載があれば早めに対応できます。「今日はいつもより甘えん坊だな」と感じたとき、「もしかして体調の影響かな?」と判断の手がかりになることも。とくにワクチン接種の翌日は発熱するケースもあるため、あらかじめ情報を共有してもらえると、園でも適切な対応を準備しやすくなります。こうして、不安な点を伝えておくことで、保育園側からも様子を伝えることができます。
2.食事について
→園では、こだわりや変化を知って安心できる食事時間を心がけます。
家庭からの食事に関する記載に合わせて、介助のアプローチを変えることも少なくありません。たとえば、朝ごはんが進まなかったと聞けば、「お腹がすくのが早いかもしれない」とおやつのタイミングに配慮したり、いつもより食が細いときは「体調の変化かも」と様子をよく見るようにしたり。家庭と保育園が一貫した対応を行なうことで、子どもも安心して食事を楽しめるようになります。
3. 睡眠について
→園では、睡眠の様子を踏まえて活動リズムを調整していきます。
保育園での睡眠のタイミングや量、活動内容によって、子どもの夜の寝つきが左右されます。「昨夜よく眠れなかった」といった情報があれば、無理に活動に参加させず、少しゆったりとした過ごし方に切り替えることもできます。家庭と情報を交換しながら、午前睡を徐々になくしていくことで、ぐっすり昼寝をするようになったケースもあります。こうした睡眠に関する記録は、生活リズムの変化や成長のサインに気づくヒントになります。
4.遊びについて
→園では、好みや苦手を共有して楽しい関わりにつなげていきます。
普段の遊びの様子に関する情報は、子どもと接する際に大いに役立ちます。保育士は、子どもの興味・関心を広げられるように日々試行錯誤していますので、その時々の子どもの流行を知らせてくれると参考になります。たとえば、ブロックの色分けにハマっていると聞けば、園でも似たような活動を取り入れてみようという工夫につながります。「虫が苦手」という情報があれば、いやな思いをしないよう事前に対処できます。
その子の「好き」や「苦手」が伝わるだけで、遊びを通した関わりの質がぐっと深まります。
5.機嫌について
→園では、ぐずりの背景を知って寄り添う関わりを心がけていきます。
言葉でうまく気持ちを伝えられなかったり、なんでもイヤイヤで癇癪したりする時期は、うまく思いをくみ取って快適に過ごせるようにしたいもの。ぐずりやイヤイヤの背景がわかるだけで、園での対応もスムーズになります。
たとえば、あせもが酷くなっている様子があれば、沐浴やこまめな着替えを心がけられます。また、「なんでもイヤ」といった様子が続く子には、選ばせる場面を増やしたり、最初に本人の気持ちを受け止めたりするなど、関わり方を工夫することができます。
ちょっとしたひと言が、子どもが気持ちよく過ごすためのヒントになることは多いため、保護者と保育士のこまめな情報共有が欠かせません。
6.家庭について
→園では、保育士同士で気持ちの揺れを共有して安心につなげていきます。
家庭環境に変化があるときは、子どもの情緒にもなんらかの動きが見られます。「さみしそう」「甘えが強い」といった様子は、園での態度にも表れることがあるため、保護者からの事前の情報がとても助けになります。
「今日は甘えたい日なんだな」とわかっていれば、関わる保育士も意識して寄り添うことができ、子どもも安心して過ごせるようになります。適切なタイミングで子どもの思いを満たしてあげられるようになるため、事前に情報を共有することが大切です。
連絡帳を活用しよう!よくあるお悩みを解決
自分の書いている連絡帳に、おかしなところがないか不安に思うことはありませんか? ほかの保護者が書く連絡帳を見る機会がないため、そう思うのも無理はありません。ここからは、よくあるお悩みを解決していきます。
1. どのくらいの量を書けばいいかわからない
保育士側がどのくらい書くかは、園や個人によって差があります。量を合わせる必要はないため「たくさん書かなきゃ」「こんなに書いたら迷惑かな」などと思わないでくださいね。
記入欄の広さによっても違いがありますが、よく見るのが3〜4行分程度の記載です。書きたいことがあるときはしっかり書き、時間がないときは短く留めると負担なく取り組めます。子どもの様子を記録する、育児日記のような気軽なイメージをもつとよいでしょう。
保育士への相談事などは、文字にすると長くなってしまったり、細かいニュアンスが伝わらなかったりするため、対面がおすすめです。
2. 特に何もなかったので書くことがない
保育園に子どもをお迎えに行き、自宅で夕食や入浴を済ませて寝かしつける……。そんな何気ない毎日が続くと、特に記載するような項目がないと思ってしまいますよね。しかし、保育士が知りたいのは、そんな何気ない日常なんです。
「今日もまたずっとブロックで遊んでいました」「冷蔵庫を叩いて何か食べ物を出せと催促してきます」など、みなさん子どものありのままの姿を綴っています。保育園では見せない姿が見受けられるなど、保護者からの連絡帳には発見がいっぱいです。
よく遊ぶものや気に入っている絵本、好きなご飯、寝る前のルーティン、口癖など、なんでもOKです。
3.連絡帳を書き忘れた&持ってくるのを忘れた
うっかり連絡帳を書き忘れたり、書いたのに自宅に忘れたりすることもありますよね。そのような場合、朝の子どもの受け渡し時に注意事項を口頭で伝えるようにすればOKです。伝え漏れがないよう、連絡帳忘れに気づいた段階でメモに記して渡してくれる保護者もいます。
その日にチェックできなかった内容は、翌日連絡帳を提出したときに目を通してもらえるので安心してくださいね。
特に、お迎え時刻の変更や体調に不安がある場合などは、伝え忘れがないように注意が必要です。
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朝の出社準備に子どもの登園準備。働きながらの子育ては毎日バタバタですよね。分刻みで動き回る忙しい朝、連絡帳の記入は本当に大変だと思います。しかし、その記録はいつか、何度でも読み返したくなるような宝物になるはずです。書ける項目は、前日の夜に記入しておいてもよいでしょう。育児日記の代わりに、気軽に子どもの様子を書いていきたいですね。