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「自己肯定感」の認知度の高まりにともない、「子どもの自己肯定感を高めたい」と願う親が増え、その流れは一種のムーブメントになっています。ただ、その願いの強さゆえに、「子どもにばかり目を向けることには注意してほしい」と注意喚起を促すのは、自己肯定感ブームをつくった第一人者として知られる、心理カウンセラーの中島輝さん。そして中島さんは、「子どもの自己肯定感をもっとも左右するのは、親の自己肯定感」であるとも言います。全力で愛するわが子を育てている、あなたの自己肯定感はどのような状態にあるでしょうか?
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
「親の自己肯定感」が子どもに与える影響
「自己肯定感」の重要性が広く認識されているいま、親御さんに気をつけてほしいことがあります。それは、「子どもの自己肯定感を高めたい」という思いから、子どもにばかり目を向けがちだという点です。
じつは、子どもの自己肯定感には、親自身の自己肯定感が大きく影響します。親の自己肯定感が高いと子どもの自己肯定感も自然と高まり、反対に、親の自己肯定感が低いと子どもの自己肯定感も低くなる傾向にあるのです。
それには、「代理強化」と呼ばれる現象が影響しています。代理強化とは、「他人の行動に対する報酬や罰を観察することで、自分の行動を変える現象」を指します。たとえば、お兄ちゃんがお手伝いをして親にほめられるのを見た弟が同じようにお手伝いしようとする、ファミリーレストランで騒いでいたほかの子が親に叱られるのを見た子が静かにするようになる、といったことです。
子どもは、周囲の人間をまねることで行動を学んでいきます。とくに親は、いい面もそうでない面も、子どもにとっていちばんの見本となる存在です。
たとえば、親が「どうせ無理だよ」「もう疲れた」といったネガティブな言葉を頻繁に使うと、親自身の自己肯定感が低下すると同時に、子どもも同じような言葉を使ってネガティブな思考をもっていきます。
でも、誰だって疲れる場面はあるわけですから、弱音のひとつだって吐きたくなりますよね? そこで、親御さんがやるべきことは、言葉を置き換えることです。「どうせ無理」「疲れた」といったネガティブな言葉を、「なんとかなるかも」「よく頑張ったなあ」とポジティブなものに置き換えればいいのです。そうすることで、親自身の自己肯定感は向上し、子どもの思考もポジティブなものになり、自己肯定感も上がっていくのです。
親自身の自己肯定感をチェックしてみよう
子どもの自己肯定感に親の自己肯定感が大きな影響を与えるというと、「自分の自己肯定感はどうなのだろう?」と感じた人も多かもしれません。そこで、親御さん自身の自己肯定感をチェックしてみましょう。以下の12の質問に「○」または「✕」で答えてください。
「○」が5個以下だった人は、自己肯定感が比較的高い状態ですので心配しなくても大丈夫です。一方、「○」が10個以上だった人は、自己肯定感が低くなっている可能性があります。
ただし、自己肯定感が低いという結果だったとしても心配する必要はありません。自己肯定感は人生を通じてつねに変動するものであり、「○」が10個以上だった人も、現時点の自己肯定感が低いということに過ぎないのです。
そして、先に紹介した、ネガティブな言葉をポジティブに置き換えるといった習慣を身につけることで、みなさん自身の自己肯定感は確実に向上しますし、その結果としてお子さんの自己肯定感も高まっていくでしょう。
人のいいところを探せば、自分のいいところも見えてくる
そして次に、親子で一緒にできる、自己肯定感を高めるメソッドを紹介したいと思います。私はこのメソッドを、「みんなのいいところ探しメモ」と呼んでいます。以下のようなフォーマットを埋めるかたちで、親子それぞれで周囲の人のいいところをたくさん書き出してみましょう。
ところで、あなたは自分自身のことが好きですか? すでにお伝えしたように、「自分のことが好きだ」といえる人であっても、あらゆる外的要因により自己肯定感が低下してしまう時期があります。そして、そんなときは、自分のネガティブな面にばかり目が向かい、ますます自己肯定感を下げてしまうという悪循環に陥りがちなのです。
そんなときに必要なのは、自分のポジティブな面に目を向けることです。しかし、自己肯定感が低下しているときは、そうすることが簡単ではありません。そこでまずは、周囲の人のいいところを探してみるのです。自分に自信がもてないときでも、人のいいところであれば探しやすいですよね?
「あの人にはこんないいところがある」と、人のポジティブな面に素直にフォーカスできるようになると、その視点は自分にも向かっていきます。もちろん、自己肯定感が低いときには他人と自分を比べたり、自己否定してしまったりすることもあるかもしれませんが、このメソッドでは、一度、その意識をなくしましょう。ここでは、意識的に自分のいいところを探す意識をもつことで、その側面をあらためて認識し、自己肯定感を回復させることを目的としてます。
とくにおすすめしたいのが、親子で一緒にお互いのいいところを書いてみることです。子どもからすれば「お父さんもお母さんもきちんと自分を見てくれている」と安心感を得られますし、親にとっても「こんなふうに見てくれていたの?」と新たな発見があると同時に、「頑張ってきてよかった」と自分を認められるようになるでしょう。
『子どもの自己肯定感の教科書』
中島輝 著/SBクリエイティブ(2024)
■ 心理カウンセラー・中島輝さん インタビュー一覧
第1回:「失敗」も「個性」もすべてが自分。親の “この声かけ” が「本来の自己肯定感」を育む
第2回:自己肯定感の高低は、親から子へ連鎖する? 「いいところ探しメモ」で自分を好きになろう
第3回:子どもの自己肯定感が下がったとき、親は “過度な心配” をしないほうがいい(近日公開)
【プロフィール】
中島輝(なかしま・てる)
茨城県出身。心理カウンセラー。作家。自己肯定感アカデミー代表。資格発行団体torie代表、一般社団法人自己肯定感学会代表。肯定心理学協会代表。心理学、脳科学、NLP等、とくにアドラー心理学を使い独自の自己肯定感理論を世に広め、126以上のコーチングメソッドを開発。Jリーガー、上場企業の経営者など1万5000名以上のメンターを務める。現在は「自己肯定感の重要性をすべての人に伝え、自立した生き方を推奨する」ことを掲げ、「自己肯定感アカデミー」や自立した生き方を探求する「輝塾」の運営等、広く中島流メンタル・メソッドを啓蒙し、「自己肯定感カウンセラー講座」「自己肯定感コーチング講座」「アドラーメンタルトレーナー講座」などを主催する。自己肯定感ブームをつくった第一人者。『自分を好きになる7つの言葉』(PHP研究所)、『自己肯定感を高めるインテリアブック』(朝日新聞出版)、『口ぐせで人生は決まる』(PHP研究所)、『繊細すぎる自分の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『立ち止まって休んでもいい』(学研プラス)など、著書多数。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。