親が子どもの将来に望むのは、幸せであること――。その「幸せ」の基準や捉え方は人それぞれですが、どんな夢を実現するにも、安定した基盤があってこそ可能になります。そこで今回は、子どもが将来、社会で活躍できる力を育むために、子育ての段階で意識したいポイントをご紹介します。
世帯年収1,000万円以上の親が望む、子どもの職業とは?
「親ガチャ」という言葉をご存じでしょうか。経済的に恵まれた家庭に生まれることを「親ガチャ成功」と呼ぶこともありますが、実際には親の経済力が子どもの幸せを保証するわけではありません。
むしろ重要なのは、子ども自身が「自分で稼げる力」を身につけることです。そのために富裕層の親たちは、子どもの可能性を広げる経験を重視します。不動産メディア「幸せおうち計画」の調査によれば、世帯年収1,000万円以上の親が望む職業の第1位は「経営者」。年収1,000万円未満の家庭では上位にもランクインしないこの結果は、富裕層の特徴的な教育観を表しています。*1
では、実際に富裕層の家庭では、どのような教育を実践しているのでしょうか?
富裕層が子どもの教育において実践している4つのこと
富裕層が子どもの教育において意識していることは、一般家庭でも真似できそうな方法ばかりです。ここでは、具体的なポイントを4つにまとめました。できることから取り入れてみましょう。
■積極的に「野外活動」や「外遊び」をさせる
「どんな時代になろうとも、どんな環境でもたくましく生き抜くには『強い意志力』と『行動力』が何よりも重要」
「メシが食える大人を育てる」ことを教育理念に掲げる学習塾「花まる学習会」代表の高濱正伸氏は、そう語ります。そこでおすすめしたいのが、外遊びや野外活動です。
高濱氏は、「野外活動を通じて、人の指示を待つのではなく、自分から問題・課題を見つけ、自分の持てる力を最大限に発揮して解決する力を培う」と述べています。また、遊びのなかで想像力や創造性を膨らませながらミッションをやりきることで、主体性が伸びて自己肯定感もアップするという相乗効果も。野外活動によって、日常では味わえない外部からの刺激を受けることは、子どもの意欲と思考力をぐんと伸ばしてくれるでしょう。*2
野外活動で育つ3つの力
- 自然のなかでの予期せぬ出来事への対応を通じて問題解決力を育む
- 遊びを通じて想像力や創造性を伸ばす
- 仲間との協力で主体性と自己肯定感を高める
■とにかく「さまざまな経験」をさせる
「生きていくために最も必要なのは、”自分で稼ぐ力”を身につけること」
元開成中学校・高等学校校長の柳沢幸雄氏もまた、そう断言しています。ただし、やりたくもない仕事でお金を稼ぐのは苦しさをともない、人生に不満を抱くようになるため、できれば好きなジャンルに関連する仕事で稼げるようにサポートしてあげましょう。親としてできることは、子どもの将来にさまざまな方向性を示し、情報を与えて「好き」と「仕事」を結びつけてあげることです。*3
そのためには、わが子がどんなことに興味があるのかしっかり理解してあげる必要があります。いまいちよくわからない、という場合は「撒き餌」が有効。とにかくいろいろな経験をさせて、どんなときに子どもの目が輝くのか観察するのです。ポイントは、たとえゲームばかりしていても、頭ごなしに否定しないこと。「どうせなら自分でゲームをつくってみたら?」と視点を変えてヒントを出せば、好きなことで稼ぐ手段を考えるきっかけになります。*3
「好き」を活かす3つのステップ
- さまざまな体験を通じて子どもの興味を見つける
- 興味をもったことを深められる機会をつくる
- 趣味や好きなことを仕事につなげる視点を示す
■「自分で判断し、決める経験」をたくさんさせる
「稼ぐために必要なのは『人生を切り拓く力』である」
『1億稼ぐ子どもの育て方』(主婦の友社)の著者で起業家兼個人投資家の午堂登紀雄氏は、そう指摘します。AIやロボットが台頭する現代社会では、人間にしかできない新しい価値を創造することが求められます。そこで重要になるのが、課題を自ら発見し、未知のことに挑戦する「知的好奇心」です。
正解のない未知の状況に直面したとき、解決に向けて行動できる力の源にもなる知的好奇心を育むためには、知識や経験を応用して自分で判断し、決める経験が必要です。たとえば家族旅行を計画する際、日程と予算のみ提示したうえで、交通手段や宿泊先の選定、旅先でのスケジュールなどすべてを子どもに任せるのもおすすめ。このように家庭でイニシアチブをとる経験を積ませることが、自立心や責任感を育みます。*4
自分で決める力を育てる3つの機会
- 家族旅行の計画立案で予算管理を経験する
- 複数の選択肢から最適な方法を考え判断する
- 決めたことに責任をもつ経験を重ねる
■日常会話に「お金の話題」を取り入れる
未来で活躍できる大人になるには、お金との正しい付き合い方を小さいうちから学ぶ必要があります。特に現代では、キャッシュレス決済の普及により現金に触れる機会が激減し、子どもは「お金は使えば減るもの」ということが理解しづらくなっています。大人になってトラブルに巻き込まれないように、お金が理解できるようになる3~4歳から金銭感覚の土台を築くのも、決して早すぎることはありません。
ファイナンシャルプランナーの八木陽子氏が推奨するのは、日常会話にお金の話題を取り入れること。たとえばインターネットで注文するときに「送料はいくらかかるのか見てみよう」「ほかのサイトと見比べて、お得なほうを選んでみよう」など、お金を使う場面でのちょっとした声かけでも十分です。*5
さらに、ファイナンシャルプランナーの住谷一幸氏が提案する「予算やりくり大作戦」も効果的です。買い物をする際に、子どもに「1000円以内でカレーをつくりたいから、材料を選んでくれる?」と伝え、予算内で材料を揃えさせます。量の違いや産地、賞味期限などさまざまな要因によって値段が異なることに気づいたり、欲しいものと必要なものが区別できるようになったりするので、子どものマネー教育も兼ねたお手伝いとして親子のコミュニケーションにも役立ちますよ。*6
お金の感覚を育む3つの習慣
- 買い物時の価格比較を一緒に行なう
- 予算内でやりくりする体験を提供する
- 日常的な金銭の話題で感覚を養う
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社会で活躍できる力を養うには、小さいうちから知的好奇心を育んであげることが大切です。また、語学やスポーツと同じように、生活に必要な基礎知識も幼少期から自然に身につけていくほうが、大人になってから苦手意識をもつことも少なくなります。
子どものうちからさまざまな経験を重ね、必要な知識や考え方を学んでおくことで、将来的により多くの選択肢をもつことができ、生活の安定や安心にもつながります。富裕層の家庭で実践されているこれらの教育方法を、ぜひ家庭でも取り入れてみてください。
文/野口燈
(参考)
(*1)参考:AZWAY|【子どもに就いて欲しい仕事ランキング】回答者490人アンケート調査
(*2)参考・カギカッコ内引用元:@DIME|偏差値よりも大事!わが子を“メシが食える大人”にする方法。花まる学習会代表・高濱正伸さんに聞いた【PR】
(*3)参考・カギカッコ内引用元:ダイヤモンドオンライン|子どもに“稼ぐ力”を身につけさせるには
(*4)参考・カギカッコ内引用元:日経BizGate|ひらめきブックレビュー『1億稼ぐ子どもの育て方』
(*5)参考・カギカッコ内引用元:三菱地所のレジデンスクラブ|お金に強い子どもに!家庭でできるマネー教育
(*6)参考・カギカッコ内引用元:NHK 広島放送局|いま大注目!子どものマネー教育
(*7)参考:りそなグループ|お金の教育は子どものうちからはじめよう!金融教育の重要性と教育方法