教育を考える 2019.7.28

音や文字に「色」を感じる!? 「共感覚」は何がスゴいのか

音や文字に「色」を感じる!? 「共感覚」は何がスゴいのか

かつてはモーツァルトや宮沢賢治、現在ではスティービー・ワンダーなどが所持しているといわれる「共感覚」という現象をご存じですか? じつは、共感覚は赤ちゃんなら誰でも持っているものなのだそう。今回は、共感覚の概要や具体例、メリットやデメリットについてご紹介しましょう。

共感覚とは?

共感覚(シナスタジア)とは、ひとつの刺激に対して、1種類の感覚のみでなく、ほかの種類の感覚も覚える知覚現象のことを指します。いくつかの感覚が混合するようなイメージです。

代表的なのは「『大きい』は赤、『小さい』は青」など「文字に対して色を感じる(色字)」、「パトカーのサイレンの音は黒、消防車のサイレンの音は黄色」などと「音が聞こえると色を感じる(色聴)」といった現象です。その他、痛みに対して色を感じたり、数字に対して香りを感じたりと、さまざまなバリエーションがあるのだそう。

自身も共感覚者であり、共感覚に関する論文を多数発表してきた関西学院大学理工学部の長田典子教授は、文字に対する感じ方について次のように述べています。

ひらがなやアルファベット、数字、それから画数が少なければ漢字にも色を感じます。たとえば『あ』は赤で、『い』は白、『う』は白に近いグレーという具合に、それぞれの文字に色を感じるんです。数字だと、1は白、2はオレンジ、3は水色……と、やはり数によって違う色を感じます。(中略)色の見え方や感じ方は、共感覚者によって違います。『目の前にべったり色が見える』という人もいますが、私の場合は、このあたり(言いながら後頭部を両手で覆う)に色が浮かぶんです。目の前にはっきり『見える』というより、頭の中に『感じる』。

(引用元:現代ビジネス|「共感覚」の持ち主には、世界がこんなに違って見えていた

子どもの共感覚02

赤ちゃんは共感覚を持っている!?

視覚と聴覚、嗅覚と味覚など、複数の感覚が作用する共感覚ですが、じつは、赤ちゃんの頃は誰もが共感覚を持っているという説もあります。赤ちゃんの脳は、視覚や嗅覚などの感覚を個別に処理する機能が未熟で、視覚や嗅覚が混在するケースがあるためです。

ワシントン大学心理学部教授のアンドルー・N・メルツォフ氏は、生後1カ月の赤ちゃんを対象に、共感覚にまつわる実験を行ないました。その内容とは、表面がツルツルのおしゃぶりとボコボコのおしゃぶりのいずれかを、赤ちゃんに見えない状態でくわえさせたあと、赤ちゃんにそれら2つのおしゃぶりを見せるというもの。その結果、多くの赤ちゃんは自分がくわえていたほうのおしゃぶりをじっと見つめていたといいます。このことから、赤ちゃんは口からの触覚情報から視覚情報を得ており、2種類の感覚を共有している共感覚者だといえます。

脳が成長するとともに、それぞれの感覚野をつないでいた経路が遮断されて共感覚を失うことがほとんどですが、中には経路が遮断されることなく大人になっても共感覚を持ち続ける人もいるのです。

子どもの共感覚03

共感覚を持っていることのメリット

文字に色がついて見えたりする共感覚は、物事を記憶する手助けになることが多いそうです。そのため、共感覚がある人は記憶力が良い傾向にあります。

前出の長田教授は、歴史の年号や電話番号を数字から感じる色の配置で覚えていたそう。たとえば、「1192」は「白・白・赤茶色・オレンジ」なのだとか。また、「いいくに」としてしまうと、平仮名から感じる色の配色が「白・白・白・黄色」になってしまい混乱するため、語呂合わせは好まないのだそう。また人の名前も、文字から感じる色を手がかりに覚えられると言います。

ちなみに、暗算や暗記、言語習得能力に非常に優れていることで有名なダニエル・タメット氏も共感覚所持者です。彼は、色を使って円周率を22,514桁まで暗記しているのだそう。

子どもの共感覚04

共感覚者ならではの悩みも

共感覚がある人のことを、「数字や文字が楽に記憶できてうらやましい」と感じた方も多いかもしれません。しかし、共感覚者ならではの悩みもあるのだそう。

東京大学大学院教授で共感覚研究の第一人者である横澤一彦氏いわく、数字に色がついて年号が覚えやすいとしても、たとえば5と8が同じ色に見える人の場合は「358」と「355」を混同してしまうことがあるのだそう。このようなデメリットがある点から、共感覚を持っていることは特段大きなメリットにもデメリットにもならないだろうと言われています。共感覚が記憶力をサポートすることは確かにありますが、逆に邪魔してしまう場合もあるのです。

横澤氏によると、かつて共感覚者は10万人に1人という珍しいケースで、芸術家や天才に多いとされてきたものの、最新の研究では100人に1人程度の割合で存在することがわかってきたのだそう。しかし、共感覚を持っている本人が「自分は人と違うのではないか」「なぜ自分だけが文字に色がついて見えるのだろう」と悩み、共感覚を持っていることを隠すケースが珍しくないため、共感覚者への理解や周知は進んでいないのが現状です。

子どもの共感覚05

もし自分の子どもが共感覚者だったら?

子どもが共感覚であった場合、子育てをするなかで親が戸惑ってしまうこともあるようです。

『日本共感覚研究会』を立ち上げ、共感覚の研究を行なう岩崎純一氏のもとには、「小学生の息子が『この算数の問題はショートケーキの味がする』と言うんですが、私はこれからこの子をどう育てていけばいいのかわからない」と、共感覚の子どもを持つ親からの悩みが寄せられたことがあるそう。

岩崎氏は、もし子どもが共感覚を持っていることがわかったら、肯定的に考えることが大切だと述べています。

「病気だと構えないで、もしかしたら生かせる道があるかもしれないと肯定的に考えてほしい(中略)だって、“このケーキの味がする時は、答えが正解の時だ”なんてことになれば、共感覚は役立つかもしれませんから」

(引用元:NEWSポストセブン|文字に色がついて見える共感覚者の親は「天才かも」と考える

もし子どもが「1が赤い」「犬の鳴き声が黄色い」など、共感覚者ならではの発言をしたら、否定せずに受け止めてあげることが大切だといえるでしょう。

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共感覚者ならではの物の見方や感じ方は、共感覚がない人にとってはなかなか理解しがたいものです。しかし、その独特の感性が、生きるうえで役立ったり、得意分野を伸ばしたりすることにつながる場合もあります。もし子どもが共感覚を持っていたら、その子の個性としてしっかり認めてあげましょう。

文/田口 るい

(参考)
保育のお仕事レポート|知ってる?色覚も視野も大人と全く違う!子どもの世界の見え方とは
現代ビジネス|「共感覚」の持ち主には、世界がこんなに違って見えていた
NEWSポストセブン|激レアと思われていた共感覚者 じつは100人に1人程度
NEWSポストセブン|文字に色がついて見える共感覚者の親は「天才かも」と考える
リスタ!|「共感覚」の不思議な世界と誰でもできる簡単トレーニング法
imidas|なぜ音や文字に色が見えるのか?