教育を考える/親自身のこと 2025.7.29

妻7時間28分、夫1時間54分。共働きなのに “私ばっかり”──幸福学が教える夫婦関係の整え方

編集部
妻7時間28分、夫1時間54分。共働きなのに “私ばっかり”──幸福学が教える夫婦関係の整え方

「なんで私ばっかり家事してるの?」と思ったこと、ありませんか? 現在、共働き世帯は7割超。その実態を最新データから徹底分析! 妻「7時間28分」vs 夫「1時間54分」――なぜこんなにも差があるのか、背景と解決策を探ります。

みなさんのご家庭でも、共働きゆえに生じる家事・育児の問題に向き合いつつ、家族の幸せのために奮闘しているのではないでしょうか。

そこで今回は、「夫と妻の家事・育児負担の割合」をはじめとした最新のデータをもとに、“共働き夫婦のリアルな実情”を分析。データから見えてくる現状の問題点と実行すべき改善点と、“モヤモヤ” を減らす具体策をお届けします。

共働き家庭も妻の就業時間も増えている!

総務省の「労働力調査(2023年)」によると、共働き世帯数は1,278万世帯であり、専業主婦世帯数(517万世帯)の約2.5倍と大きく上回りました。割合としては全体の7割超であり、その数は今後ますます増えることが予想されます。

また共働き世帯のうち、妻の就業時間も年々増加傾向にあります。2018年の調査では、「週に35時間以上就業している妻」は486万世帯だったのに対し、2023年では542万世帯にまで増加。フルタイムで働く妻にとって、家事・育児を効率よくこなすのは難しく、家族の協力なくして家庭がまわらないのが現状です。

これらのデータをふまえて、次項ではさらに具体的な「夫婦間での家事・育児の分担と負担」の割合についても見ていきましょう。「なんか、私ばっかり家のことしてる?」と漠然と不満を溜め込むよりも、ほかの家庭ではどのように時間をやりくりしているのか? どうやってストレスなく分担しているのか? など感情的にならずに、建設的に考えることが問題解決への近道です。

共働き夫婦の家事育児分担02

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衝撃の家事関連時間|妻は7時間28分、夫は1時間54分

では実際に、共働き家庭における家事・育児の時間配分の違いや、夫婦間での意識の差はどれくらいあるのでしょうか。

6歳未満の子どもをもつ夫婦と子どもの世帯を対象にした調査(総務省統計局)の結果をもとに見ていきましょう。

共働き夫婦の家事育児分担グラフ01※【図1】総務省統計局より引用

夫と妻の1日あたりの家事関連時間を調べたところ、妻が7時間28分だったのに対し、夫はなんと1時間54分という結果に。2001年から2021年の20年の推移を見ると、夫は2001年の「48分」から大幅に増えたものの、妻の家事・育児に費やす時間には遠く及ばないことがわかります。

もちろん各家庭により事情は異なるため、一概には言えませんが、昔に比べて男性が家事・育児を積極的におこなうケースは増えたものの、女性が中心となって家事・育児を担っている家庭はまだまだ多いようです。

それを裏付けるように、総合求人サイト『エン転職』上で実施したアンケートによると、共働き家庭の家事・育児の分担割合で最も多かったのは「女性7割、男性3割」という結果でした。

ただし、年代別では男女の割合の差に違いが見られます。

家事・育児の分担割合が「女性9割:男性1割」であると答えた家庭は、40代以上では20%、20代では10%となんと半数に。一方で、「女性5割:男性5割」と答えた40代以上は13%であるのに対し、20代では24%にものぼりました。

若い年代になるにつれ、女性と男性の分担割合が同等に近づいていることから、家事・育児の分担割合に対する意識がアップデートされつつあることがうかがえますね。

共働き夫婦の家事育児分担03

共働きなのに「私ばっかり大変問題」

家事・育児の分担割合の現状を把握したところで、ここからは、夫と妻がお互いにどういう気持ちで家事や育児をこなしているのか深掘りしていきます。

まず、前出の『エン転職』のアンケート調査では、家事と仕事の両立に不満を抱く割合において、男女で大きな開きが生まれる結果に。現在の家事・育児分担と仕事の両立について満足度をたずねたところ、男性は「満足(とても満足・どちらかといえば満足)」と回答した割合が63%なのに対して、女性は47%と16ポイントもの開きがありました。

この問いに「不満」と答えた人の理由は以下のとおり。

共働き夫婦の家事育児分担グラフ02
※【図2】「エン転職」調査のデータをもとに編集部にて作成

「自分も仕事に集中してキャリアを築きたいのに……」
「もっと家事や育児のレベルを上げて、自分と同じくらいの戦力になってほしい……」

とはいえ、こんなことを口にしてしまったら、夫婦関係がぎくしゃくしそうで言えないーー。でも自分ばかり負担が大きくて、相手は余裕がある(ように見える)のは不公平じゃない? そんな悩みを抱えながら毎日の家事・育児を頑張っている人もたくさんいそうですね。

ソニー生命保険株式会社が2024年に実施した「20代・30代共働き夫婦の生活意識調査」では、共働き夫婦の家事の分担についてどのような気持ちでいるのかを聞いています。

共働き夫婦の家事育児分担グラフ03
※【図3】「ソニー生命保険株式会社」調査のデータをもとに編集部にて作成

「もっと自分が担当しなければならないと思う」は夫63%に対し、妻は37%である一方、「もっと配偶者に分担してもらいたい」と思っている夫は38%で、妻は52%という結果になりました。

このことからも、夫自身は「もっと率先して家事をしなければ!」という意気込みがありながらも、妻側の半数は「もっと夫に家事を分担してほしい」と切実に願っていることがうかがえます。

この問題を解決するには、夫婦のスケジュール管理・調整はもちろん、夫側と妻側の「家事・育児に対するスタンス」や「手を抜くポイント」のすり合わせ、もしくは「どこまでを外部に委託するか」なども含めた抜本的な話し合いをする必要があるでしょう。

共働き夫婦の家事育児分担04

幸福学から学ぶ|共働き夫婦の「私ばっかり大変問題」解決のカギ

共働き夫婦の実態について、さまざまなデータをもとにお伝えしてきました。子どもの年齢や人数、夫婦の就業形態によって、家庭のルールや家事分担は変わっていくもの。だからこそ大切なのは、その都度きちんと話し合える夫婦関係を築くことです。

とはいえ、現実はそう簡単ではありませんよね。仕事で疲れて帰ってきても、家事や育児が待っている。「なんで私ばっかり?」「もう少し手伝ってもらえたら……」そんなモヤモヤを抱えながら毎日を過ごしているママ・パパも多いのではないでしょうか。

「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏は、「親だからこそ、子どもではなく夫婦、そして自分の幸せを追求してほしい」と断言しています。なぜなら、そのほうが「子どものためになる」から。親が心に余裕をもって笑顔でいれば、その安心感は家族全体に広がっていく――つまり、親が自分の幸せを追求することは、決して自分勝手なことではなく、家族みんなの幸せにつながるのです。

1日の終わりに「今日も家族みんなで頑張ったな」と思えるか、それとも「もう限界……いつまでこの生活が続くの?」とため息をつくか。その違いは、日々の小さな積み重ねと、自分自身の心のもち方にあるかもしれません。

【1日1分】スリーグッドシングスで幸せ体質になれる!

そこで試してほしいのが、前野氏が推奨する「スリー・グッドシングス」です。毎晩寝る前に、その日あったよいことを3つ思い出してみる。ただそれだけの簡単な習慣です。

「子どもが『ごちそうさま』を言えた」
「パートナーがゴミをまとめてくれていた」
「今日のお弁当、完食してくれた」

など、どんなに小さなことでもかまいません。書き出すのが面倒なら心のなかで思うだけでも効果があるそうです。

この習慣を続けると、自然とよいことに目が向くようになります。完璧な家事分担を目指すより、まずは自分の心を少し軽くしてあげる。そんな小さな一歩から、家族みんなが笑顔で過ごせる時間が増えていくかもしれませんね。

【スリーグッドシングスのやり方】

  1. 1日の終わりに、「よかったこと」(嬉しかったこと、幸せだと感じたことなど)を3つ思い出す
  2. 「よかったこと」3つをノートに書き出す。もしくは口に出す、心のなかで思うだけでもOK!
  3. 毎日続けると、脳は「いいこと」を勝手に探すようになり、1日のできごとに期待感をもてるように!

夫婦間でも親子間でも、相手の言動に対して一喜一憂するばかりでは疲弊してしまいます。どんな小さなことでも日常のなかに喜びや幸せを見つけて、「今日はこんないいことがあったな。明日も楽しみ!」と思える毎日にしていきたいですね。

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共働き家庭の増加にともない、家事や育児をサポートしてくれるさまざまなサービスや便利グッズが続々と誕生しています。家族で過ごす時間をもっと有意義なものにするためにも、それらをうまく活用しつつ、お互いの気持ちを正直に伝え合える風通しのよい関係を築いていきたいですね。

文/野口燈

(参考)
明治安田生命総合研究所 調査REPORT|共働き世帯の増加が消費を押し上げ
独立行政法人 労働政策研究・研修機構|共働き等世帯の状況ー労働力調査(詳細集計)結果からー
総務省統計局|我が国における家事関連時間の男女の差
エン・ジャパン|社会人4800人に聞いた「男女の家事・育児分担」調査ー『エン転職』ユーザーアンケートー
ソニー生命|20代・30代共働き夫婦の生活意識調査2025
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