音楽をたのしむ 2019.11.4

「パスタみたいな食感」の音楽とは!? 非認知能力と認知能力の架け橋となる“音楽鑑賞”の魅力

三重野一
「パスタみたいな食感」の音楽とは!? 非認知能力と認知能力の架け橋となる“音楽鑑賞”の魅力
■パスタみたいな食感だ
■雲の匂いを感じた

これは、ある音楽を聴いて対話したときに耳にした、子どもたちの言葉です。

新たな美術鑑賞法「対話型鑑賞」によって、子どもの7つの力を育むことができると以前お話ししました。アート鑑賞と聞くと、まず絵画作品の鑑賞をイメージする方が多いかもしれませんが、アートにはさまざまな種類があります。写真作品や俳句・詩などの文字作品、そして音楽作品もその一種です。今回は、音楽を使った対話型鑑賞のメリットと魅力をお話ししましょう。

非認知能力と認知能力の架け橋に。音楽の対話型鑑賞

音楽は、美術作品のように目で楽しむのではなく、耳で楽しむものですね。そのため、音楽を使った鑑賞では、対象となる作品を目にしながら対話することはできません。音楽を聴きながら同時に対話するのも難しいので、音楽を聴いたときのイメージや心の動きを思い起こしながら話すことになります。そこで、想起する力が養われるのです。

また、音楽の対話型鑑賞では、非認知の力で捉えたイメージを言語化する必要があります。それゆえ、言語によるコミュニケーション能力や、相手の言葉から抱いたイメージに共感する能力が育まれます。さらに、抽象的な音や、音の組み合わせを、色や形、手ざわりや味や匂いとして感じる子どもの「共感覚」を引き出すこともできるでしょう。

音楽の鑑賞は、子どもの非認知能力と認知能力の架け橋ともなり得ます。子どもの感じ方には個性が強く表れるものです。さまざまな感じ方をほかの人と話し合うことで、感じ方やイメージの膨らませ方の幅も広がってゆくでしょう。音楽は時間の流れを感じさせることから、なかにはストーリーを紡ぎだす子どもも出てきます。

子どもたちの五感を刺激する! 音楽の選び方

聴いてもらう音楽としては、複雑な楽器編成のない、ピアノ曲のような作品がいいでしょう。バッハやベートーベン、シューマンなどの有名な作家の楽曲から始めてみてもいいですね。抽象的な現代音楽も、リズムやメロディー、和音に捉われることなく、音そのものに耳を傾けることができるのでおすすめです。

あまり長すぎるものは避け、5分以内の長さの作品を選びましょう。Youtube上にはたくさんの音楽があり、いつでも楽しむことができます。たとえばこちらは、ピアニスト大田麻佐子さんの「Poetry Album」の中の一曲です。ぜひお子さんと一緒に聴いてみてください。

素材を選ぶときに大切なのは、抽象的な作品は子どもたちにとって難しいだろう、と大人が勝手に決めつけないことです。抽象的であればあるほど子どもたちのイメージは膨らみ、大人の想定を越えて、喜んで作品に親しむことができるようになりますよ。

親子で音楽鑑賞に挑戦してみよう

作品を選んだら、親子で音楽に耳を傾けてみましょう。1〜4が基本となりますが、時間が許せば5にも挑戦できるといいですね。

1. じっくり聴く

2. メモを取りながら聴く

3. 感じたことや考えたことを親子で対話する

4. もう一度聴く

5. 曲から受けた印象を絵で表現する

音楽を聴いて抱いたイメージを、完全に言葉で再現することは難しいものです。メモを取る段階で、うまく言葉にできなくても心配はいりません。自分が感じたイメージを表すのにできるだけ適切な言葉を一緒に探る気持ちで、お子さんと対話することが大切です。

また、対話を得て、作品の印象が変化することもあるでしょう。対話をしてからもう一度聴いてみることで、新たな気づきが得られるはずです。

色や固さ、感情の揺れ。子どもたちが音楽から感じるもの

私が大田麻佐子さんの上記の曲を使って鑑賞したときは、子どもたちからこんな発言がありました。

■強く弾かれたところは怒りを感じる
■暗くて怖い曲だと思ったが、優しさも感じた
■人の一生を表している
■道に迷った子どもがやっと家にたどり着いた様子を表している
■高い音は固く、低い音はやわらかく感じた
■湿り気もあるのにさらさらしている
■パスタみたいな食感だ
■雲の匂いを感じた

色や固さ、感情の揺れ、匂いから食感まで、じつに豊かな気づきにあふれていたのです。

音楽を絵で表現するのも◎

音楽を聴いて得た気づきを、絵で表現することもおすすめです。こちらは、作曲家 Karl Bohrmann による現代音楽のピアノ曲「Nocturnes」を聴いて、曲から受けた印象を、子どもたちに絵にしてもらったものです。

音楽を色で感じたり、形で感じたり、具体的な物で表したり、抽象的に表現したりと、子どもの特性によってさまざまです。これらは小学5年生に描いてもらったものですが、表現の仕方は年齢や発達段階によっても異なります。子どもたちの成長を知る手がかりにもなるでしょう。

音楽を聴きながら絵画を鑑賞!?

音楽を聴きながら、音楽家が描いた絵画作品を鑑賞するのもおもしろいもの。たとえば、作曲家 Karl Bohrmann は画家でもあり、多数の作品を残しています。私がこちらの絵画作品とともに音楽鑑賞をしたときは、子どもたちから次のような発言がありました。

■真ん中の赤いものはろうそくかな? ろうそくの炎が揺らめく感じが、音が揺れる感じと合っている
■上の丸いものは太陽で、下の丸いものは月を表している。高い音が太陽で、低い音が夜の月
■朝目が覚めてこれから未来に向かって進んで行くところだと思う。強い音の部分にもそんな気持ちを感じる
■高い固い音が赤を表していて、黒い思い音が黒い線を表している

音のイメージと合わせたさまざまな発言が飛び出し、豊かな対話となりました。

アーティストからのメッセージ

今回登場したピアニスト大田麻佐子さんの「Poetry Album」には、バッハやベートーヴェン、シューマンらの古典から、武満徹らの現代音楽までバラエティに富んだ楽曲が収録されているので、お子さんと一緒にさまざまな時代の音楽を鑑賞するのにぴったりです。最後に、子どもたちの記述を読んだ大田さんからのメッセージをご紹介しましょう。

私のポエトリーアルバムから武満徹作曲の「遮られない休息」をみんなで聴いてくださり、率直で、素敵な感想を書いてくださってどうもありがとうございます。みなさん一人一人、先入観なしに、音楽を受け入れて、いろいろと感じてくださって、とても嬉しいです。(中略)今私たちが生きている世界には、いろいろな音楽があり、それを自由に聴いたり演奏したりすることのできる私たちはとても幸せだなあ、と思っています。これからも、みなさんに色々な曲を聴いていただければとても嬉しいです。いつか、コンサートなどで生の演奏も是非聴いてください。

※Karl Bohrmannによる作品は、アーティストから許可を得て使用しています。個人の鑑賞以外の用途の使用はできませんので、ご注意ください。