教育を考える 2020.1.20

子どもを伸ばす「良いストレス」と心身を追い込む「悪いストレス」の違いとは

編集部
子どもを伸ばす「良いストレス」と心身を追い込む「悪いストレス」の違いとは

現代人は多くのストレスを抱えていると言われていますが、子どもも例外ではありません。株式会社セガトイズが行なった「7歳〜12歳のストレスの実態とライフスタイル調査」では、7歳〜12歳の子どもたちの67%が癒しを求めているという結果が出ました。

こうした現状を知り、「我が子にはなるべくストレスと無縁でいてほしい」と考える親御さんも多いことでしょう。しかしながら、その考え方は見直したほうがいいかもしれません。じつは、子どもにとってストレスは必要不可欠なものなのです。

なぜ、子どもにストレスが必要なのでしょう。また、親として子どものストレスにどう向き合えばいいのでしょうか。今回は、子どもとストレスの関係性について詳しくご説明します。

人間はストレスがないと生きられない

ストレスとは、心身に何かしらの負荷がかかって生じるゆがみのこと。また、その負荷のもととなる刺激を「ストレッサー」と呼びます。ストレッサーは暑い・寒いなどの物理的なものから、疲労睡眠不足といった肉体的なもの、友人とのトラブルをはじめとした人間関係的なものなど、さまざま。単純に考えれば、ストレスと無縁の生活を送るには、これらのストレッサーをすべて排除すればよいのです。

では、実際にすべてのストレッサーを排除し、ストレスをなくすとどうなるのでしょうか。それを試した、アメリカの心理学者による興味深い実験があります。温度が一定で、匂いや音もなく、薄暗い個室——つまり、まったく刺激(ストレッサー)のない環境で一定時間過ごすという内容です。結果、被験者たちの多くは、しばらくの間「寒いところでは鳥肌が立つ」「暑いところでは汗をかく」といった体温調整がうまくできなくなったといいます。また、暗示にかかりやすくなり、「あなたは転ぶ!」と大声で叫ばれたら転んでしまう被験者もいたそうです。

この実験からわかったのは、人間はストレスを失うと、生命を維持するのに必要な機能に支障をきたすということ。日常に置き換えてみれば、もっとよくわかるでしょう。たとえば、「お腹がすく」というのも日常によくある小さなストレスですが、これがあるからこそ人間はご飯を食べようとします。逆に言えば、「お腹がすく」というストレスがなければ、必要なエネルギーが摂取できないということ。

つまり、ある程度のストレスは、「自分が生きていくために、するべきことをしないといけない」という危機感を与えてくれる、非常に大切なものなのです。

良いストレスと悪いストレス2

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良いストレス・悪いストレスとは?

ストレスは生きていくのに必要不可欠であるとお話しました。しかしながら、読者の皆さんもご存知のとおり、ストレスはイライラや胃痛などの困り事を引き起こすこともあります。長期化すれば、深刻な病気につながることも。

生きていくのに必要でありながら、不要な事態を引き起こす原因にもなりうる——こうした矛盾が生じるのは、なぜなのでしょうか。多摩大学大学院客員教授の水木さとみ氏は、ストレスについて、「良いストレス」「悪いストレス」のふたつが存在すると説明します。

まず、「良いストレス」とは、どんなものなのでしょう。水木氏いわく、ひとつは、先ほどご紹介した「お腹がすく」などの日常的に感じる小さなストレス。もうひとつ、何かをやり遂げようと目標を持ち、挑戦するときに感じる適度なストレスも、その人のエネルギーを高めたり、成長につながったりする良いストレスと言えます。

一方、自分の意思とは無関係に、過剰な行動を続けた延長線に生じるストレスは、「悪いストレス」です。「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはならない」と自分を追い込むような状況が続くと、心身が悲鳴をあげ、腹痛や胃痛、不眠、肌トラブルなど、さまざまな症状となって現れてしまいます。

こうした現象は、カゴに入れられた輪の中をクルクル走り回るネズミを使った実験でも証明されています。そのネズミは、自らの意思で走っているぶんには、1日8キロメートル走っても問題ありませんでした。しかし、こちらが動かした輪の中を強制的に走らせると、わずか2キロメートルの時点で高血圧を起こしたのだそう。

人間も同じです。たとえば、「残業」を例に挙げてみましょう。自ら達成可能な目標を持って仕事に取り組み、その達成のために残業しているときは、多少ストレスを感じても平気な人が多いでしょう。しかし、「不当にやらされている」「自分にはこの仕事をこなす能力がない」と感じている場合はどうでしょうか。「やりたくない。でも、やらなくてはならない」という状況のなかでの残業が続けば、体調を崩すのも無理ありません。

子どもの「受験勉強」などにも置き換えられます。自分の行きたい、かつ能力に見合った受験校を設定し、その合格に向けて勉強をしているなら、多少のストレスを感じてもヘッチャラでしょう。しかし、「本当は行きたくない」「自分には絶対無理だ」と感じながら、長時間の勉強に耐えている状況であれば、心身のバランスを崩してしまう可能性が大いにあるのです。

良いストレスと悪いストレス3

ストレスとの付き合い方を教えてあげよう!

では、子どもを悪いストレスから守るために、親として何ができるでしょうか。それは、子ども自身が自分のストレスに対処できるよう導いてあげることです。子どもがストレスを感じた際、親にできることをご紹介しましょう。

「こう言えば伝わるよ」と教えてあげる

みなさんは、ストレスがたまったら自分で対処しているのではないでしょうか。日本ストレスマネジメント学会事務局長である桜美林大学の小関俊祐氏は、それは対処法が身についているからこそできることだと言います。

たとえば、大人は、他人から嫌なことを言われても反論する知恵がありますよね。一方、子どもは、お友だちから嫌なことを言われても、語彙が足りなかったり、すぐに言葉が出なかったりして、上手に対応できません。そういうときは、「こうしたらいいんだよ」「こう言えば伝わるよ」と保護者が教えてあげましょう。

小関氏は例として、“お友だちのおもちゃで遊ぼうとしたら「ダメ!」と言われ、どうしたらいいのかわからずお友だちを叩いてしまった” なんてことがあれば、「そういうときは、ちゃんと『貸して』って言うんだよ」と何度も教えることが大切だと述べています。

また、お友だちに悪口を言われて落ち込んでいるとしたら、「○○ちゃんは自分のこと、そんなふうに思う? 思わないでしょう? それなら気にする必要ないよ」と丁寧に伝えましょう。

大人であれば、当然のように解決できる些細ないざこざでも、子どもにとっては大きな問題になりかねないもの。上記のように、大人ならではの視点で対処法を教えてあげることが大切です。

ストレスの発散法を提案する

たまったストレスを発散するにも、初めは親のガイドが必要です。たとえば、子どもが勉強に煮詰まってストレスをためているようなら、「ちょっと一緒に散歩しない?」「休憩がてらおやつ食べたら?」といった声かけをしましょう。

このとき、子どもの好き嫌いに合わせて提案してあげるのがポイント。当然ですが、運動が嫌いな子に、「気分転換に走りに行こう」と提案しても意味がありません。「気分転換にしたいこと、ある?」と聞いてみるのもひとつの手ですよ。

また、日常的にできることを提案するのも重要です。子どもが喜ぶからといって、「高級なチョコレートを食べる」「遊園地に行く」などといった行為は、日常的なストレスを発散するのに適切ではありません。加えて、選択肢を複数用意することも大切なポイント。「散歩してリフレッシュしよう」と考えていても、雨が降ってしまうこともあります。そんなとき、「じゃあ家の中でゲームしよう」など、代案に切り替えられると良いですね。

小関氏は、子どもが中学生になる頃までに「自分はイライラしているとき、こうすると楽になるんだ」と自覚できるようになることを目指すべきと述べています。大切なのは、ストレスをなくすことではなく、ストレスとうまく付き合うスキルを身につけることなのです。

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大人であれば、誰もが多くのストレスと戦ってきた経験をお持ちでしょう。そのストックが、お子さんへのガイドに役立つはずです。人生の先輩として、ストレスとの付き合い方をぜひ一緒に考えてあげてくださいね。

(参考)
株式会社セガトイズ|イマドキの小学生は疲れている!? 67%が癒されたいと回答
藤元メディカルシステム|先端医療講座「ストレス(第2回)…ストレスとは何か
日経ビジネス|良いストレスと悪いストレス
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ストレスと無縁の人生を送ることは不可能。教えるべきは「転んだときの起き上がり方」
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